「詩的で宗教的な調べ」の版間の差分

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'''詩的で宗教的な調べ'''(<small>[[フランス語]]</small>:''Harmonies poétiques et religieuses'') [[フランツ・リストの楽曲一覧 (S.1 - S.350)|S.173]] は、[[フランツ・リスト]]が[[1853年]]に完成させた10曲からなる[[ピアノ曲]]集である。[[アルフォンス・ド・ラマルティーヌ]]の同名の詩集に着想を得て作曲された。現在よく演奏される版は第3稿 S.173であり、単一曲である S.154、組曲としての第1稿 S.171d、第2稿 S.172a、第3稿 S.173、と最終版に至るまで再考を重ね、数多くの大きな変更・見直しと共に永く温められてきた曲であることから、彼の特別な思い入れが伝わる経緯を持っている
 
第3曲〈孤独の中の神の祝福〉及び第7曲〈葬送曲〉が有名で、しばしば単独で取り上げられる。
#:精緻でありながら気高い響きを持ち、曲集の幕開けにふさわしい。リストが宗教曲で好んで用いた[[ホ長調]]で書かれている<ref name="Howard">[[レスリー・ハワード (ピアニスト)|Leslie Howard]] (1990). ''Leslie Howard "Harmonies poétiques et religieuses"'' (CD booklet). [[ハイペリオン・レコード|Hyperion]].</ref>。
#'''アヴェ・マリア''' ''Ave Maria''
#:彼自身による同名の合唱曲より編曲<ref name="Howard" />。
#'''孤独の中の神の祝福''' ''Bénédiction de Dieu dans la solitude''
#:曲集のなか最もスケールが大きく次の第4曲と共に約15分を要する曲であり、リストの宗教的・内省的な側面を象徴する傑作であと評される<ref name="福田" />。ラマルティーヌの同名の詩おお、神よ、私を包み込むこの平安はどこから来るのか。私の心に満ちあふれる信仰はどこから来るのか…)……」が掲げられている<ref name="Ledin" />。曲は美しく瞑想的な[[嬰ヘ長調]]の主題をしばらく変容させ、軽やかな[[ニ長調]]、穏やかな[[変ロ長調]]の部分を経て、やがて回帰した最初の主題が情熱的に高揚して終わる<ref>小石忠男 『[[クラウディオ・アラウ]]:[[ピアノソナタ (リスト)|ピアノソナタ ロ短調]]』CD解説、[[フィリップス・レコード|フィリップス]]、1978年。</ref>。コーダ終結部では、突然これまで登場しなかった8小節回想シンプルなメロデ中にモテ(''Andante semplice espressivo'')が出現する(オリジナルかーフの反行型を挟みの引用なのかは不明)に消え入る
#'''死者の追憶''' ''Pensée des morts''
#:1834年の単独作品詩的で宗教的な調べが原曲。後半より、賛歌 第129番「深き淵」を用いた展開が現れ、この賛歌は、彼の未完曲であるピアノと管弦楽のための詩篇深き淵より》(未完)の」でも扱われた素材を用いているであった<ref name="Howard" />。ベートーヴェンの例があるように、この曲において、ピアノ独奏曲の楽譜であるのにかかわらず、賛歌が現れる冒頭には賛歌のラテン語歌詞が書き添えられている(下記が書き込まれている歌詞の部分)
#:
#:賛歌 第129番 "De profundis" 「深き淵」
#: De profundis clamavi, ad te Domine;  Domine, exaudi vocem meam.
#: fiant aures tuae intendentes                 
#: in vocem deprecationis meae.
#: 深い淵の底から、主よ、あなたを(次のように)呼び求めます;  主よ、この声を 聞き取ってください。  嘆き 祈るわたしの声に  耳を 傾けてください。 [[ファイル:Franz_Liszt,_Harmonies_poétiques_et_religieuses_S.173_No.4.jpg|サムネイル|賛歌 第129番「深き淵」の歌詞が付与された部分の楽譜]]
#'''主の祈り''' ''Pater Noster''
#:彼自身による同名の合唱曲より編曲<ref name="Howard" />。
#'''眠りから覚めた子供への賛歌''' ''Hymne de l'enfant à son réveil''
#:彼自身による同名の合唱曲より編曲<ref name="Howard" />。
#'''葬送曲''' ''Funérailles''
#:曲集の中ではおそらく最もよく知られた作品で、弔いの鐘を模したと言われる序奏や中間部の強烈な連続オクターブが有名<ref name="Arnold">{{Cite book |author= Ben Arnold|year= 2002|title= The Liszt Companion|publisher= Greenwood Publishing Group|pages=90-91}}</ref>。「1849年10月」との副題が掲げられておりいるがかつては[[1849年]]10月に死去した[[フレデリック・ショパン|ショパン]]への追悼曲と見られることもあった。[[1848年革命]]の余波を受けた[[ハンガリー革命 (1848年)|ハンガリー革命]]の失敗により、1849年10月にリストの知人多く処刑されたことから現在では祖国のために命を散らした者たちへの哀歌葬送曲と見なされている<ref name="福田" />。標題は複数形で”''Funérailles''”と表記されており、複数の知人にたむけられた葬送曲であるという意味以外に、同じ[[1849年]]10月に死去した[[フレデリック・ショパン|ショパン]]への葬送曲という意味を重ねられているとも見做されている。曲の構成を見ると、ショパンの葬送曲([[ピアノソナタ第2番 (ショパン)|ピアノソナタ第2番 変ロ短調 作品35 第3楽章]])と同じくショパンの[[ポロネーズ第6番 (ショパン)|'''ポロネーズ第6番変イ長調 作品53 「英雄」''']]の2作品を連想させる音楽となっている。曲の全体を通して、偶成和音により増3和音を多用することで、短調の中では悲劇的に、長調の中では幻想的に、印象的な効果を出すことに成功している
#:001 - 023 小節:前奏部。鐘の音と共に葬送の歩みが視覚的に描写され、死の悲しみが爆発する。トゥッティで悲しみの絶頂に至った後、トランペットによるファンファーレと共に葬送の会場へと歩みが進められる。
#:024 - 055 小節:葬送行進曲。低音の旋律と葬送行進曲の伴奏で静かに始められ、旋律が上声に移り高揚する。
#:056 - 108 小節:亡き人との生前の美しい思い出の回想部分。ショパンの夜想曲を彷彿とさせる中間部分。ショパンの葬送曲([[ピアノソナタ第2番 (ショパン)|ピアノソナタ第2番 変ロ短調 作品35 第3楽章]])と同じく、悲劇的な葬送曲の中間に、幸せだった時の回想を挟むという構成が採られている。旋律A(ソプラノ)、旋律B(アルト)、旋律A(ソプラノ)の構成で盛り上がる。
#:109 - 155 小節:亡き人との生前の栄光を讃えるファンファーレ。ショパンの[[ポロネーズ第6番 (ショパン)|'''ポロネーズ第6番変イ長調 作品53 「英雄」''']]の有名な中間部と非常に酷似しており、真のバス音でない和音の第5音に至る行進の伴奏形、オクターヴの連続による技巧的な伴奏パッセージ、伴奏から始まり遠くから長いクレッシェンドで近づいて来るラッパの音、3度転調で高揚する手法(「英雄ポロネーズ」と異なる種の3度転調を用いている)から、「英雄ポロネーズ」を暗示させる多くの要素が認められる。最後に、オクターヴの連続による5小節のカデンツァを経る。
#:156 - 176 小節:前奏部の後の葬送行進曲の展開。今回は最初からトゥッティで、亡き人に対する悲しみの感情の大きさを表現する。
#:177 - 184 小節:回想部分の再帰。今回は音域が更に高く、「非常に遅く」と書かれ、フェルマータを挟み、時間の流れが弛緩する。
#:185 - 192 小節:終結部。中間のファンファーレ部分を用い、短い時間で劇的なクレッシェンドをさせることで悲しみを再度露呈させ、亡失感を残して終わる。
#'''パレストリーナによるミゼレーレ''' ''Miserere, d'après Palestrina''
#:リストが[[システィーナ礼拝堂]]で聞いた[[ジョヴァンニ・ダ・パレストリーナ|パレストリーナ]]の旋律によると伝えられるが、実際にはパレストリーナによるものではない<ref name="Howard" />。
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