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[[ファイル:Badger_attributed_Two_Children.jpg|サムネイル|ボストンの男児と(おそらく)女児、1755-1760年ごろ]]
 
'''ブリーチング''' (Breeching) とは、一定の年齢を迎えた男児がはじめて半ズボン([[ブリーチズ]])や長ズボンを履く儀式または習慣のことを言う。 16世紀半ばから<ref>Melanie Scheussler suggests a date of post-1540 for England, France, and the Low Countries; see Scheussler, "'She Hath Over Grown All that She Ever Hath': Children's Clothing in the Lisle Letters, 1533–40", in Netherton, Robin, and Gale R. Owen-Crocker, editors, ''Medieval Clothing and Textiles'', Volume 3, p. 185.</ref>19世紀後半または20世紀はじめにかけて、西欧社会における男児はおよそ2歳から8歳になるまではガウンやドレスを着ており<ref>Baumgarten, Linda: ''What Clothes Reveal: The Language of Clothing in Colonial and Federal America'', p. 166</ref>、ブリーチズを履く習慣がなかった('''アンブリーチ''')。比較的細かな違いとはいえさまざまな様式があり、現代の美術史家はそのコードにしたがって肖像画に描かれた子供の性別をみわけることができる。
 
ブリーチングは男子にとって重要な通過儀礼であり、周囲の人は大いに期待してそれを待ち望むとともに、実際にブリーチングを迎えるときにはささやかな宴をもよおして祝うものだった。男児の親がそれまで以上に子育てに関わる契機になることも多かった<ref>Baumgarten, p. 168</ref>。
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== ブリーチング ==
[[ファイル:Tichborne_detail_boys.jpg|サムネイル|イングランドの男児(1670年)]]
[[ファイル:The Age of Innocence - Reynolds.jpg|サムネイル|[[ジョシュア・レノルズ]]『無垢の時代』(1780(1780年代)]]
男児にとっても女児にとっても、成長するとまずその衣服の丈が短くなる('''shortcoated''')、あるいは赤子のころから着ている足よりも長い丈の衣服を着なくなる。この丈の長い服は、現代でも{{仮リンク|洗礼服|en|Baptismal clothing}}としてその名残がある。歩き始めたばかりの幼児が着るガウンは、肩のところに布状のほそい紐やかざり紐がついており、大人はこの[[手引き紐]]を操って幼児の歩行を支えていた<ref name="Art">Ashelford, Jane: ''The Art of Dress: Clothing and Society 1500–1914''</ref>。
 
この段階を過ぎても、近世ヨーロッパでは、富裕層が注文してつくらせるような肖像画に描かれる子供であれば、正確にそれが誰かはわかっていなくとも、性別を判断することはそれほど難しくない。一方でいわゆる[[風俗画]]では幼い子供はよほど大きく描かれないかぎり細部まで描きこまれることはなく、画家も絵の中に子供の性別を明らかにするような道具をわざわざ描いたりしないものである。労働者階級の子供はおそらく豊かな家柄の子供に比べれば、どちらの性別でも着るような服をおさがりで着ることが多かった。肖像画における服の色彩をみれば、大人同様にざっくりとした性別の判断基準となる。女児であれば白か淡い色合いで、男児であれば赤などもっと濃い色になる。おそらくこの傾向は当時の風俗を完全に再現しているわけではないが、髪型の違いや、胸元、のどや首、腰、そして袖口のつくりの違いなどはだいぶ正確だといわれている。
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スケルトン・スーツはズボンとぴったりした上着を腰かもっと高い位置でボタンで留めるもので、20世紀初頭に登場する[[ロンパース]]ともまた異なる服である<ref>Payne, Blanche; Winakor, Geitel; Farrell-Beck Jane: The History of Costume, from the Ancient Mesopotamia to the Twentieth Century, 2nd Edn, pp. 424–25, HarperCollins, 1992. {{ISBN|0-06-047141-7}}</ref>。しかし、男児がドレスを着る文化は消滅せず、1920年代にはふたたび一般的になった。このころにはひざ丈のものが主流になり、下に[[パンタレット]]を履いて特に隠さないものだった。そしてやはり女児もこの格好をしていた。
[[ファイル:J_F_L_Reinhold_Junge_an_der_Landkarte.jpg|サムネイル|イギリス風のパンタロンとジャケット(ドイツ、18世紀後半)]]
 
 
その後、19世紀半ばから、男の子は成長してブリーチングを迎えるとたいてい[[ショーツ]](丈の短いズボン)をはくようになった。ショーツはドレス同様に身体が大きくなっても着ることができ、また安価であった。ニッカボッカーズも登場するのもこの頃である。イギリスなど一部の国では、9歳から10歳になるまで男児の学校の制服にショーツが採用されていた。ブリーチング後でも男児の上着は大人ものより裾が短いが、これは[[スモーキングジャケット]]やスポーツジャケットなど、はじめはカジュアルな装いとして生まれ、その後定着した、大人の着る裾の短いジャケットに影響を与えた可能性もある。[[第一次世界大戦]]後には、乳児を除けば、ドレスを男児が着る習慣はほぼ完全に廃れたと考えられる。
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== ギャラリー ==
<gallery class="center">
ファイル:Pieter Bruegel d. Ä. 012.jpg|[[ピーテル・ブリューゲル]]の『[[農民の婚宴]]』(1568(1568年頃)の抜粋。帽子から男児とわかる
ファイル:Hilliard Elizabeth Stuart and Son c. 1615.jpg|1615年ごろの[[ニコラス・ヒリアード]]による[[エリザベス・ステュアート]]とその息子ハインリヒ・フリードリヒ(彼のドレスには[[手引き紐]]がついている)
ファイル:Ulrik Prince of Denmark.jpg|デンマーク王クリスチャン4世の子ウルリク(1615年)。髪型と犬の活発な様子から男児とわかる
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ファイル:Lucy Family c 1625.jpg|イングランドのルーシー家(1625年ごろ)、手前の二人と母が抱える一人が男児であり、自分の背丈ほどの弓を手にしている。乳母がついている赤子もおそらく男性である。
ファイル:Retrato del príncipe Baltasar Carlos, por Diego Velázquez.jpg|ベラスケスにおるフェリペ4世の長子バルタサール・カルロス。剣をはき、バトン(元帥杖)を手にしており、鎧ののどあてをしている
ファイル:Charles II Prince of Wales Egmont.jpg|丈が短くなる前のチャールズ2世の肖像画(1630(1630年)。歯の発育のための珊瑚をもっている
ファイル:LouisXVchild.jpg|ルイ15世(1712年)
ファイル:Portrait of the infant Duke of Montpensier Louis Philippe d'Orléans (future Philippe Égalité) by François Boucher.jpg|フランソワ・ブーシェによる3歳の[[ルイ・フィリップ2世 (オルレアン公)|ルイ・フィリップ2世]]。トランプをはじめとして寓意的なおもちゃが描かれている
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* [http://openlearn.open.ac.uk/mod/resource/view.php?id=169757 Skirts and Breeching], [[Open University]], accessed Sept 17, 2007.
 
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[[Category:通過儀礼]]
[[Category:服飾史]]
 
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[[Category:ヨーロッパの文化]]