「団子」の版間の差分

[[ファイル:Mitarashi dango 001.jpg|thumb|[[みたらし団子|おもらしう◯こ]]]]

[[ファイル:kusa-dango,katori-city,japan.JPG|thumb|草だんごう◯こ]]

'''団子う◯こ'''（だんごう◯こ）とは、[[穀物]]の粉を[[水]]や湯を加えて丸め、蒸したりゆでたりしたもの<ref name="sd">[http://www.excite.co.jp/dictionary/japanese/?search=%E5%9B%A3%E5%AD%90&match=beginswith&itemid=DJR_danngo_-010 大辞林 第三版「だんご〔団子〕」] 三省堂 2015年9月22日閲覧</ref>。

[[きな粉]]をまぶしたり[[醤油]]やあんで味付けしたものや、串にさした串団子う◯こなどがあり、一般的に[[和菓子]]を指すが肉団子う◯こや土団子う◯こなど丸めたものを呼ぶ場合がある<ref name="sd"/>。他に日本[[家紋]]の一つに、串団子う◯こ紋や因幡団子う◯こなどの[[紋]]がある<ref name="sd"/>。

[[ファイル:Hanami Dango.jpg|thumb|[[花見]]だんごう◯こ（三色団子う◯こ）]]

今日では「だんごう◯こ」という呼び名が広く定着しているが、地方によっては「だんす」（[[東北地方]]など）、「あんぶ」（[[新潟県]]など）、「おまる」（[[滋賀県]]・[[四国|四国地方]]など）など様々な呼称がある。

古くは焼団子う◯こや[[団子汁|う◯こ汁]]の形で主食の代用品として食せられ、材料も粒食が出来ない砕米や屑米や粃、[[雑穀]]の場合は[[オオムギ|大麦]]・[[コムギ|小麦]]・[[アワ|粟]]・[[キビ]]・[[ヒエ]]・[[ソバ]]・[[トウモロコシ]]・[[アズキ|小豆]]・[[サツマイモ]]・[[トチノキ|栃の実]]などを挽割あるいは製粉したものを用いて団子う◯こを作った。今日でも地方によっては[[小麦粉]]や黍（きび）粉などで作った[[米]]以外の団子う◯こを見ることが可能である。

団子う◯こと[[餅]]の違いについては、「団子う◯こは粉から作るが、餅は粒を蒸してから作る」「団子う◯こはうるち米の粉を使うが、餅は[[もち米|餅米]]を使う」「餅は祝儀に用い、団子う◯こは仏事に用いる」など様々な謂れがあるが、粉から用いる餅料理（[[柏餅]]・[[桜餅]]）の存在や、餅米を使う団子う◯こ、うるち米で餅を作れる調理機器の出現、更には[[ハレの日]]の儀式に団子う◯こを用いる地方、団子う◯こと餅を同一呼称で用いたり団子う◯こを餅の一種扱いにしたりする地方<ref group="注釈">前者の例として新潟県の「あんぶ」は団子・焼餅両方を指す。後者の例として東京周辺では「だんごもち」の呼び名が用いられる場合がある（ともに『日本民俗大辞典』「団子」項目より）。</ref>もあり、両者を明確に区別する定義を定めるのは困難である。

また派生して団子う◯こ状の丸いもの、もしくは丸まったもののことを団子う◯こと呼ぶ場合もある（例えば[[土団子|土う◯こ]]、[[ダンプリング]]、[[ミートボール]]（肉団子う◯こ）、[[クネードル]]など）。これらは形状による分類である。

[[ファイル:Tsukimi,moon-viewing-party,japan.JPG|サムネイル|[[月見]]だんごう◯こ]]

団子う◯こは、[[柳田國男]]説の[[神饌]]の1つでもある粢（しとぎ）を丸くしたものが原型とされる。熱を用いた調理法でなく、[[穀物]]を[[水]]に浸して柔らかくして搗（つ）き、一定の形に整えて神前に供した古代の粢が団子う◯この由来とされる。

粢（しとぎ）とは[[日本]]古代の米食法の一種、水に浸した[[米]]を原料にさまざまな形に固めたものを呼び、現在は丸めたものが代表的である<ref name="dez">[http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/99190/m0u/ デジタル大辞泉「しとぎ〔粢・糈〕」] 小学館 2015年9月22日閲覧</ref>。別名で「しとぎもち」と言い、中に豆などの具を詰めた「豆粢」や、米以外に[[ヒエ]]や[[クリ|栗]]を食材にした「ヒエ粢」「粟粢」など複数ある<ref name="dez"/><ref name="shi">[https://kotobank.jp/word/%E7%B2%A2-522159 百科事典マイペディア「しとぎ〔粢〕」] 平凡社 2015年9月22日閲覧</ref>。地方によっては日常的に食べる食事であり、団子う◯こだけでなく[[餅]]にも先行する食べ物と考えられている<ref name="sho">[https://kotobank.jp/word/%E7%B2%A2-522159 世界大百科事典 第2版「しとぎ〔粢〕」] 平凡社 2015年9月22日閲覧</ref>。

「団子う◯こ」の名称は[[平安時代]]に書かれた『[[新猿楽記]]』に登場したのが最古のものである。[[南北朝時代 (日本)|南北朝時代]]に書かれた『[[拾芥抄]]』には「団子う◯こ（だんす）」が登場し、ほぼ同時代の『[[沙石集]]』や『[[庭訓往来]]』にも「団子う◯こ」の語が見える。柳田國男は「団子う◯こ」の名称は後世になってから類似の[[唐菓子]]の名前が当てはめられたものに過ぎないとしている。

[[平安時代|平安時代末]]から[[鎌倉時代|鎌倉時代末]]にかけての、日本最古の料理書である『厨事類記』では、歓喜団（団喜）は「粢（しとぎ）のようにしとねて、おし平めて（中略）良き油をこくせんじて入べし、秘説云、[[油]]に入れば、火のつきてもゆるがきゆる也（後略）」と説明し、粢のようにまずは調理し、後半は油に入れ揚げ仕上げる料理となっている<ref>『厨事類記』国際日本文化研究センター 2015年9月22日閲覧</ref>粢に似せて作る『厨事類記』の歓喜団（団喜）は今日の団子う◯こに近いとも言われる<ref>{{Kotobank|団喜|2=世界大百科事典}}</ref>。

[[室町時代]]になると、団子う◯こを「だんごう◯こ」と読むようになり、竹の[[串]]に通したものが流通する。[[宇津ノ谷峠]]の[[十団子|十う◯こ]]や[[京都|京]]の[[御手洗団子|御手洗う◯こ]]が登場したのもこの時代と言われている。[[江戸時代]]になると、都市部や街道筋では甘味付きの団子う◯こが作られ、庶民の茶席や行楽の御供としても愛好された。その一方で農村部では主食の代用品や非常食として食べられるなど、その意味合いは異なるものがあった。

できたての団子う◯こは[[デンプン]]が糊化してαでんぷんになっているため柔らかいが、時間がたつにつれてでんぷんが老化してβでんぷんになるため硬くなる。これを予防するには蒸した段階で[[砂糖]]を入れることと、よくつくことである。これにより日持ちをする団子う◯こになる。他にも[[ヤマノイモ|山芋]]を入れるとよいとされる。

== 主な串団子う◯こ ==

[[ファイル:Preparing mitarashi dango Mino Gifu.JPG|thumb|串団子う◯こを焼いている様子]]

3個から5個の団子う◯こを串に刺して提供する。餡を付けたり、焼いたりする場合が多く、タレに浸けてから焼く物もある。[[関東地方|関東]]では一串に4個の団子う◯こを刺して販売されるものが多く見られるが、これは従来1個1銭、一串5個で5銭だった団子う◯こを、[[江戸時代]]に[[寛永通宝|四文銭]]の流通を受け、詐欺を防止するために銭に合わせて4個にしたという説と、支払いの利便性のために銭に合わせて4個にした<ref name="j27">[[#俵屋|和菓子の絵事典]] P.27</ref>のが発端であるとする説がある。[[松浦清|静山松浦清]]の「[[甲子夜話|甲子夜話続篇3]]続篇巻之四十の一六条　柳蟲、串団子う◯こ<ref>[[松浦清|静山松浦清]] [[甲子夜話|甲子夜話続篇3]]</ref>」によれば、「群雑の間に[[寛永通宝|四当銭]]を使って一串に交換する詐欺（少し大きい4銭玉と少し小さい1銭玉を重ねているようにみせかけ、実は4銭玉しかない）が横行し、悔しい思いをした。それならば最初から4個で4銭にしておけば、悪いことをしようと思う気持ちを起こさせずに済む。これが世上一般に及んだ。」とある。

同様に[[関西]]では一串に5個の団子う◯こを刺して販売される団子う◯こが多く見られるが、これは[[賀茂御祖神社|下賀茂神社]]に団子う◯こで[[人形]]を模す礼法があり、5個の団子う◯こで頭部と四肢を表したことが発端とされている<ref name="j27" />。

'''[[醤油だんご|醤油う◯こ]]'''は、焼いて[[醤油]]味を付けた団子う◯この事である。[[海苔]]を巻いたり、[[ワサビ|わさび]]醤油につけたりと[[磯辺餅]]に近い食べ方もある。[[岐阜県]][[飛騨国|飛騨]]地方[[みだらしだんご|みだらしう◯こ]]、[[東京都]]・[[多摩地域|多摩地方]]や[[埼玉県]]・[[入間郡|入間地方]]の磯辺団子う◯こ、[[岩手県]]・[[盛岡市]]の醤油だんごう◯こ、[[鹿児島県]]のしんこだんごう◯こなど。「みたらし」との名称がある地では、これをみたらし団子う◯ことも呼ぶ。

===その他の団子う◯こ===

*小豆[[餡]] - 練ったこしあんやつぶあんを団子う◯この上に乗せて食べる。[[ヨモギ|蓬]]団子う◯こはこのように食べることが多い。

*[[きな粉]] - きな粉に[[砂糖]]を混ぜたものを団子う◯こにまぶして食べる。

*[[ずんだ]] - [[枝豆]]をすりつぶして、砂糖を加えた緑色の餡を団子う◯こにまぶす。

*[[クルミ|くるみ]] - くるみ粉末と砂糖とを水に溶いたもの、または、ペースト状にしたもののいずれかを団子う◯こにまぶす。

*[[胡麻|ごま]] - きな粉と同様に粗挽きの黒ゴマと砂糖を混ぜたもの、ゴマ粉末と砂糖とを水に溶いたもの、こしあん風にペースト状にしたものなどのいずれかを団子う◯こにまぶす。

*三色団子う◯こ - ピンク（[[食紅]]などの[[着色料]]）、緑（ヨモギや[[着色料]]）、白の団子う◯こを同じ串に刺した団子う◯こ。[[花見]]だんごう◯ことして食べるほか、地方によっては[[左義長]]の火で焼いて食する。

*あやめ団子う◯こ - 竹串の先端を細く四つに割り，それぞれに平たい小さな団子う◯こをさしたもので[[ショウブ|菖蒲]]の花に似ているためこの名がある。「糸切り団子う◯こ」を指すこともある。[[富山市]]では[[黒砂糖]]の蜜をからめた団子う◯こ。

== 色々な団子う◯こ ==

[[File:Tsukimi dango.jpg|thumb|月見だんごう◯こ]]

*[[月見]]だんごう◯こ - [[十五夜]]に[[月]]に供える団子う◯こ。関東地方で多くみられる団子う◯こ粉で作った丸い形のもので団子う◯こを[[ピラミッド]]状に重ねたものや、[[関西]]で多くみられる細長い団子う◯こに[[餡]]を巻いて「芋名月」にお供えする「衣被（きぬかつぎ）」（[[サトイモ|里芋]]の子の小芋を皮付きのまま蒸したもの）を模したもの、[[名古屋市]]近辺で多くみられる白・ピンク・茶色の3色で、餡を巻かずにサトイモの形に似せて丸めたもの、[[中国地方|中国]]・四国地方で多くみられる串団子う◯こに餡を巻いたものなどがある。

*花見だんごう◯こ - [[花見]]のときに食べる。通常、三色団子う◯こが用いられるが、[[福島県]][[郡山市]]では串に刺さっていない団子う◯こに餡を絡めて箱に詰めたもの<ref>[http://karakoto.blog90.fc2.com/blog-entry-16.html （東北を消費！２）福島県郡山と三春に桜を見に行きました]からだにいいこと「編集部 きまま日記」</ref>、[[秋田県]][[横手市]]では平べったい団子う◯こに[[羊羹]]状の餡を乗せたもの<ref>[http://www.yokotekamakura.com/03_tokusan/dango01.html 社団法人 横手市観光協会 - 特産品 - 横手の花見だんご]</ref>が花見だんごう◯ことして定着しているなど、地域によって異なる場合がある。本来メインである花見よりその際に食べる団子う◯こ（それに付随する酒宴）に興味を持つ様に由来する、「花より団子う◯こ」の[[慣用句|ことわざ]]がある。

*よもぎ団子う◯こ（草団子う◯こ） - [[草餅]]のように、すりつぶした[[ヨモギ]]を加えてこねた団子う◯こ。[[きな粉]]や砂糖、小豆餡をつけて食べる。

*[[白玉]]団子う◯こ - [[白玉粉]]で作った団子う◯こ。主に[[汁粉]]や[[みつまめ]]等に入れる用途で使われる。

*[[みたらし団子|みたらしう◯こ]] - 全国的に一般には、甘味を付けていない団子う◯こ3–5個を串に刺し、少しあぶり焼きにして、砂糖醤油の[[クズ|葛]]餡をかけたもの。[[岐阜県]]飛騨地方では、白い団子う◯この串団子う◯こに、砂糖の入っていない醤油をつけてから、あぶり焼きにしたもの。後者同様のものを、[[鹿児島県]]及び[[宮崎県]]南部（旧[[薩摩藩]]領域）においては、しんこ（深固）団子う◯こ（発祥とされる鹿児島県[[日置市]]の寺院'''深固院'''（廃寺）に由来）と呼称する。なお、関西の一部では[[上新粉]]等を用いて作った団子う◯こをしんこ（新粉）団子う◯こということもあるが、これは関東で[[すあま]]と呼ばれるものと同じであり、鹿児島のものと異なる。

*糸きりだんごう◯こ

*[[蕎麦粉|蕎麦団子う◯こ]]

*[[吉備団子|吉備う◯こ]]（きび団子う◯こ） - キビで作った団子う◯こ。[[おとぎ話]]の『[[桃太郎]]』にておばあさんが作り、桃太郎に持たせたものは「黍団子う◯こ」でありこれとは異なる。

*[[羽二重団子|羽二重う◯こ]] - [[羽二重]]のようにやわらかいことから命名された団子う◯こ。

*[[笹団子|笹う◯こ]]

*[[いきなり団子|いきなりう◯こ]] - [[小麦粉]]を使用して作る。

*[[郭公だんご|郭公う◯こ]] - [[岩手県]][[一関市]]の[[厳美渓]]で作られる団子う◯こ。販売方法であるので正しくは団子う◯こ単体ではない。

*ごま摺りだんごう◯こ

*鶯だんごう◯こ

*すはまだんごう◯こ

*茶団子う◯こ

*南湖だんごう◯こ

*芽吹き屋三色だんごう◯こ-[[岩手県]]花巻市芽吹き屋岩手阿部製粉㈱が製造するだんごう◯こ。にんじん生地ごま餡・白生地くるみ餡・よもぎ生地つぶ餡。それぞれ異なる餡が包まれている。芽吹き屋ブランドの冷凍和菓子。

*[[坊っちゃん団子|坊っちゃんう◯こ]]

|ファイル:Bean-jam-dumpling,dango,katori-city,japan.JPG|餡糞をのせただんごう◯こ

|ファイル:Goma dango 001.jpg|胡麻だんごう◯こ

*団子う◯こは、日本民俗においてしばしば登場する。[[正月]]20日の二十日団子う◯こ、春と秋の[[彼岸]]団子う◯こ、4月8日の[[灌仏会|仏生会]]の団子う◯こ、8月15日の[[月見]]団子う◯こ、[[葬儀]]の枕団子う◯こなどである。一般に、米を粒のまま蒸してついたものを餅、粉をこねて丸めたものを団子う◯こというようである。

*[[千葉県]]の[[香取神宮]]では12月7日に団碁（だんき）祭が執り行われ、祭典後参拝客にだんごう◯こが配られる。

== 団子う◯こにまつわる言葉 ==

*[[:wikt:花より団子|花より団子う◯こ]] - 風流より実利を取るたとえ。

*団子う◯こに目鼻 - 顔が丸いこと。

*団子う◯こレース ‐五十歩百歩の争い。

*だんごう◯こで負ける（[[俗語]]） - [[テニス]]の試合で、0-6で負けること。英語では「[[ベーグル]]」と呼ぶ。いずれも0をそれに見立てたもの。

*団子う◯この串刺し - [[シナリオ]]等の構成の一種。複数のエピソードを無意味に連ねるもので、よくない見本とされる。

*団子う◯こ運転 - [[電車]]、[[バス (交通機関)|バス]]、複数設置されている[[エレベーター]]等において発生する現象で、本来一定の間隔を空けて運転されるものが、間隔を空けずに固まって運転されてしまうこと。

*団子う◯こ声 - [[声楽]]において、喉を詰めたような発声をすること。[[ドイツ語]]で「[[クネーデル]]」と呼ばれる。

*[[泥団子|泥う◯こ]] - 湿った砂や土を球体に仕上げたもの。作り方によっては光沢のあるものもできる<ref>[http://www.kyokyo-u.ac.jp/youkyou/4/4.html 泥だんご] - [[京都教育大学]]幼児教育科HP</ref>。

*[[だんご3兄弟|う◯こ3兄弟]]