「類 (アクセント)」の版間の差分

系列別語彙を追加するなど、改稿
(→‎品詞によらない類別: 助詞を付ける、同じ型の部分の統合、番号の削除)
(系列別語彙を追加するなど、改稿)
'''類'''(るい)または'''アクセント語類'''(アクセントごるい)は、古い文献および現代方言の比較により、[[日本語]]諸[[方言]]の共通祖先([[祖語]])に存在したと推定される、[[アクセント]]の対立グループ<ref name="uwano2006-2-3">上野(2006), pp.2-3.</ref><ref name="kibe2019-2">木部(2019), p.3.</ref>。日本語のアクセント体系は方言により異なっているが、規則的な対応関係があり、祖語からの規則的な変化により現代方言のアクセントが成立したと考えられている。各類に所属する語を、'''類別語彙'''(るいべつごい)と言う<ref name="uwano2006-2-3"/><ref name="kibe2019-2"/>。
{{脚注の不足|date=2017-12}}
'''類'''(るい)または'''語類'''(ごるい)は、[[日本語]]に古くからある[[語]]を、[[アクセント]]に従って分類したもの。古い文献に記録されたアクセントおよび現代[[方言]]のアクセントの比較によって、日本語[[祖語]]に存在したと推定されるアクセントの対立グループ<ref>上野(2006)、3頁。</ref>。[[日本語の方言のアクセント]]の研究などに用いられる。現代の日本語諸方言のアクセントは、祖語アクセントと一定の対応関係があり、同じ類に属する語同士は同じアクセントになる傾向がある。
 
現代方言の単語のアクセントは地方によって異なるが、どの単語がどの単語と同じアクセントになるかにはほぼ規則的な対応がみられる<ref>『岩波講座 日本語 11 方言』131頁。</ref>。たとえば、二拍名詞第三類の「池」「花」「髪」は、東京では「い'''け'''が」「は'''な'''が」「か'''み'''が」と2拍目を高く発音するが('''太字'''は高く発音する部分)、京都ではいずれも「'''い'''けが」「'''は'''なが」「'''か'''みが」と1拍目を高く発音する。また二拍名詞第五類の「雨」「声」「春」は、東京では「'''あ'''めが」「'''こ'''えが」「'''は'''るが」と1拍目を高く発音するが、京都ではいずれも「あ'''め'''が」「こ'''え'''が」「は'''る'''が」と2拍目が高く発音され、このような規則的な対応は日本全国の方言にある。
 
== 概説 ==
[[日本語の方言]]の単語のアクセントは地方によって異なるが、どの単語がどの単語と同じアクセントになるかにはほぼ規則的な対応がみられる<ref>『岩波講座 日本語 11 方言』, p.131.</ref>。たとえば2拍(2[[モーラ]])で構成される[[名詞]]のうち、「池」「花」「髪」は、東京では「い'''け'''が」「は'''な'''が」「か'''み'''が」と2拍目を高く発音するが('''太字'''は高く発音する部分)、京都ではいずれも「'''い'''けが」「'''は'''なが」「'''か'''みが」と1拍目を高く発音する<ref>平山(1960), pp.34-39.</ref>。また「雨」「声」「春」は、東京では「'''あ'''めが」「'''こ'''えが」「'''は'''るが」と1拍目を高く発音するが、京都ではいずれも「あ'''め'''が」「こ'''え'''が」「は'''る'''が」と2拍目が高く発音される<ref>平山(1960), pp.40-41.</ref>。このような規則的な対応関係は日本全国の方言にある。
日本語のアクセントの歴史については、京都のアクセントの記録が[[平安時代]]後期([[院政時代]])から残っている。日本語祖語アクセントは平安時代京都アクセントに近い体系を持っていたと考えられており、当時同じアクセントだった語同士をまとめたものが類である。たとえば二拍名詞の類は第一類から第五類まであり、院政時代の京都アクセントでは、第一類が高高、第二類が高低、第三類が低低、第四類が低高、第五類が低降と発音された<ref>金田一春彦『金田一春彦著作集第七巻』376頁、377頁、412頁。</ref><ref>秋永一枝『日本語音韻史・アクセント史論』笠間書院、2009年、92頁、表3。</ref>。また、動詞と形容詞は拍数に関わらず、原則として二つの類に分かれていた。
 
日本語のアクセントの歴史については、京都のアクセントの記録が[[平安時代]]後期([[院政時代]])から残っている。院政時代の京都アクセントでは、二拍名詞には「高高」「高低」「低低」「低高」「低降」という5種類の主要な型があった<ref>『岩波講座 日本語 5 音韻』, pp.388-389.</ref><ref>秋永(2009), p.92, 表3.</ref>。また、動詞と形容詞は拍数に関わらず、原則として2種類の型に分かれていた。
 
こうした現代方言や古文献に記録されたアクセントの比較から、アクセントが変化するときには、同じアクセントの語はそろって同じ方向へ変化を起こしたことが分かる<ref>『岩波講座 日本語 11 方言』, pp.138-140.</ref>。たとえば、院政時代の京都アクセントで「低低」であった「池」「花」「髪」等の語は、現代京都で「高低」、東京で「低高」となっている。[[金田一春彦]]は、諸方言で同じ型に属している語同士を同じ「類」の語と呼び、1拍名詞に3つの類、2拍名詞に5つの類、3拍名詞に7つの類を建て、当初は第一類から第七類のように呼んでいた<ref>金田一春彦・和田実(1955)「国語アクセント類別語彙表」国語学会国語学辞典編集委員会『国語学辞典』東京堂、994-997頁。</ref>が、後に3拍名詞第三類は建てられなくなった<ref>金田一(1974), pp.62-73.</ref>。
 
金田一は院政時代の京都アクセントを祖語のアクセントとみなしていた<ref>『岩波講座 日本語 11 方言』、133-134頁。</ref>が、さらに古い時代に祖語を設定する説が出ている。[[上野善道]]は、[[日本祖語]]([[琉球語]]以外の、本土日本語の祖語)のアクセントとして、1拍名詞に5類、2拍名詞に8類、3拍名詞に12類を建てている<ref>上野(2006), pp.36-38.</ref>。
 
また、[[琉球語]]では、二拍名詞の第3類、第4類、第5類が、それぞれ二つに分裂して別々の型になっている<ref>服部(1979).</ref><ref>松森(1998).</ref>。[[松森晶子]]は、琉球語の共通祖先([[琉球祖語]])では、少なくとも3つのアクセントの型があったと見て、これをA系列、B系列、C系列と呼んでいる。2拍名詞では、日本語の第1類と第2類がA系列に、第3類の大部分と第4類・第5類のそれぞれ半数がB系列に、第3類の少数と第4類・第5類の残り半数がC系列に対応している<ref>松森(2012)</ref>。
現代のアクセントには[[東京式アクセント]]や[[京阪式アクセント]]などがあるが、院政時代の京都アクセントに近い形が全国のアクセントの祖体系であり、これが各地で様々に変化して今日のような違いを生んだとする説が有力である<ref>佐藤武義『概説日本語の歴史』朝倉書店、1995年、250頁。</ref>。アクセントが変化するときには、同じアクセントの語はそろって同じ方向へ変化を起こした<ref>『岩波講座 日本語 11 方言』138 - 140頁。</ref>。たとえば、(前述のように)東京では二拍名詞の第三類は低高、第五類は高低となって院政期京都アクセントとは異なっているが、同じ類に属するほとんどの単語同士は同じアクセントのままである。また、アクセントが変化するときには、別々の類が同じアクセントに統合することがある<ref>『岩波講座日本語 11 方言』、140頁。</ref>。例えば二拍名詞では、京阪式アクセントでは第二類と第三類がともに高低となり、東京式アクセントではさらに第四類と第五類も統合した。また、動詞・形容詞では、近畿地方などで第一類・第二類の区別が失われてきている。日本各地で各類は様々に統合し、またそれぞれのアクセントは様々であるが、アクセント研究では主に、類の統合の仕方とそれぞれの類がどういうアクセントかが問題にされる。
 
== の所属別・系列別語彙 ==
語のアクセントは[[助詞]](「が」「に」「を」など)が付いた形で考える必要がある。たとえば東京アクセントでは「鼻」と「花」はどちらも「は'''な'''」と発音され、一見すると区別がないようにも見えるが、助詞を付けて考えると「(鼻)は'''なが'''」、「(花)は'''な'''が」と発音され区別がある。
 
以下ではの所属語彙と、院政時代の京都アクセント、まして広く利用されてき現代の京都・東京のアクセント金田一(1974)(通称「金田一語類」)示す基に<ref>所属語彙は、脚注のないものは『金田一春彦著作集第七巻』70(1974), pp.62-81頁より。ただし三73, 付表8.</ref>、2拍名詞の類は「形」類、「小豆」類などとされについおり、第何類という呼称『日本琉球の歴史 5 近代における系列別の流れ』134-135頁や、『日本語音韻史・アクセント史論』91頁彙も五十嵐(2016)により示した</ref><ref>京都・東京なお2拍名詞アクセントは『うち金田一春彦著作集第七巻』70-81頁および『日本(1974)と五十嵐(2016)とで所属する類が一致しない音韻史・アクセント史論』91頁によは除外してあ。</ref>。「降」は一拍内で高から低に下がることを表す。現代のアクセントでは、助詞を付けた場合のアクセントを示し、()内が助詞の高低を表す。ただ現代京都では助詞なしの場合と助詞付きの場合で高低が異なることがあるので、その場合は/を使って分けて示す。{{高線|上線}}は京都で例外のアクセントとなる語、<u>下線</u>は東京で例外のアクセントとなる語である。京都・東京のアクセントは金田一(1974)および秋永(2009)p.91による
 
=== 名詞 ===
! colspan="2" | &nbsp; !! 京都 !! 東京
|-
! 第1類 !! 子・戸
| '''こおを''' '''とおを''' || こ'''を''' と'''を'''
|-
! 第2類 !! 葉・日
| '''は'''あを '''ひ'''いを || は'''を''' ひ'''を'''
|-
! 第3類 !! 木・手
| きい'''を''' てえ'''を''' || '''き'''を '''て'''を
|}
 
;第1
:*柄・蚊・子・血・戸・帆・緒など
:*院政期京都で高高、現代京都で高高(高)、東京で低(高)
;第2
:*名・葉・日・<u>矢</u>など
:*院政期京都で高低、現代京都で高低(低)、東京で低(高)
;第3
:*絵・尾・木・酢・田・手・荷・根・火・目・湯・輪など
:*院政期京都で低低、現代京都で低高/低低(高)、東京で高(低)
 
! colspan="2" | &nbsp; !! 京都 !! 東京
|-
! 第1類 !! 顔・風
| '''かおを''' '''かぜを''' || か'''おを''' か'''ぜを'''
|-
! 第2類 !! 音・川
| '''お'''とを '''か'''わを || お'''と'''を か'''わ'''を
|-
! 第3類 !! 色・山
| '''い'''ろを '''や'''まを || い'''ろ'''を や'''ま'''を
|-
! 第4類 !! 糸・稲
| いと'''を''' いね'''を''' || '''い'''とを '''い'''ねを
|-
! 第5類 !! 雨・声
| あ'''め'''を こ'''え'''を || '''あ'''めを '''こ'''えを
|}
 
;第1
:院政期京都で高高、現代京都で高高(高)、東京で低高(高)
:*姉・飴・蟻・牛・梅・枝・海老・顔・柿・風・金(かね)・壁・君・霧・口・国・腰・此・先・酒・里・皿・品・杉・鈴・末・底・袖・其・滝・竹・棚・<u>誰</u>・筒・壺・爪・<u>どこ</u>・鳥・西・庭・布・箱・端・鼻・羽根・灰・膝・暇・紐・蓋・札(ふだ)・筆・笛・星・的・{{高線|真似}}・右・道・水・虫・桃・森・嫁・丘・甥など
:*A系列…飴・蟻・烏賊(いか)・牛・梅・枝・海老・顔・風・金(かね)・壁・傷・霧・釘・口・国・首・腰・此・先・酒・里・鯖・皿・品・杉・末・底・袖・鷹・滝・竹・棚・<u>誰</u>・壺・爪・床(とこ)・鳥・西・庭・布・箱・端・鼻・羽根・灰・髭・膝・暇・笛・蓋・札(ふだ)・筆・星・的・右・道・水・虫・桃・森・嫁など
:*院政期京都で高高、現代京都で高高(高)、東京で低高(高)
:*B系列…{{高線|真似}}など
;第二類
:*C系列…姉・柿・鈴
:*石・岩・歌・音・垣・型・川・紙・北・<u>牙</u>・串・<u>頃</u>・下(しも)・旅・度・塚・次・蔦・弦(つる)<ref name="kamei134">『日本語の歴史 5 近代語の流れ』134-135頁。</ref>・梨・<u>蝉</u>・橋・旗・肘・<u>人</u>・昼・冬・町・胸・村・雪など
:*系列不明…甥・丘・君・駒・其(それ)・紐など
:*院政期京都で高低、現代京都で高低(低)、東京で低高(低)
 
;第三類
;第2類
:*足・明日(あす)・池・犬・家・芋・色・馬・裏・鬼・親・<u>貝</u>・神・髪・{{高線|皮}}・岸・茎・草・櫛・靴・熊・組・<u>雲</u>・倉・事・米・坂・塩・潮・島・尻・谷・{{高線|玉}}・月・土・時・毒・年・波・海苔・墓・恥・花・浜・腹・晴れ・{{高線|豆}}・耳・物・山・指・弓・夢・脇・枠・綿など
:*院政期京都で低、現代京都で高低(低)、東京で低高(低)
:*A系列…石・岩・歌・音・型・紙・{{高線|殻}}・川・<u>頃</u>・度・弦・夏・橋・旗・肘・冬・胸・村・雪など
;第四類
:*B系列…町
:*跡・息・板・何時(いつ)・糸・稲・海・数・肩・角(かど)・今日・今朝・<u>下駄</u>・汁・筋・隅・空・種・<u>父</u>・罪・杖・中・何・箸・肌・針・舟・<u>他</u>・松・味噌・麦・罠など
:*系列不明…梨
:*院政期京都で低高、現代京都で低高/低低(高)、東京で高低(低)
 
;第五類
;第3類
:*秋・朝・汗・雨・鮎・蜘蛛・琴・鯉・声・猿・常・露・鍋・春・窓・前など
:*院政期京都で低、現代京都で降/低降(低)または低高(低)、東京で(低)
:*B系列…足・{{高線|穴}}・池・犬・芋・色・馬・裏・鬼・親・<u>貝</u>・{{高線|皮}}・岸・茎・草・櫛・靴・組・<u>雲</u>・倉・事・米・坂・塩・潮・島・{{高線|玉}}・月・綱・角(つの)・時・毒・年・波・海苔・墓・恥・花・腹・晴れ・{{高線|豆}}・耳・物・山・弓・夢・脇・枠・綿など
:*C系列…瓶・浜など
:*A系列…明日(あす)など
:*系列不明…家・髪・熊・尻・土・指など
 
;第4類
:院政期京都で低高、現代京都で低高/低低(高)、東京で高低(低)
:*B系列…板・稲・笠・数・肩・角(かど)・絹・錐・汁・外(そと)・側・種・肌・味噌・麦・罠など
:*C系列…跡・息・糸・海・上(かみ)・管・筋・空・乳・罪・中・何・箸・針・舟など
:*系列不明…何時(いつ)・鎌・屑・今朝・隅・杖・松など
 
;第5類
:院政期京都で低降、現代京都で低降/低降(低)または低高(低)、東京で高低(低)
:*B系列…藍・青・汗・雨・黒・鯉・白・眉・腿(もも)など
:*C系列…桶・蔭(かげ)・蜘蛛・声・猿・鍋・前・婿など
:*系列不明…秋・兄・鮎・常・春・窓など
 
==== 三拍名詞 ====
;「形」類(1
:院政期京都で高高高、現代京都で高高高(高)、東京で低高高(高)
:*いわし・漆・夫・踊り・飾り・形・かつお・かまど・着物・鎖・位・車・煙・麹・氷・今年・魚・桜・印・畳・机・隣・寝言・初め・鼻血・額・羊・埃・港・都・{{高線|昔}}・柳など
 
:*院政期京都で高高高、現代京都で高高高(高)、東京で低高高(高)
;「小豆」類(2
:院政期京都で高高低、現代京都で高低低(低)、東京で低高高(低)
:*小豆・女・毛抜き・二重・{{高線|二つ}}・{{高線|二人}}・三つ・娘・六つ・八つ・四つなど
 
:*院政期京都で高高低、現代京都で高低低(低)、東京で低高高(低)
;「頭」類(4
:院政期京都で低低低、現代京都で高低低(低)、東京で低高高(低)
:*{{高線|黄金}}・{{低線|小麦}}・さざえ・<u>力</u>・二十歳・岬など<ref>この類は『日本語の歴史5 近代語の流れ』134-135頁による。金田一の資料では類として立てられていない。</ref>
:*院政期京都で高低低、現代京都・東京ともに高低低(低)、ただし東京式アクセントの大部分の地域(外輪を除く)で低高低(低)
;第四類
:*明日・あたま・<u>うずら</u>・<u>団扇</u>・扇・男・<u>思い</u>・表・鏡・かしら・刀・<u>昨日</u>・言葉・暦・<u>境</u>・硯・宝・俵・鼓・袴・はさみ・光・響き・袋・仏など
 
:*院政期京都で低低低、現代京都で高低低(低)、東京で低高高(低)
;「命」類(5)
:院政期京都で低低高、現代京都・東京ともに高低低(低)、ただし東京式アクセントの大部分の地域で低高低(低)
:*朝日・<u>油</u>・<u>五つ</u>・<u>いとこ</u>・命・きゅうり・<u>心</u>・姿・<u>すだれ</u>・情け・なすび・涙・<u>柱</u>・箒・枕・もみじなど
 
:*院政期京都で低低高、現代京都・東京ともに高低低(低)、ただし東京式アクセントの大部分の地域で低高低(低)
;「兎」類(6
:院政期京都で低高高、現代京都で低低高/低低低(高)、東京で低高高(高)
:*うさぎ・うなぎ・蛙・<u>からす</u><ref name="kamei134"/>・きつね・虱・すずめ・背中・<u>高さ</u>・団子・ねずみ・裸・左・みみずなど
:*うさぎ・うなぎ・大人・蛙・かもめ・きつね・虱・すすき・すずめ・背中・<u>高さ</u>・団子・田んぼ・ねずみ・裸・裸足・左・雲雀・みみず・よもぎなど
:*院政期京都で低高高、現代京都で低低高/低低低(高)、東京で低高高(高)
 
;第七類
;「兜」類(第7類)
:*<u>いちご</u>・<u>後ろ</u>・蚕・兜・<u>からし</u>・<u>鯨</u>・<u>薬</u>・便り・<u>たらい</u>・椿・<u>畑</u>・病まいなど
:*院政期京都で低高低、現代京都で低高低(低)、東京で高低低(低)または低高高(高
:*いちご・後ろ・蚕・兜・からし・鯨・薬・便り・たらい・千鳥・椿・畑・<u>一人</u>・<u>一つ</u>・緑・病まいなど
 
=== 動詞 ===
 
==== 二拍動詞 ====
;第1
:院政期京都で高高、現代京都で高高、東京で低高
:*言う・行く・居る・産む・売る・置く・押す・追う・買う・貸す・聞く・着る・消す・知る・為る(する)・積む・飛ぶ・泣く・鳴く・似る・煮る・寝る・乗る・引く・踏む・焼くなど
 
:*院政期京都で高高、現代京都で高高、東京で低高
;第2
:院政期京都で低高、現代京都で低高、東京で高低
:*合う・有る・打つ・得る・書く・勝つ・来る・刺す・住む・立つ・付く・出る・取る・成る・飲む・吹く・降る・待つ・見る・読むなど
:*院政期京都で低高、現代京都で低高、東京で高低
 
==== 三拍動詞(五段活用) ====
;第1
:院政期京都で高高高、現代京都で高高高、東京で低高高
:*上がる・当たる・洗う・歌う・送る・飾る・変わる・嫌う・殺す・探す・沈む・進む・違う・使う・並ぶ・運ぶ・塞ぐ・曲がる・学ぶ・向う・笑うなど
 
:*院政期京都で高高高、現代京都で高高高、東京で低高高
;第2
:院政期京都で低低高、現代京都で高高高、東京で低高低
:*余る・急ぐ・祝う・動く・移る・起こす・落とす・思う・泳ぐ・狂う・騒ぐ・叩く・頼む・作る・届く・習う・走る・光る・防ぐ・守る・戻る・休む・許すなど
 
:*院政期京都で低低高、現代京都で高高高、東京で低高低
;「歩く」類(3
:院政期京都で低高高、現代京都で低低高、東京で「歩く」「隠す」は低高低、「はいる」「参る」は高低低<ref>『日本語の歴史5 近代語の流れ』153頁。</ref><ref>秋永(2009), p.91, 表4.</ref>
:*歩く・隠す・はいる・参るなど
:*歩く・隠す・はいる・参る
:*院政期京都で低高高、現代京都で低低高、東京で「歩く」「隠す」は低高低、「はいる」「参る」は高低低<ref>『日本語の歴史5 近代語の流れ』153頁。</ref><ref>『日本語音韻史・アクセント史論』91頁、表4。</ref>
 
==== 三拍動詞(一段活用) ====
;第1
:院政期京都で高高高、現代京都で高高高、東京で低高高
:*上げる・当てる・入れる・埋める・替える・消える・染める・告げる・抜ける・負ける・曲げる・燃える・止めるなど
 
:*院政期京都で高高高、現代京都で高高高、東京で低高高
;第2
:院政期京都で低低高 現代京都で低低高 東京で低高低
:*生きる・受ける・起きる・落ちる・下りる・覚める・過ぎる・建てる・耐える・遂げる・投げる・逃げる・晴れる・見える・分けるなど
:*院政期京都で低低高 現代京都で低低高 東京で低高低
<!--
==== 四拍動詞 ====
;第1
:*与える・慌てる・生まれる・教える・聞こえる・伝える・並べる・働く・始める・忘れるなど
:*京都で高高高高 東京で低高高高
;第2
:*集まる・覚える・数える・調べる・助ける・流れる・離れる・開ける・別れるなど
:*京都で高高高高 東京で低高高低
=== 形容詞 ===
形容詞も、動詞と同じく院政期京都は連体形のアクセントを示す。
<!--
====二拍形容詞 ====
 
====二拍形容詞 ====
;第一類
:京都で低高、東京で高低
:*濃い
:*京都・東京ともに高低
;第二類
:*無い・良い
 
:*京都で低高、東京で高低
-->
==== 三拍形容詞 ====
;第1
:院政期京都で高高降、現代京都で高低低、東京で低高高
:*赤い・浅い・厚い・甘い・荒い・薄い・遅い・重い・暗い・遠いなど
 
:*院政期京都で高高降、現代京都で高低低、東京で低高高
;第2
:院政期京都で低低降、現代京都で高低低、東京で低高低
:*熱い・痛い・多い・辛い・臭い・黒い・寒い・白い・高い・近い・強い・長い・早い・広い・深い・太い・古い・欲しい・細い・若い・悪いなど
 
:*院政期京都で低低降、現代京都で高低低、東京で低高低
<!--;
==== 四拍形容詞 ====
;第1
:*京都で高高低低、東京で低高高高
:*悲しい・優しい・宜しいなど
:*悲しい・やさしい・宜しいなど
:*京都で高高低低、東京で低高高高
;第二類
;第2類
:京都で高高低低、東京で低高高低
:*厳しい・苦しい・詳しい・親しい・涼しい・正しい・楽しい・激しい・等しいなど
 
:*京都で高高低低、東京で低高高低
-->
== 品詞によらない類別 ==
前節では品詞別に類を並べたが、アクセントの地域間の規則的対応関係は品詞に関係なく見られる。下の表に2拍語および3拍語の各類の対応関係を示す。京阪式は京都よりも古いアクセントの残る和歌山などのアクセントを示す。東京式も、甲府のアクセントを示す<ref>金田一春彦「東西両アクセントの違いができるまで」『日本の方言:アクセントの変遷とその実相』教育出版、1995年、51頁。</ref><ref>『日本語の歴史5 近代語の流れ』132-133頁、152-153頁。</ref>。
 
== 参考文献 ==
*[[秋永一枝]](2009)『日本語音韻史・アクセント史論』笠間書院、2009年、91291頁。
*五十嵐陽介(2016)「アクセント型の対応に基づいて日琉祖語を再建するための語彙リスト「日琉語類別語彙」」日本語学会『日本語学会2016年度春季大会予稿集』。
*[[上野善道]]「[http://www3.nacos.com/lsj/modules/documents/LSJpapers/journals/130_uwano.pdf 日本語アクセントの再建]」『言語研究』160、2006年。
*[[上野善道]](2006)「[http://www3.nacos.com/lsj/modules/documents/LSJpapers/journals/130_uwano.pdf 日本語アクセントの再建]」『言語研究』160。
*[[亀井孝 (国語学者)|亀井孝]]・[[大藤時彦]]・[[山田俊雄]]編『日本語の歴史 5 近代語の流れ』平凡社、2007年、132-163頁。
*[[亀井孝 (国語学者)|亀井孝]]・[[大藤時彦]]・[[山田俊雄]]編(2007)『日本語の歴史 5 近代語の流れ』平凡社、132-163頁。
*[[金田一春彦]]『金田一春彦著作集』玉川大学出版部、2003-2006年。
*[[金田一春彦]]「アクセントの分布と変遷」[[大野晋]]・[[柴田武]]編(1977)『岩波講座 日本語 11 方言』岩波書店。
**第五巻、75頁-80頁。
*金田一春彦(1974)『国語アクセントの史的研究:原理と方法』塙書房。
**第七巻、66頁-81頁、374頁-388頁。
*金田一春彦小松英雄(1977)「アクセントの分布と変遷」[[大野晋]][[柴田武]]編『岩波講座 日本語 115 方言音韻』岩波書店、1977年
*[[服部四郎]](1979)「日本祖語について」21-22、『月刊言語』。
*松森晶子(1998)「琉球アクセントの歴史的形成過程:類別語彙2拍語の特異な合流の仕方を手がかりに」日本言語学会『言語研究』114。
*松森晶子(2012)「琉球語調査用「系列別語彙」の素案」日本音声学会『音声研究』16-1。
 
== 関連項目 ==