「保証」の版間の差分

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[[2004年]](平成16年)の民法改正により、保証契約には書面または電磁的記録が必要な[[要式契約]]となった。これは、従来から軽い気持ちで保証を引き受けて重い負債を負ってしまうことがあるので、そのようなことを防ぐ目的である。
 
さらに2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)により、事業に係る債務についての保証契約は、原則として、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1箇月以内に作成された[[公正証書]]で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ無効とされることになった(465条の6)<ref name="leasing" /><ref name="hyogoben" />。[[#事業に係る債務についての保証契約の特則]]を参照。
 
==== 保証人の要件 ====
保証人と債権者との間の保証契約の前提として、主たる債務者が保証人に保証を委託する保証委託契約が締結されることが多い。ただし、保証委託契約の有無は保証契約の効力に何ら影響を及ぼさない。
 
2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)により、事業のために負担する債務について個人が保証する場合、保証を求められた個人が自らが債務を履行する可能性を判断できるよう、主たる債務者に対して契約締結時の保証人への情報提供義務が課せられた<ref name="hyogoben" />。[[#事業に係る債務についての保証契約の特則]]を参照。
 
== 保証債務の効力 ==
* 主たる債務の目的又は態様が保証契約の締結後に加重されたときであっても、保証人の負担は加重されない([[b:民法第448条|448条]]2項)。
 
448条2項は保証契約の締結後に主たる債務が加重されても保証人の負担は加重されないとの従来からの一般的な理解を明文化するもので、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)で新設された<ref name="LM">{{Cite web |url=http://www.lmlo.jp/wp/wp-content/uploads/2018/01/4219b1136a380ddc75b2a8e70088f0951.pdf|title=改正債権法の要点解説(3) |format=PDF |publisher=LM法律事務所 |accessdate=2020-03-25}}</ref><ref name="leasing">{{Cite web |url=https://www.leasing.or.jp/studies/docs/10_01.pdf|title=民法(債権関係)改正がリース契約等に及ぼす影響|format=PDF |publisher=公益社団法人リース事業協会|accessdate=2020-03-25}}</ref>。
 
=== 催告の抗弁権・検索の抗弁権 ===
* 主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は、保証人に対しても、その効力を生ずる([[b:民法第457条|457条]]1項)。
* 保証人は、主たる債務者が主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる([[b:民法第457条|457条]]2項)。
** 2017年の改正前の旧457条2項は「保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。」と規定していたが、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)で相殺の抗弁に限らず主債務者の有する抗弁事由一般について保証人も主張することができるとする従来からの法理が明文化された<ref name="leasing" />。
* 主たる債務者が債権者に対して[[相殺|相殺権]][[取消し|取消権]]又は[[解除|解除権]]を有するときは、これらの権利の行使によって主たる債務者がその債務を免れるべき限度において、保証人は、債権者に対して債務の履行を拒むことができる([[b:民法第457条|457条]]3項)。
** 2017年の改正前の旧457条2項は「保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。」と規定していたが、旧457条2項の「対抗することができる」は、保証人に主債務者の相殺権の行使(主債務者の権利を処分すること)まで認める趣旨の規定ではなく、主債務の相殺によって債務が消滅する限度で保証人も履行を拒絶することができるにとどまると解されていた<ref name="leasing" /><ref name="hyogoben">{{Cite web |url=http://www.hyogoben.or.jp/topics/pdf/141225minpou.pdf|title=民法(債権関係)の改正に関する 要綱仮案における重要項目|format=PDF |publisher=兵庫県弁護士会|accessdate=2020-03-25}}</ref>。
** 2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)では保証人は主たる債務者が相殺等でその債務を免れるべき限度において債権者に対して債務の履行を拒むことができるという履行拒絶権であることが明文化され取消権や解除権と併せて規定された(457条3項)<ref name="leasing" /><ref name="hyogoben" />。
 
ただし、以下の事由は保証債務に影響しない。
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない(458条の2)。
 
保証人が知らないうちに主たる債務者が債務不履行となり遅延損害金が増大してから保証人が履行請求を受けるのは酷であるが、金融機関等の債権者には守秘義務があり、保証人から主たる債務の履行状況等の照会に回答してよいか問題があった<ref name="hyogoben" />。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)では委託を受けた保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する情報提供義務を定めた(458条の2)<ref name="leasing" /><ref name="hyogoben" />。
 
主たる債務の履行状況に関する情報提供は、貸金等債務に係る保証に限らず全ての保証契約が対象となる<ref name="leasing" />。ただし、債務の履行状況等が主たる債務者の信用情報にかかわるため、請求権者は受託保証人に限られる<ref name="hyogoben" />(主たる債務の履行状況に関する情報提供義務は保証人が個人・法人いずれかを問わない<ref name="leasing" />)。
主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない(458条の3第1項)。
 
保証人の知らないうちに主たる債務者が期限の利益を喪失した場合、保証人が突然に残債務の一括返済や増大した遅延損害金の支払いを求められるのは酷である<ref name="hyogoben" />。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)では主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務を定めた(458条の3)<ref name="leasing" /><ref name="hyogoben" />。期間内の通知を怠った場合、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない(458条の3第2項)。
 
主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務は、個人保証のみを適用対象としており、保証人が法人である場合には適用されない(458条の3第3項)<ref name="leasing" /><ref name="hyogoben" />。
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する([[b:民法第459条|459条]]1項)。債務の消滅行為にあたっては後述の主たる債務者への事前通知と事後通知を要する。
 
2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)で委託を受けた保証人が弁済期前に弁済等をした場合の求償権の規定が新設された(459条の2)。主たる債務の弁済期前の保証人の弁済等は、委託の趣旨に反すると考えられることから、委託を受けない保証の場合と同様の範囲にまで求償を制限する趣旨である<ref name="leasing" />。
 
債務が弁済期にあるときなど以下の場合には、委託を受けた保証人は、保証債務を履行する前でも、あらかじめ主たる債務者に求償することができる([[b:民法第460条|460条]]、事前求償権)。
* 事前通知
** 委託を受けた保証人は債務の消滅行為をするにあたり主たる債務者に事前通知を要する<ref name="leasing" /><ref name="LM" />。事前通知がない場合、主たる債務者は、債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗することができる(463条1項)。
** 2017年の改正前の民法では委託の有無を区別せずに、保証人に事前通知義務が課せられていたが、委託を受けない保証人は事前通知の有無に関係なく求償の範囲が制限されることから、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)で事前通知義務を委託を受けた保証人に限っている<ref name="leasing" /><ref name="LM" />。
* 事後通知
** 委託を受けた保証人及び委託を受けないが主たる債務者の意思には反しない保証人の場合、債務の消滅行為をしたときは主たる債務者に事後通知を要する<ref name="LM" />。事後通知がなく、主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる(463条3項)<ref name="LM" />。
** 委託を受けず主たる債務者の意思にも反する保証人の場合、求償権は主たる債務者が求償時に現に利益を受けている限度とされているため(462条2項)、保証債務が履行された後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合には利益はなく求償できない<ref name="LM" />。そのため2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)では、委託を受けず主たる債務者の意思にも反する保証人の場合、事後の通知の有無にかかわらず、主たる債務者の債務の消滅行為を有効とみなすとされた(463条3項)<ref name="LM" />。
 
== 特殊な保証 ==
* 通常の単純保証では、保証人が数人いる場合には各保証人は債権者に対して保証人の数に応じて分割された部分についてのみ債務を負担する([[b:民法第456条|456条]]・[[b:民法第427条|427条]])。これを'''分別の利益'''という。連帯保証の場合には、この分別の利益がなく、連帯保証人が数人いる場合であっても、各連帯保証人は債権者に対して債務の全額について責任を負わなければならない。なお、連帯保証人間の内部関係においては、各連帯保証人には負担部分が存在するので、連帯保証人の一人が自己の負担額を超えて弁済した場合には、他の連帯保証人に求償することができる([[b:民法第465条|465条]]1項・[[b:民法第442条|442条]])。
* 連帯保証の場合には連帯保証人に生じた事由について[[連帯債務]]の履行の請求等の規定が準用される([[b:民法第458条|458条]])。
** 連帯債務者についての規定が、原則として、連帯保証人について生じた事由に準用されることは従前どおりであるが、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)で請求等が相対的効力になるなど主たる債務者に対しても効力が及ぶ絶対的効力事由が改正前に比べて少なくなっている<ref name="leasing" /><ref name="lij">{{Cite web |author=荒井俊行|url=http://www.lij.jp/html/jli/jli_2015/2015summer_p160.pdf|title=民法(債権関係)改正案に関するノート(IV)多数当事者関係(連帯債務を中心に)|format=PDF |publisher=土地総合研究 2015年夏号 |accessdate=2020-03-25}}</ref>。
** 連帯保証人について生じた事由は、主たる債務を消滅させる弁済等のほか、458条により更改(438条(旧435条))、相殺(439条(旧436条))、混同(440条(旧438条))は、主たる債務者に対しても効力が及ぶ。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)で連帯保証人に対する請求、免除、時効の完成の効力は、主たる債務者に及ばないこととなった<ref name="hyogoben" />。
** なお、2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)で、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従うとされた(441条ただし書)。458条によりこの規定は連帯保証にも準用され、連帯保証人に対する請求など主たる債務者にも効力を生じさせたい事由について、債権者と主たる債務者の間でこれらの事由に絶対効が生じる旨の特約を締結することができる<ref name="leasing" /><ref name="lij" />。
 
==== 商法上の特則 ====
 
=== 根保証 ===
一定の範囲で継続的に発生する不特定の債務を包括的に保証するという保証の形態を'''根保証'''という([[b:民法第465条の2|465条の2]])。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)により個人が保証人となる根保証契約(個人根保証契約)全般についての規律が新設された(465条の6)<ref name="leasing" />。
 
=== 共同保証 ===
平成17年4月1日より施行された「民法の一部を改正する法律」では、個人である保証人の保護を図るため、貸金等根保証についてそれまでの取扱いを大きく変える改正がなされた(貸金等根保証契約では、極度額を約定しない場合、無効となる。また、5年以内の元本確定日を定めなければならず、定めなかった場合は3年となるほか、5年を超える確定日を定めた場合も3年とされていた)。
 
2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)により、貸金等債務に限定する規定は改められ、個人が保証人となる根保証契約(個人根保証契約)全般についての規律が新設された(465条の2)<ref name="leasing" />。
 
== 事業に係る債務についての保証契約の特則 ==
事業のための借入れについて保証人となった個人が想定外の多額の負債を抱える結果となり生活が破綻することが社会問題となっている<ref name="leasing" /><ref name="hyogoben" />。
 
2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)により、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、原則として、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1箇月以内に作成された[[公正証書]]で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ無効とされることになった(465条の6)<ref name="leasing" /><ref name="hyogoben" />。
 
ただし、経営者保証による事業者の借入れに支障が生じるのを避けるため、主債務者の事業に実質的に関与している者(取締役等の経営者、議決権の過半数を有する主要株主、当該主要株主の議決権の過半数を有する主要株主、主要株主(親会社)とその主要株主との合計で、議決権の過半数を有する場合の当該親会社の主要株主、共同経営者及び事業に現に従事している主債務者の配偶者)が行う個人保証については方式要件は適用除外とされている(465条の9)<ref name="leasing" /><ref name="hyogoben" />。
# 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容
 
2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行予定)により、事業のために負担する債務についての保証を求められた個人が、自らが債務を履行する可能性を判断できるよう、主たる債務者に対して課せられた義務である<ref name="hyogoben" />(458条の2や458条の3の情報提供義務とは異なり、債権者に課せられた情報提供義務ではない<ref name="leasing" />)。
 
== 脚注 ==
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