「ミクソゾア」の版間の差分

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ミクソゾア類の多くは[[魚類]]と[[環形動物]]または[[コケムシ]]類の2つの宿主を行き来する生活環を持っている。感染は殻(valve)に包まれた多細胞性の胞子によって起きる。胞子には1または2つの'''[[スポロブラスト]]'''(胞嚢体、sporoblast)と、胞子を宿主に固定する'''極糸'''(極繊維、polar filament)が入った1または複数の'''[[極嚢]]'''(polar capsule)が含まれている。スポロブラストは運動能のある'''アメーバ型胚子'''(amoebula)になり、これが宿主の組織に侵入して多核の[[変形体]](plasmodium)に成長する。その後、核が対になって、一方が他方を取り囲み、新たな胞子を生じる。
 
極嚢は構造や外見が[[刺胞動物]]の刺胞に良く似ている。このためミクソゾア類は極端に退化した刺胞動物であり、その中でも[[ポリポディウム]](''Polypodium'')に近縁だと考えられた時期があった。しかし最近のHox遺伝子の解析では、[[左右相称動物]]が起源という結果になる。また長さ2 mmほどの蠕虫のような寄生虫である''Buddenbrockia plumatellae''が、ミクソゾアに属する[[軟胞子虫]]でかつ縦走筋を持っているという結果からも、左右相称動物起源が強く支持される。
 
== 分類 ==
ミクソゾア類は1990年頃までは[[原生動物]]だと考えられていたが、しかしミクソゾア類が[[後生動物]]だとする考え方は、実は19世紀末にはすでにあった。放線胞子虫の研究者であるŠtolcは1899年の論文で、粘液胞子虫や放線胞子虫の胞子が多細胞性であり、原生動物とは言えないことを指摘している。またWeillは1938年に、極嚢が[[刺胞動物]]の[[刺胞]]に良く似ており、また粘液胞子虫がポリポディウム(''Polypodium hydriforme'')の寄生生活期とよく似た症状を示すことから、極端に退化した刺胞動物であると主張している。しかしこうした考え方は分子系統解析が行われるまでは軽視されていた。
胞子の形態に基づいて分類する。病原体などとして有名なものを例示した。
 
ミクソゾア類で初めて分子系統解析が行われたのは1994年のことで、これにより確かに後生動物の系統に属し、特に刺胞動物ではなく[[線形動物]]に近縁であるという結果が得られた。線形動物との近縁性は意外なものだったため、すぐにポリポディウムの配列も含めた追試が行われ、ミクソゾア類はポリポディウムに近縁であり、デスモソームやタイトジャンクションの存在からも後生動物起源だと認められるようになった。
 
しかし長らく所属不明であった線虫類似の寄生虫''Buddenbrockia plumatellae''が、ミクソゾアに属する[[軟胞子虫]]でかつ縦走筋を持っているという発見は、ミクソゾア類の左右相称動物起源を強く支持している。Hox遺伝子を使った解析でも[[左右相称動物]]起源という結果になるため、分子系統解析でポリポディウム類への近縁性が示されるのはロングブランチアーティファクトの影響だという考え方も支持を集めている。
 
ミクソゾア門では基本的に胞子の形態に基づいて分類している。病原体などとして特に有名なものを例示したが、詳細はそれぞれの綱の項目を参照のこと
 
*[[軟胞子虫]]綱 Class [[w:Malacosporea|Malacosporea]]
***''Buddenbrockia plumatellae''
**軟殻目 Order [[w:Malacovalvulida|Malacovalvulida]]
***''Tetracapsuloides bryosalmonae'' - [[サケ]]の重要な寄生虫
***''Buddenbrockia plumatellae''
***''Tetracapsuloides bryosalmonae'' - [[サケ]]の重要な寄生虫
*[[粘液胞子虫]]綱 Class [[w:Myxosporea|Myxosporea]]
***''KudoaMyxobolus'' spp.
**双殻目 Order [[w:Bivalvulida|Bivalvulida]]
**''Ceratomyxa shasta''
***''Myxobolus'' spp. - サケ・[[マス]]の重要な寄生虫
***''Ceratomyxa shastaKudoa'' spp.
**多殻目 Order [[w:Multivalvulida|Multivalvulida]]
***''Kudoa'' spp.
 
なおかつて[[放線胞子虫]]綱(Class Actinosporea)とされていた生物群は、[[粘液胞子虫]]類の[[生活環]]の一時期に相当すると考えられている。
 
== 参考文献 ==
*横山博 「魚類に寄生する粘液胞子虫の生活環と起源」『原生動物学雑誌』第37巻第1号、1-9頁、2004年。[http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsproto/journal/jjp37/001-009.pdf PDF available]
*{{cite journal | author = Kent, M. L., Margolis, L. & Corliss, J. O.
| title = The demise of a class of protists: taxonomic and nomenclatural revisions proposed for the protist phylum Myxozoa Grasse, 1970
| journal = Canadian Journal of Zoology
| year = 1994 | volume = 72 | issue = 5 | pages = 932-937}}
*{{cite journal | author = Monteiro, A. S., Okamura, B., and Holland, P. W. H.
| title = Orphan Worm Finds a Home: ''Buddenbrockia'' is a Myxozoan
| journal = Molecular Biology and Evolution
| year = 2002 | volume = 19 | issue = 6 | pages = 968-971}} [http://mbe.oupjournals.org/cgi/content/full/19/6/968]
*{{cite journal | author = Kent, M. L., Margolis,et L. & Corliss, J. Oal.
| title = Recent advances in our knowledge of the Myxozoa
| journal = Canadian Journal of ZoologyEukaryotic Microbiology
| year = 2001 | volume = 48 | issue = 4 | pages = 395-413}} [http://research.amnh.org/users/siddall/pub/Myxozoa.pdf PDF available]
 
{{commons|Category:Myxozoa}}