「只見特定地域総合開発計画」の版間の差分

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=== 漁業と河川環境 ===
[[画像:Lake Okutadami 004.jpg|thumb|250px|[[奥只見ダム#奥只見湖|奥只見湖]]。<br/>正式には銀山湖と呼ばれる。大物の[[イワナ]]などが棲息する釣りスポットでもある。]]
[[漁業]]資源については、階段式にダムが建設されたことにより、[[アユ]]や[[サケ]]などの[[回遊魚]]が、[[日本海]]から只見川上流まで遡上することが出来なくなった。
[[漁業]]資源については、階段式にダムが建設されたことにより[[アユ]]や[[サケ]]などの[[回遊魚]]が[[日本海]]から只見川上流まで遡上することが絶望的となった。特に只見川には奥只見・大鳥・田子倉・本名・宮下といった高さ50メートルを超えるダムもあり、[[魚道]]の設置にも限界がある。その反面で[[陸封魚]]となった[[イワナ]]などが巨大に成長し、それが新たな漁業資源を生み出している。特に'''[[奥只見ダム#奥只見湖|奥只見湖]]'''と大鳥貯水池、[[田子倉ダム#田子倉湖|田子倉湖]]では60センチメートルを超えるイワナが多数棲息しており、独自の河川[[生態系]]を生み出した。この奥只見湖に惚れ込んだのが小説家で釣り好きとしても知られた'''[[開高健]]'''であり、当時[[密漁]]が問題となっていたイワナの保護に乗り出そうと[[1975年]](昭和50年)に「'''奥只見の魚を育てる会'''」を結成させた。この会を通じて奥只見湖の一部が永年禁漁区に指定されたほか、現在では[[ブラックバス]]の密放流に対抗するため[[漁業権]]を管理する魚沼[[漁業協同組合]]と共に新潟県に働きかけ、「外来魚リリース禁止」[[条例]]を制定させるまでに至った。その後もバス推進派である日本釣具振興会企画のバス釣り大会を拒否するなど、生態系保護のために活動を続けている。
 
特に只見川には、奥只見・大鳥・田子倉・本名・宮下といった高さ50メートルを超えるダムもあり、[[魚道]]の設置にも限界がある。その反面で[[陸封魚]]となった[[イワナ]]などが巨大に成長し、それが新たな漁業資源を生み出している。特に'''[[奥只見ダム#奥只見湖|奥只見湖]]'''と大鳥貯水池、[[田子倉ダム#田子倉湖|田子倉湖]]では60センチメートルを超えるイワナが多数棲息しており、独自の河川[[生態系]]を生み出した。
また只見川・阿賀野川については[[大井川]]や[[信濃川]]などのように水力発電による河川流水の途絶、すなわち「'''川枯れ'''」問題は起こっていない。河川本来の水量が豊富なこと、只見川・阿賀野川の発電方式が「川枯れ」を起こした河川における方式と異なることが理由として考えられる。「川枯れ」を起こした河川の場合、その河川に建設されている水力発電所の発電方法は'''[[ダム水路式発電所]]'''と呼ばれるものである。この場合ダムから取水された水は直ちに河川には放流されず、山中を通る[[トンネル]]などで別な地点に建設された発電所に送られ、放流される。このためダムと発電所の間はほとんど流水のない状態になる。こうなると漁業をはじめ河川生態系全般に深刻な影響を与えるばかりか流砂サイクルの途絶により[[海岸侵食]]などにも影響し、大井川では地元と[[中部電力|電力会社]]の摩擦にまで発展した<ref>詳細は[[大井川#大井川・再生への苦難]]、[[塩郷ダム]]、[[田代ダム]]を参照のこと。</ref>。
 
[[漁業]]資源については、階段式にダムが建設されたことにより[[アユ]]や[[サケ]]などの[[回遊魚]]が[[日本海]]から只見川上流まで遡上することが絶望的となった。特に只見川には奥只見・大鳥・田子倉・本名・宮下といった高さ50メートルを超えるダムもあり、[[魚道]]の設置にも限界がある。その反面で[[陸封魚]]となった[[イワナ]]などが巨大に成長し、それが新たな漁業資源を生み出している。特に'''[[奥只見ダム#奥只見湖|奥只見湖]]'''と大鳥貯水池、[[田子倉ダム#田子倉湖|田子倉湖]]では60センチメートルを超えるイワナが多数棲息しており、独自の河川[[生態系]]を生み出した。この奥只見湖に惚れ込んだのが小説家で釣り好きとしても知られた'''[[開高健]]'''であり、当時[[密漁]]が問題となっていたイワナの保護に乗り出そうと[[1975年]](昭和50年)に「'''奥只見の魚を育てる会'''」を結成させた。この会を通じて奥只見湖の一部が永年禁漁区に指定されたほか、現在では[[ブラックバス]]の密放流に対抗するため[[漁業権]]を管理する魚沼[[漁業協同組合]]と共に新潟県に働きかけ、「外来魚リリース禁止」[[条例]]を制定させるまでに至った。その後もバス推進派である日本釣具振興会企画のバス釣り大会を拒否するなど、生態系保護のために活動を続けている。
しかし只見特定地域総合開発計画で建設された発電所のうち、奥只見・沼沢沼・宮下・揚川以外はダムから取水された水がダム本体に付設される発電所で発電されて、直接河川に放流される'''[[ダム式発電所]]'''の方式を採っているため、水量は少なくなっても「川枯れ」にはならない。ダム水路式を採用した奥只見ダムは以前はダム直下が「川枯れ」となっていたが、[[1997年]](平成9年)の[[河川法]]改正によって河川環境の維持が[[治水]]・利水に並ぶ法の目的に挙げられたことで、奥只見ダムより大鳥ダムまでの河川流量を一定に維持するための放流設備を増設し、この区間の流水が復活した。なお、こうした放流を専門的には'''[[放流 (ダム)#河川維持放流|河川維持放流]]'''と呼ぶが、これを利用した小水力発電も日本各地で行われており、奥只見ダムでもこの放流を利用して奥只見発電所とは別に2,700キロワットの発電を行っている。
 
また只見川・阿賀野川については[[大井川]]や[[信濃川]]などのように水力発電による河川流水の途絶、すなわち「'''川枯れ'''」問題は起こっていない。河川本来の水量が豊富なこと、只見川・阿賀野川の発電方式が「川枯れ」を起こした河川における方式と異なることが理由として考えられる。
 
また只見川・阿賀野川については[[大井川]]や[[信濃川]]などのように水力発電による河川流水の途絶、すなわち「'''川枯れ'''」問題は起こっていない。河川本来の水量が豊富なこと、只見川・阿賀野川の発電方式が「川枯れ」を起こした河川における方式と異なることが理由として考えられる。「川枯れ」を起こした河川の場合、その河川に建設されている水力発電所の発電方法は'''[[ダム水路式発電所]]'''と呼ばれるものである。この場合ダムから取水された水は直ちに河川には放流されず、山中を通る[[トンネル]]などで別な地点に建設された発電所に送られ、放流される。このためダムと発電所の間はほとんど流水のない状態になる。こうなると漁業をはじめ河川生態系全般に深刻な影響を与えるばかりか流砂サイクルの途絶により[[海岸侵食]]などにも影響し、[[大井川]]では地元と[[中部電力|電力会社]]の摩擦にまで発展した<ref>詳細は[[大井川#大井川・再生への苦難]]、[[塩郷ダム]]、[[田代ダム]]を参照のこと。</ref>。
 
しかし只見特定地域総合開発計画で建設された発電所のうち、奥只見・沼沢沼・宮下・揚川以外はダムから取水された水がダム本体に付設される発電所で発電されて、直接河川に放流される'''[[ダム式発電所]]'''の方式を採っているため、水量は少なくなっても「川枯れ」にはならない。ダム水路式を採用した奥只見ダムは以前はダム直下が「川枯れ」となっていたが、[[1997年]](平成9年)の[[河川法]]改正によって河川環境の維持が[[治水]]・利水に並ぶ法の目的に挙げられたことで、奥只見ダムより大鳥ダムまでの河川流量を一定に維持するための放流設備を増設し、この区間の流水が復活した。なお、こうした放流を専門的には'''[[放流 (ダム)#河川維持放流|河川維持放流]]'''と呼ぶが、これを利用した小水力発電も日本各地で行われており、奥只見ダムでもこの放流を利用して奥只見発電所とは別に2,700キロワットの発電を行っている。
 
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