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'''難民'''(なんみん、{{lang-en-short|refugee}})は、対外[[戦争]]、[[民族]]紛争、[[人種]]差別、[[宗教]]的迫害、[[思想]]的弾圧、[[政治]]的迫害、[[経済]]的困窮、[[自然災害]]、[[飢餓]]、[[伝染病]]などの理由によって居住区域(自国)を離れた、あるいは強制的に追われた人々を指す<ref>[http://www.unhcr.org/pages/49c3646c125.html UNHCR>Who We Help > Refugees]</ref><ref>[http://www.unhcr.org/pages/49da0e466.html UNHCR > About Us > History of UNHCR > The 1951 Refugee Convention]</ref><ref>[http://www.unhcr.or.jp/ref_unhcr/refugee/index.html UNHCR Japan > 基本情報 > 難民とは]</ref><ref>[http://www.unhcr.or.jp/protect/treaty/1951_joyaku.html UNHCR Japan > 基本情報 > 難民条約]</ref><ref>[http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/nanmin/main1.html 外務省 > 外交政策 > 難民]</ref><ref>[http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/pub/pamph/pdfs/nanmin2.pdf 外務省 > 外交政策 > 難民条約]</ref>
。
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== 難民条約と難民の定義 ==
[[1951年]][[7月28日]]、[[スイス]]の[[ジュネーヴ]]で行われた「難民及び無国籍者に関する国際連合全権会議」において「難民の地位に関する条約(Convention Relating to the Status of Refugees)」([[難民条約]])」
難民の定義、難民保護のための行政措置、[[ノン・ルフールマン原則]](Principle of Non-refoulement)
「難民条約」の制定に先立つ1950年12月に難民支援活動の監督団体として[[国際連合難民高等弁務官事務所]](以下"[[UNHCR]]")
しかし、同条約の対象地域はヨーロッパに限定しており、さらに対象となる人々もUNHCRが活動を開始した1951年1月1日以前に発生した難民に限られていたため、[[1967年]][[1月31日]]、[[国際連合]]の「難民の地位に関する議定書(Protocol Relating to the Status of Refugees)」([[難民議定書]])
難民議定書を含む「[[難民条約]]」が定義する難民とは、日本外務省発行のパンフレット<ref> [http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/pr/pub/pamph/nanmin.html [[外務省|日本国外務省]]「難民条約」]</ref>によれば、{{Squote|人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために、国籍国の外にいる者であって、その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まないもの及びこれらの事件の結果として常居所を有していた国の外にいる無国籍者であって、当該常居所を有していた国に帰ることができないもの又はそのような恐怖を有するために当該常居所を有していた国に帰ることを望まないもの(難民条約第1条A(2)より抜粋)}}である。これは狭義の'''政治難民'''にあたる。しかし、元来難民は政治的理由に限定されていたわけではなく、[[自然災害]]、[[飢餓]]、[[伝染病]]などの'''災害難民'''
また、経済的貧困から外国へ逃避する難民は'''経済難民'''(Economic Refugee)と呼ばれ、政治難民との識別が困難になりつつある。原則、UNHCRや第一次庇護国での難民認定を通過しないと人道支援は受けられなかったが、近年では人権に配慮し、'''庇護申請者'''
なお、クーデターや民衆蜂起によって国外へ逃亡を図る「[[亡命]]」という語には、自主的に出国するという語感を与えるが、法的な解釈は難民と同義であり、政治犯罪人不引渡原則に適用させるか否かは到着国によって対応が異なる。
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そうした「難民」のイメージには、強制移動の境遇に貶められた人々を弱者視し、無能力な人種として取り扱おうとする傾向がある。元UNHCRで難民研究者の一人は「いわば弱点を強調することで、イメージはそれ自体、彼ら難民のもつ(中略)可能性を覆い隠してしまう」と述べており、難民のイメージは、時に人間としての[[尊厳]]を蹂躙する危険性を孕んでいる{{要出典|date=2016年3月}}。
また、『「難民である」というのは例えば「日本人である」「女である」というような生まれ持った属性ではなく、社会がつけたカテゴライズであって、本人のアイデンティティーを表すものではない。』と[[東京大学]]大学院のとある研究者が[[コンゴ民主共和国]]における[[紛争]]・[[暴力]]をテーマにした映画『[[女を修理する男]]』の上映会・トークショー「
[[オックスフォード大学]]の『難民研究ジャーナル』<ref>[http://jrs.oxfordjournals.org/content/by/year University of Oxford "Journal of Refugee Studies"]</ref>でR
== 難民の発生地域と数値 ==
下掲した[[国際連合難民高等弁務官事務所|UNHCR]]による2018年6月公表の統計<ref>{{Cite report|author=UNHCR|date=2018-06-25|title=Global Trends FORCED DISPLACEMENT IN 2017 (グローバル・トレンド
地域別では、[[中東]]を含めた[[アジア]]が最大の難民(49.9%)
{| class="wikitable"
|+ 2017年度版 グローバル・トレンド:難民、帰還民、国内避難民、そして無国籍者 (2017年末時点)
<br />
!
|-
! [[アフリカ]]
| 6,629,617 || 57,709 || 6,687,326 || 5,824,876 || 610,268 || 526,521 || 14,692,631 || 1,326,142 || 711,589 || 510,144 || 25,064,621
|-
! [[アジア]]
| 9,854,358 || 91,572 || 9,945,930 || 5,970,158 || 559,612 ||140,243 || 14,386,749 || 2,902,636 || 2,588,582 || 550,280 || 30,016,253
|-
! [[ヨーロッパ]]
| 2,592,473 || 10,469 || 2,602,942 || 47,885 || 993,776 || 412 || 2,116,027 || 193 || 547,277 || 71,356 || 6,331,983
|-
! [[南アメリカ]]
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|-
! 合計
|
|} 注:国内避難民は同様の状況に置かれた者も含む。
== 難民の種類 ==
上述した通り難民には様々な形態があり、また国連機関、国家当局、国際NGOが捉える難民観に差異があるため、各組織を貫いて難民を理解するには無理が生じている。以下、様々な難民の類型を二項対立で示したが、二項のはざまに布置された人々や、難民に酷似しながら類型に含められない人々も存在している。
*「真の難民 (Bona Fide Refugee)」と「偽の難民 (Mala Fide Refugee)」
*「伝統難民 (Traditional Refugee)」
*「避難民 (DP: Displaced Person)」と「国内避難民 (IDP: Internally Displaced Person)」
*「条約難民 (Convention Refugee)」と「非条約難民 (Non-convention Refugee)」
*「自発的難民 (Voluntary Refugee)」と「非自発的難民 (Involuntary Refugee)」
*「政治難民 (Political Refugee)」と「経済難民 (Economic Refugee)」
*「法定難民 (Statutory Refugee)」と「マンデート難民 (Mandate Refugee)」
*「海路難民 (Boat People)」と「空路難民 (Air People)」
*「庇護申請者 (Asylum Seeker)」と「支援対象者 (POC: People of Concern)」
*「強制移動民 (Forced Migrant)」と「自発移動民 (Voluntary Migrant)」
*「事前避難型難民 (Anticipatory Refugee Movement)」と「事後避難型難民 (Acute Refugee Movement)」
== 日本の難民 ==
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[[20世紀]]、[[インドシナ難民]]に対する国際貢献の必要性が契機となり[[1981年]][[10月3日]]に[[日本]]は「難民条約」に、[[1982年]][[1月1日]]には「難民議定書」にそれぞれ加盟し[[1982年]][[1月1日]]両条約と議定書を発行した。そして、それまでの「出入国管理令」を大幅に改正・改定した「[[出入国管理及び難民認定法]]」<ref>[http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S26/S26SE319.html 日本電子政府『出入国管理及び難民認定法』]</ref>(以下、入管難民法)によって[[難民認定|難民の認定手続]]制度を規定している。[[入国管理局|入国管理]]当局の認定作業は当初より非公開かつ厳格であったが、[[1980年代]]後半に[[ベトナム]]からの偽装[[インドシナ難民|難民]]が大量に流入するようになるとスクリーニング制度が導入され更に認定基準が引き上げられた。
以降日本の[[難民認定手続]]が外国人である難民申請者側にとって複雑であるとされることや、[[法務大臣]]及び[[難民調査官]]という[[法務省]]官吏のみが難民認定の権限を有していることが人道的配慮に欠けるとして国際社会から批難されるようになると、これを受けて法務省は[[2002年]][[6月]]から難民問題に関する専門部会を開催し<ref>[http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyukan_nyukan13-02.html 難民問題に関する専門部会開催状況等 法務省]</ref>、[[2005年]][[5月]]に入管難民法を改正して外部からの有識者や実務経験者などを難民認定手続に関与させる「[[難民審査参与員]]制度」を導入するとともに、日本入国後60日以内に難民申請を行わなければ入国管理局は当事者を違法滞在として強制退去させるとしていたいわゆる「60日ルール」を廃止した。
[[日本]]は[[国際連合]]に毎年多額の資金を提供しており、[[2014年]]の拠出額は世界2位である<ref>{{Cite web |url=https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jp_un/yosan.html |title=2012~14年国連通常予算分担率・分担金 |publisher=[[外務省]] |accessdate=2018-11-29 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20141018080517/https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jp_un/yosan.html |archivedate=2014-10-18}}</ref>。しかし国内への難民受け入れには慎重な姿勢をとっており、難民認定の数は諸外国と比べても著しく低い<ref>{{cite news |title=「日本の難民審査は厳しすぎる」 難民支援協会の石川えりさん |newspaper=[[毎日新聞]] |date=2015-3-20 |url=http://mainichi.jp/feature/interview/news/20150302mog00m040005000c.html |accessdate=2014-3-29 }}</ref><ref>{{cite news |title=日本の難民政策:受け入れは「狭き門」 |
[[2009年]]7月、日本政府は[[ミャンマー難民]]の[[第三国定住]]受け入れを表明し、翌[[2010年]][[9月]]より3年間[[タイ王国|タイ]]西部の[[メラ・キャンプ]]に避難している[[カレン族|カレン]]難民30名ずつ、計90名の受け入れをパイロット・ケースとして開始し国際貢献をアピールした<ref>[http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/22/9/0928_01.html 外務省2010年9月28日付プレスリリース 『第三国定住によるミャンマー難民の来日』]</ref><ref>[http://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/22/10/1013_01.html 外務省2010年10月13日付プレスリリース 『第三国定住によるミャンマー難民の来日(第二陣)』]</ref>。ただし、日本のミャンマー難民の受け入れには、母国民主化への判断違いや民族問題に対する理解不足<ref>[http://www.nippon-foundation.or.jp/what/spotlight/myanmar/overview/ 『民主化されたミャンマーに残された課題の解決に向けて』]</ref>があり、かつ難民の日本への移住希望者不在<ref>[http://mainichi.jp/opinion/news/20121128k0000m070105000c.html 『第三国定住難民、希望者ゼロの衝撃』]</ref>や日本社会不適応性<ref>[http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/114019.html 『第三国定住 難民受け入れの課題』]</ref>といった問題がある。
いくつかの[[高等教育]]機関である[[大学]]では難民を対象にした入学推薦制度を整備している。[[明治大学]]、[[青山学院大学]]、[[関西学院大学]]などは[[国際連合難民高等弁務官事務所|国連難民高等弁務官事務所]](UNHCR)と協定を結び難民の子弟の入学を進めている<ref>{{Cite web|url=http://www.kwansei.ac.jp/c_ciec/c_ciec_201787.html |title=国連難民高等弁務官駐日事務所 (UNHCR Japan) との協定による難民を対象とする推薦入学制度について |publisher=[[関西学院大学]]|date=2014-7-24 |accessdate=2015-5-18}}</ref><ref>{{Cite web|url=http://www.meiji.ac.jp/koho/desukara/university/2010/20100729unhcrcyouin.html |title=
[[2017年]]には難民認定申請数が、前年比80%増の1万9629人となった。申請者の[[国籍]]は82
=== 偽装難民 ===
日本の難民認定制度への申請は何度でも可能である。申請中は本国に強制送還されず在留資格を持てば就労することも可能であることから、[[出稼ぎ]]目的で来日した「[[偽装難民]]」も存在する<ref name="nikkeiDGXMZO84345190T10C15A3000000" />。[[2010年]]からは難民申請から6
近年日本で難民認定の申請が急増しているのもこの「偽装難民」が原因の一つである指摘されている<ref name="nikkeiDGXKZO84420410W5A310C1PE8000">{{cite news |title=難民に冷たい国でいいのか |newspaper=[[日本経済新聞]]|date=2015-3-16 |url=http://www.nikkei.com/article/DGXKZO84420410W5A310C1PE8000/| accessdate=2015-3-18 }}</ref>。
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2015年9月、[[法務省]]は難民の認定制度について「新しい形態の迫害」を認めることや認定に対して外部の有識者による「難民審査参与員」の意見を採り入れる事を決めた<ref>{{cite news |title=難民認定の対象拡大へ 審査は厳格化、外部意見の導入も |newspaper=[[朝日新聞]] |date=2015-9-5 |url=http://www.asahi.com/articles/ASH9453XSH94UTIL022.html|accessdate=2015-9-5 | author= 金子元希 }}</ref>。
なお、実際に受入数を増やしたいとの思いで難民審査参与員を引き受けたとする[[吹浦忠正]]によれば、100人以上を担当した中で1人として難民認定すべきとの意見提出には至っていないとされる<ref>{{cite
この「偽装難民」の問題は、本来救うべき難民を苦境に陥らせているとの指摘がある。
[[2010年]]、難民申請をすれば、申請の6カ月後からフルタイムで労働に従事することが可能になったが、その結果、日本での[[労働]]を希望する者が「難民」として申請するケースが多く出ているとされる。結果として、[[法務省]]の難民受付の事務がパンクし、申請に多大な時間がかかるようになった。結果待ち
== 啓
=== 世界難民の日 ===
{{Main|世界難民の日}}
[[6月20日]]は元々[[OAU]](アフリカ統一機構)難民条約の発効を記念する「[[アフリカ難民の日]]」であったが、[[2000年]][[12月4日]]の[[国際連合総会|国連総会]]において、[[2001年]]より毎年[[6月20日]]を「'''[[世界難民の日]]'''」とする旨が決議された。
以後、毎年6月20日は、難民の保護と援助に対する世界的な関心を高め、UNHCRをはじめとする国連機関やNGO(非政府組織)による活動に理解と支援を深める日にするため、世界各地で「世界難民の日イベント」が開催されている
=== 難民選手団 ===
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男女合計10名でうち2名は開催国の[[ブラジル]]在住で、[[陸上競技|陸上]]・[[水泳]]・[[柔道]]の各種目に出場した<ref>http://www.sankei.com/world/news/160606/wor1606060023-n1.html</ref>。
== 参考文献 ==
*{{cite book|和書|author=小泉康一 |year = 2005|title= 国際強制移動の政治社会学 | publisher = [[勁草書房]] | ref = {{sfnref|小泉|2005}}|id={{全国書誌番号|20752434}}}}
== 脚注 ==
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== 参考文献 ==
*{{cite book|和書|author=緒方貞子
*{{cite book|和書|others=[[加藤節]],
*{{cite book|和書|author=[[本間浩]] |year = 1990|title= 難民問題とは何か | series = [[岩波新書]]|id = {{全国書誌番号|91022030}}}}
*{{cite journal|和書|author=難民研究フォーラム
*{{cite book|和書|author=シモン・ストランゲル
▲*難民研究フォーラム (2011年) 『難民研究ジャーナル』現代人文社.
*{{cite book|last1 = Castles
▲*シモン・ストランゲル(2013年)『このTシャツは児童労働で作られました。』汐文社
*{{cite book|last = Gorman
▲*Castles, S. & Miller, M.J. (1993) "The Age of Migration: International Population Movements in the Modern World." The Macmillan Press.
*{{cite book|last = Harrell=Bond | first = Barbara E. |year = 1986 | title = Imposing Aid: Emergency Assistance to Refugees | publisher = [[オックスフォード大学出版局]] | ncid = BA00327489}}
▲*Gorman, R.F. (2000) "Historical Dictionary of Refugee and Disaster Relief Organization, 2nd Edition." The Scarecrow Press.
*{{cite book|last = Weiner | first = Myron |author-link= :en:Myron Weiner |year = 1995 | title = The Global Migration Crisis: Challenge to States and to Human Rights | publisher = [[ハーパーコリンズ|HarperCollins]] College Publishers | series = The HarperCollins series in comparative politics | ncid = BA28608316}}
**同日本語版 {{cite book|和書| author1 = マイロン・ウェイナー | translator = 内藤嘉昭 | title = 移民と難民の国際政治学 | publisher = [[明石書店]] | year = 1999 |id = {{全国書誌番号|99106314}}}}
== 関連項目 ==
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