「腫瘍壊死因子」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
読みやすくした
1行目:
'''腫瘍壊死因子'''(しゅようえしいんし、{{lang-en-short|Tumor Necrosis Factor, TNF}})とは、[[サイトカイン]]の1種であり、狭義にはTNFはTNF-α、TNF-β(リンホトキシン(LT)-α)およびLT-βの3種類である。TNF-αは主に[[マクロファージ]]により産生されており、固形がんに対して出血性の[[壊死]]を生じさせるサイトカインとして発見された。腫瘍壊死因子とえば一般にTNF-αを指していることが多い。これらの分子は同の[[受容体]]を介して作用し、類似した生理作用を有する。広義にTNFファミリーと称する場合には[[Fasリガンド]]や[[CD40リガンド]]等の少なくとも19種類以上の分子が含まれる。本稿では狭義のTNFについて述べる。
 
==TNFファミリー==
125行目:
[[Image:TNFa Crystal Structure.rsh.png|thumb|170px|TNF-αの構造。]]
 
TNF-αはマウスに移植した腫瘍に対して出血性壊死を誘発させる因子として[[1975年]]に単離され、[[1984年]]に遺伝子が[[クローニング]]された。TNF-αは分子量25k[[ドルトン (単位)|Da]]の前駆体タンパク質である膜結合型TNF-α(mTNFα)として産生されるが、TNF-α変換酵素(TACE)により細胞外に存在する[[カルボキシル基]]側末端[[タンパク質ドメイン|ドメイン]]の切断を受けて17kDaの可溶性TNF-α(sTNFα)タンパク質(157アミノ酸残基)となる。mTNF-αとsTNF-αのいずれも活性を有する。さらにTNF-αは51kDaのホモ3量体を形成し、血液中を循環する。しており、TNF-αは主に活性化された[[マクロファージ]]によって産生される他、[[単球]]、[[T細胞]]や[[NK細胞]]、[[平滑筋]]細胞、[[脂肪細胞]]も産生源となる。
 
=== 受容体およびシグナル伝達 ===
[[画像:NFKB-pathway.png|230px|thumb|TNF-αが転写因子である[[NF-κB]]を活性化するシグナルの模式図。]]
 
TNFの生理作用は、[[赤血球]]を除いた生体内の細胞に広く存在しているTNF受容体(TNFR)を介して発現する。TNFRにはTNFR1(p60)とTNFR2(p80)が存在するが、TNFR2に対する親和性がTNFR1に対するものモノよりも5倍高いことが報告されている<ref>Tartaglia LA and Goeddel DV.(1992)"Two TNF receptors."''Immunol.Today.'' '''13''',151–3. PMID 1322675</ref>。TNFRもTNFと同様に3量体を形成して存在しており、TNFR1は全身の多くの組織に構成的に発現しているのに対して、TNFR2は何らかの刺激を介して免疫系の細胞に発現する誘導型の受容体である。TNFRファミリーは[[神経成長因子]]受容体(NGFR)と細胞外領域に相同性を有し、TNF/NGF受容体ファミリーとも呼ばれる。TNFR1とTNFR2の構造上の主な違いはデスドメインと呼ばれるドメイン構造の有無であり、デスドメインは他のデスドメインを有する分子との結合に関与している。TNFR2においては細胞内に存在するデスドメインを欠損している一方、TNFR1はデスドメインを介していくつかの[[シグナル伝達]]分子とDISCと呼ばれる複合体を形成し、タンパク質分解酵素である[[カスパーゼ]]8の活性化を介して自発的な細胞死([[アポトーシス]])を誘導している。また、TNFRを介した[[NF-κB]]あるいは[[AP-1]]などの[[転写因子]]の活性化は下記に示すような生理作用の一部の発現に関与しており、NF-κBの活性化はアポトーシスに対して抑制的に働く。これらの転写因子の活性化を介した作用はデスドメインの有無に関わらず引き起こされるため、TNFR1とTNFR2に共通している。TNFR2の細胞死への関与は[[2008年]]現在の段階では未だ議論が分かれるところである。また、細胞膜上のTNFRの他にも可溶性TNFRと呼ばれる分子が尿中から発見されており<ref>Engelmann H, Novick D and Wallach D.(1990)"Two tumor necrosis factor-binding proteins purified from human urine. Evidence for immunological cross-reactivity with cell surface tumor necrosis factor receptors."''J.Biol.Chem.'' '''265''',1531-6. PMID 2153136</ref>、これらがTNF-αおよびTNF-βと結合して生理作用の発現に寄与していることが知られている。
 
=== 生理活性 ===
162行目:
== 出典 ==
{{参照方法|section=1|date=2018年10月}}
* 谷口 克、宮坂 昌之 編『標準免疫学 第2版』医学書院 2002年 ISBN 4260104527
* 今堀 和友、山川 民夫 編集 『生化学辞典 第4版』東京化学同人 2007年 ISBN 9784807906703
* 笹月 健彦 監訳『免疫生物学 原書第5版』南江堂 2003年 ISBN 4524235221
* 宮園 浩平、菅村 和夫 編『BioScience 用語ライブラリー サイトカイン・増殖因子』羊土社 1998年 ISBN 4897062616
* 本郷 利憲、廣重 力、豊田 順一 監修『標準生理学 第6版』医学書院 2005年 ISBN 9784260101370
 
{{Medical-stub}}