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編集の要約なし
|publisher = ONLINE Encyclopedia
|accessdate = 2011-10-12
}}</ref>, {{lang-en-short|beryllium}} {{IPA-en|bəˈrɪliəm|}})は、[[原子番号]] 4 の[[元素]]である。[[元素記号]]は '''Be'''。[[原子量]]は 9.01218。[[第2族元素]]のひとつ。
 
== 名称 ==
[[ファイル:Louis Nicolas Vauquelin.jpg|thumb|180px|ヴォークラン]]
[[ファイル:Berillo.jpg|thumb|right|200px|緑柱石]]
はじめに、[[ルイ=ニコラ・ヴォークラン]]が「グルシニウム(旧元素記号Gl, glucinium)」と名づけた。語源の glykys は、ギリシア語で甘さを意味する。これは、ベリリウム化合物が甘みを持つことにちなんでいる<ref name="Weeks">{{citation
|last = Weeks
|first = Mary Elvira
|isbn = 0-7661-3872-0}}</ref>。
 
[[1828年]]には、[[マルティン・ハインリヒ・クラプロート]]が「ベリリウム」と命名した。この名前は[[緑柱石]](beryl, [[ギリシア語]]で beryllos)に由来している。<ref>[[#yamaguchi2007|山口 (2007) 58頁。]]</ref><ref>{{cite book|和書
|title = 元素を知る事典: 先端材料への入門
|author = 村上雅人
 
== 歴史 ==
初期の分析において[[緑柱石]]と[[エメラルド]]は常に類似した成分が検出されており、この物質は[[ケイ酸アルミニウム]]であると誤って結論けられていた。[[鉱物学]]者であった[[ルネ=ジュスト・アユイ]]はこの2つの結晶が著しい類似点を示すことを発見し、彼はこれを化学的に分析するために[[化学者]]である[[ルイ=ニコラ・ヴォークラン]]に尋ねた。[[1797年]]、ヴォークランは緑柱石をアルカリで処理することによって[[水酸化アルミニウム]]を溶解させ、[[アルミニウム]]からベリリウム酸化物を分離させることに成功した<ref>{{citation
|journal = Annales de Chimie
|url = http://books.google.com/books?id=dB8AAAAAMAAJ&pg=RA1-PA155
:<chem>BeCl2 + 2K -> 2KCl + Be</chem>
 
カリウムは、当時新しく発見された方法である[[電気分解]]によってカリウム化合物より生産されていた。この化学的手法によって得られるベリリウムは小さな粒状であり、金属ベリリウムの[[地金|インゴット]]を[[鋳造]]もしくは[[鍛造]]することは出来できなかった<ref>{{cite book|和書
|title = 元素を知る事典: 先端材料への入門
|author = 村上雅人
}}</ref>。1898年、{{仮リンク|ポール・ルボー|en|Paul Lebeau}}は[[フッ化ベリリウム]]と[[フッ化ナトリウム]]の混合融液を直接電気分解することによって、初めて純粋なベリリウムの試料を得た<ref name="Weeks" />。
 
[[第一次世界大戦]]以前にも有意な量のベリリウムが生産されていたが、大規模生産が始まったのは1930年代初期からである。ベリリウムの生産量は、硬い[[ベリリウム銅]]合金および蛍光灯の蛍光体用途の需要の伸びによって、[[第二次世界大戦]]中に急速に増加した。初期の[[蛍光灯]]にはベリリウムを含有した[[オルトケイ酸亜鉛]]が使用されていたが、のちにベリリウムの有毒性が発見されたため[[ハロリン酸系蛍光体]]に置き換えられた<ref>{{citation
|chapter = A Review of Early Inorganic Phosphors
|url = http://books.google.com/books?id=klE5qGAltjAC&pg=PA98
|author1 = Kane, Raymond
|author2 = Sell, Heinz
|year = 2001}}</ref>。また、ベリリウムの初期の主要な用途のひとつとして、その硬さや融点の高さ、非常に優れた[[ヒートシンク]]性能を利用した軍用機の[[ブレーキ]]への利用が挙げられるが、こちらも環境への配慮から別の材料に代替された<ref name=Be/>。
 
== 特徴 ==
ベリリウムは[[緑柱石]]などの鉱物から産出される。緑柱石は不純物に由来する色の違いによって[[アクアマリン]]や[[エメラルド]]などと呼ばれ、[[宝石]]としても用いられる。常温常圧で安定した[[結晶構造]]は[[六方最密充填構造]](HCP)(HCP)である。単体は銀白色の金属で、空気中では表面に酸化被膜が生成され安定に存在できる。[[モース硬度]]は6から7を示し、硬く、常温では脆いが、高温になると[[展延性]]が増す。[[酸]]にも[[アルカリ]]にも溶解する。ベリリウムの安定同位体は恒星の[[元素合成]]においては生成されず、[[宇宙線による核破砕]]によって[[炭素]]や[[窒素]]などより重い元素から生成される。
 
ベリリウムは[[周期表]]の上では[[第2族元素]]に属しているが、その性質は同じ族の元素である[[カルシウム]]や[[ストロンチウム]]よりもむしろ[[第13族元素]]である[[アルミニウム]]に類似している<ref name=chitani187>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 187頁。</ref>。たとえば、カルシウムやストロンチウムは[[炎色反応]]によって発色するが、ベリリウムは無色である<ref name=chitani198>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 198頁。</ref>。そのため、ベリリウムは第2族元素ではあるが、[[アルカリ土類金属]]には含めないこともある<ref name=basic26>[[#櫻井鈴木中尾2003|櫻井、鈴木、中尾 (2005)]] 26頁。</ref>。また、ベリリウムの[[二元化合物]]の構造は[[亜鉛]]とも類似している<ref name=CW267>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 267頁。</ref>。
 
=== 物理的性質 ===
ベリリウムの常温、常圧([[標準状態]])における安定した[[結晶構造]]は[[六方最密充填構造]](HCP)(HCP)であり、その[[格子定数]]は a = 2.268 [[オングストローム|Å]]、b = 3.594 Å 594Åである<ref name=chitani199>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 199頁。</ref>。モース硬度6から7<ref>{{Cite journal
|title = Occurrence of nonpegmatite beryllium in the United States
|author = Lawrence A. Warner et al.
|journal = U.S. Geological Survey professional paper
|volume = 318
}}</ref>と第2族元素の中でもっとも硬いが、粉砕によって粉末にできるほど脆い<ref name=chitani193/>。しかしながら、高温になると[[展延性]]が増すため<ref>{{Cite book
|title = 無機化学ハンドブック
|author = 無機化学ハンドブック編集委員会
|url = http://jasosx.ils.uec.ac.jp/JSPF/JSPF_TEXT/jspf1995/jspf1995_05/jspf1995_05-389.pdf
|accessdate = 2012-01-25
}}</ref>。この用途では、400 [[セルシウス度|℃]]を下回る温度になると使用上問題となるレベルにまで[[展延性]]が低下してしまう<ref name=yoshida/>。比重は 1.816、[[融点]]は 1284 ℃1,284℃、[[沸点]]は 2767 ℃2,767℃である<ref name=chitani193/>。
 
ベリリウムの[[ヤング率]]は287 GPa 287GPaと[[鉄]]のヤング率より50 [[パーセント|%]]も高く<ref>{{Cite web|title=ベリリウム反射体要素欠陥評価法に関する検討|url=http://jolissrch-inter.tokai-sc.jaea.go.jp/pdfdata/JAEA-Technology-2011-034.pdf|publisher=日本原子力研究開発機構|page=6|accessdate=2014-08-19}}</ref>、非常に強い[[曲げ強さ]]を有している。このような高いヤング率の高さに由来してベリリウムの[[剛性]]は非常に優れており、後述の熱負荷の大きい環境における安定性も相まって[[宇宙船]]や[[航空機]]などの構造部材に利用されている。また、このヤング率の大きさと、ベリリウムが比較的低密度であるという物性が組み合わさることにより、周囲の状況に応じて変化するものの、およそ 秒速12.9 km/s キロという著しく高い音の伝導性を示す。この性質を利用して音響材料におけるスピーカーの[[振動板]]などに用いられている。ベリリウムの他の重要な特性としては、{{math|1925 J ⋅ kg{{sup-|1}} ⋅ K{{sup-|1}}}} という高い[[比熱]]および、{{math|216 W ⋅ m{{sup-|1}} ⋅ K{{sup-|1}}}} という高い[[熱伝導率]]が挙げられ、これらの物性によってベリリウムは単位重量当たりの放熱物性にもっとも優れた金属である。この放熱物性を利用した用途として[[ヒートシンク]]材料が挙げられ、電子材料などにおいて活用されている。またこれらの物性は、{{math|11.4×10{{sup-|6}} K{{sup-|1}}}} という比較的低い線形[[熱膨張率]]や1284 ℃1,284℃という高い融点も相まって、熱負荷の大きな状況下における非常に高い安定性をもたらしている<ref name=Be>{{citation
|title = Landolt-Börnstein&nbsp;– Group VIII Advanced Materials and Technologies: Powder Metallurgy Data. Refractory, Hard and Intermetallic Materials
|chapter = 11 Beryllium
 
=== 化学的性質 ===
ベリリウムの[[単体]]は[[還元]]性が非常に強く、その標準[[酸化還元電位]] E{{sub|0}} は &minus;1.85 [[ボルト (単位)|V]] である<ref>[[#charlot1974|シャルロー (1974)]] 295頁。</ref>。この標準電位の値は[[イオン化傾向]]において[[アルミニウム]]の上に位置しているため大きな化学活性が期待されるが、実際には表面が酸化物の膜(酸化被膜)に覆われて[[不動態]]化する[[不動態|、]]ため高温に熱した状態でさえも空気や水と反応しない。しかしながら、一旦いったん点火すれば輝きながら燃焼して[[酸化ベリリウム]]と[[窒化ベリリウム]]の混合物が形成される<ref name=Greenwood>{{citation
|author = N. N. Greenwood, A. Earnshaw
|year = 1997
}}</ref>。
 
ベリリウムは通常、表面に酸化被膜を形成しているため[[酸]]に対しての強い耐性を示すが、酸化被膜を取り除いた純粋なベリリウムでは[[塩酸]]や希[[硫酸]]のような[[酸化]]力を持たない酸に対しては容易に溶解する。[[硝酸]]のような酸化力を有する酸に対してはゆっくりとしか溶解しない。また、強[[アルカリ]]に対しては[[オキソ酸]]イオンであるベリリウム酸イオン (Be(Be(OH){{sub|4}}{{sup|2&minus;}}) を形成して[[水素]]ガスを発生させながら溶解する。このような酸やアルカリに対する性質はアルミニウムと類似している<ref name=CW271>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 271頁。</ref>。ベリリウムは水とも水素を発生させながら反応するが、水との反応によって生じる[[水酸化ベリリウム]]は水に対する溶解度が低く金属表面に被膜を形成するため、金属表面のベリリウムが反応しきればそれ以上反応は進行しない<ref name=chitani195>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 195頁。</ref>。
[[ファイル:Elektronskal 4.png|left|thumb|150px|ベリリウムの[[電子殻]]]]
ベリリウム[[原子]]の[[電子配置]]は [He] 2s{{sup|2}} である。ベリリウムはその[[原子半径]]の小ささに対して[[イオン化エネルギー]]が大きいため[[電荷]]を完全に分離することは難しく、そのためベリリウムの化合物は[[共有結合]]性を有している<ref name=CW269>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 269頁。</ref>。[[第2周期元素]]は原子量が大きくなるにしたがって[[イオン化エネルギー]]も増大する法則が見られるがベリリウムはその法則から外れており、より原子量の大きな[[ホウ素]]よりもイオン化エネルギーが大きい。これは、ベリリウムの[[最外殻電子]]が2s軌道上にあり、[[ホウ素]]の最外殻電子は2p軌道上にあることに起因している。2p軌道の電子は内殻に存在するs軌道の電子によって[[遮蔽効果]]([[有効核電荷]]も参照)を受けるため、2p軌道に存在する最外殻電子のイオン化エネルギーが低下する。一方で2s軌道の電子は遮蔽効果を受けないため、相対的に2p軌道の電子よりも[[イオン化エネルギー]]が大きくなり、これによってベリリウムとホウ素の間でイオン化エネルギーの大きさの逆転が生じる<ref>{{cite book|和書
|title = 物理化学II: 量子化学編
|author = 伊藤和明
}}</ref>。
 
ベリリウムの[[錯体]]もしくは錯イオンは、たとえばテトラアクアベリリウム(II)(II)イオン (Be(Be[(H{{sub|2}}O){{sub|4}}]{{sup|2+}}) やテトラハロベリリウム酸イオン (BeX(BeX{{sub|4}}{{sup|2&minus;}}) のように、多くの場合4[[配位結合|配位]]を取る<ref name=CW269/>。[[エチレンジアミン四酢酸|EDTA]] はほかの[[配位子]]よりも優先してベリリウムに配位して[[八面体形]]の錯体を形成するため、分析技術にこの性質が利用される。たとえば、ベリリウムのアセチルアセトナト錯体に EDTA を加えると、EDTA が[[アセチルアセトン]]よりも優先してベリリウムとの間で錯体を形成してアセチルアセトンが分離するため、ベリリウムを[[溶媒抽出法|溶媒抽出]]することができる。このような EDTA を用いた錯体形成においては Al{{sup|3+}} のようなほかの陽イオンによって悪影響を受けることがある<ref>{{citation
|title = Determination of a trace amount of beryllium in water samples by graphite furnace atomic absorption spectrometry after preconcentration and separation as a beryllium-acetylacetonate complex on activated carbon
|author = Okutani, T.; Tsuruta, Y.; Sakuragawa, A.
=== 化合物 ===
[[ファイル:Beryllium sulfate 4 hydrate.jpg|thumb|150px|硫酸ベリリウム]]
[[硫酸ベリリウム]]や[[硝酸ベリリウム]]のようなベリリウム[[塩 (化学)|塩]]の溶液は <chem>[Be(H2O)4]^{2+}</chem> イオンの[[加水分解]]によって酸性を示す。
: <chem>[Be(H2O)4]^2+ + H2O <=> [Be(H2O)3(OH)]^+ + H3O^+</chem>
加水分解による他の生成物には、[[二量体|3量体]]イオン <chem>[Be3(OH)3(H2O)6]^{3+}</chem> が含まれる。
 
加水分解によるほかの生成物には、[[二量体|3量体]]イオン <chem>[Be3(OH)3(H2O)6]^{3+}</chem> が含まれる。
ベリリウムは多くの[[非金属]]原子と[[二元化合物]]を形成する。無水ハロゲン化物としては、[[フッ素]]、[[塩素]]、[[臭素]]、[[ヨウ素]]との化合物が知られており、固体状態においては橋掛け結合によって[[重合体|重合]]している<ref name=CW269/>。[[フッ化ベリリウム]] (BeF{{sub|2}}) は、[[二酸化ケイ素]]のような角を共有した BeF{{sub|4}} の四面体構造を取り、[[ガラス]]状においては無秩序な直鎖構造を取る<ref name=CW272>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 272頁。</ref>。[[塩化ベリリウム]]および[[臭化ベリリウム]]は両端を共有した直鎖状の構造を取る。全ての[[ハロゲン化物|ハロゲン化]]ベリリウムは、気体の状態においては線形の[[モノマー]]分子構造を取る<ref name=CW269/><ref name = "Greenwood" />。塩化ベリリウムは金属ベリリウムを塩素と直接反応させることによって得られ、これは[[塩化アルミニウム]]と同様の製法である<ref name=chitani222>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 222頁。</ref>。
 
ベリリウムは多くの[[非金属]]原子と[[二元化合物]]を形成する。無水ハロゲン化物としては、[[フッ素]]、[[塩素]]、[[臭素]]、[[ヨウ素]]との化合物が知られており、固体状態においては橋掛け結合によって[[重合体|重合]]している<ref name=CW269/>。[[フッ化ベリリウム]] (BeF(BeF{{sub|2}}) は、[[二酸化ケイ素]]のような角を共有した BeF{{sub|4}} の四面体構造を取り、[[ガラス]]状においては無秩序な直鎖構造を取る<ref name=CW272>[[#CW1987|コットン、ウィルキンソン (1987)]] 272頁。</ref>。[[塩化ベリリウム]]および[[臭化ベリリウム]]は両端を共有した直鎖状の構造を取る。すべての[[ハロゲン化物|ハロゲン化]]ベリリウムは、気体の状態においては線形の[[モノマー]]分子構造を取る<ref name=CW269/><ref name = "Greenwood" />。塩化ベリリウムは金属ベリリウムを塩素と直接反応させることによって得られ、これは[[塩化アルミニウム]]と同様の製法である<ref name=chitani222>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 222頁。</ref>。
酸化ベリリウムは[[ウルツ鉱型構造]]を取る耐火性の白色結晶であり、金属と同じぐらい高い熱伝導率を有する。酸化ベリリウムは2種類の[[多形]]が存在し、低温型の酸化ベリリウムは熱したアルカリ溶液などに溶解するが、高温では[[相転移]]してより安定な構造となり濃硫酸に[[硫酸アンモニウム]]を加えた熱シロップのみにしか溶解しなくなる<ref name=CW271/>。他のベリリウムと[[第16族元素]]との化合物は[[硫化ベリリウム]]や[[セレン化ベリリウム]]、[[テルル化ベリリウム]]が知られており、それらは全て[[閃亜鉛鉱型構造]]を取る<ref name = "Wiberg&Holleman">{{citation
 
酸化ベリリウムは[[ウルツ鉱型構造]]を取る耐火性の白色結晶であり、金属と同じぐらい高い熱伝導率を有する。酸化ベリリウムは2種類の[[多形]]が存在し、低温型の酸化ベリリウムは熱したアルカリ溶液などに溶解するが、高温では[[相転移]]してより安定な構造となり濃硫酸に[[硫酸アンモニウム]]を加えた熱シロップのみにしか溶解しなくなる<ref name=CW271/>。ほかのベリリウムと[[第16族元素]]との化合物は[[硫化ベリリウム]]や[[セレン化ベリリウム]]、[[テルル化ベリリウム]]が知られており、それらはすべて[[閃亜鉛鉱型構造]]を取る<ref name = "Wiberg&Holleman">{{citation
|author = Wiberg, Egon; Holleman, Arnold Frederick
|year = 2001
|publisher = Elsevier
|isbn = 0123526515
}}</ref>。[[水酸化ベリリウム]]は[[両性 (化学)|両性]]を示し<ref name=CW271/>、その酸性水溶液がほかのベリリウム塩を合成する出発原料とされる<ref name = "Greenwood" />。
 
[[窒化ベリリウム]] (Be(Be{{sub|3}}N{{sub|2}}) は非常に[[加水分解]]をしやすい、高融点な化合物である。[[アジ化ベリリウム]] (BeN(BeN{{sub|6}}) および[[リン化ベリリウム]] (Be(Be{{sub|3}}P{{sub|2}}) は窒化ベリリウムと類似した構造を有していることが知られている。塩基性硝酸ベリリウムおよび塩基性[[酢酸ベリリウム]]は4つのベリリウム原子が中心の酸素イオンに配位した四面体構造を取る<ref name = "Wiberg&Holleman" />。Be{{sub|5}}B、Be{{sub|4}}B、Be{{sub|2}}B、BeB{{sub|2}}、BeB{{sub|6}}、BeB{{sub|12}} のようないくつかの[[ホウ素化ベリリウム]]も知られている。[[炭化ベリリウム]] (Be(Be{{sub|2}}C) C)は耐火性のレンガ色をした化合物であり、水と反応して[[メタン]]を発生させる<ref name = "Wiberg&Holleman" />。ケイ素化ベリリウムは同定されていない<ref name = "Greenwood" />。
 
=== 核的性質 ===
ベリリウムは、高エネルギーな[[中性子線]]に対して広い[[反応断面積|散乱断面積]]を有しており、その散乱断面積は0.01 [[電子ボルト|eV]] を上回るものに対しておよそ6 [[バーン (単位)|バーン]]である。散乱断面積の正確な値はベリリウムの結晶サイズや純度に強く依存するため実際の散乱断面積は1桁ほど低くなり、ベリリウムが効果的に[[減速材|減速]]させることのできる中性子線のエネルギー範囲0.03 eV03eV 以上のものに限られる。このため、ベリリウムは高エネルギーな[[熱中性子]]は効果的に減速させることができるものの、エネルギーの低い[[中性子線|冷中性子]]は減速させることができずに透過してしまう。この性質を利用して様々、さまざまなエネルギーを持つ[[中性子]]の中から冷中性子のみを取り出すためのフィルターとして利用される<ref>{{Cite journal
|url = http://hdl.handle.net/2115/41603
|title = ベリリウムフィルターの散乱冷中性子による透過スペクトル歪
}}</ref>。
 
ベリリウムのおもな同位体である {{sup|9}}Be (n(n, 2n) 2n)中性子反応によって1つの中性子を消費して2つの中性子を放出し、2つのアルファ粒子に分裂する。したがって、ベリリウムの中性子反応は消費する中性子よりも多くの中性子を放出して系内の中性子を増加させる。
:<chem>^9_4Be{} + \mathit{n} -> 2(^4_2He){} + 2\mathit{n}</chem><ref name ="BeMelurgy" />
 
|title = Beryllium its Metallurgy and Properties
|publisher = University of California Press
|first = Henry H|last = Hausner}}</ref>
 
=== 同位体および元素合成 ===
[[ファイル:Solar Activity Proxies.png|thumb|300px|太陽活動の変化による{{sup|10}}Be濃度変化のプロット。{{sup|10}}Be濃度を示す左側の縦軸は上にくほど値が小さくなっていることに注意]]
{{main|ベリリウムの同位体}}
ベリリウムの安定[[同位体]]は {{sup|9}}Be のみであり、したがってベリリウムは[[モノアイソトピック元素]]である。{{sup|9}}Be は恒星において[[宇宙線]]の[[陽子]]が[[炭素]]などのベリリウムよりも重い元素を崩壊させることによって生成され、[[超新星爆発]]によって宇宙中に分散する。このようにして宇宙中にチリやガスとして分散した {{sup|9}}Be は、[[分子雲]]を形成する原子の1ひとつとして[[星形成]]に寄与し、新しくできた星の構成元素として取り込まれる<ref>[[#Monica2010|Brian, Monica (2010)]] p. 58</ref>。
 
{{sup|10}}Beは、[[地球の大気]]に含まれる[[酸素]]および[[窒素]]が[[宇宙線による核破砕]]を受けることで生成される。宇宙線による核破砕によって生成したベリリウム同位体の大気中の滞在時間は[[成層圏]]で1年程度、[[対流圏]]で1か月程度とされており、その後は地表面に蓄積する。{{sup|10}}Be は[[ベータ崩壊]]によって {{sup|10}}[[ホウ素|B]] になるものの、その136万年という比較的長い[[半減期]]のために {{sup|10}}Be として地表面に長期間滞留し続ける。そのため、{{sup|10}}Be およびその娘核種は、自然界における[[土壌]]の[[侵食]]や形成、[[ラテライト]]の発達などを調査するのに利用される<ref>{{cite web
|url = http://www.sahra.arizona.edu/programs/isotopes/beryllium.html
|title = Beryllium: Isotopes and Hydrology
|publisher = University of Arizona, Tucson
|accessdate =2011-04-10
}}</ref>。また、[[太陽]]の磁気的活動が活発化すると[[太陽風]]が増大し、その期間は太陽風の影響によって地球に到達する[[銀河宇宙線]]が減少するため、銀河宇宙線によって生成される {{sup|10}}Be の生成量は太陽活動の活発さに反比例して減少する。したがって {{sup|10}}Be は、同様に宇宙線によって生成される {{sup|14}}C([[炭素14]])とともに太陽活動の変動を記録しているため、極地方の[[氷床コア|アイスコア]]中に残された {{sup|10}} Be および {{sup|14}}C の解析することで、過去の太陽活動の変遷を間接的に知ることができる<ref>{{Cite web
|url = https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-18340153/18340153seika.pdf
|archiveurl = https://web.archive.org/web/20181104182833/https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-18340153/18340153seika.pdf
}}</ref>。
 
[[核爆発]]もまた {{sup|10}}Be の生成源であり、核爆発によって発生した[[高速中性子]]が大気中の[[二酸化炭素]]に含まれる{{sup|13}}C と反応することによって生成される。これは、[[核実験]]試験場の過去の活動を示す指標のひとつである<ref>{{citation
|doi = 10.1016/j.jenvrad.2007.07.016
|year = 2008
}}</ref>。
 
半減期53日の同位体 {{sup|7}}Be もまた宇宙線によって生成され、その大気中の存在量は {{sup|10}}Be と同様に太陽活動と関係している。[[ベリリウム8|{{sup|8}}Be]] の半減期はおよそ 7 × 107×10{{sup|&minus;17}} 秒と非常に短く、この半減期の短さはベリリウムよりも重い元素が[[ビッグバン原子核合成]]によっては生成されなかった原因ともなっている<ref>{{citation
|last1 = Boyd
|first1 = R. N.
|pages = L55
|doi = 10.1086/185360
}}</ref>。すなわち、{{sup|8}}Be の半減期が非常に短いためにビッグバン原子核合成段階の宇宙において[[原子核融合|核融合反応]]に利用できる {{sup|8}}Be の濃度が非常に低く、そのような低濃度{{sup|8}}Be {{sup|4}}He と核融合して炭素を合成するにはビッグバン原子核合成段階の時間が不十分であったことに起因する。[[イギリス]]の[[天文学者]]である[[フレッド・ホイル]]は、{{sup|8}}Be および {{sup|12}}C の[[エネルギー準位]]から、より多くの時間を元素合成に利用することが可能なヘリウムを燃料とする[[恒星]]内であれば、いわゆる[[トリプルアルファ反応]]と呼ばれる反応によって炭素の生成が可能であることを示し、それによって[[超新星]]によって放出されるチリとガスから炭素を基礎とした生命の創生が可能となることを明らかにした<ref>{{citation
|url = http://books.google.com/?id=PXGWGnPPo0gC&pg=PA223
|page = 223
}}</ref>。
 
ベリリウムのもっとも内側の電子は[[化学結合]]に関与することができるため、{{sup|7}}Be の[[電子捕獲]]による崩壊は、化学結合に関与することのできる[[原子軌道]]から電子を奪うことによって起こる。その崩壊確率はベリリウムの電子構成に大部分を依存しており、核崩壊においてまれなケースである<ref>{{Cite web
|url = http://math.ucr.edu/home/baez/physics/ParticleAndNuclear/decay_rates.html
|title = How to Change Nuclear Decay Rates
}}</ref>。
 
既知のベリリウム同位体のうち、もっとも半減期が短いものは[[中性子放出]]によって崩壊する{{sup|13}}Be であり、その半減期は2.7 × 107×10{{sup|&minus;21}} 秒である。{{sup|6}}Be もまた非常に半減期が短く、5.0 × 100×10{{sup|&minus;21}} 秒である<ref name=crc>Hammond, C. R. "Elements" in {{RubberBible86th}}</ref>。[[エキゾチック原子核]]である {{sup|11}}Be および {{sup|14}}Be は、中性子が[[原子核]]の周りを周回する[[中性子ハロー]]を示すことが知られている<ref>{{citation
|doi = 10.1146/annurev.ns.45.120195.003111
|title = Nuclear Halos
}}</ref>。
 
なお、原子番号が偶数で、安定同位体が1つしかない元素はベリリウムだけである<ref>[[#kenneth2009|Kenneth (2009)]] p. 151</ref>。通常、原子番号が20以下の元素においては、[[ベーテ・ヴァイツゼッカーの公式|ベーテ・ヴァイツゼッカーの質量公式]]のペアリング項に現われるように、陽子と中性子が偶数であるものは奇数のものと比較して[[質量欠損|結合エネルギー]]が大きく安定であるのに加え、対称性項に現われるように陽子数と中性子数が同数のものほどのため安定となるが、陽子数および中性子数がともに4である {{sup|8}}Be は例外的に不安定である<ref>{{Cite web
|url = http://www.th.phys.titech.ac.jp/~muto/lectures/INP02/INP02_chap03.pdf
|title = 原子核物理学概論 平成14年度講義資料 第3章 質量公式
|publisher = 東京工業大学 武藤研究室
|accessdate = 2011-10-13
}}</ref>。これは、{{sup|8}}Be の崩壊生成物である {{sup|4}}He が[[魔法数]]を取っているため非常に安定であることによる。
 
== 分析 ==
ベリリウムの性質は[[アルカリ土類金属]]よりも[[アルミニウム]]などと類似しているため、ベリリウムの分析方法はアルミニウムや鉄、[[クロム]]、[[希土類元素]]などと同一のグループとして扱わる。このようなグループは[[アンモニア]]によるアルカリ性の条件において[[水酸化物]]の[[沈殿]]を生じることから[[アンモニア属]]と呼ばれる<ref>[[#charlot1974|シャルロー (1974)]] 287頁。</ref>。
 
=== 定性分析 ===
ベリリウムはアルカリ性の状態で3, 5, 7, 2', 4'-ペンタヒドロキシフラボン(モリン)と反応させることで黄色の[[蛍光]]を観察することができるため、この反応を利用して[[定性分析]]を行うことができる。この蛍光は日光ではあまり発色しないため、発色を観察するためには[[紫外線]]の照射を行う。このベリリウムとモリンとの反応を阻害するようなイオンが共存していなければ、1 [[ppm]]の濃度でも十分に強い発色を観察することができるほどに分析感度が高く、この方法での検出限界は0.02 ng (1002ng(10{{sup|&minus;9}} g) g)である<ref name=charlot297>[[#charlot1974|シャルロー (1974)]] 297頁。</ref><ref name=WHO12>[[#WHONIHS2001|WHO, NIHS (2001) 12頁。]]</ref>。モリンは[[リチウム]]や[[スカンジウム]]、大量の[[カルシウム]]や[[亜鉛]]などとも反応して蛍光を発するため、これらのイオンが共存しているとベリリウムの検出を阻害するが、その発光強度は弱いため通常は問題とならない。また、カルシウムは[[ピロリン酸]]、亜鉛は[[シアン化物]]を加えることによってそれらの元素とモリンとの反応を抑制することができる<ref name=charlot297/>。
 
=== 定量分析 ===
ベリリウムはアンモニアによって水酸化物の沈殿を生じるため、これを利用して[[重量分析]]を行うことができる<ref name=katou100>[[#katou1932|加藤 (1932)]] 100頁。</ref>。この水酸化物の沈殿は [[水素イオン指数|pH]] 6.5 から 10 までの範囲で生じ、アンモニア添加量が過剰になり pH が高くなりすぎると水酸化物の沈殿が再溶解してしまう<ref>[[#charlot1974|シャルロー (1974)]] 296頁。</ref>。得られた水酸化物を[[濾過]]、洗浄したあと、強熱することで水酸化ベリリウムを酸化ベリリウムとし、その重量を計量することでベリリウム濃度が分析される。この方法を用いる場合、分析試料の溶液中に[[炭酸塩]]もしくは[[炭酸ガス]]が含まれると、水酸化ベリリウムとして沈殿せずに炭酸ベリリウムとして溶液中に残ってしまうため分析結果に誤差が生る原因となる。また、沈殿の洗浄が不十分で[[塩化物]]が残留していると、強熱時に[[水酸化ベリリウム]]と反応して[[塩化ベリリウム]]となって[[揮発]]してしまうため、こちらも誤差の原因になる<ref name=katou100/>。鉱石中のベリリウムの分析などの多成分中のベリリウムを分析する際には、アルミニウムや鉄などの成分がベリリウムと同様の条件で水酸化物の沈殿を生成するため、前処理を行いこれらの元素を分離する必要がある<ref>[[#katou1932|加藤 (1932)]] 102頁。</ref>。通常用いられる方法としては、一旦いったん不純物を含んだ水酸化物の沈殿を生成させ、その水酸化物を[[炭酸水素ナトリウム]]で処理しベリリウムを水溶性の炭酸塩として水に溶解させることで鉄やアルミニウムから分離する方法が用いられる<ref>[[#katou1932|加藤 (1932)]] 101、104頁。</ref>。また、ケイ素を多く含む場合は[[炭酸ナトリウム]]を用いたアルカリ溶融法が用いられる<ref>[[#katou1932|加藤 (1932)]] 104頁。</ref>。このような古典的手法のほか、イオン交換膜法や水銀電極を用いた[[電気分解]]などの方法も利用される<ref name=WHO12/>。
 
溶液中の微量のベリリウムの分析には電気炉加熱[[原子吸光|原子吸光光度法]] (AAS) (AAS)もしくは[[誘導結合プラズマ|誘導結合プラズマ発光分析法]] (ICP(ICP-AES)AES)、誘導結合プラズマ質量分析法 (ICP(ICP-MS) MS)が用いられる。AAS の吸収波長は234.9 [[ナノメートル|nm]] であり、ICP-AES の発光波長は313.042 nm042nm が用いられる。AAS では試料溶液は[[塩酸]]もしくは[[硝酸]]で[[酸性]]に調整し、ICP-AES および ICP-MS では硝酸で酸性に調整して分析を行う。[[海水]]のようなほかの塩類を多く含む試料を測定する場合には、EDTA およびアセチルアセトンを用いて[[溶媒抽出法]]によりベリリウムを分離する<ref>{{Cite web
|title = 要調査項目等調査マニュアル(水質、底質、水生生物)
|url = http://www.env.go.jp/water/chosa/h12-12/401.pdf
|year = 2000
|accessdate = 2011-12-23
}}</ref>。もっとも感度の高いベリリウムの分析手法としては、トリフルオロアセチルアセトンを用いて揮発性のベリリウム錯体として[[ガスクロマトグラフィー]]を用いて分析する方法が挙げられ、検出限界0.08 pg (1008pg(10{{sup|&minus;12}} g) g)という分析精度が1971年に報告されている<ref name=WHO1213>[[#WHONIHS2001|WHO, NIHS (2001) 12-13頁。]]</ref>。
 
== 分布 ==
[[ファイル:Beryllium OreUSGOV.jpg|thumb|ベリリウム鉱石]]
ベリリウムは[[宇宙]]において非常にまれな元素で、宇宙全体の平均濃度の推定値は重量濃度で1 ppb(101ppb(10億分の1)であり、[[ニオブ]]より原子量の小さい元素の中ではホウ素と並んでもっとも存在率が小さい<ref>{{citation
|url = http://www.webelements.com/periodicity/abundance_universe/ |title=Abundance in the universe
|work = Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK
|publisher = WebElements
|accessdate = 2011-09-19
}}</ref>。[[太陽]]内部でも重量濃度0.1 ppb1ppbまれであり、[[レニウム]]と同程度の存在量である<ref>{{citation |url = http://www.webelements.com/periodicity/abundance_sun/
|title = Abundance in the sun
|work = Mark Winter, The University of Sheffield and WebElements Ltd, UK
|publisher = WebElements
|accessdate = 2011-09-19
}}</ref>。一方、地球におけるベリリウム濃度は、地表の岩石中の重量濃度の推定値でおよそ2.8から5 ppm- 5ppm<ref name=WHO16>[[#WHONIHS2001|WHO, NIHS (2001) 16頁。]]</ref>、海水中でおよそ0.0006 ppb0006ppb<ref>{{citation
|url = http://www.webelements.com/periodicity/abundance_seawater/
|title = Abundance in oceans
|publisher = WebElements
|accessdate = 2011-09-19
}}</ref>、河川の水においては海水中よりは多くおよそ0.1 ppb1ppbである<ref>{{citation
|url = http://www.webelements.com/periodicity/abundance_stream/
|title = Abundance in stream water
}}</ref>。
 
地表の岩石中のベリリウム濃度は前述のようにおよそ2.8から5 ppm- 5ppmであるが、ベリリウム鉱石によって高濃度にベリリウムが存在する地域もある<ref name=WHO16>[[#WHONIHS2001|WHO, NIHS (2001) 16頁。]]</ref>。ベリリウムは約4,000種類の既知の鉱石のうち、約100種類の鉱石において主成分となっており<ref>{{Cite book
|author = Rick Adair
|year = 2007
|publisher = The Rosen Publishing Group
|isbn = 1404210032
}}</ref>、その中でも重要なものは、{{仮リンク|ベルトラン石|en|Bertrandite}} (Be(Be{{sub|4}}Si{{sub|2}}O{{sub|7}}(OH){{sub|2}})、[[緑柱石]] (Al(Al{{sub|2}}Be{{sub|3}}Si{{sub|6}}O{{sub|18}}) および[[フェナカイト]] (Be(Be{{sub|2}}SiO{{sub|4}}) である<ref>[[#kenneth2009|Kenneth (2009)]] p. 65</ref>。このようなベリリウム鉱石は、おもに[[マグマ]]の冷却過程に由来する[[ペグマタイト]]中で濃縮される<ref>{{Cite web
|title = 梶原・正路(1997)による〔『エネルギー・資源ハンドブック』(1015-1020p)から〕
|url = http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/Rmin_EG_B3.html
}}</ref>、これらはすべて火山活動に由来する[[火成岩]]や[[火山砕屑岩]]である。また、土壌中のベリリウムは植物によってわずかに吸収され、[[カラマツ]]など特定の植物はベリリウムを蓄積する<ref name=WHO15>[[#WHONIHS2001|WHO, NIHS (2001) 15頁。]]</ref>。
 
大気中のベリリウム濃度は先進国の都市部でおよそ0.03から - 0.07 [[ナノグラム毎立方メートル|ng/m{{sup|3}}]]ほどであるが、ベリリウムの[[大気]]への主要供給源は[[化石燃料]]の燃焼によるものであるため、工業化の進んでいない国においてはさらに低濃度になると推測されている。1987年の[[アメリカ合衆国環境保護庁]]のデータによれば、自然におけるベリリウムの大気への放出量は年間5.2 tトンほどであるが、化石燃料の燃焼を含む人類の活動によるベリリウムの大気への放出量は年間187.4 tトンにも及ぶ<ref name=WHO1516>[[#WHONIHS2001|WHO, NIHS (2001) 15-16頁。]]</ref>。
 
== 生産 ==
[[ファイル:Be-140g.jpg|thumb|高純度ベリリウム(99%パーセント以上、140 g)グラム)]]
ベリリウムは高温状態で酸素と高い親和性を示すなどの性質を有しているため、ベリリウム化合物から金属ベリリウムを精製することは非常に困難である。19世紀の間は金属ベリリウムを得るための方法として、[[フッ化ベリリウム]]と[[フッ化ナトリウム]]の混合物を[[電気分解]]するという方法が用いられていた<ref name="Weeks" />。しかしこのような方法は、ベリリウムの融点が高いために金属ベリリウムの製造に類似した方法を用いるアルカリ金属の製造と比較して多くのエネルギーが必要だった。[[20世紀]]の初めには、[[ヨウ化ベリリウム]]の熱分解によるベリリウムの生産法が研究され、[[ジルコニウム]]の生産法に類似した方法が成功を収めたが、この方法では大量生産において経済的に採算が取れないことが判明した<ref>{{citation
|doi = 10.1080/08827508808952633
}}</ref>。
:<chem>BeF2 + Mg -> MgF2 + Be</chem>
この金属ベリリウムの精製に用いられるフッ化ベリリウムは、主にベリリウム鉱物である[[緑柱石]]を原料として生産される<ref name=chitani193/>。ベリリウム鉱石は[[石英]]と同程度の比重であるために比重差を利用した[[選鉱]]を行うことができず多くの場合選鉱は手作業に頼っているが、ベリリウム鉱石に[[ガンマ線]]を照射することでベリリウムから放出された中性子を検出して選別する自動装置も開発されている<ref name=Ullman16>[[#Ullman|Aldinger et al. (1985)]] p. 16</ref>。こうして選鉱された緑柱石からベリリウムを抽出するために[[硫酸]]処理が行われるが、鉱石のままでは硫酸と400度で反応させたとしてもベリリウムはほとんど溶解しないため、前処理としてアルカリ処理もしくは熱処理が行われる<ref name=Ullman17/>。アルカリ処理はケイ素を多く含む試料を分析する際に用いられるアルカリ溶融法と同様の原理で[[ケイ素]]と金属を分離する方法であり、ベリリウム鉱石に[[水酸化ナトリウム]]や[[炭酸ナトリウム]]のようなアルカリを加えて溶融させる<ref name=Ullman17/>。熱処理は1650度以上の高温に加熱することで緑柱石を溶融させて鉱石中のベリリウムを完全に酸化ベリリウムとした後、再度900度に加熱することで二酸化ケイ素から遊離させてベリリウムの溶解性を高める方法である<ref name=Ullman17>[[#Ullman|Aldinger et al. (1985)]] p. 17</ref>。このようにしてベリリウムを溶出させやすいように前処理を行った後、[[硫酸]]処理を行うことで[[硫酸ベリリウム]]の溶液として鉱石からベリリウムを抽出することができる<ref name=chitani193/>。得られた硫酸ベリリウム溶液をアルカリで中和することで水酸化ベリリウムの沈殿が得られ、これを[[フッ化アンモニウム]]と反応させた後、熱分解させることによってフッ化ベリリウムが生産される<ref name=chitani193>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 193頁。</ref>。また、ベリリウム鉱石中からベリリウムを分離抽出する方法としては他にも、[[ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム]]を加えて700度で溶融させテトラフルオロベリリウム酸ナトリウムとして抽出する方法や<ref name=Ullman1718>[[#Ullman|Aldinger et al. (1985)]] pp. 17-18</ref>、ベリリウム鉱石を[[炭素]]と共に塩素気流下、630度以上で塩素と直接反応させて[[塩化ベリリウム]]として抽出する方法などがある<ref name=Ullman18>[[#Ullman|Aldinger et al. (1985)]] p. 18</ref>。このようにして得られた塩化ベリリウムを[[溶融塩電解]]することでも金属ベリリウムを生産することができる<ref name=tanaka/>。この方法では、塩化ベリリウムの電気伝導度が非常に低く電解効率が悪いため、[[塩化ナトリウム]]が助剤として加えられる<ref name=CW271/>。
 
この金属ベリリウムの精製に用いられるフッ化ベリリウムは、おもにベリリウム鉱物である[[緑柱石]]を原料として生産される<ref name=chitani193/>。ベリリウム鉱石は[[石英]]と同程度の比重であるために比重差を利用した[[選鉱]]を行うことができず多くの場合選鉱は手作業に頼っているが、ベリリウム鉱石に[[ガンマ線]]を照射することでベリリウムから放出された中性子を検出して選別する自動装置も開発されている<ref name=Ullman16>[[#Ullman|Aldinger et al. (1985)]] p. 16</ref>。こうして選鉱された緑柱石からベリリウムを抽出するために[[硫酸]]処理が行われるが、鉱石のままでは硫酸と400度で反応させたとしてもベリリウムはほとんど溶解しないため、前処理としてアルカリ処理もしくは熱処理が行われる<ref name=Ullman17/>。アルカリ処理はケイ素を多く含む試料を分析する際に用いられるアルカリ溶融法と同様の原理で[[ケイ素]]と金属を分離する方法であり、ベリリウム鉱石に[[水酸化ナトリウム]]や[[炭酸ナトリウム]]のようなアルカリを加えて溶融させる<ref name=Ullman17/>。熱処理は16501,650度以上の高温に加熱することで緑柱石を溶融させ鉱石中のベリリウムを完全に酸化ベリリウムとしたあと、再度900度に加熱することで二酸化ケイ素から遊離させてベリリウムの溶解性を高める方法である<ref name=Ullman17>[[#Ullman|Aldinger et al. (1985)]] p. 17</ref>。このようにしてベリリウムを溶出させやすいように前処理を行ったあと、[[硫酸]]処理を行うことで[[硫酸ベリリウム]]の溶液として鉱石からベリリウムを抽出することができる<ref name=chitani193/>。得られた硫酸ベリリウム溶液をアルカリで中和することで水酸化ベリリウムの沈殿が得られ、これを[[フッ化アンモニウム]]と反応させたあと、熱分解させることによってフッ化ベリリウムが生産される<ref name=chitani193>[[#千谷1959|千谷 (1959)]] 193頁。</ref>。また、ベリリウム鉱石中からベリリウムを分離抽出する方法としては他にも、[[ヘキサフルオロケイ酸ナトリウム]]を加えて700度で溶融させテトラフルオロベリリウム酸ナトリウムとして抽出する方法や<ref name=Ullman1718>[[#Ullman|Aldinger et al. (1985)]] pp. 17-18</ref>、ベリリウム鉱石を[[炭素]]とともに塩素気流下、630度以上で塩素と直接反応させて[[塩化ベリリウム]]として抽出する方法などがある<ref name=Ullman18>[[#Ullman|Aldinger et al. (1985)]] p. 18</ref>。このようにして得られた塩化ベリリウムを[[溶融塩電解]]することでも金属ベリリウムを生産することができる<ref name=tanaka/>。この方法では、塩化ベリリウムの電気伝導度が非常に低く電解効率が悪いため、[[塩化ナトリウム]]が助剤として加えられる<ref name=CW271/>。
工業規模でのベリリウム産出に関与しているのはアメリカ、中国およびカザフスタンの3国のみである<ref>{{citation
 
工業規模でのベリリウム産出に関与しているのはアメリカ、中国およびカザフスタンの3国のみである<ref>{{citation
|url = http://www.beryllium.com/sources-beryllium
|title = Sources of Beryllium
|publisher = Materion Brush Inc.
|accessdate = 2011-09-19
}}</ref>。2008年時点のアメリカにおけるベリリウムおよびベリリウム化合物のおもな生産者はブラッシュ・エンジニアード・マテリアルズ社である<ref>{{citation
|url = http://www.brushelmore.com/history.asp
|archiveurl = https://web.archive.org/web/20080724113346/http://www.brushelmore.com/history.asp
|accessdate = 2011-09-20
|deadurldate = 2017年9月
}}</ref>。ブラッシュ・エンジニアード・マテリアルズ社では、ベリリウムを製錬するための原料の大部分を自身が所有するスポール山の鉱床([[ユタ州]])から産出されるベリリウム鉱石(ベルトラン石を含む)から得ている。ベリリウムの製錬およびほかの精製は、ユタ州{{仮リンク|デルタ (ユタ州)|en|Delta, Utah|label=デルタ}}の北10[[マイル]]にある工場で行われており<ref name="spor">{{citation
|url = http://pubs.usgs.gov/of/1998/ofr-98-0524/SPORMTN.HTM
|title = Slides of the fluorspar, beryllium, and uranium deposits at Spor Mountain, Utah
|publisher = The Center for Land Use Interpretation
|accessdate = 2011-09-19
}}</ref>。1998年から2008年までの間、ベリリウムの世界の生産量は343トンからおよそ200トンにまで減少しており、200トンのうち176トン (88%) (88パーセント)はアメリカで生産されている<ref name="USGSMCS2000">{{citation
|url = http://minerals.usgs.gov/minerals/pubs/commodity/beryllium/100300.pdf
|title = Commodity Summary 2000: Beryllium
|publisher = United States Geological Survey
|accessdate = 2011-09-19
}}</ref>。日本での国内取り扱いトップの日本ガイシによると70~801キロあたり70 - 80万円/kgである<ref>
TBSがっちりマンデー2019年
4月28日放送分
 
== 用途 ==
ベリリウムはおもに[[合金]]の硬化剤として利用され、その代表的なものに[[ベリリウム銅]]合金がある。また、非常に強い[[曲げ強さ]]、熱的安定性および[[熱伝導率]]の高さ、金属としては比較的低い密度などの物理的性質を利用して、高速[[航空機]]や[[ミサイル]]、[[宇宙船]]、[[通信衛星]]などの[[軍事産業]]や[[航空宇宙産業]]において構造部材として用いられる。ベリリウムは低密度かつ原子量が小さいため[[X線]]やその他[[電離放射線]]に対して透過性を示し、その特性を利用してX線装置や[[素粒子物理学|粒子物理学]]の試験における[[X線透過窓]]として用いられる。
 
ベリリウムの用途には、その物理的性質を利用したX線装置や構造材、鏡(ベリリウムミラー)、合金材料、音響材料としての用途、磁気的性質を利用した工具製造、電子物性を利用した電子材料、核的性質を利用した中性子源や、ベリリウム鉱石の外観の美しさを利用した宝石としての用途が挙げられる。この中には[[核兵器]]や[[ミサイル]]、[[射撃管制装置]]などの軍事的用途も含まれ、そのような分野に関する詳細な情報を入手することは難しい<ref>Petzow, Günter ''et al.'' "Beryllium and Beryllium Compounds" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry 2005, Wiley-VCH, Weinheim. {{DOI|10.1002/14356007.a04_011.pub2}}</ref>。また、ベリリウムの毒性により、過去に用いられていた蛍光材料としての用途はすでほかの代替材料に置き換えられており、ベリリウム銅合金なども代替材料の開発が進められている。
 
=== X線透過窓 ===
[[ファイル:Be foil square.jpg|thumb|right|鋼鉄製のケースに乗せられた四角いベリリウム箔。真空チャンバーと[[X線顕微鏡]]の間で「窓」として用いられる]]
ベリリウムは原子番号が小さく電子の数が少ないため、[[X線]]に対する[[透過率 (光学)|透過率]]が非常に高い。そのため、X線源やビームライン、[[X線望遠鏡]]などの検出器用の窓に用いられる。この用途においては、X線像に不要な像が写り込むことを回避するためにベリリウムの純度と清潔さがもっとも要求される。また、X線探知機のX線放射窓としてもベリリウムの薄膜が用いられている。これは、ベリリウムのX線吸収率が非常に低いことによって、高強度の[[シンクロトロン放射光]]に典型的な低エネルギーX線に起因する熱の影響を最小限に留めることができるためである。さらに、[[シンクロトロン]]による放射線試験のための真空気密窓およびビームチューブの素材にはベリリウムのみが用いられている。ほかにも、[[エネルギー分散型X線分析]]などの様々さまざまなX線を利用した分析機器においてはベリリウム製のサンプルホルダーが常用される。これは、ベリリウムから発生する[[特性X線]]や[[蛍光X線]]の有するエネルギーが100 eV100eV以下と分析試料由来のX線と比較して非常に低く、試料の分析データに影響を与えないためである<ref name=Be/>。
 
ベリリウムはまた、[[素粒子物理学]]の実験装置において高エネルギー粒子を衝突させる場所周辺のビームラインを構築するための素材として用いられる。たとえば、[[大型ハドロン衝突型加速器]]の実験における主要な4つの検出器すべて([[ALICE検出器]]、[[ATLAS検出器]]、{{仮リンク|CMS検出器|en|Compact Muon Solenoid}}、{{仮リンク|LHCb検出器|en|LHCb}})<ref>{{citation
|title = Installation and commissioning of vacuum systems for the LHC particle detectors
|publisher = CERN
|url = http://cdsweb.cern.ch/record/1199583/files/CERN-ATS-2009-005.pdf
|accessdate = 2011-09-26
}}</ref>や[[テバトロン]]、[[SLAC国立加速器研究所]]において用いられている。このような用途においてはベリリウムが持つ様々さまざまな性質が効果的に働いている。すなわち、ベリリウムの原子番号の小ささに由来する高エネルギー粒子に対する透過性が比較的高いという性質や、ベリリウムの密度が低いという性質によって、粒子の衝突によって発生した生成物を重大な相互作用なしに周囲の検出器へと誘導することができる。また、ベリリウムは剛性が高いためベリリウムのパイプ内を非常に高真空にでき、残留した気体分子による相互作用を最小限にすることができる。さらに、ベリリウムは熱的に非常に安定しているため、[[絶対零度]]よりわずかに高い程度の極低温においても正常に機能することができる。そのうえ、ベリリウムの[[反磁性]]を有する性質によって、[[粒子線]]を収束させて検出器まで導くために用いられる複雑な多極電磁石システムへの干渉を防ぐことができる<ref>{{citation
|doi = 10.1016/S0168-9002(01)01149-4
|title = A new inner vertex detector for STAR
}}</ref>。また、ベリリウムは硬く、融点が高く、さらに非常に優れた[[ヒートシンク]]性能を有しているため、軍用機やレース車両の[[ブレーキディスク]]に用いられていたが、環境への配慮のため代替材料が用いられている<ref name=Be/><ref>ポルシェ909[[ベルクスパイダー]]のブレーキディスクなどに使用された。christophorus 336 2009年2月/3月 The Porsche Magagine, 39</ref>。
 
ベリリウムは優れた弾性剛性を有しているため、例えば[[ジャイロスコープ]]による[[慣性航法装置]]や光学系のための支持構造物などの精密機器に利用される<ref name=Be/>。
 
=== ベリリウムミラー ===
[[ファイル:James Webb Space Telescope Mirror37.jpg|thumb|right|ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のベリリウム製の主鏡]]
ベリリウムミラーは、[[気象衛星]]のような低重量および長期間の寸法安定性が重要とされる用途に対する大面積の鏡(しばしば{{仮リンク|ハニカムミラー|en|Honeycomb mirror}})に用いられる。たとえば、[[ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡]]の主鏡はベリリウム製であり<ref>{{citation
|title = Origami Observatory: Behind the Scenes with the Webb Space Telescope
}}</ref>。
 
また、より小さなベリリウムミラーは光学的な[[制御システム]]や[[射撃管制装置]]に用いられる。たとえば、ドイツの[[主力戦車]]である[[レオパルト1]]や[[レオパルト2]]に用いられている<ref>{{citation
|url = http://spie.org/x648.html?product_id=137998
|title = Production of metal matrix composite mirrors for tank fire control systems (Proceedings Paper)
|date = 1961-08-09
|accessdate = 2011-09-26
}}</ref>。それらはまた、強い磁場を発生させる[[核磁気共鳴画像法]] (MRI) (MRI)の機械の近くで用いられるメンテナンス器具や建設材料にも用いられる<ref>{{citation
|url = http://books.google.com/?id=EqtlqFNkWwQC&pg=PT891
|page = 891
=== 音響材料 ===
[[ファイル:Yamaha NS-2000 Speaker -midrange-.jpg|thumb|200px|ベリリウム製ドーム型振動板を持つスピーカーユニット]]
ベリリウムは低質量かつ高剛性であるため、およそ12.9 [[キロメートル毎秒|km/s]]と高い音の伝導率を示す。ベリリウムのこの物性を利用して、[[ツイーター]](高音域スピーカー)の[[振動板]]としておもに[[ドーム]]型に成形し使用される。しかしながら、ベリリウムはしばしば[[チタン]]以上に高価であり、その脆性の高さにより成形が困難であり、処置を誤れば製品の毒性を封印できないため、ベリリウム製のツイーターは[[ハイエンド]]な家庭用や業務用オーディオ、[[Public Address]]などの用途に限られている<ref>{{Cite web
|url = http://www.hometheaterhifi.com/speaker-product-reviews/speakers/usher-be-718-bookshelf-speakers-with-beryllium-tweeters.html
|first = John E.
|publisher = 日経ものづくり
|accessdate = 2011-10-11
}}</ref>などの音響機器メーカーの製品があり、またヤマハ・パイオニア・[[オーディオテクニカ]]・[[品川無線|グレース]]製[[レコードプレーヤー|ピックアップ・カートリッジ]]の[[カンチレバー]]に用いられた例がある<ref>{{Cite web
|url = http://sts.kahaku.go.jp/sts/detail.php?07_class=l&key=104810541010&APage=762
|title = PUカートリッジ F-8L
|publisher = [[国立科学博物館]] 産業技術史資料情報センター
|accessdate = 2011-10-11
}}</ref>。また、その熱伝導率のさから、セラミック送信管({{仮リンク|アイマック|en|Eimac}}社製、eimac 8873)eimac8873)の本体および純正放熱用熱伝導体として酸化ベリリウムが採用された例がある<ref>{{Cite web
|url = http://www.radioamator.ro/articole/files/388/8873-8874-8875%20-%20Eimac.pdf
|title = TECHNICAL DATA
|page = 4
|accessdate = 2011-11-12
}}</ref>。ベリリウムはほかの金属との合金としても頻繁に利用されるが、その合金組成に明記されないこともある<ref>{{Cite web
|url = http://www.electrofusionproducts.com/userfiles/China_Be_Domes_Report.pdf
|first = Mark
 
=== 核物性の利用 ===
ベリリウムの薄いプレートやホイールは、しばしば[[テラー・ウラム型]]のような熱核爆弾において、核融合燃料に「点火」するためのトリガーである第一段階の核分裂爆弾を囲う[[ピット (核兵器)|プルトニウムピット]]の最外層として用いられる。このようなベリリウムの層は、{{sup|239}}Pu を[[爆縮]]させるための良好な核反応促進材であり、初期の実験的な[[原子炉]]において中性子反射減速材として利用されていたように良好な[[中性子反射体]]でもある<ref name=weapons/>。
 
[[ファイル:Beryllium target.jpg|thumb|[[陽子線]]を[[中性子線]]に「変換」するベリリウムターゲット]]
ベリリウムはまた、比較的少ない中性子を必要とする原子炉規模以下の実験用途において、一般的に中性子源として用いられる。この目的のための {{sup|9}}Be ターゲット材は、{{sup|210}}[[ポロニウム|Po]] {{sup|226}}[[ラジウム|Ra]]、{{sup|239}}[[プルトニウム|Pu]]、{{sup|241}}[[アメリシウム|Am]] などの[[放射性同位体]]から放出される高エネルギーなアルファ粒子を衝突させることで中性子が取り出される。このときに起こる核反応によって、{{sup|9}}Be {{sup|12}}C になり、遊離した中性子はアルファ粒子が移動するのと同じ方向へ放出される。ベリリウムはそのような中性子源として、''urchin'' と呼ばれる{{仮リンク|中性子点火器|en|Modulated neutron initiator}}として初期の原子爆弾にも利用されていた<ref name=weapons>{{citation
|url = http://books.google.com/?id=yTIOAAAAQAAJ&pg=PA35
|page = 35
|year = 2005
|isbn = 3540230386
}}</ref>。ベリリウムはまた、その機械的、化学的、核的な物性の組み合わせのさから、[[燃料棒|核燃料棒]]の被覆素材としての利用も提案されている<ref name=Be/>。[[フッ化ベリリウム]]は、[[溶融塩原子炉]]設計の多くの仮定において、溶媒、減速材および冷却材としての使用が想定されている、[[共晶塩]]である{{仮リンク|フッ化リチウムベリリウム|en|FLiBe}}を構成する塩の1ひとつである<ref>{{citation
|doi = 10.1016/j.fusengdes.2005.08.101
|title = JUPITER-II molten salt Flibe research: An update on tritium, mobilization and redox chemistry experiments
 
=== 電子材料 ===
ベリリウムは[[III-V族半導体]]において[[P型半導体]]の[[ドープ|ドーパント]]である。それは、[[分子線エピタキシー法]] (MBE) (MBE)によって製造される[[ヒ化ガリウム]]や{{仮リンク|ヒ化アルミニウムガリウム|en|Aluminium gallium arsenide}}、[[ヒ化インジウムガリウム]]、{{仮リンク|ヒ化インジウムアルミニウム|en|Aluminium indium arsenide}}のような素材において広く用いられている<ref>{{Cite book
|url = http://books.google.com/?id=oJs6nK3TZrwC&pg=PA104
|page = 104
|year = 2000
|isbn = 3540666931
}}</ref>。クロス圧延されたベリリウムのシートは[[プリント基板]]への[[表面実装]]における優れた構造支持体である。電子材料におけるベリリウムの重要な用途は、構造支持のみならず[[ヒートシンク]]素材としての用途がある。この用途においては、[[アルミナ]]および[[ポリイミドガラス基盤]]と調和した[[熱膨張率]]が必要とされる。これらの電子的用途のために特別に設計されたベリリウム-[[酸化ベリリウム]]複合材料は「{{仮リンク|E-Material|en|E-Material}}」と呼ばれ、様々さまざまな基盤素材に合わせて熱膨張率を調整できる利点がある<ref name=Be/>。
 
[[絶縁性|電気絶縁性]]および優れた熱伝導率、高い耐久性、硬さ、非常に高い融点という複数の特性が要求されるような多くの用途において、酸化ベリリウムが利用される。酸化ベリリウムは、[[電気通信]]のための[[高周波|無線周波]][[送信機]]における[[電力用半導体素子|パワートランジスタ]]の絶縁基盤として多用される。酸化ベリリウムはまた、[[酸化ウラン(IV)|酸化ウラン]]の[[核燃料]]ペレットにおいて熱伝導性を向上させるための用途が検討されている<ref>{{Cite web
 
=== 宝石 ===
ベリリウム鉱物である[[緑柱石]]のうち状態のいものは宝石として利用される<ref name=Be/><ref>[[#kenneth2009|Kenneth (2009)]] pp. 20-26</ref><ref>{{citation
|chapter = Distribution of major deposits
|url = http://books.google.com/books?id=zNicdkuulE4C&pg=PA265
=== 合金 ===
[[ファイル:CuBe Tool.jpg|thumb|150px|ベリリウム銅製の工具]]
[[銅]] (Cu) (Cu)に0.15%から - 2.0%パーセント程度を混ぜて[[ベリリウム銅|ベリリウム銅合金]]として利用される。銅よりもはるかに強く、純銅に近い良好な電気伝導性がある。膨張率は[[ステンレス]]鋼や鋼(はがね)に近い。ゆっくり変化する[[磁界]]に対し高い[[透磁率]]をもつ<ref name=BeCu>{{Cite web
|url = http://www.materion.jp/alloy/tech_lit/GuideToCopperBeryllium.pdf
|title = ベリリウム銅ガイド
|page = 6
|accessdate = 2011-10-12
}}</ref>。銅合金の中でも優れた[[機械的強度]]を持っており、電気回路のコネクタなどで使われる[[バネ]]の材料に用いられる<ref>{{Cite book |和書 |editor=ばね技術研究会 |year=2000 |title=ばね用材料とその特性 |publisher=日刊工業新聞社 |pages=pp. 190, 203&ndash;204 }}</ref>。また、磁化しにくい打撃を受けても火花が出ない特徴を持つ<ref>{{Cite web
|url = http://www.materion.jp/alloy/tech_lit/GuideToCopperBeryllium.pdf
|title = ベリリウム銅ガイド
|page = 37
|accessdate = 2011-10-12
}}</ref>ことから、[[石油化学工業]]などの爆発雰囲気の中で使用する[[防爆工具]]に安全保持上用いることもある。ベリリウム銅合金はまた、Jason pistols と呼ばれる船から[[錆]]や[[ペンキ]]をはぎ取るのに用いられる針状の器具にも用いられる<ref>{{Cite news
|date = 2005-02-01
|url = http://www.smh.com.au/news/National/Defence-forces-face-rare-toxic-metal-exposure-risk/2005/02/01/1107228681666.html
| EU分類={{Hazchem T}}{{Hazchem Xn}}
| GHSPictograms ={{GHSp|GHS06}}{{GHSp|GHS08}}
| おもな危険性=腐食性
| IngestionHazard=大いにあり
| InhalationHazard=大いにあり
| ExternalMSDS =
| 眼への危険性=大いにあり
| 皮膚への危険性=大いにあり
| NFPA-H = 4 | NFPA-F = 3 | NFPA-R = 3 | NFPA-O = <!-- 英語版ではこの数値でしたので、そのまま転記しました。相違点がございましたら訂正お願い申し上げる次第でございます。-->
| MainHazards = 腐食性
|style="width:80pt;"|金属ベリリウムに対する[[NFPA 704|ファイア・ダイアモンド]]表示<ref name=icsc>{{ICSC-ref|0226||accessdate=2011-12-11}}</ref>
|}</div>
ベリリウムは人体への曝露によって[[ベリリウム肺症]]もしくは慢性ベリリウム症として知られる深刻な慢性肺疾患を引き起こすようにきわめて毒性の高い物質であり<ref name=NIHS/>、水棲生物に対しても非常に強い毒性を示す<ref name=icsc/>。また、細胞組織に対して腐食性であるため、可溶性塩の吸入によって化学性肺炎である急性ベリリウム症を引き起こし、皮膚との接触によって炎症が引き起こされる<ref name=NIHS>{{citation
|title = 環境保健クライテリア No.106 ベリリウム
|url = http://www.nihs.go.jp/hse/ehc/sum1/ehc106.html
}}</ref>。
 
慢性ベリリウム症は数週間から20年以上と非常に個人差の大きい潜伏期間があり、その死亡率は37%パーセントで、妊婦においてはさらに死亡率が高くなる<ref name=NIHS/>。慢性ベリリウム症は基本的には[[自己免疫疾患]]であり、感受性を有する人は5%パーセント以下であると見られている<ref name=WHO37>[[#WHONIHS2001|WHO, NIHS (2001) 37頁。]]</ref>。慢性ベリリウム症におけるベリリウムの毒性の機序は、ベリリウムが酵素に影響を与えることで代謝や細胞複製が阻害されることによる<ref name=NIHS/>。慢性ベリリウム中毒は多くの点で[[サルコイドーシス]]に類似しており、[[鑑別診断]]においてはこれらを見分けることが重要とされる<ref name=WHO36>[[#WHONIHS2001|WHO, NIHS (2001) 36頁。]]</ref>。
 
急性ベリリウム症は基本的には化学性肺炎であり、慢性ベリリウム症とは異なる機序によるものである。その定義は「継続期間1年未満のベリリウム由来の肺疾患」<ref>[[#WHONIHS2001|WHO, NIHS (2001) 35頁。]] より引用</ref>とされており、ベリリウムへの曝露量と症状の重さには直接的な因果関係が見られる。ベリリウム濃度が1000 μg1,000μg/m{{sup|3}}以上になると発症し、100 μg100μg/m{{sup|3}}未満では発症しないことが明らかとなっている<ref name=WHO35>[[#WHONIHS2001|WHO, NIHS (2001) 35頁。]]</ref>。
 
急性ベリリウム症は最高曝露量の設定による作業環境の改善にともない減少しているが、慢性ベリリウム症はベリリウムを扱う産業において多く発生しており<ref name=NIHS/><ref>{{citation
|title = ベリリウム症
|chapter = 肺疾患
}}</ref>、ベリリウムの許容濃度を順守している工場においても慢性ベリリウム疾患の発症した例が確認されている<ref>[[#WHONIHS2001|WHO, NIHS (2001) 38頁。]]</ref>。また、このような産業に関わらない人々にも化石燃料の燃焼に起因する極微量の曝露がみられる<ref name=nishimura9/>。
 
ベリリウムおよびベリリウム化合物は、[[世界保健機関|WHO]] の下部機関 [[国際がん研究機関|IARC]] より[[発癌性]]がある (Type1) (Type1)と勧告されている<ref>{{citation
|url = http://www.inchem.org/documents/iarc/vol58/mono58-1.html
|publisher = International Agency for Research on Cancer
|year = 1993
|accessdate = 2011-09-13
}}</ref>。カリフォルニア州環境保健有害性評価局が算出した公衆健康目標のガイドライン値は1 μg1μg/L、有害物質疾病登録局が算出した最小リスク濃度は0.002 mg002mg/kg/day(体重1キロたり、1日に0.002mg)とされている<ref name=nishimura10>[[#西村2006|西村 (2006) 10頁。]]</ref>。ベリリウムは生体内で代謝されないため、一度体内に取り込まれたベリリウムは排出されにくく<ref name=nishimura9>[[#西村2006|西村 (2006) 9頁。]]</ref>、おもに骨に蓄積されて尿により排出される<ref>[[#WHONIHS2001|WHO, NIHS (2001) 6頁。]]</ref>。
 
=== ベリリウム症の歴史 ===
|format = PDF
|accessdate = 2011-09-13
}}</ref>。このような症例は蛍光灯工場やベリリウム抽出プラントにおいて多くみられたため、1949年(昭和24年)には蛍光灯におけるベリリウムの利用が中止され、1950年代初頭にはベリリウムの最高曝露濃度が25 [[マイクログラム毎立方メートル|μg/m{{sup|3}}]]に定められた。こうして作業環境が大幅に改善されたことによって急性ベリリウム症の罹患率は激減したが、核産業や航空宇宙産業、[[ベリリウム銅]]などの合金、電子装置の製造などの分野においてはベリリウムの利用が続いている。1952年(昭和27年)、[[アメリカ合衆国]]でベリリウム症例登録制度がはじまり、1983年(昭和58年)までに888件の症例が登録された<ref name=NIHS/>。この制度においては6つの診断基準が定められ、そのうち3つが当てはまると慢性ベリリウム症であるとして登録されるようになっていた<ref name=WHO36/>。検査技術の向上した2001年(平成13年)現在では、肺の[[気管支鏡|経気管支]]の[[生体組織診断]]などによる組織病理学的な確認、リンパ球幼若化試験およびベリリウムの曝露歴の3点が診断基準とされている<ref name=WHO37/>。ベリリウムは[[原子爆弾]]の核反応促進材に利用されるため、初期の原子爆弾の開発に携わった研究者の幾人かはベリリウム中毒によって命を落としている(たとえばアメリカの核物理学者であり[[マンハッタン計画]]にも携わった{{仮リンク|ハーバート・L・アンダーソン|en|Herbert L. Anderson}}など<ref>{{citation
|url = http://www.atomicarchive.com/Photos/CP1/image5.shtml
|title = Photograph of Chicago Pile One Scientists 1946
 
=== 爆発性 ===
ベリリウムは酸化被膜のために反応性に乏しい金属であるが一度着火すると燃焼しやすい性質であるため、空気中にベリリウムの粉塵が存在している状態では[[粉塵爆発]]が起こる危険性がある<ref name=NIHS/>。<!--近年、軽量で、また運用を終えて地球へ落下しても大気中で燃焼しやすい性質が注目され人工衛星に多用されるが、燃焼して大気中に放散された後のベリリウムが、人体を含む環境に与える影響についてはまだ議論が少ない。-->
 
== 脚注 ==
593

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