「松橋事件」の版間の差分

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3月28日、判決公判が開かれ、殺人罪について無罪、銃刀法違反と火薬類取締法違反について懲役1年の実刑判決を言い渡した<ref name="Nishinippon190329M1"/>{{Sfn|熊本地裁|2019|p=1}}{{Efn|Aはすでにこれを超えて服役しており、再度収監されることはない<ref name="Nishinippon190329M1"/>。}}。判決理由の中で、自白など検察側が請求した証拠については、すでに再審請求審での長期間をかけた審理で信用性が否定されており、「相当の時間をかけて改めてその信用性を検討したとしても、[[検察官]]による新たな立証がされない以上、客観的事実と矛盾する疑いがあることを根拠とする再審請求審の判断と異なる結論に至ることは想定し得ない」などと証拠採用しなかった理由を述べ、Aが犯人であることを示す証拠はないと結論付けた<ref name="Nishinippon190329M1"/>{{Sfn|熊本地裁|2019|p=4}}。検察側・弁護側とも、その日のうちに上訴権を放棄したため、判決は確定した<ref name="Kumanichi190329M1"/>。
 
判決後、弁護団は声明を発表し、「事件発生、[[逮捕]]から34年、再審請求から7年を要してようやく冤罪が晴らされた。再審公判では、Aさんの健康状態を考慮し、速やかに手続きを進めた熊本地裁の判断を高く評価する」としたものの<ref name="Nishinippon20190328E1Nishinippon190328E1"/>、齊藤弁護士は、確定審で「有罪という誤った判決を出した熊本地裁が、これに言及すると思っていたのに残念だ」と苦言を呈し、三角弁護士は、「再審が決まっても[[検察]]が何度も抗告して、裁判を長引かせることができる再審制度の改正も訴えていかなければならない」と述べた<ref name="Kumanichi190329M35">『[[熊本日日新聞]]』2019年3月29日付朝刊、3版、35面。</ref>。Aの二男も、弁護団には「これでA家の矜持を保てた。感謝の言葉しかない」と感謝した一方で、「[[冤罪]]をつくり、判決を引き延ばした[[警察]]や検察の責任は今の法律では追及できない」と話した<ref name="Kumanichi190329M35"/>。また、[[熊本地方検察庁|熊本地検]]の江口昌英[[次席検事]]は、「被告人が有罪であるという新たな主張・立証は行わず、裁判所に適切な判断を求めていたもので、その点を踏まえて裁判所が判断したものと考える。今後とも基本に忠実な捜査を徹底していきたい」<ref name="Kumanichi190329M34">『[[熊本日日新聞]]』2019年3月29日付朝刊、3版、34面。</ref>、熊本県警の甲斐利美刑事部長は、「無罪判決が言い渡されたことは真摯に受け止め、今後の捜査に生かしていきたい」とコメントした<ref name="Kumanichi190329M34"/><ref>『[[西日本新聞]]』2019年3月28日付夕刊、10版、9面。</ref>。
 
同日12時30分ころ<ref name="Kumanichi190329M35"/>、弁護団やAの二男は、Aの入所する高齢者施設を訪れ、Aに無罪判決を報告した<ref name="Kumanichi190329M35"/><ref name="Nishinippon190329M31">『[[西日本新聞]]』2019年3月29日付朝刊、19版、31面。</ref>。脳梗塞の後遺症でほぼ寝たきりの生活を送るAは、認知症の症状が進み、普段は感情を表情に表すこともほとんどないが<ref name="Kumanichi190329M35"/>、弁護団が繰り返し無罪と伝えると、頬を緩め目に涙を浮かべたという<ref name="Kumanichi190329M35"/><ref name="Nishinippon190329M31"/>。