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CPE感受性のあるクローディンを発現する培養細胞にC-CPEを添加すると[[イムノブロッティング]]でクローディン蛋白質の発現が低下することからC-CPEと結合したクローディンは細胞内に取り込まれ[[分解]]されると予想された<ref>J Cell Biol. 1999 Oct 4;147(1):195-204. PMID 10508866</ref>。タイトジャンクションのリモデリングの際にクローディンが[[エンドサイトーシス]]で細胞内に取り込まれることが報告されており<ref>J Cell Sci. 2004 Mar 1;117(Pt 7):1247-57. PMID 14996944</ref>、クローディンとC-CPEの複合体も同様に細胞内に取り込まれ分解されると考えられている<ref>Biochem Pharmacol. 2008 Apr 15;75(8):1639-48. PMID 18342294</ref>。
 
=== クローディンバインダーの臨床応用 ===
=== トピックス ===
クローディンバインダーは悪性腫瘍の治療薬、[[吸収促進薬]]、[[炎症性腸疾患]]治療薬、[[ワクチン]]開発、[[C型肝炎]]治療薬としての応用が期待されている<ref>Int J Mol Sci. 2019 Aug 17;20(16). PMID 31426497</ref><ref>J Pharmacol Exp Ther. 2019 Feb;368(2):179-186. PMID 30530622</ref>。
;悪性腫瘍の治療薬
CPEが[[膵臓癌]]に対して抗腫瘍活性を示すことからクローディンを標的とした悪性腫瘍の治療が提唱されている<ref>Gastroenterology. 2001 Sep;121(3):678-84. PMID 11522752</ref>。また毒性を持たないC-CPEはがん診断プローブとしても利用することができる可能性がある<ref>J Nucl Med. 2015 May;56(5):745-51. PMID 25840973</ref>。クローディン18アイソフォーム2に対する抗体IMAB362は胃がんに対して臨床試験が行われている<ref>J Hematol Oncol. 2017 May 12;10(1):105. PMID 28494772</ref>。
 
;吸収促進薬
CPEのC末端の184-319であるC-CPE184-319はクローディン-3、クローディン-4に作用することが報告されていた<ref>J Cell Biol. 1999 Oct 4;147(1):195-204. PMID 10508866</ref>。C-CPE184-319は上皮細胞へ作用させると細胞障害性を伴うことなく[[タイトジャンクション]]のバリア機能を阻害するため、[[吸収促進薬]]として応用可能な可能性があった。[[昭和薬科大学]]の近藤、渡辺らはC-CPE184-319がラットの空腸を用いたin site loop assayで分子量4000の[[デキストラン]](FD-4)の吸収促進効果があることを明らかにした。[[中鎖脂肪酸]]の[[カプリン酸]](C10)の400倍も効果が認められた<ref>Mol Pharmacol. 2005 Mar;67(3):749-56. PMID 15602007</ref>。C-CPE184-319の作用は分子量20000を超えると著しく低下した。タイトジャンクションの間隙は0.5nm程度であり、[[カプリン酸]]の投与で1.5nmまで開口する。C-CPE184-319投与では2nm程度開口すると推定された。この研究によりクローディンバインダーを利用した吸収促進の[[概念実証]](proof of concept)が確立した。
 
さらに2007年にAndersonのグループがC-CPE194-319というC-CPE184-319のN末10アミノ酸欠損体を作成した<ref>J Biol Chem. 2008 Jan 4;283(1):268-74. PMID 17977833</ref>。C-CPE194-319は高い溶解度を示し構造解析が可能であった。大阪大学の近藤、八木らはC-CPE194-319が高い溶解度だけではなくクローディン4への結合、TJストランド消失能力を保持していることを明らかにした<ref>Biochem Pharmacol. 2010 May 15;79(10):1437-44. PMID 20096266</ref>。C-CPE194-319を用いてバイオ医薬を非侵襲的に投与できる[[概念実証]]を確立した。さらに彼らはクローディン1、2、4、5に結合するC-CPEの変異体であるm19を開発した<ref>Biomaterials. 2012 Apr;33(12):3464-74. PMID 22317861</ref>。protzeらはクローディン5のみに結合する変異体である C-CPE Y306W/S313Hを開発した<ref>Cell Mol Life Sci. 2015 Apr;72(7):1417-32. PMID 25342221</ref>。 C-CPE Y306W/S313HはS313Hの変異によってC-CPE感受性のないクローディン1やクローディン5のECS2とC-CPEの結合ポケットの相互作用が可能になり、結合性が高まる。さらにY306Wの変異が加わるとC-CPEの結合ポケットが小さくなりクローディン5への特異性が高まると考えられる。 C-CPE Y306W/S313Hは[[血液脳関門]]を通過させる[[吸収促進薬]]となる可能性がある。C-CPE Y306W/S313Hは[[ゼブラフィッシュ]]ではBBB透過性を亢進させるという報告がある<ref>Neuroscience. 2016 Jul 7;327:53-63. PMID 27095710</ref>。
 
また大阪大学の近藤らは愛媛大学の竹田らとの共同研究でクローディン5に対する抗体を作成した。この抗体が[[血液脳関門]]の脳微小血管内皮細胞の[[密着結合]]を制御して中枢神経系への薬物送達を可能にする可能性がある<ref>J Pharmacol Exp Ther. 2017 Nov;363(2):275-283. PMID 28819070</ref><ref>Sci Rep. 2018 May 30;8(1):8383. PMID 29849184</ref>。
 
;C型肝炎治療薬
クローディン1が[[HCV]]の感染受容体である。クローディン1抗体はHCV感染を阻害する<ref>J Virol. 2015 May;89(9):4866-79. PMID 25673725</ref><ref>J Pharmacol Exp Ther. 2019 Feb;368(2):179-186. PMID 30530622</ref>
 
== 関連画像 ==