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化学式の H2O を{{small|<ce>H2O</ce>}} で表示
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[[ファイル:Water droplet blue bg05.jpg|thumb|250px|水面から跳ね返っていく水滴]]
[[ファイル:LightningVolt Deep Blue Sea.jpg|thumb|250px|海水]]
'''水'''(みず、{{lang-en-short|water}}、他言語呼称は[[#他言語での呼称|下記参照]])とは、化学式 '''H{{subsmall|2<ce>H2O</ce>}}O''' で表される、[[水素]]と[[酸素]]の化合物である<ref name="kojien_5">広辞苑 第五版 p. 2551 【水】</ref>。特に[[湯]]と対比して用いられ{{r|kojien_5}}、温度が低く、かつ[[凝固]]して[[氷]]にはなっていないものをいう。また、[[液体|液状のもの]]全般を指す{{r|kojien_5}}<ref group="注">エンジンの「冷却水」など水以外の物質が多く含まれているものも水と呼ばれる場合がある。日本語以外でも、しばしば液体全般を指している。例えば、[[フランス語]]では[[:fr:eau de vie|eau de vie]](オー・ドゥ・ヴィ=命の水)が[[ブランデー]]類を指すなど、eau(水)はしばしば液体全般を指している。そうした用法は、様々な言語でかなり一般的である。</ref>。
 
この項目では、H{{subsmall|2<ce>H2O</ce>}}O の意味での水を中心としながら、幅広い意味の水について解説する。
 
== 概説 ==
水は[[人類]]にとって最もありふれた[[液体]]であり、基本的な[[物質]]である。また、[[ヒト|人]]が[[生命]]を維持するには必要不可欠であり、さまざまな[[産業]]活動にも不可欠の物質である。
 
古代ギリシャでは[[タレス]]が「万物の[[アルケー]]は水」とし、[[エンペドクレス]]は[[四大元素]]のひとつで基本的な[[元素]]として水を挙げた。古代インドでも[[五大]]のひとつとされ、中国の[[五行説]]でも基本要素のひとつと見なされている。18世紀の後半まで、洋の東西を問わず人々はそうした理解をしていた。それが変わったのは、わずか200年ほど前のことであり、[[19世紀]]前半に、ドルトン、ゲイリュサック、フンボルトらの実験が行われ、アボガドロによって分子説が唱えられたことによって、H{{subsmall|2<ce>H2O</ce>}}O で表すことができる水素と酸素の[[化合物]]と理解されるようになった。(→[[#水の知識の歴史概略]])
 
常温常圧では[[液体]]で、[[透明]]ではあるが、ごくわずかに青緑色を呈している(ただし、[[重水]]は無色である)。また無味無臭である。日常生活で人が用いるコップ1杯や風呂桶程度の量の水にはほとんど色がないので、水の色は「[[無色]][[透明]]」と形容される。詩的な表現では、何かの色に染まっていないことの[[象徴]]として水が用いられることがある<ref group="注">ただし、これは[[メタファー]]であって、物理学的な言葉の使い方とは異なる。</ref>。しかし、[[海]]、[[湖]]、[[ダム]]、大きな[[川]]など、厚い層を成して存在する大量の水の[[色]]は[[青色]]に見える。このような状態で見える水の色を、日本語ではそのまま[[水色]]と呼んでいる。(→[[水の青|水の色]])
 
化学が発展してからは[[化学式]] '''H{{subsmall|2<ce>H2O</ce>}}O''' で表され、「水素原子と酸素原子は共有結合で結びついている」と理解されている。(→[[水の性質]])
 
また水は、かつて1[[キログラム|kg]]や1[[カロリー|cal]]の[[単位]]の基準として用いられていた。(→[[水の性質]])
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=== 自然科学での呼び分け ===
水の概念を自然科学的に拡張して、化学式で H{{subsmall|2<ce>H2O</ce>}}O と表現できるものをすべて広義の「水」とすれば、[[固体]]は[[氷]]、液体は'''水'''、[[気体]]は[[水蒸気]]、ということになる。
 
[[IUPAC命名法|IUPAC系統名]]は'''オキシダン''' (oxidane) であるがほとんど用いられない。また、'''一酸化二水素'''、'''酸化水素'''、'''水酸'''、'''水酸化水素'''といった呼び方をすることも可能である。(→[[水素化物]])
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[[不純物]]をほとんど含まない水を「[[純水]]」と呼ぶ(たとえば、加熱してできた水蒸気を[[凝結]]した[[蒸留水]]など)。特に純度の高いものは「[[超純水]]」という呼称もある。
 
水の化学式 H{{subsmall|2<ce>H2O</ce>}}O の[[水素]]が二つとも[[同位体]]の[[重水素]]である水を[[重水]]と呼び、化学式 D{{sub|2}}O で表す。水素の一つが重水素であり、もう一つが軽水素である水は、半重水と呼び、DHO で表す。水素の一つが[[三重水素]](トリチウム)である水は、[[トリチウム水]](または三重水素水)と呼び、HTO で表す。重水・半重水とトリチウム水を併せ、さらに酸素の同位体と水素の化合物である水も含めて、単に重水と呼ぶこともある。この広義の重水に対して、普通の水は、[[軽水]]と呼ばれる。
 
軽水と重水は[[電子状態]]が同じなので、化学的性質は等しい。しかし、質量が2倍、3倍となる水素の同位体の化合物である水では、結合や[[解離 (化学)|解離]]反応の速度などの[[物性]]に顕著な差が表れる。(→[[速度論的同位体効果]])
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=== 19世紀 ===
その後[[19世紀]]初頭、イギリスの[[ジョン・ドルトン|ドルトン]]が実験の結果、水素と酸素が重量比で1:7で化合するとし(後に正しくは1:8と判明)、1805年には[[ジョセフ・ルイ・ゲイ=リュサック|ゲイ・リュサック]]や[[アレクサンダー・フォン・フンボルト|フンボルト]]などがそれぞれ、体積比で2:1で化合することを見出した{{r|h_pedia_knowledge}}。さらに1811年に、[[アメデオ・アヴォガドロ|アボガドロ]]が[[分子説]]を唱え、その枠組みの中で水の分子がH {{subsmall|2<ce>H2O</ce>}}O と定められた。このころ(19世紀の初頭)に西欧の学者たちの水の理解が変わったと科学史家らによって指摘されており、同世紀を通して一般の人々の理解も変化していったと考えてよい<ref group="注">「共通に支持されている理論体系と矛盾する断片的な発見がいくつあっても人々の考え方の体系(理論体系)は基本的に変化せず、それが変わるのは、あくまで別の理論体系が現れた時だけである」とする考え方は、[[20世紀]]の科学哲学者[[トーマス・クーン|クーン]]が[[パラダイムシフト]]という用語を用いて提唱した。</ref>。
 
分子説の成立とともにあったという点などで、水は近代[[化学]]の発展のきっかけを作ったものである{{r|h_pedia_knowledge}}。この時期は、おおむねphilosophia([[哲学]])を母胎としてscientia([[科学]])が生まれつつあった時期と一致している。こうした新しい独特の哲学を行う人の数が徐々に増え、彼らが自分たちのことを他の哲学者から区別するためにscientist([[科学者]])という用語が[[ウィリアム・ヒューウェル|ヒューウェル]]によって[[1833年]]に造語され その使用が提唱された。