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'''李徴'''(りちょう)は、唐の{{仮リンク|張読 (唐)|zh|張讀 (唐朝)|label=張読}}の『{{仮リンク|宣室志|zh|宣室志}}』にある[[唐代]]に書かれた[[伝奇小説]]の一編「李徴」の[[登場人物]]。後代に、「李徴」を元として脚色された「人虎伝」にも登場する。また、「人虎伝」をテキストとした[[中島敦]]の「[[山月記]]」においても登場する
李徴は、「[[旧唐書]]」や「[[新唐書]]」をはじめとする[[正史]]などの史書に名がみえないが、「李徴」に登場する袁傪(えんさん)は、同時代に同名、同官職の人物がいるため、李徴のモデルとなった人物が存在した可能性はある
== 概要 ==
以下、『宣室志』に沿って解説する。
[[本貫]]は隴西(現在の[[甘粛省]]付近)。[[唐]]の[[
1年後、李徴の友人である袁傪が[[監察御史]]に就任し、[[嶺南 (中国)|嶺南]]に赴任する途中で[[虎]]に出くわす。虎は姿を茂みに隠しながら袁傪に話しかけ、袁傪は声から李徴であることを見抜く。虎は袁傪の昇進を賀し、自分が李徴であることを語る。李徴は袁傪の問いに答え、夜間に走り出した後、虎に変わり、人間を何人も食べたことを話す。また、袁傪が帰路に自分に会うことになったら、今回のことを忘れ袁傪を襲うであろうことも話す。李徴は袁傪に妻子の世話と、自分が死んだことを告げるように願い、20首ほどのかつて作った漢詩を読み上げる。袁傪は下僕に書き記させ、その文理の高遠さに感嘆した。
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袁傪は李徴の子に財貨を贈り、上京してきたその子に真実を話す。袁傪は、李徴の妻子を養った。のちに袁傪は[[兵部]][[侍郎]]にまで昇進した。
== 「李徴」の位置付け ==
中国の古来から数多くの作品が伝わる人間が虎に変化する説話の一つであり、そのすぐれた作品である
大室幹雄によると、人間が虎に変化する物語には二つの類型がある。一つは、人間の身心に内発する何らかの変化が虎への変身を惹き起こす、内発的な動機による変態で、これを狂気型とする。もう一つは、当人の意識とかかわりなく、忽然と変身が人の身、ついでに心に生起してしまう、外発的な動機による変態で、これを憑依型とする。この分類によると、「李徴」は、狂気型に属する
登場人物の李徴は、官職を辞めた後は、唐代に多く見られた、名声や学問、詩文の才能を元手に地方の高官の有力者に生活の糧を求めて放浪する知識人の一人であり、([[李白]]、[[杜甫]]も同様の行為を行っている)、当時としては決して特別な存在ではなかった。
「李徴」では虎に変化した理由は明確ではないが、このような心理的負担が李徴の病と発狂の原因と推測される
== 袁傪 ==
「旧唐書」、「新唐書」に兵部侍郎の地位にあった袁傪という名の人物が存在する。
[[宝応]]2年([[763年]])、御史中丞であった袁傪は、台州で20万の衆を率いて反乱を起こしていた草賊の[[袁晁]]の討伐を命じられる。袁傪は、[[王栖曜]]、[[李自良]]らを部下として、浙東にて、浙江地域を支配していた袁晁を破る。袁晁は[[李光弼]]によって捕えられ、反乱は鎮圧され、浙江地域は奪回された。
[[大暦]]12年([[777年]])には、兵部侍郎に就任しており、[[宰相]]である[[元載]]の誅殺につながる事件の処理にあたっている。大暦14年([[779年]])、[[吏部]]
また、「唐国史補」によると、袁晁を破った時に、袁晁に任じられた公卿を数十人捕えた。地方の州県では、彼らに拘束具をつけ、都に送ろうとしたが、「こんな悪百姓に、煩わせられることもない」と言って、彼らを鞭で叩いて追い出したというエピソードが残っている。
== 「人虎伝」 ==
『宣室志』の「李徴」は脚色された上で、唐の李景亮の作「人虎伝」として人口に流布した。[[元 (王朝)|元]]代以降に「人虎伝」の名は確認でき、[[明]]末[[清]]初には現在に残る形が出来上がっている。
現在の日本で読まれる「人虎伝」には2種類の系統がある
「李徴」からの主な改変箇所として、
*李徴が虎に変わってからも、はじめは生き物を食べることをためらったが、飢えに迫られて、獣を食べ始め、獣に避けられてから、飢えのため、人間の女性を食べたことが李徴から語られる。
*袁傪が李徴が飢えているならと、[[馬]]を一頭贈ろうと話し、李徴が断る。袁傪が[[羊]]の肉を贈ると提案し、李徴が立ち去る時に置いて欲しい、と語る。
*李徴の唄った詩が追加される。これは、そのまま「山月記」で採用される
*李徴が後家とつきあい、家人に気づかれ、家に火をつけて、家人を焼き殺して逃亡したことが李徴の口から語られる
ことが挙げられる。
== 脚注 ==
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<references/> == 伝記資料 ==
* 張読『宣室志』
* 『太平広記』
* 李景亮(?)「人虎伝
* 『[[旧唐書]]』
* 『[[新唐書]]』
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* [[志村五郎]]『中国説話文学とその背景』:([[ちくま学芸文庫]]、2006年) ISBN 448009007X
* [[大室幹雄]]『パノラマの帝国―中華唐代人生劇場』:([[三省堂]]、1994年) ISBN 4385355991
* [[溝部良恵]]
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