「筆記体」の版間の差分

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Bechicc (会話 | 投稿記録)
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[[ファイル:Letter.posted.in.1894.arp.jpg|thumb|250px|ラテン文字の筆記体で書かれた手紙。1894年の日付がある]]
'''筆記体'''(ひっきたい)、ラテン系言語などにみられる[[書体]]のひとつである一種
 
[[文字]]はもともと筆記で書かれるものからはじまり、その後さまざまな書体が開発されるという発展の様式をたどった。その中で筆記で書くのに適した[[一筆書き]]のように文字を続けて書く手書き文字、あるいはそれに似せた印刷用の書体([[活字]]やコンピュータ用の[[フォント]]など)のことを「筆記体」と呼ぶ。日本において筆記体と言えば通常は[[ラテン文字]]のものを指し、フォントとして「イタリック」「カッパープレート」「カーシヴ・スクリプト」「[[ツァッフィーノ]]」などがある。
 
== ラテン系言語 ==
日本語文字などの漢字圏において同様のものとしては「[[行書体]]」「[[草書体]]」などがある。英語ではそれぞれ「'''セミ・カーシヴ'''(''[[semi cursive]]''、'''準筆記体'''の意)」「'''カーシヴ'''(''[[:en:cursive|cursive]]''、'''筆記体'''の意)」と呼ばれる。一方、中国語圏ではラテン文字の筆記体を「手写体」({{繁体字|手寫體}}、{{簡体字|手写体}})と呼ぶが「手写体」自体は[[篆書体]]や[[隷書体]]、[[楷書体]]などの美術的な書体を指す。([[:zh:手写体|中国語版]]を参照)
=== ラテン文字 ===
[[ラテン文字]]における筆記体(Cursive style)は各単語内のすべての文字を連結させ、一本の複雑な筆線で記述する筆記の形式である。[[イギリス]]では「joined-up writing」、[[オーストラリア]]では「running writing」と呼ばれている。筆記体は、手書き文字と活字の折衷である[[ブロック体]]や[[活字]]体とは異なるものであるとされている。
 
==== ラテン文字歴史 ====
[[ラテン文字]]における筆記体(Cursive style)は各単語内のすべての文字を連結させ、一本の複雑な筆線で記述する筆記の形式である。[[イギリス]]では「joined-up writing」、[[オーストラリア]]では「running writing」と呼ばれている。筆記体は、手書き文字と活字の折衷である[[ブロック体]]や[[活字]]体とは異なるものであるとされている。
=== 歴史 ===
[[ファイル:United_States_Declaration_of_Independence.jpg|right|thumb|250px|[[アメリカ独立宣言]]。本文は筆記体による]]
[[ファイル:Spencerian example.jpg|right|thumb|250px|19世紀半ばからタイプライターが普及する1925年ごろまでアメリカで使われた筆記体・[[スペンセリアン]](Spencerian)。ビジネス文書の事実上の標準的な書体だった]]
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一方、[[数式]]を手書きする場合は、今でも筆記体を用いることが多い。特に[[l]]、[[o]]、[[q]]、[[x]]は手書きのブロック体ではそれぞれ[[1]]、[[0]]、[[9]]、[[×]]と区別し難いので、一般に筆記体で書く。
 
==== 筆記法 ====
[[ファイル:Cursive.svg|right|thumb|250px|筆記体によるラテン文字の大文字と小文字の例]]
筆記体による[[小文字]]の大部分は印刷やタイプライターによる小文字、特にイタリック体の小文字に非常によく似ている。ただし、筆記体やブロック体では「'''a'''」の上の部分のフックや円を2つ縦に並べた「'''g'''」は基本として使用しない。正確な文字の形は筆記体の形式により異なっている。いくつかの筆記体では、「'''f'''」は交差する横棒の代わりに2つの円で書かれる。また、特にフランス式では「'''p'''」は「'''n'''」のように下の部分を離したままで書かれ場合によっては上の部分まで離し「'''p'''」が単純な線に見えるような形で書かれる。「'''r'''」はしばしば中世の「[[:en:R rotunda|半分の'''r''']]」に由来する字体で書かれる。また、「'''z'''」には尻尾が付けられる。これも中世の筆記法に由来する。他の小文字は概ね同じ字体のままで伝わっているが、18世紀のローマ字体の小文字「'''w'''」は今日使われている「'''n'''」に「'''v'''」を繋げたような形をしている。また当然ながら、「[[長いs|長い'''s''']]」は使われない(但しドイツ式の筆記体では用いられる場合もある)。
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18世紀から19世紀半ばまでの手書きの筆記体は、18世紀の版画の見出し文字に使用されていた、より美術的な筆記体[[カッパープレート]](Copperplate)とは異なっていた。カッパープレートでは小文字体の[[アセンダ]]や[[ディセンダ]]が太い実線で書かれるのに対し、筆記体では細い輪で書かれる。これは、事務で使用するインクを節約するためであったと考えられる。
 
=== 筆記体の弊害 ===
[[File:Kapital manuskript.jpg|thumb|260px|[[カール・マルクス]]直筆の[[資本論]]草稿]]
筆記体は[[悪筆|読み取りが難しくなりがち]]である。たとえばiとtはその点や横棒をあとで書き足すため、それがずれてしまって読めないのがよく見かけられる。
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たとえば小文字のg、y、zは間違われやすい。この誤読に起因して、しかもその間違いが固定されてしまった例として[[ヴォイツェック]]が[[ヴォツェック]]になった例(yがzに)などがある。
 
=== 教育課程における筆記体 ===
==== アメリカ ====
全米共通学力基準(コモン・コア)は、多くの州で幼稚園から高等学校までの標準カリキュラムとなっているが、そこにはブロック体の手書きとキーボードの使い方は盛り込まれているが筆記体については扱われていない<ref name="AFP2013">[http://www.afpbb.com/articles/-/3002889 IT時代に筆記体を学ぶ価値とは、米で議論沸騰] AFP、2013年11月13日。</ref>。
 
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IT時代にはキーボードや携帯端末での文字入力が主で筆記体をカリキュラムに盛り込む意義は小さいとする意見がある<ref name="AFP2013" />。一方で筆記体の書き方を習得した児童は綴りの正確性や構文の読み取りの能力が高いという調査もある<ref name="AFP2013" />。
 
==== フランス ====
フランスでは幼稚園の課程で[[アルファベット]]の筆記体を学ぶことが多い<ref>[http://www.afpbb.com/articles/-/2859488 ツイッターで文字と書き言葉を学ぶ、フランスの幼稚園] AFP、2012年2月21日。</ref>。
 
==== 日本 ====
日本においては、[[第二次世界大戦]]後の1947年(昭和22年)に、9年間の[[義務教育]]のうち後期3年間を担う[[中学校|新制中学校]]が設置されて、選択科目として「外国語」(英語)が置かれた。同年に指導の手引きとして[[文部省]]が定めた「[[学習指導要領]]・英語編(試案)」には、「大文字の筆記体」「小文字の筆記体」の「習字」を第7学年(新制中学校の第1学年)の終わりに指導することとされた<ref>文部省「学習指導要領 英語編(試案)昭和22年度」、[http://www.nier.go.jp/guideline/s22ejl/chap7.htm 第七章 第七学年の英語科指導]、国立教育政策研究所学習指導要領データベース。</ref>。
 
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以上のように、1990年代初頭以降、中学校の外国語で筆記体が取り上げられることは急速に減って行ったため、同年代以降に中等教育を受けた人は、筆記体の読み書きをすることが少なくなっている。
 
== 非ラテン系言語 ==
=== アラビア文字 ===
アラビア文字には活字体と筆記体の区別はない<ref>下村 佳州紀「アラビア語学の成果とアラビア語教育の連携」名古屋外国語大学論集(第3号)2018年</ref>。ただし、[[ルクア体]]がある<ref>[http://www.flang.keio.ac.jp/files/kiyo_14th.pdf 榮谷 温子「日本で刊行されているアラビア文字入門書」慶應義塾 外国語教育研究(第14号)2017年] [[慶應義塾大学]]外国語教育研究センター、2019年6月27日閲覧。</ref>。
 
=== 歴史漢字 ===
日本語文字などの漢字圏において同様のものとしては「[[行書体]]」「[[草書体]]」などがある。英語ではそれぞれ「'''セミ・カーシヴ'''(''[[semi cursive]]''、'''準筆記体'''の意)」「'''カーシヴ'''(''[[:en:cursive|cursive]]''、'''筆記体'''の意)」と呼ばれる。一方、中国語圏ではラテン文字の筆記体を「手写体」({{繁体字|手寫體}}、{{簡体字|手写体}})と呼ぶが「手写体」自体は[[篆書体]]や[[隷書体]]、[[楷書体]]などの美術的な書体を指す。([[:zh:手写体|中国語版]]を参照)
 
== ギャラリー ==