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[[File:Zapfwelle eines Traktors - power take-off of a tractor.jpg|thumb|農業用トラクタのPTO軸]]
'''パワー・テイク・オフ'''(英: '''Power take-off''' ) あるいは単に '''PTO''' (ピーティーオー)とも呼ばれる装置は、車両駆動[[クレーン]]つきトラック、[[耕耘機]]、[[農耕]]用[[トラクター]]、[[ダンプカー]]など、作業用の装置を備えた車両において、[[機関 (機械)|エンジン]]動力を作業機械用のために力として取り出すための機構のこと。'''動力取り出し'''るいは単に '''PTO''' とも呼ばれる。
[[耕耘機]]、[[農耕]]用[[トラクター]]、[[ダンプカー]]、消防車のような[[ポンプ]]カーなどに使われ、用途に応じてエンジン回転数に比例するものと、比例しないものとがある。ただし[[カーエアコン|エアコン]]用[[圧縮機|コンプレッサー]]や[[オルタネーター]]のように[[ベルト (機械)|ベルト]]駆動のものはPTOとは呼ばない。
 
== 歴史 ==
実験的なパワーテイクオフ装置は1878年にはすでに試みられていたが、[[ケースIH|インターナショナル・ハーベスターカンパニー]](以下、IHC)は1918年に最初のPTOを装備したトラクタを製作した。1920年、IHCは自社の15から30馬力のトラクタにPTOの装備をオプション設定し、ネブラスカトラクター試験所(Nebraska Tractor Test Laboratory)に送られた最初のPTOを装備したトラクタとなった。
 
最初のPTO標準規格は1927年4月に米国農業工業会([:en:American Society of Agricultural and Biological Engineers ASAE])により採用された。PTOの回転数は536±10rpmとして指定され、回転方向は(トラクタ後方から見て)時計回りと定められ、後に回転数は540rpmに改められた。
 
1945年、[[カナダ]]の[[オンタリオ州]][[ブラントフォード]]のCockshutt Farm Equipment社は、ライブPTOを装備したCockshutt Model 30を発表した。ライブPTOはトラクタの走行とは独立してPTOの回転を制御することが出来た。これは、作業機をPTOによって駆動しながらでも、低速で走行したり停車したり出来る利点があった。近代的なトラクターでは、ライブPTOは押しボタンスイッチや切り替えスイッチで制御され、作業者をPTOシャフトから遠ざけることによって安全性を高めている。
 
== 技術的標準化装備例 ==
[[File:A Tractor's rear.jpg|thumb|PTO軸は左右のタイヤに挟まれた中央下部に配置される]]
農業用トラクタのPTOは寸法と回転数が標準化されている。PTOのISO規格はISO 500で定められており、2004年の改訂でISO 500-1(一般仕様、安全要求事項、防護カバーの寸法等)、ISO 500-2(小型トラクタでの防護カバーの寸法等)、ISO 500-3(主なPTO寸法とスプラインの寸法、PTO軸の位置関係等)の3つに分割された。
 
=== トラック ===
基本的なPTO軸は毎分540回転([[rpm (単位)|rpm]])で使用される。540回転で使用されるPTO軸は6本のスプラインを持ち軸の直径は1⅜インチである。また、より高負荷の機器を駆動するために1000回転で使用する2つの種類のPTO軸がある。20本のスプラインを持つ直径1¾インチの太いPTO軸と、21本のスプラインを持つ1⅜インチのPTO軸である。これら3種類のPTO軸はいずれもトラクタ側から見て反時計方向に回転する。
PTOが装備される車両は主に、クレーンつきトラック、ダンプカーなど、油圧装置による作業機械を備えた車両である。ダッシュボードに「PTO」の表示のあるボタンがあり、それを押して[[油圧]][[ポンプ]]を駆動させる。
 
使用にあたっては、車両を停止させ、トランスミッションまたはトランスファーのギアを[[中立|ニュートラル]](またはパーキング)に入れてから、PTOボタンを押すことで油圧モーターが始動し、機器に油圧が伝達される構造になっている。
1948年のランドローバー等の初期の作業機は10本のスプラインを採用したものもあったが、一般的な6本のスプラインに変換するアダプターが提供された。
 
ダンプカーなどは荷降ろし現場の状況によってはPTO装置を作動させたまま多少の走行も可能であるが、一般にPTOを使用する場合は車両を停止させなくてはならず、作動させたままの走行は厳重に禁止され、車両によっては警告音が鳴る。油圧モーターが過負荷で焼け切れる可能性があるからである。
農業機械メーカーは通例として、トラクタの馬力を表す指標はPTO軸から取り出せる出力を表示している。
 
== 装備例 ==
=== 耕運機・農耕用トラクター ===
エンジンの動力によって[[耕運機|ロータリー]]を回転させる。ところが耕運機
を[[ティラー]]として用いる場合はロータリーは必要ではない。そのため、ロータリーへの動力伝達はPTO軸と呼ばれる軸を通して行われ、脱着可能になっている。また、PTO軸に接続された作業機の動作を停止するための[[クラッチ]]がある。
 
=== 自動車 ===
[[トランスミッション]]または[[トランスファー]]に出力軸を設け、直接装置を駆動したり[[油圧]][[ポンプ]]の駆動等に利用する。
; 停車中のみ使用するもの
トランスミッションまたはトランスファーのギアを[[中立|ニュートラル]](またはパーキング)に入れ、車室内のPTOスイッチ又はPTOレバーを操作してPTO機器に動力が伝達される構造になっている。ダンプカーなどは荷降ろし現場の状況によっては多少の走行も可能であるが、PTOを使用しない場合に比べて動力性能は低下する。
* [[消防車]]
* 機械式[[塵芥車]](パッカー車)
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: 生[[コンクリート]]は撹拌を止めてしまうとドラム内でコンクリートと水分が分離する等品質が落ちるので、エンジン稼働中は常時回転できるPTOが用いられる。
 
=== 特殊なもの車両 ===
;[[消防車#二輪消防車|二輪消防車]]
:PTOを持った変わった乗り物としては排気量250ccの[[スクーター]]を用いた消防用のポンプスクーターが試作され、2004年に採用された。現場に自走していき、到着後PTOによってポンプを駆動する。
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:[[いすゞ・エルフ]]のハイブリッド車ではエンジンアシストとエネルギー吸収を行う電動機/発電機をPTOでリンクしている。
;マスト車(飛行船係留車)
 
=== 耕運機・農耕用トラクター ===
[[トランスミッション]]または[[トランスファー]]に出力軸を設け、エンジンの動力によって[[耕運機|ロータリー]]を回転させたり、直接装置を駆動したりする。ところが耕運機
を[[ティラー]]として用いる場合はロータリーは必要ではない。そのため、ロータリーへの動力伝達はPTO軸と呼ばれる軸を通して行われ、脱着可能になっている。また、PTO軸に接続された作業機の動作を停止するための[[クラッチ]]がある。
 
 
== 歴史 ==
実験的なパワーテイクオフ装置は1878年にはすでに試みられていたが、[[ケースIH|インターナショナル・ハーベスターカンパニー]](以下、IHC)は1918年に最初のPTOを装備したトラクタを製作した。1920年、IHCは自社の15から30馬力のトラクタにPTOの装備をオプション設定し、ネブラスカトラクター試験所(Nebraska Tractor Test Laboratory)に送られた最初のPTOを装備したトラクタとなった。
 
最初のPTO標準規格は1927年4月に米国農業工業会([:en:American Society of Agricultural and Biological Engineers ASAE])により採用された。PTOの回転数は536±10rpmとして指定され、回転方向は(トラクタ後方から見て)時計回りと定められ、後に回転数は540rpmに改められた。
 
1945年、[[カナダ]]の[[オンタリオ州]][[ブラントフォード]]のCockshutt Farm Equipment社は、ライブPTOを装備したCockshutt Model 30を発表した。ライブPTOはトラクタの走行とは独立してPTOの回転を制御することが出来た。これは、作業機をPTOによって駆動しながらでも、低速で走行したり停車したり出来る利点があった。近代的なトラクターでは、ライブPTOは押しボタンスイッチや切り替えスイッチで制御され、作業者をPTOシャフトから遠ざけることによって安全性を高めている。
 
== 技術的標準化 ==
[[File:A Tractor's rear.jpg|thumb|PTO軸は左右のタイヤに挟まれた中央下部に配置される]]
農業用トラクタのPTOは寸法と回転数が標準化されている。PTOのISO規格はISO 500で定められており、2004年の改訂でISO 500-1(一般仕様、安全要求事項、防護カバーの寸法等)、ISO 500-2(小型トラクタでの防護カバーの寸法等)、ISO 500-3(主なPTO寸法とスプラインの寸法、PTO軸の位置関係等)の3つに分割された。
 
基本的なPTO軸は毎分540回転([[rpm (単位)|rpm]])で使用される。540回転で使用されるPTO軸は6本のスプラインを持ち軸の直径は1⅜インチである。また、より高負荷の機器を駆動するために1000回転で使用する2つの種類のPTO軸がある。20本のスプラインを持つ直径1¾インチの太いPTO軸と、21本のスプラインを持つ1⅜インチのPTO軸である。これら3種類のPTO軸はいずれもトラクタ側から見て反時計方向に回転する。
 
1948年のランドローバー等の初期の作業機は10本のスプラインを採用したものもあったが、一般的な6本のスプラインに変換するアダプターが提供された。
 
農業機械メーカーは通例として、トラクタの馬力を表す指標はPTO軸から取り出せる出力を表示している。
 
== 危険性 ==