「漢方薬」の版間の差分

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原料の多くを中国から輸入していることなどを追記
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{{東洋医学}}
'''漢方薬 '''(かんぽうやく)は、[[日本]]で独自に発展した、[[漢方医学]]の理論に基づいて[[処方]]される[[医薬品]]の総称。古代[[中国大陸]]においては、複数の[[生薬]]を組み合わせることにより、ある[[薬理|薬理作用]]は強く倍増する一方で、ある薬理作用は減衰すること([[指向性]]の強化)が発見された{{Sfn|花輪寿彦|2003|pp=286-288}}。その優れた生薬の組み合わせに対し、「[[葛根湯]]」などと漢方薬(方剤)命名が行われ、後世に伝えられた{{Sfn|花輪寿彦|2003|pp=286-288}}。
 
漢方医学の特徴は、[[伝統中国医学]]と同様に体全体を診るところにあり、「'''[[証 (東洋医学)|証]]'''」という概念を持っている{{Sfn|花輪寿彦|2003|pp=350-353}}。証は主に[[体質]]を表す{{Sfn|花輪寿彦|2003|pp=350-353}}。この点で[[西洋医学]]とは大きく異なる。漢方診療は「証に随って治療する(随証治療)」が原則であり、体全体の調子を整えることで結果的に病気を治していく{{Sfn|花輪寿彦|2003|pp=350-353}}。このため、症状だけを見るのでなく体質を診断し、重んじる([[ホーリズム]])。西洋医学が[[解剖学]]的見地に立脚し、[[臓器]]や[[組織 (生物学)|組織]]に病気の原因を求めるのとは対照的である。
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== 各国での定義と発展 ==
{{Seealso|薬草#歴史}}
[[日本]]でいうところのいわゆる漢方薬は、[[中華人民共和国]]では「中薬」、[[朝鮮半島]]では「[[高麗]]薬」と称され、伝統的に発言もしくは医学書にて執筆されてきた。
 
日本では[[江戸時代]][[幕末]]までの[[鎖国]]による影響で漢方医学が独自の発展を遂げた。現代では[[医薬品医療機器等法]]が施行されたなどから漢方薬の成分分析が進んだため、中国では通常処方されない組み合わせでの処方が行われるようになった。薬効効果が高いとされる日本式の処方による漢方薬を求めて中国から買い付けにくるという逆転現象すら起きている。来たり<ref>[http://news.livedoor.com/article/detail/9874016/ 日本の漢方薬が中国製よりより良く効く現実 中国人が大量買いか]</ref>、日本の漢方薬メーカー([[ツムラ]])が中国に進出したりという逆転現象すら起きている。ただし、日本の大手メーカーであるツムラでも、原料である生薬の8割を中国から輸入している<ref>[https://www.yomiuri.co.jp/economy/20190304-OYT1T50170/ [LEADERS]伝統の漢方 独自の技術革新…ツムラ社長 加藤照和氏 55]『[[読売新聞]]』朝刊2019年3月5日(経済面)2019年4月24日閲覧。</ref>。また[[明治]]時代の西洋化では漢方医学や漢方薬は一時排斥された歴史があり、[[1895年]]に[[帝国議会]]が『漢医継続願い』を否決した<ref>[https://www.jsom.or.jp/universally/story/note/02/04.html 漢方の歴史][[日本東洋医学会]]ホームページ(2019年4月24日閲覧)。</ref>。
 
一方、中国では現在でも[[煎じ薬]]で飲むことが多い。日本では[[エキス]]の[[錠剤]]が多いため、持ち運びなどの利便性が良い反面、個人の証に合わせて処方を調整するのが難しいという面もある<ref>[http://ir.twmu.ac.jp/dspace/bitstream/10470/8540/1/6305000005.pdf (シンポジウム 東洋医学の新たな展開 : 基礎と臨床から)東京女子医科大学附属東洋医学研究所の現状と展望]</ref>。一般的には、[[精油]]成分が粉末にする際に蒸発しやすいこと<ref>[http://www.kampoyubi.jp/products/policy.html クラシエ医療用漢方エキス製剤品質ポリシーと製造管理(クラシエ)]</ref>、また液体状態にて服用した方が消化器にて吸収しやすいことから、煎じ薬の方がエキス錠より効き目が早く、そして強いといわれる。
 
[[大韓民国]]では、漢方ではなく「[[韓方]]」「韓薬」の呼称が一般的である。これは韓国においても[[許浚]]の『[[東医宝鑑]]』等で漢方医学が独自に体系づけられたからである。同国内には韓方医を育成する韓医学部が大学にかれ、韓方医院は地方でもごく普通に存在する。
 
== 生薬・民間薬との違い ==
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そのため、しばしば漢方薬は自然の材料を使用するから[[副作用]]が無く、安全であると誤解している人がいる。これは西洋医学と対比してという意味で、ここ数十年の間に広まったものである<ref>[[高橋晄正]]はその著作『漢方薬Q&A』([[1990年]](平成2年))、『漢方薬は危ない』(リュウブックス [[1992年]](平成4年))、『漢方薬は効かない』(ワニの本 [[1993年]](平成5年))などで副作用(及び伝統中国医学全般)を指摘批判している</ref>。東洋医学では「'''毒をもって毒を制す'''」という考えがある。猛毒を含む天然物は無数に存在し、漢方薬でもそのような原料が用いられている(例えば附子=[[トリカブト]])。また、毒性がないとされるものでも、薬になるものは、使い方次第で「[[毒]]」にもなりうる。
 
ただし、「漢方に副作用がない」というのはある意味で本当である。これは薬が天然のものだからという理由でなく、漢方の方法論において副作用という概念がないということによる。漢方では副作用が出た場合は[[誤治]]、すなわち診断ミスか投薬ミスとみなされる。漢方では、理論上は、副作用があって治癒できるなら副作用なしでも可能であるとされている。このことを理解するには[[証 (東洋医学)|証]]の概念について詳しく知る必要がある。
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近年、世界の[[伝統医学]]の生薬、[[薬草]]の現代医学の視点からの[[作用機序]]の研究が進められており、漢方薬についても例外ではない。一例として、[[抑肝散]]の[[セロトニン]]神経系への作用<ref>[http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtnews/2013/M46430101/ セロトニン受容体拮抗作用とBDNF発現への関与を示唆]</ref>や[[葛根湯]]の[[サイトカイン]]への作用<ref>[http://www.pieronline.jp/content/article/0386-8109/40040/413 感冒に対する葛根湯の作用機序]</ref>、[[六君子湯]]による食欲増進[[ホルモン]]「[[グレリン]]」の分泌作用<ref>[http://toyokeizai.net/articles/-/3073 漢方薬のトレーサビリティ確立に挑む、ツムラが対峙する中国産生薬の安全]</ref>などある。長い歴史の中で経験的に作られた、漢方の薬理作用が分子レベルでの研究が進められている。
 
[[業界団体]]である日本漢方製薬製剤協会(日漢協)も、2018年にまとめた漢方の将来ビジョン2040で、漢方薬の[[エビデンス]](科学的根拠)集積を掲げた<ref>[https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00482544 「漢方のエビデンス集積/日漢協 将来ビジョン策定」]『[[日刊工業新聞]]』2018年7月26日(ヘルスケア面)2018年9月30日閲覧。</ref>。
 
== 飲み合わせ・食べ合わせ ==
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== 漢方薬における異なる生薬の混同問題 ==
日本の漢方薬では、似て非なる生薬がしばしば混同されていることがある。例として[[白朮]]と[[蒼朮]]の混同、[[桂皮]](肉桂)と[[桂枝]]の混同などがあり、[[生姜]]と[[乾姜]]の中国医学と日本漢方との定義揺れなどの問題もある。