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{{出典の明記|date=2019-12}}
'''ゴスペル''' (gospel) または'''福音音楽'''(ふくいんおんがく)は、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]発祥の[[音楽]]の一ジャンル。元来は[[キリスト教]][[プロテスタント]]系の宗教音楽。'''ゴスペル音楽'''(ゴスペルおんがく)ともいう。ゴスペルは英語で[[福音]]および[[福音書]]の意。「[[霊歌]]」(スピリチュアル、黒人霊歌)<ref>[https://kotobank.jp/word/%E9%BB%92%E4%BA%BA%E9%9C%8A%E6%AD%8C-64065 黒人霊歌 こくじんれいか black spirituals - コトバンク・ブリタニカ] および [https://kotobank.jp/word/%E3%82%B4%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%BD%E3%83%B3%E3%82%B0-64919#E7.99.BE.E7.A7.91.E4.BA.8B.E5.85.B8.E3.83.9E.E3.82.A4.E3.83.9A.E3.83.87.E3.82.A3.E3.82.A2 ゴスペル・ソング gospel song の(2) - コトバンク・ブリタニカ]。英語でgospelは集合名詞なのでgospelsとは言わず、the sospel(通常複数)とか形容詞的にthe(/a) gospel song(s)という</ref>は白人の教会音楽、宗教音楽/クラシック音楽と、黒人音楽の融合音楽ジャンルである。それに対してゴスペルは黒人の感情の発露やアフリカ的な[[シンコペーション]]などが特徴で、トーマス・A・ドーシーらが代表的な作曲者だった<ref>http://www.songhall.org/awards/winner/Thomas_A_Dorsey</ref>
 
== 概要 ==
[[奴隷]]としてアメリカ大陸に連行されたアフリカ人は彼ら独自の言語・宗教などをいっさい剥奪された。その苦しい状況下で、彼らのうちのある人々は、救いを与えるゴスペル(福音)と出会い、キリスト教への改宗を経て、神に彼ら独自の賛美をささげるようになった。こうしてアフリカ特有の跳躍する[[リズム]]、[[ブルー・ノート・スケール]]や口承の伝統などとヨーロッパ[[賛美歌]]などの音楽的・詩的感性が融合して[[霊歌|スピリチュアル]]('''黒人霊歌''' negro spiritual <ref>http://kotobank.jp/word/黒人霊歌-499520</ref>とも言う)という現在のゴスペルの基調となる音楽が生まれた。後年になって[[ジャズ]]や[[ロック (音楽)|ロック]]、ヒップホップなど様々なジャンルと結びついてその音楽性は今も進化し続けている。
 
[[教会 (キリスト教)|キリスト教会]]でもこれを用いる教会と用いない教会があるが、特に青少年のための礼拝にはバンドまで繰り出して盛んに使われ、[[カトリック教会|ローマ・カトリック教会]]でも事実上若い信者の獲得のために公認している。
 
なおゴスペル・ミュージックには、[[1930年代]]から[[黒人教会]]で演奏され始めた'''ブラック・ゴスペル'''(一般的にはこちらを指す)と、南部州の[[白人]][[クリスチャン]]アーティストが歌っていた'''ホワイト・ゴスペル'''がある。ブラック・ゴスペルとホワイト・ゴスペル両者とも同じ[[メソジスト]]賛美歌が源流であるが、黒人と白人の教会それぞれが完全に分離していた(→[[人種差別]]、[[ジム・クロウ法]])ため両者黒人・白人リズム間が異なるなどの理由で音楽性かなり異なったものになっている。21世紀では、アフロアメリカによるゴスペルを「'''ゴスペル'''」、ホワイト・ゴスペルを「'''コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック (CCM)'''」と呼ぶのが通例である。
 
教会、礼拝 ([[:en:Christian worship|Christian worship]]) に関連した場所・イベントのみで演奏した[[マヘリア・ジャクソン]]<ref>アポロからコロンビアへ移籍して魅力がなくなったとの説も。貪欲な事業家としても知られ、黒人の間からも批判が出た</ref>。ナイトクラブなど世俗での演奏をした[[ゴールデン・ゲート・カルテット]]、[[クララ・ワード]]など活動形態は様々だった。ゴスペル・カルテットは、Fisk Jubilee Singersの初期の成功に続いて、アカペラスタイルを発展させた。1930年代には、フェアフィールド・フォー、ディキシー・ハミングバーズ、ミシシッピのファイブブラインドボーイズ、アラバマのファイブ・ブラインド・ボーイズ、ソウルスターラーズ、スワン・シルバートーンズ、そしてゴールデンゲート・カルテットが登場した。[[センセーショナル・ナイチンゲイルズ]]で活躍した[[ジュリアス・チークス]]は、その激情型の歌唱スタイルにより「'''最初のソウル・シンガー'''」と呼ばれた<ref>{{cite web |url=http://opalnations.com/files/Julius_Cheeks.pdf|title=The Rev. Julius Cheeks Retrospective|author=Opal Louis Nations|website=Opalnations.com|accessdate=12 December 2019}}</ref>。ウィルソン・ピケット、ジェームス・ブラウン、デヴィッド・ラフィン<ref>テンプテーションズのリードシンガーだった</ref>、ジェームズ・カー、オーティス・クレイ<ref>ハイ・レコードに所属したソウル歌手</ref>らは、ジュリアス・チークスに影響を受けたソウル歌手の例である。
 
== 詳細 ==
これらの知名度の高いカルテットに加えて、1920年代から30年代にかけて多くの黒いゴスペルミュージシャンが演奏を行い、ふだんは南部の街の通りでギターを弾いたり歌ったりしていた。その中で有名なのは、Blind Willie Johnsonブラインド・ウィリー・ジョンソン<ref>ゴスペル・ブルースの有名なシンガー</ref>、Blind Joe Taggartなどである。
 
1930年代、シカゴでは、1920年代に「ジョージア・トム」という名前で世俗的なブルース音楽を書いて演奏してきたトーマス・A・ドーシー(作曲「プレシャス・ロード、テイク・マイ・ハンド」の作曲で知られる)がゴスペル音楽に転向し出版社を設立した。彼は妊娠中の妻と子の死を含め、彼の人生で多くの試練を経験した<ref>http://www.songhall.org/awards/winner/Thomas_A_Dorsey</ref>。トーマスはバプテストの牧師であった彼の父から聖書の知識を得て、そして彼の母親によってピアノを弾くようにすすめられた。家族がアトランタに引っ越したとき、彼はブルースのミュージシャンと仕事を始めた。ドーシーはタンパ・レッド<ref>ブルース歌手</ref>とも仕事をしたことがある。1930年は近代的なゴスペル音楽が始まった年であるとも言われてきた。なぜなら、全国バプテスト協議会が1930年の会議で初めて公に音楽を承認したからである。ドーシーはゴスペル音楽を広める責任があっ努力をした。アメリカ合衆国の当時のポップ・ミュージックであった[[リズム・アンド・ブルース]]に影響を受けたゴスペル・グループは、当時充分な楽器を備え付けられなかった黒人教会の状況も手伝って、[[アカペラ]]という形態のゴスペルを広めた。後にゴスペル出身の[[サム・クック]]<ref>ソウル・スターラーズ出身だった</ref>、[[レイ・チャールズ]]、[[ジェームス・ブラウン]]、ジョニー・テイラーらは、ゴスペルから世俗音楽へ転向し、[[ソウル・ミュージック]]いう新しいジャンルを開拓した。この聖から俗へというゴスペルの流れは、少なからず教会の反感を買った。
 
ソウル・シンガーとして知られる[[アレサ・フランクリン]]、[[ウィルソン・ピケット]]、サム&デイヴなどは幼い頃から教会で親しんでいたゴスペルに、音楽的に大いに影響を受けたと言われる。また、[[サイモン&ガーファンクル]]の大ヒット曲「[[明日にかける橋]]」はゴスペルにインスパイアされたものであるとされている。ゴスペル[[クワイフリカ等で]](聖歌隊)と呼ばれる数人~100名以上から成る力強いコーラス隊を曲の途中(曲の最高潮部分など)から登場させるのキリ伝統的ゴト教会に“逆輸入”ペルの手法だが、[[ロック (音楽)|ロック]]やポップスでも使用されている場合もある。
 
== 80年代以降 ==
ゴスペル[[クワイア]](聖歌隊)と呼ばれる数人-100名以上から成る力強いコーラス隊を曲の途中(曲の最高潮部分など)から登場させるのは伝統的ゴスペルに特有の手法だが、[[ロック (音楽)|ロック]]やポップスでも使用される場合もある。
 
90年代頃から生まれたジャンルとして、キリスト教の布教用歌詞を[[ラップ]]歌詞に乗せたゴスペル・ラップ(holy hip hop, Christian hip hop)などがある。若い[[牧師]]・説教者などが教会で説教する際、時折(通常なら説教に関連した歌のフレーズを口ずさむ所を)ラップに代用させる者もいる。
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== ゴスペルを題材にした映画 ==
* [[天使にラブ・ソングを…]] ''Sister Act'' (1992) [[ウーピー・ゴールドバーグ]]主演。
*: ただし、この映画は[[カトリック教会]]を舞台としており、その音楽は多くが[[聖母マリア]]について歌うため、多くのアフリカ系アメリカ人クリスチャンの観点からすれば、マリア崇敬の無い[[プロテスタント]]の文化であるゴスペル音楽とは本質的に違うものであ異なっている。しかしながら、結果的にこの映画の続編天使にラブ・ソングを2)2』の中のゴスペルナンバー、「[[オー・ハッピー・デイ]]」が日本でのゴスペルブームの火付け役となった。
* [[天使にラブ・ソングを2]] ''Sister Act 2: Back in the Habit'' (1993)
* 天使の贈り物 ''The Preacher's Wife (1996)''
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*[[小坂忠]]
* オークリッジ・ボーイズ
* アウト・オブ・ダークネス(英国プログレ、CCM)
* 11.59(英国プログレ、CCM)
*[[ストライパー]](USA)
*ザ・クロスビーツ(英国)
*キャドモン(英国)
 
== 関連項目 ==