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{{出典の明記|date=2016年7月22日 (金) 01:55 (UTC)}}
[[File:Taapmajärvi wilderness hut detail.jpg|thumb|right|200px|小屋の一例]]
[[ファイル:Banja.jpg|thumb|いわゆる[[ログハウス]]と呼ばれる形式の小屋]]
[[File:Ruthwaite Lodge, Grisedale - geograph.org.uk - 10555.jpg|thumb|right|200px|イギリスの山小屋]]
'''小屋'''(こや ''hut'' )とは、[[建築物]]のうち、小さく、簡単な作りのものを指す。
[[File:Museo marítimo Ósvör, Bolungarvík, Vestfirðir, Islandia, 2014-08-15, DD 066.JPG|thumb|right|200px|[[アイスランド]]の海岸にある、漁民が使っていた乾燥小屋(現在は博物館として利用)]]
[[File:Life of Abraham Lincoln, illustrated - a biographical sketch of President Lincoln taken from Abbott's "Lives of the Presidents," and containing sixty half-tone illustrations and portraits (1875) (14781681514).jpg|thumb|right|200px|[[エイブラハム・リンカーン]]が子供のころに暮らし、育った小屋]]
[[File:DogHouse Dash President Harrison.jpg|thumb|right|200px|犬小屋]]
'''小屋'''(こや、{{Lang-en-short|hut}} ハット)とは、
*小さくて、簡単な造りの(粗末な)[[建物]]<ref name="daijirin">大辞林「小屋」</ref>。
*[[芝居]]などを興行する建物<ref name="daijirin" />。
 
== 概要 ==
小屋の基本の意味は「小さい建物」であり、結果として一般的には、小さくて、比較的簡素なつくりの建物を指している。
小屋は、簡易的な構造からなる建築物の一種で、その多くでは「[[雨]]や[[太陽光線|日差し]]を遮る[[屋根]]」と、この屋根を支える[[柱]]ないしその柱を代用する[[壁]]などで構成され、その多くでは[[設備]]的に付加された要素が少なく、住居性(中に居ることによる快適さ)の面では建築物一般の内でも低い部類に入る。建物内部はあまり区分けされず、[[部屋]]は狭いものが1つであるか、ごく少ない。
 
さまざまな小屋があり、使用目的や設置場所などで分類されている。家畜を飼うための小屋を「家畜小屋」、さらに細分化して、鶏を飼う小屋を「鶏小屋」、馬を飼う小屋を「馬小屋」...などと分類したり、物を置いておくための小屋を「物置小屋」、水車を設置するための小屋を「水車小屋」と分類したり、山に設置される小屋を「山小屋」と分類する方法などがある。→[[#種類・分類]]
いわゆる「[[掘っ立て小屋]]」(ほったてごや:柱を立てるのに[[礎石]]を使わず穴を掘って[[地面]]に突き立てるだけの簡単な構造に由来→[[掘立柱]])に代表されるように、その立て方も建物一般に比較して簡略的で、ともすれば「粗末な」建物だとみなされる。
 
ちなみに[[聖書]]には、[[イエス・キリスト]]は家畜小屋(馬小屋)で生まれた、と書かれている。
現代ではいわゆる[[プレハブ工法]]のように、[[部品]]として[[工場]]など別の場所で作られた壁を支えとして組み立てられる建築物も小屋の範疇ではあるが、更には建物自体を[[コンテナ]]状の枠組みに[[照明|照明機器]]のほか[[窓]]・[[扉]]など幾らかの必要に応じた設備を付与したものをそのまま持ってきて設置したとしても小屋の範疇となる。
 
小屋の中には簡易的な[[住居]]として利用されるものもある。小屋の内部空間は比較的小さいが、たとえばアメリカの森林や山奥、また日本の里山などで、(独り暮らしの人などで)小屋を建ててかなり快適に暮らしている人もいる。<ref>日本では、[[禅宗]]で「座して半畳、臥して一畳」などと言い、また、俗に「起きて半畳、寝て一畳」や「「座って半畳、寝て一畳」などとも言い、「生きる」ということであれば、実際には小屋程度の空間があれば、工夫しさえすれば、人間は快適に生きてゆくことができる。また、洋の東西を問わず、「小欲知足」(しょうよくちそく、おのれの内に起こる欲を小さくして、むしろ わずかなもので足りることをさとり、それによって深い幸福感を実感して暮らすこと。)で幸せに暮らしている人々がいる。</ref>
その用途は、簡易的な[[住居]]としてや、単に荷物を保管しておくための[[倉庫]](物置)として、また人里離れた場所には[[狩猟]]や[[林業]]の作業期間だけ利用する仮住居ないし天候が崩れた場合の[[シェルター|避難場所]]としての[[山小屋]]などが挙げられる。このほか、[[動物]]([[家畜]])を飼うことに供されるものもこのように呼ばれ、所謂「鳥小屋」や「犬小屋」などが見出される。
ただし(独りで住むのはともかくとして)、多人数で長期間住むには向かない。
 
;歴史
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考古学的には、最古の小屋跡は、フランスの地中海沿岸部にある{{仮リンク|テラ・アマタ遺跡|en|Terra Amata (archaeological site)}}であり(参考・後述書)、約38万年前のもので、火を使った痕跡もあり、時代的に考えて、[[ホモ・ハイデルベルゲンシス]]が作った可能性が高いとされる(出典:更科功 『絶滅の人類史』 NHK出版新書 2018年 p.160)。
[[ログハウス]]や[[プレハブ]]の様に手間、[[費用|設置費用]]をあまりかけない。その為、居住性は悪い。
 
;芝居小屋
[[山小屋]]、ほったて小屋、ウサギ小屋
江戸時代などでは、「旅役者(たびやくしゃ)」と呼ばれる人々がおり、役者たちが劇団(一座)をつくり、一座で旅をしては旅先で、簡易的に小屋を建てて簡易的な舞台と客席を作り、そこで入場料をとって[[芝居]]を見せた。もともと小さい(簡易的な)建物だったので「小屋」と呼ぶのがふさわしかったので人々の間で「小屋」と呼ぶ習慣となり、その後、人気の出た一座では観客の数がしだいに増え、多くの観客を入れるために中規模程度以上の建物を作る一座も現れるようになっても、呼び方の習慣は残り、芝居などを興行するための建物全般を(中規模以上のものまで含めて)「小屋」と呼ぶようになった。(その延長で、現代では芝居だけでなくライブ演奏などを観客に聴かせる[[ライブハウス]]や その他の[[多目的ホール]]まで「小屋」と呼ぶことがある。)
 
== 種類・分類 ==
比喩的な表現としては大きな建物と対比して小さな建物のことを言ったり、特に[[ホームページ]]において個人的な領域を「○○小屋」と呼称したりする。
さまざまな分類法がある。
 
ひとつには使用目的で分類する方法があり、例えば[[物置]](ものおき、[[倉庫]])として使う小屋を「物置小屋」と分類する。
また([[家畜]]を小屋で飼うことも多いわけであるが)鶏を飼う小屋は「鶏小屋」、牛を飼っておくための小屋を「牛小屋」<ref>[https://kotobank.jp/word/%E7%89%9B%E5%B0%8F%E5%B1%8B-439574]</ref>、豚を飼っておくための小屋を「豚小屋」、馬を飼っておくための小屋を「馬小屋」<ref>[https://kotobank.jp/word/%E9%A6%AC%E5%B0%8F%E5%B1%8B-1274701]</ref>、うさぎを飼っておく小屋を「うさぎ小屋」などと分類する。また(家畜ではないが、ペットの)犬を飼っておくための小屋を「[[犬小屋]]」と言う。
 
水車を設置するための小屋は「[[水車小屋]]、 {{Lang-en-short|water-wheel hut}}」と分類する(英語では、規模のやや大きいものは「water-wheel house」と呼ぶ)。
 
フィンランドにおいては、[[サウナ]]を設置してある「サウナ小屋」が非常に多数ある。(しばしば湖のほとりなどに作ってあり、身体を温めて
 
(上の概説で解説したが)[[芝居]]を興行するために作られる小屋は「芝居小屋」(しばいごや)と言う。簡易的な[[舞台]]と簡易的な[[客席]]が設けられる。
 
日本では古く[[女性]]が[[月経|生理]]の際に入る建物を小屋といった。これは特に'''月小屋'''ないし'''」(や「他屋'''」)と呼ばれんだ。<ref>昔の日本人は月経の血[[穢れ]]されす人がいことにちなむため。この[[風習]]では同じ[[火]]([[かまど]])で[[調理|煮炊き]]した物を食べることも[[タブー|禁忌]]とみなされていたため、その間は一人で炊事したものを食べた。各地にこの[[習慣]]があった。現存するものは少なくなっているものの、地方に取り壊されずに残っているものもある。</ref>
 
他にも設置される場所で分類する方法もあり、たとえば山に設置される(建てられる)小屋は、一般に、「[[山小屋]]」と分類する(用途としては、[[登山]]者や[[林業]]
関係者 等々が荒天時のシェルターと利用するものや、それに加えて通常時にも宿泊場所として利用するものもある)。
 
工法で分類する分類法もあり、日本では、特に粗雑な作りの小屋のことを「ほったて小屋」と分類することがある。「[[掘っ立て小屋]]」(ほったてごや)という表現は「[[掘立柱]]」に由来し、掘立柱とは[[礎石]]も使わず、ただ穴を掘って直接[[地面]]に突き立てただけの柱のことであり、そうした柱を使って建てるくらいに手を抜いた作り方をした小屋のことを指している。
 
== 工法・構造 ==
さまざまな工法がありうる。
 
[[地中海地域]]や[[欧州]]では伝統的には、壁を構造体として組み立てる方法が建築の基本中の基本であるので、壁をつくり、その上に屋根を乗せるということになる。
たとえば、基礎の上に[[丸太]]([[ログ]])の一部を削っておいてそれを積み上げて壁を作り、その上に同じく丸太で[[屋根]]構造を作り、その上に雨を防ぐ素材ならべる。
あるいは石(や土)を積み上げて壁を作り、その上に木材で屋根構造を作る。
 
極東アジアでは、[[木造軸組構法|軸組工法]]のほうが広まったので、小屋づくりでもまず木材ばかりを組み合わせて骸骨のような構造体をつくり、とってつけたような壁を足すという方法がとられることも多い。
 
(なお、上でも解説したが、その中で、特に「手抜き」をして土に穴を掘って柱をたてて作った小屋を「掘立小屋」と呼んだ。)
 
20世紀後半以降は、[[プレハブ工法]]を採用し、工場で作られた部品をひと揃い用意しておいて、まとめてトラックで現場に運び込み、プラモデルのような感覚で、わずか数時間~半日 程度で組み立てる手法もある。
 
さらに近年では、あらかじめ[[コンテナ]]を加工して[[扉]]や[[窓]]などをつけておいたものを、トラックで移動して(コンクリートブロックなどの上に)ただ降ろすだけで小屋として設置完了、という方法もある。
 
[[犬小屋]]の場合、木材で日曜大工的に自作する場合、まず角材でざっくりと四隅の垂直の柱部分や水平の(梁の)部分を組み、壁として板材(合板)を釘で打ち付けたりビスで縫いつける、という工法が多い。[[切妻造]]で左右対称にし、前面に大きな穴をあける、という構造が典型的。屋根の表面はさまざまで、人間の家屋用のしっかりした屋根材を用いる人もいれば、合板にトタン板で覆う人もいれば、合板にペンキ塗装をして済ます人もいる。最近は全て樹脂製のものも販売されていて、その場合[[ボルト]]・[[ナット]]などで組み立てる。
 
<Gallery>
[[ファイル:Banja.jpg|thumb|いわゆる[[ログハウス]]と呼ばれる形式の小屋]]
File:Stone Hut - geograph.org.uk - 106433.jpg|石を積んで壁構造にし、その上に木材で屋根構造を作った小屋
</Gallery>
 
小屋の内部は分割されず部屋数が1つのものが多い、まれに分割される場合でも、一般的に言うと、部屋数は少ない。
 
([[EC]]の対日経済戦略報告書「[[日本]]は、ウサギ小屋に住む仕事中毒者の国だ」が[[語源]]。小さく狭い家、という意味で使われるが、これは完全な[[誤訳]]で本来は[[集合住宅]]を指す用語だった。しかしながら、この言葉が一人歩きしているせいか、アメリカの家は日本よりも大きいものだと思いこんでる人も多いが、実際には、アメリカでも大都市では東京よりも家賃は高く、大きな家に住めると期待していった留学生や駐在員の中には、その小ささに驚く人も多い。)などの用法がある。-->
考古学的には、最古の小屋跡は、フランスの地中海沿岸部にあるテラ・アマタ遺跡であり(参考・後述書)、約38万年前のもので、火を使った痕跡もあり、時代的に考えて、ホモ・ハイデルベルゲンシスが作った可能性が高いとされる(更科功 『絶滅の人類史』 NHK出版新書 2018年 p.160)。
== 比喩表現としての「小屋」 ==
小さくて簡易的で素朴な建物を「小屋」の意味の基本なのであるが、さまざまなものを「小屋」に[[比喩|喩える]]こともある。
大きな建物との対比として、小さい建物を小屋と言う場合がある。その一方で、[[興行]]活動において演芸を披露する施設を「小屋」(音楽業界では「[[箱#比喩としての箱|ハコ]]」とも)と呼ぶ場合があり、[[イベント]]を開催する[[多目的ホール]]や[[ライブハウス]]をこのように呼ぶことがある。古くは、[[ドサ回り|地域巡業]]を生業とする[[旅芸人]]などが一時的に汎用の小屋に間借りしたり仮設建築物を建てて利用したことにも関連する模様。
 
ゴミなど散乱しているような汚い家(や[[部屋]])を比喩で「ブタ小屋」と言う。
 
日本人の多くの人々が住んでいる家屋(の中で 比較的小さなもの)が「ウサギ小屋」と喩えられることもある。<ref>ひとつには、[[EC]]の対日経済戦略報告書において、「[[日本]]は、ウサギ小屋に住む仕事中毒者の国だ」と記述された、と理解されたからである。ただし(ウサギ小屋を)「『小さく狭い家』、と訳すのは[[誤訳]]だ」という人もいて、「本来は[[集合住宅]]を指す用語だった」と言う人もいる。後述。なお、アメリカでは[[郊外]]に家を持つ人々では、たしかに通常 広い家に暮らしている人は多いが、大都市では家賃は高く、狭い部屋に住んでいる人々もいる。日本でも、[[田舎]]では、昔から現代まで、かなり広い家屋に暮らしている人々もいる。</ref>
 
大きな[[ウェブサーバー]]や大きなウェブサイトの中に、一個人が設けた小さな領域(比較的少ないページ数の、作りが簡素な、ページのまとまり)を「○○小屋」と呼ぶ人も一部にいる。
また、小さい住居もこのように呼ばれうる。日本では俗に「起きて半畳、寝て一畳」(半畳に掛かる言葉としては「座って」とするものもある<!--記述者自主コメントアウト・詳細不詳要調査:・元は[[禅宗]]における「座して半畳臥して一畳」から-->)ともいうが、単に大きな家に住めないほど[[貧乏]]である場合と、いわゆる「清貧」に代表される高潔さの表れとして、小屋のようにつましい住居に満足を見出す者も見られないではない<!--近代の文人にそのような人が居たはずなのだが失念-->。
 
=== うさぎ小屋と日本の住環境 ===
[[1979年]](昭和54年)、[[欧州諸共同体]](EC)が出した『対日経済戦略報告書』の中で、日本人の住居が「rabbit hutch」(うさぎ小屋)と表現されたことから、「日本の住居は、欧米に比べて狭小」という意味で広まった。だが、原文は[[フランス語]]の「cage a lapins」([[ウサギ]]の[[檻]]、「Cage pour lapins」ではない。)で、これはフランスでは[[集合住宅]]を指し、「画一的な」という意味がある。この言葉を英訳するときに誤って「狭い」という意味で「rabbit hutch」(うさぎ小屋)を当てたことで、「日本の住居は狭い」という誤解が広まったとする説がある。
 
実際には、住宅産業新聞社「住宅経済データ集」によると、持ち家・借家を合わせた一戸あたり床面積の国際比較では、日本は95[[平方メートル|平米]]であり、[[アメリカ合衆国|米国]](148平米)より狭いものの、[[フランス共和国|フランス]](99平米)、[[ドイツ連邦|ドイツ]](95平米)とは余り変わらず、[[イギリス|英国]](87平米)よりは広い。また、別のソースでは日本(94.85平米)は、同様の国際比較で世界第5位に位置し、1位の米国(162平米)などより狭いものの、フランス(7位 90平米)、英国(8位 87平米)より広い<ref>『日本は世界で第何位?』(岡崎大五著・新潮新書)</ref>。日本の住宅面積を客観的に言い表すならば、よくいわれる「欧米より狭い」ではなく、「アメリカよりは狭く、欧州主要国と同程度」となる。
 
== 小屋と風習 ==
日本では古く、[[女性]]が[[月経|生理]]の際に入る建物を小屋といった。これは特に'''月小屋'''ないし'''他屋'''と呼ばれ、月経の血が[[穢れ]]とみなされたことにちなむ。この[[風習]]では同じ[[火]]([[かまど]])で[[調理|煮炊き]]した物を食べることも[[タブー|禁忌]]とみなされていたため、その間は一人で炊事したものを食べた。各地にこの[[習慣]]があった。現存するものは少なくなっているものの、地方に取り壊されずに残っているものもある。
 
== 出典 ==
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{{Wiktionary|こや}}
{{Commonscat|Huts}}
* [[水車小屋]]
* [[仮設住宅]] - [[災害]]被災者に供される仮の住居
* [[救小屋]] - [[江戸時代]]に建てられた、被災者を救助する建物。