「チェンバロ」の版間の差分

ルッカースのチェンバロは、厚い側板を上下の内部補強材によって連結した枠組が構造の基礎となっており、底板は後から取り付けられた。ケースの素材には[[ポプラ]]材が用いられ、側板は約14mm程度の厚さを持っている。高音域の弦長が長めで、低音域の弦長は抑えられており、イタリアのチェンバロよりもずんぐりとした外形をしている。高音域は鉄弦、低音域は真鍮弦が使われた。標準的な弦列構成は1×8′、1×4′で、8′にはバフ・ストップを備える。音域は通常[[ショート・オクターヴ]]のC/Eからc3までの4オクターヴである。プラッキング・ポイントはナットに近く、一段鍵盤のルッカースのチェンバロの8′のプラッキング・ポイントは、ほぼ18世紀フランスのチェンバロのフロント8′に相当する。ブリッジはイタリアの楽器のものよりも大きく、響板のブリッジの下にはリブを持たない。8′のブリッジと4′のブリッジの間の響板の裏側には4′のヒッチピンにかかる張力に耐えるための補強として4′ヒッチピン・レールがある。4′のブリッジの手前の裏側には斜めにカットオフ・バーと呼ばれる細長い棒が取り付けられ、カットオフ・バーによって区切られた三角形の領域がリブで補強されている。ルッカースのチェンバロの音質は、イタリアのものとは明らかに異なり、響きが長く持続する。
 
ルッカースは二段鍵盤のチェンバロも製作したが、これは同一の弦を上下で四度ずれた配置の鍵盤で同一の弦を弾くものであり、2つの鍵盤を同時に使うことはできない。これは四度の移調を容易にするためのものであったと考えられている。通常C/E-f3の下鍵盤がC/E-c3の上鍵盤と最高音で揃えられており、下鍵盤では上鍵盤より四度低い音が鳴る。また下鍵盤のプラッキング・ポイントは上鍵盤よりナットから遠い。
 
ルッカースのチェンバロは規格化された幾つかのサイズで製作され、装飾も規格化されている。外装は大理石を模した柄や鉄帯模様が描かれ、内装は文様を印刷した紙が貼られた。響板およびレストプランク表面は、花や果物、鳥、昆虫、エビなどが[[テンペラ]]画によって描かれた。このような響板装飾はイタリアの楽器には見られない特徴である。ローズは鉛と錫の合金で鋳造され金箔が貼られた。ローズの意匠は[[ハープ]]を弾く[[天使]]で、製作者の[[イニシャル]]が左右に配される。蓋の内側は文様紙が貼られ、[[ラテン語]]の格言が書かれるのが標準的だが、高級なものは画家により絵画が描かれた。