「浅井一政」の版間の差分
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| 時代 = [[安土桃山時代]] - [[江戸時代]]前期
| 生誕 = 不詳
| 死没 = [[正保]]2年（[[1645年]]）4月25日
| 改名 = 正祥（初名）{{sfn|日置謙 編|1942|p=10}}<ref name="hanshiko13">『加賀藩史稿』13巻</ref>
| 別名 = 今木源右衛門
| 戒名 =
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近江浅井氏の一族で、[[東福門院]]に上臈女房として仕えた対馬局は妹にあたる{{sfn|堀智博|2017|p=85}}。
加賀藩
一政の生年は不詳{{sfn|堀智博|2017|p=85}}。天正元年（1573年）に[[浅井長政]]が滅びると、定政の一家は[[越前国]][[敦賀市|敦賀]]に逃れた{{sfn|堀智博|2017|p=85}}。
=== 豊臣秀頼に仕える ===
一政は[[慶長]]年間、[[豊臣秀頼]]の代に[[豊臣家]]に仕え、[[片桐且元]]の麾下に属した{{sfn|堀智博|2017|p=85}}<ref name="hanshiko13"/>。この際、豊臣秀吉が滅ぼした「浅井」の姓を名乗ることを憚ったためか{{sfn|堀智博|2017|p=85}}、「今木」を称している{{sfn|堀智博|2017|p=85}}<ref name="hanshiko13"/>。『浅井一政自記』によれば、豊臣秀頼とは直接面会もできる間柄で、信頼を受けていたようである{{sfn|堀智博|2017|p=85}}。
慶長19年（1614年）9月、徳川家康との交渉役であった片桐且元が豊臣家中で孤立した際には、且元のために豊臣家と片桐家の間を奔走した{{sfn|堀智博|2017|p=88}}。且元の大坂城退去
==== 大坂夏の陣 ====
慶長20年（1615年）の[[大坂夏の陣]]において、一政は
『浅井一政自記』には落城が間際に迫る中での秀頼との会話や城内の状況も記されている{{sfn|堀智博|2017|p=88}}。秀頼は一政に、天守で自害するからその用意をせよと言ったため、一政は畳を重ねて自害の場所をしつらえた{{sfn|堀智博|2017|p=98}}。しかし、秀頼の自害は[[大野治長]]と[[速水守久]]によって阻まれた{{sfn|堀智博|2017|pp=98-99}}。秀頼は天守から下りて戦況把握のため月見櫓に入ったが、落城寸前であることが確認され、戦闘で重傷を負った[[渡辺糺]]が自害した{{sfn|堀智博|2017|p=99}}。渡辺糺の母（正栄尼）も後を追って自害したが、一政は正栄尼の[[介錯]]を務めた<ref name="hanshiko13"/>{{sfn|堀智博|2017|pp=98-99}}。一政も月見櫓で自害しようとしたが、[[津川近治]]と[[毛利勝永]]によって櫓から連れ出され阻まれたという{{sfn|堀智博|2017|p=99}}。
慶長20年（1615年）5月8日朝、豊臣秀頼の命で[[常高院]]（[[淀殿]]の妹）の許に、おそらくは淀殿の助命について徳川家との交渉を依頼するための使者として派遣された{{sfn|堀智博|2017|pp=99-100}}。京極家当主の[[京極忠高]]（常高院の養子、小浜藩主）からは協力を断られた上、井伊直孝の部隊に拘束されて城内への帰還を果たせず、大坂城の炎上を城外から見、秀頼以下の切腹を伝え聞くこととなった{{sfn|堀智博|2017|p=100}}。一政は京都に護送された{{sfn|堀智博|2017|p=100}}。▼
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=== 大坂落城後 ===
一政は大坂方の落
『浅井一政自記』には夏の陣で首級を挙げた時の証人の現住所も把握しており、大坂方参加者との交流も長期にわたって続いていたことが窺える{{sfn|堀智博|2017|p=98}}。大名家への仕官に向け、互いの戦功を証明する手段として書簡をやり取りしていたようである{{sfn|堀智博|2017|p=98}}。
=== 加賀藩に仕える ===
[[元和 (日本)|元和]]年間（1615年 - 1624年）に[[加賀藩]]第2代藩主[[前田利常]]に1000石で召し抱えられ{{sfn|堀智博|2017|p=85}}<ref name="hanshiko13"/>、馬廻組に属した{{sfn|日置謙 編|1942|p=10
加賀藩への仕官には、利常の正室が[[珠姫]]（[[徳川秀忠]]と[[崇源院|江]]の娘、すなわち淀殿の姪）であったことが関わっており{{sfn|堀智博|2017|p=100}}<ref name="hanshiko13"/>{{efn|利常と珠姫の結婚の際、当時大坂にあった一政が関連事務を担当していたともいう<ref name="hanshiko13"/>。}}、淀殿の助命のために奔走した一政に報いたと伝えられている{{sfn|堀智博|2017|p=100}}。加賀藩では再び「浅井」を称した{{sfn|堀智博|2017|p=85}}<ref name="kanazawakoseki24-1617"/><ref name="hanshiko13"/>。
利常の子・[[前田光高]]には幼少時より傅役として仕えた<ref name="kanazawakoseki24-1617"/>（『加賀藩史稿』等によれば世子側用人として仕えたとある{{sfn|日置謙 編|1942|p=10}}<ref name="hanshiko13"/>）。寛永16年（1639年）に利常が隠居し、光高が第3代藩主となった。光高からの信頼は厚く、300石が加増された{{efn|『加賀藩史稿』の註によれば、『先祖由緒并一類附帳』では300石加増、『諸士系譜』では500石加増とあって齟齬がある<ref name="hanshiko13"/>。『加賀藩史稿』は由緒記が委曲を尽くしたものとして300石の説を採っている<ref name="hanshiko13"/>。『加能郷土辞彙』は、光高の襲封以前に「世子側用人」となり、襲封の翌年に500石が加増されたと記す{{sfn|日置謙 編|1942|p=10}}。堀智博は、光高に仕えて300石が加増されて御側御用に任じられたとする{{sfn|堀智博|2017|pp=85-86}}。}}。その後、老齢を理由として隠居し、越中国氷見に居住した<ref name="hanshiko13"/>。
正保2年（1645年）4月5日に光高が江戸で急死した。一政は光高の柩を途中まで出迎え<ref name="hanshiko13"/>、柩に従って金沢に帰り、4月25日に殉死した{{sfn|日置謙 編|1942|p=10}}<ref name="hanshiko13"/>。一政は光高とともに金龍院天徳院（金沢市小立野）に埋葬され、その後昭和に入って加賀藩歴代藩主が眠る野田山墓地に改装された{{sfn|堀智博|2017|p=86}}。
== 浅井一政自記 ==
『'''浅井一政自記'''』は一政が加賀藩に提出した
成立年代については、一政の加賀藩への仕官時から、子孫による作成も可能性に含めて前田利常の没（万治元年（1658年））以前という説まである{{sfn|堀智博|2017|p=87}}。堀智博は『浅井一政自記』に記された証人の動向や加賀藩での書上提出の機会などから、[[寛永]]8年（1632年）頃が下限と絞っている{{sfn|堀智博|2017|p=87}}。
近世初頭に成立した軍記『[[豊内記]]』は、大坂方の複数の記録を参考にしているが、その中に『浅井一政自記』も含まれると考えられており、浅井一政（今木源右衛門）の証言が多く採録されることとなっている{{sfn|堀智博|2017|p=81}}。さらには『豊内記』を種本として、広く読まれた『[[難波戦記]]』が編纂された{{sfn|堀智博|2017|p=81}}。
== 逸話 ==
*前田光高の柩を出迎えた一政は、周囲の者に殉死
*一政は[[今枝直恒]]と不仲であった。光高の葬儀の奉行となったのは[[今枝近義]]（直恒の子）であったが、殉死を決意した一政は近義に存念を述べるとともに、心掛りは嫡男の政右であると言い、近義の妹を政右の妻に迎えたいと述べた。近義はその通り約した<ref name="hanshiko13"/>。
*一政は日頃から子らに対し、袴の紐の結び方は粗相のないように、余りはきちんと挟み込むようにと諭していた。切腹の際にもその通りにし、人々は感心した<ref name="kanazawakoseki24-1617"/><ref name="hanshiko13"/>。
*150石取りの小笹善四郎<ref name="hanshiko13"/>という者は、光高にかつて犯した罪を赦されたことがあったため、光高が没すると殉死を決意した。しかし同僚からは「軽輩の者が上長の者より先に立つのは穏やかでない」と止められ、拝謁した[[本多政重]]からも「殉死者が軽輩の善四郎一人というのでは我が藩に人がないように見られる」と諭された。善四郎は政重に「上位者で先に殉死する者があれば、私の殉死も許可してほしい」と述べ、政重もこれを認めた。一政が殉死を決意したと伝わると、善四郎は一政に面会して真意を確かめ、政重にこのことを伝えて別れを告げた。善四郎は一政と同日、一政に続いて殉死した<ref name="hanshiko13"/>。一政と善四郎の二人は、ともに主君と同じ墓域に葬られた。
*一政は学問を好み、書物をよく読む人物であった<ref name="kanazawakoseki24-1617"/><ref name="hanshiko13"/>。主君前田光高の著作2冊（『一本種』『自論記』）を借り受けたが、これを読むのに際して身を清め正装（盥漱著袴）したという<ref name="hanshiko13"/>。
== 家族 ==
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}}
*永山近彰『[[加賀藩史稿]]』巻13（1899年） - 国立国会図書館デジタルライブラリー蔵『[http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/764567 加賀藩史稿. 第１３巻 列伝１１ 第１４巻 列伝１２]』コマ番号49-54
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