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書誌情報
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| 名称 = 小脳
| 英語 = cerebellum
| ラテン語 = cerebellum
| 略号 = Cb
| マップ = 脳矢状断
| マップ脚注 = 脳の矢状断。緑色が小脳。
| 画像 = Brain diagram ja.svg
| 脚注 = ヒトの脳の外側面。小脳は図の右下、紫色で示す部分。
| 画像2 = Cerebellum.png
| 脚注2 = 脳内での小脳の位置(赤色で示す部分)。<br />左図は側面から、右図は正面から見たとき。
| 上位構造 = [[菱脳]]、[[後脳]]
| 構成要素 = 小脳虫部、小脳半球、小脳片葉、小脳核など
| 動脈 = 上小脳動脈、前下小脳動脈、後下小脳動脈
| 静脈 =
| AnatomographyPartsID = FMA67944
| SylviusID_s = 030
| DA = {{DA|atlas=Neuroanatomy|frame_file_path^=Index/Brain^Surface/Left^Hemisphere,^lateral^view|option=-oli|strings=27|表示=左側面}}<br />{{DA|atlas=Neuroanatomy|frame_file_path^=Index/Brain^Surface/Right^Hemisphere,^lateral^view|option=-oli|strings=29:30|表示=右側面}}<br />{{DA|atlas=Neuroanatomy|frame_file_path^=Index/Brain^Surface/Right^Hemisphere,^medial^view^1|option=-oli|strings=29:30|表示=内側面}}<br />{{DA|atlas=Neuroanatomy|frame_file_path^=Index/Brain^Surface/Anterior^view|option=-oli|strings=1:2:3:4:48:49|表示=前方}}<br />{{DA|atlas=Neuroanatomy|frame_file_path^=Index/Brain^Surface/Ventral^view^1|option=-oli|strings=38:39:40:48|表示=下方}}<br />{{DA|atlas=Neuroanatomy|frame_file_path^=Index/Brain^Surface/Posterior^view|option=-oli|strings=11:12|表示=後方}}<br />{{DA|atlas=Neuroanatomy|frame_file_path^=Index/3D^Object^Composites/Brainstem^Diencephalon|option=-oli|strings=1:2:3:4:5:6:7:8:11:12:13:14:15:16:17:18:72:73:74|表示=脳幹}}<br />{{DA|atlas=Neuroanatomy|frame_file_path^=Index/Coronal^Forebrain/Fimbria,^Fornix|option=-oli|strings=32:33|表示=冠状断(海馬采/脳弓)}}<br />{{DA|atlas=Neuroanatomy|frame_file_path^=Index/Horizontal^Forebrain^MRI/Ventral^28.6|option=-oli|strings=1:2:3|表示=水平断}}<br />{{DA|atlas=Neuroanatomy|frame_file_path^=Index/Sagittal^Forebrain^MRI/Left^13.0|option=-oli|strings=9|表示=傍矢状断}}
| BredeROI_number = 32
| IBVD = Cerebellum
| NeuroNamesID = 643
| NIF = Cerebellum
| MeshName = Cerebellum
| グレイの解剖学 = 187
| グレイの解剖学_段落 = 60
}}
'''小脳'''(しょうのう、{{lang-en-short|cerebellum}}、[[ラテン語]]で「小さな脳」を意味する)は、脳の部位の名称。[[脳]]を背側から見たときに[[大脳]]の尾側に位置し、外観が[[カリフラワー]]状をし、[[脳幹]]の後ろの方から[[コブ]]のように張り出した小さな[[器官]]である。脳幹と小脳の間には[[第四脳室]]が存在する。重さは成人で120〜140グラムで、脳全体の重さの10%強をしめる。大脳の10分の1しかないのに、大脳の[[神経細胞]]よりもはるかに多くの神経細胞がある。脳の神経細胞の大部分は、小脳にあり、その数は1000億個以上である。小脳の主要な[[機能]]は[[知覚]]と[[運動機能]]の統合であり、[[平衡]]・筋緊張・[[随意筋]]運動の調節などを司る。このため、小脳が損傷を受けると、運動や平衡感覚に異常をきたし、精密な運動ができなくなったり酒に酔っているようなふらふらとした歩行となることがある。小脳が損傷されると、そうした症状が起きるが、[[意識]]に異常をきたしたり知覚に異常を引き起こすことはない。このため、かつては高次の脳機能には関係がなく、もっぱら[[運動]]を巧緻に行うための調節器官だとみなされ、[[脳死]]問題に関する議論が起きた際も人の生死には関係がないので、小脳は脳死判定の検査対象から外すべきと主張する学者もいた。ところがその後、小脳がもっと高次な機能を有していると考えられる現象が相次いで報告された。また、[[アルツハイマー病]]の患者の脳を[[PET]]で調べたところ、[[頭頂連合野]]や[[側頭連合野]]が全く機能していないにもかかわらず、小脳が活発に活動していることが判明した。アルツハイマー病の患者では例外なく小脳が活動しており、通常より強化されている。これは大脳から失われたメンタルな機能を小脳が代替していると考えられている。[[伊藤正男 (生理学者)|伊藤正男]]は、小脳は大脳の[[シミュレーター]]であって、体で覚える記憶の座と表現した<ref name="NOUWOKIWAMERU">立花隆『脳を究める』朝日文庫 2001年3月1日</ref>。
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{| class="wikitable"
|width = 100|'''機能的名称'''<br />(''系統発生学的名称'')||'''解剖学的部位'''||'''役割'''
|-
|width = 100|'''前庭小脳'''<br />(''古小脳'')||片葉小節葉(小脳虫部に隣接する)||身体平衡と眼球運動を調節する。[[半規管]]と[[前庭]]神経核からの入力信号を受け取り、前庭神経外側核・内側核に出力する。また、[[上丘]]と[[視覚野]]からの視覚信号の入力(後者は[[橋核]]を経由する)を受け取る。前庭小脳の傷害は、平衡と歩様の異常を引き起こす。
|-
|width = 100|'''脊髄小脳'''<br />(''旧小脳'')||小脳虫部および小脳半球の中間部分("paravermis")||体幹と四肢の運動を制御する。[[三叉神経]]、視覚系、聴覚系および脊髄後索(脊髄小脳路を含む)からの固有受容信号を受信する。深部小脳核へと出力された信号は大脳皮質と脳幹に達し、下位の運動系を調節する。脊髄小脳には感覚地図が存在し、身体部位の空間的位置データを受け取っている(小脳虫部は体幹と四肢の近位、paravermisは四肢の遠位)。運動の最中に、身体のある部位がどこへ動くかを予測するため、固有受容入力信号の詳細な調節を行うことができる。
|-
|width = 100|'''大脳小脳'''<br />(''新小脳'')||小脳半球の側面部分||運動の計画と感覚情報の評価を行う<ref>{{cite book|last=Kingsley |first=R. E.|authorlink=|title=Consise Text of Neuroscience|edition=2nd edition|publisher=Lippincott Williams and Wilkins|location=|year=2000|isbn=0-683-30460-7|series=}}</ref>。大脳皮質(特に[[頭頂葉]])からの全入力を、橋核を経由して受け取り、主に視床腹外側に出力する。信号は前運動野、一次運動野および[[赤核]]に達し、下オリーブ核を通って再び小脳半球へとリンクする。
|}
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{| class="wikitable"
|width = 100|小脳脚の名称||機能
|-
|width = 100|'''上小脳脚'''(superior peduncle)||小脳の主要な出力経路で、赤核・視床外側腹側核/前腹側核・延髄などと連絡する。大半は歯状核から起始する遠心性線維から成るが、[[前脊髄小脳路]]から小脳前葉へと繋がる求心性線維の一部が、上小脳脚を経由している。「歯状核 → 赤核 → 視床 → 前運動皮質」と「小脳 → 視床 → 前運動皮質」の2経路が、上小脳脚を通る主なルートであり、運動の立案に重要な役割を果たす。
|-
|width = 100|'''中小脳脚'''(middle peduncle)||最大の小脳脚であり、「大脳皮質 → 橋 → 小脳」を結ぶ壮大な経路の一部を成す。全て橋核に起始する遠心性線維で構成される。この経路は[[大脳新皮質]]の感覚・運動野から下行する。
|-
|width = 100|'''下小脳脚'''(inferior peduncle)||様々な種類の出入力線維を含む。平衡や姿勢の保持など、運動前庭機能を伴う固有感覚入力の統合に、主に関与する。全身からの固有情報は[[後脊髄小脳路]]を通じて下小脳脚に伝達され、旧小脳にシナプスを形成する。前庭の情報は古小脳に至る。下オリーブ核から起始する登上線維も下小脳脚を通りプルキンジェ細胞のデンドライトにシナプス結合し、また、プルキンエ細胞かの情報を、脳幹背側に位置する前庭神経核に送る役割を持つ。
|}
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== 関連文献 ==
; 日本語のオープンアクセス文献
* [[伊藤正男 (生理学者)|伊藤正男]] [https://wwwdoi.jstageorg/10.jst.go.jp/article11526/ieejjournal1888/.93/2/93_2_91/_article/-char/ja/.91 「小脳における神経情報の処理機構」] 電氣學會雜誌』 1973年 '''Vol.93''', No.2 (1973) ppp.91-93, {{doi|10.11526/ieejjournal1888.93.91}}, 電気学会
* 五味裕章, 川人光男 [httphttps://www.journalarchivedoi.jst.go.jporg/japanese/jnlabstract_ja10.php?cdjournal=11470/oubutsu1932&cdvol=.61&noissue=10&startpage=.1035 「小脳における運動学習適応系モデル」] 応用物理』 1992年 '''Vol.61''', No.10 (1992) ppp.1035-1038, {{doi|10.11470/oubutsu1932.61.1035}}, 応用物理学会
* 五味裕章 [httphttps://wwwdoi.journalarchiveorg/10.jst.go.jp/japanese1541/jnlabstract_jaieejjournal.php?cdjournal=ieejjournal1994&cdvol=115&noissue=12&startpage=.782 「小脳が実現する滑らかな運動」] 電気学会誌』 1995年 '''Vol.115''', No.12 (1995) ppp.782-785, {{doi|10.1541/ieejjournal.115.782}}, 電気学会
* 柳原 大, 伊藤 聡 [https://doi.org/10.2142/biophys.39.165 「歩行運動の適応制御と小脳」] 生物物理 '''Vol.1999年 39''' (1999) , No. 3, ppp.165-171, {{doi|10.2142/biophys.39.165}}, 日本生物物理学会
* 慶野 宏臣, 柏俣 重夫 [httphttps://wwwdoi.journalarchive.jst.go.jp/japaneseorg/jnlabstract_ja10.php?cdjournal=1271/kagakutoseibutsu1962&cdvol=.27&noissue=9&startpage=.594 4. 小脳の発達」] 化学と生物』 1989年 '''Vol.27''', No.9 (1989) ppp.594-604, {{doi|10.1271/kagakutoseibutsu1962.27.594}}, 日本農芸化学会
; 教科書
 
教科書
* カンデル神経科学 p942-p962 ISBN 9784895927710
* 臨床神経病理学 p253-p278 ISBN 9784890134403