「夏目漱石」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
401行目:
阿部次郎が挙げている門下のリストには、白樺派の[[武者小路実篤]]や[[志賀直哉]]も含まれている。彼らは当時の文壇で漱石を最も尊敬していることを自認していて、漱石も彼らに目をかけていた。だが彼らは「文壇に先輩を持たない」というポリシーを持っており、漱石門下を自称することはなかった。彼らを上記の門下生と区別して、「直接の門下生ではなかった」とする見解もある<ref>永田哲夫「白樺派研究 漱石への接近」、高知大学学術研究報告人文科学17(10)、1969年3月、高知大学</ref>が、漱石本人にそのような区分意識があったわけではない。
 
 なお、漱石は朝日新聞を、目をかけた新進を世に出す場ともしており、作家としては無名であった森田草平や中勘助に『[[煤煙 (小説)]]』『[[銀の匙]]』を連載させ、それらが彼らの出世作となった。大正2(1914)年、『こころ』の後の長編の連載を、それまで短編しか発表していなかった志賀直哉に依頼したのも同様の配慮による。志賀はそれを受けて長編執筆に取り組んだが、書き悩んで辞退することになり、漱石はその穴埋めを武者小路らに依頼している(そのとき武者小路が発表した「死」は、彼が最初にまとまった金を得た作となった<ref>『武者小路実篤全集』第9巻「後書き」、1955年、新潮社</ref>)。ただ、志賀は書き悩みながらも長編執筆を放棄せず、昭和12(1937)年にようやく完成させた。これが彼の唯一の長編『[[暗夜行路]]』である。長編には不向きな作家であった志賀が「漱石依頼の長編」にこれほどのこだわりを見せたあたり、漱石の感化の強さは所謂門下生に劣らないものがあったと言える。
 
== 思想 ==
462行目:
 
漱石の漢詩についての先駆的研究書としては、[[吉川幸次郎]]『漱石詩注』([[1967年]](昭和42年))があるが<ref>『漱石詩注』[[岩波新書]]、1967年(昭和42年)。[[岩波文庫]]で新版刊行。</ref>、これは漱石の造詣が深かった[[禅]]の用語などに関しては注釈がないなどの不備があるとされている(『週刊読書人』勝又浩)。またそれに先立ち、[[1946年]](昭和21年)、娘婿の[[松岡讓]]が『漱石の漢詩』<ref group="注">初版は十字屋書店。昭和41年([[1966年]])に、[[朝日新聞社]]で新装再刊。</ref>を出版している。[[2008年]]([[平成]]20年)に作家の[[古井由吉]]により『漱石の漢詩』<ref>[[岩波書店]]刊行</ref>が発表された<ref group="注">たとえば押韻の問題について全く踏まえていないなどの問題があるとされる{{要出典|date=2009年11月}}。</ref>。禅の観点から注釈されたものとしては[[飯田利行]]『新訳 漱石詩集』<ref>『新訳 漱石詩集』柏書房、[[1994年]](平成6年)</ref>がある。ほかに和田利男『漱石の漢詩』<ref>『漱石の漢詩』(文藝春秋・文春学藝ライブラリー(文庫)、2016年(平成28年))</ref>がある。2016年1月25日に[[二松学舎大学]]が、漱石直筆の漢詩文屏風を古書店から購入したと発表した。屏風は2枚折り1対、1枚が縦1m62、横80cm。内容は『禅林句集』から春夏秋冬の場面が選ばれていた<ref>『[[読売新聞]]』2016年1月26日 39面。</ref>。
 
===遺品===
早稲田南町の漱石山房は第二次世界大戦中に空襲で焼失したが、小宮豊隆が館長を務めた縁で蔵書・日記等の自筆資料の大半が[[東北大学]]付属図書館に移動されており焼失を免れている。東北大学では「夏目漱石ライブラリ」として研究者へ公開している。近年では原稿用紙の劣化が進んでいるため、2019年にはデジタルアーカイブとして保存する資金を[[クラウドファンディング]]で調達した<ref>[https://readyfor.jp/projects/soseki-library 漱石の肉筆を後世へ!漱石文庫デジタルアーカイブプロジェクト(東北大学附属図書館 2019/11/05 公開)] - [[Readyfor]]</ref>。
 
[[神奈川近代文学館]]では遺族から提供された書画や落款印の画像を「Web版夏目漱石デジタル文学館」として公開している。
 
=== 日本国外での評価 ===
567 ⟶ 572行目:
* [[ベッジ・パードン]] - [[三谷幸喜]]作・演出の舞台。英国留学時代の漱石を元に描かれている。
* [[故事#漱石枕流]]
* [[新宿区立漱石山房記念館]] - 生誕150周年記念した博物館
 
== 外部リンク ==
* [https://www.kanabun.or.jp/souseki/ 県立神奈川近代文学館所蔵 Web版 夏目漱石デジタル文学館] - [[神奈川近代文学館]]
* [http://soseki.a.la9.jp/ 夏目漱石記念年キャンペーン公式サイト]
**[[2016年]]の死没後100年と[[2017年]]の生誕150年を記念し、2年をまたぐ形で漱石関連のイベントや作文コンクール、展示会などを展開する大規模キャンペーン。
577 ⟶ 582行目:
=== オンライン・テキスト ===
* [http://www.natsumesoseki.com/ 夏目漱石.com]
* [https://web.archive.org/web/20100106021538/http://www.library.tohoku.ac.jp/collectcollection/collection/soseki/ 東北大学附属図書館 夏目漱石ライブラリ] - 東北大学附属図書館
* [http://www2a.biglobe.ne.jp/~kimura/sosekistudy.htm 漱石文学・その他の研究]
* {{青空文庫著作者|148|夏目 漱石}}