「公安警察」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
Fukuoka Police (会話 | 投稿記録) 編集の要約なし |
LTA案件 |
||
1行目:
{{混同|国家公安委員会|公安調査庁}}
{{半保護}}
{{国際化|date=2017年9月26日 (火) 08:11 (UTC)|領域=[[日本]]}}
'''公安警察'''(こうあんけいさつ)とは、「公共の安全と秩序」を維持することを目的とする[[警察]]である。
== 日本の公安警察 ==
[[日本]]における公安警察とは[[警察庁]]と[[都道府県警察]]の公安部門を指す俗称で、正式には[[警備警察]]の一部門である{{sfn|大島真生|2011|p=3}}。
国外的には[[外国]][[政府]]による[[対日有害活動|対日工作]]、国際[[テロリズム]]。また国内的には、[[極左暴力集団]]、[[在日本朝鮮人総聯合会|朝鮮総連]]、[[日本共産党]]、[[社会主義協会]]、学生運動、[[市民活動]]、新宗教団体、[[右翼団体]]などを対象に[[捜査]]・情報収集を行い、法令違反があれば事件化して違反者を[[逮捕]]することもある。さらには、同僚の公安警察官、一般[[政党]]、中央[[省庁]]、[[自衛隊]]、大手メディアなども情報収集の対象になっているとされる<ref>{{cite web|url=https://ohsaka.jp/archives/11071.html|title=逢坂誠二の徒然日記 その3549|publisher=[[逢坂誠二]]|date=2017-05-12|accessdate=2018-03-13}}</ref><ref>{{cite web|url=https://thepage.jp/detail/20170604-00000002-wordleaf?page=3|title=46年逃亡の大坂容疑者?逮捕「公安警察」の仕事とは?|publisher=THE PAGE(ザ・ページ)|date=2017-06-04|accessdate=2018-03-22}}</ref>。
[[警察庁]][[警備局]]を頂点に、[[警視庁公安部]]・各道府県[[警察本部]][[警備部]]・所轄[[警察署]][[警備課]]で組織される{{sfn|大島真生|2011|p=3-4}}。公安警察に関する予算は[[国庫]]支弁となっているので、[[都道府県警察]]の公安部門は警察庁の直接指揮下にある<ref>[http://gendai.ismedia.jp/articles/-/974?page=3 驚愕の深層レポート 新たなる公安組織< Ⅰ・S >の全貌 前編] [[現代ビジネス]] 2010年08月06日</ref>。
[[東京都]]を管轄する警視庁では警備部と別に'''公安部'''として特に独立しており、所属[[日本の警察官|警察官]]約1100名を擁し、都内の所轄警察署警備課と合わせて2000人以上となり、日本の公安警察の中では最大の組織である{{sfn|大島真生|p=19}}。
{{see|警視庁公安部}}
全国の公安警察官の三分の一以上は、全て警察庁警備局警備企画課 情報第二担当理事官(「キャップ」または「裏理事官」と称される)が統括する、'''ゼロ'''と呼ばれる、スパイの獲得や運営などの協力者[[獲得工作]]を取り仕切る極秘の中央指揮命令センターの指揮下にある。県警本部長、所属長でさえ、ゼロの任務やオペレーションを知らされていないとされる<ref>麻生(2001):150ページ</ref><ref>別冊宝島(2009):221ページ</ref>。これは、警察庁警備局などから発せられた特命事項を表の組織で行えば情報漏れのリスクを伴うので、ゼロが全国の公安警察に直接指示を出したほうが表沙汰になる危険が少なく、話が早いからである。また、余計な指揮系統の人間に気を遣わなくて済むメリットもある<ref>別冊宝島(2009):222ページ</ref>。
{{see|チヨダ (警察)}}
[[戦前]]に発生した[[五・一五事件]]や[[二・二六事件]]で、警察官が合計6名殉職した過去があるため、警察は
なお、[[法務省]]の外局である[[公安調査庁]]とは、源流は同じく旧[[内務省 (日本)|内務省]]だが、別の組織である。公安調査庁は、公安警察に付与されているような
=== 沿革 ===
[[特別高等警察]]の流れを汲むとされる{{sfn|大島真生|pp=18-20}}。
[[連合国軍最高司令官総司令部]](GHQ/SCAP)が[[1945年]]10月4日に出した「人権指令」([[SCAPIN]]-93、政治的、公民的及び宗教的自由に対する制限の除去の件(覚書))によって、[[特別高等警察]]が廃止されることになったが、次田大三郎などの内務官僚は、一応は特高警察を廃止するが、反政府的な動静への「査察・内偵」を早急に建て直すためにも、特高警察に代わるべき組織は早急に作り上げるべきと考えており、その「代わるべき組織」として、1945年12月19日、[[内務省 (日本)|内務省]][[警保局]]に「公安課」を、警視庁及び各道府県警察部に「警備課」を設置した<ref>[[荻野富士夫]] 『特高警察』([[岩波新書]])P.221</ref>。その後、[[1946年]]の2月から3月にかけて警視庁及び各道府県警察部の警備課は公安課に改称され、各警察署にも公安係が設置されていった<ref>荻野、P.222</ref>。1946年8月、内務省警保局公安課は、公安第一課と公安第二課に分離し、公安第一課が「公安警察」の主力となった<ref>荻野、P.225</ref>。その後の内務省の解体・廃止と旧警察法の制定後も、[[
=== 公安捜査
公安捜査は、事案の特殊性と保秘の観点から、公安警察官のみで行われる。通常は、対象団体の集会の視察や構成員を追尾して違法行為の有無を確認する視察作業が多い<ref>青木(2000):78ページ</ref>。構成員を饗応して協力者に仕立て上げ、情報を収集することもある{{sfn|大島真生|2011|p=33}}。対象とする犯罪も特殊なだけに、事件発生後に捜査するのではなく、不審な対象を発見した場合は公共秩序を乱す行為を行っていなくとも捜査対象に置く場合がある。
公安警察官はたとえ他部門の警察官が同事案を扱っていたとしても、情報交換をせず、警察内部でも秘密主義的であるとされる{{sfn|大島真生|p=21-22}}。ただし、過去に警視庁では[[連続企業爆破事件]]、[[警察庁長官狙撃事件]]など大規模事案において、一つの特別捜査本部に公安部と[[刑事部]]双方が投入されたこともある{{sfn|大島真生|p=21-22}}。ところが、双方に情報が分散してしまい、十分な捜査情報が共有されなかったという{{sfn|大島真生|p=21-22}}。例えば、警察庁長官狙撃事件の際は、事件現場にいたとされる[[オウム真理教]]信者の警視庁警察官を、[[南千住警察署]]特別捜査本部に投入されていた公安部公安第一課が長期間の軟禁状態にし、[[事情聴取]]までしていたにもかかわらず、同じ特別捜査本部に投入されていた刑事部にその情報を一切公開しなかったことで捜査に支障が生じたこともあった。
基本的に捜査費用は非公開とされているため、予算の配分が妥当なのかどうか、判断することが難しい状態になっている。2010年には警視庁公安部公安第二課の巡査部長による経費詐取が発覚している。
また、[[菅生事件]]のように、非合法な手段による作業が表面化し、問題にされることもある<!-- また、嫌がらせとして尾行を行うこともある<ref>{{Cite web |author=平田宏利 |date=2014-11-09 |url=http://tocana.jp/2014/11/post_5155_entry.html |title=「公安を舐めるな」元警視庁刑事が、イスラム国騒動北大生、京大拘束騒動に反論! |publisher=株式会社サイゾー |accessdate=2014-11-09}}</ref> -->。
公安警察の捜査の対象となっている団体の所属者を[[微罪逮捕]]したり、[[刑事警察|刑事]]・[[交通警察|交通]]の管轄の事案に託けて、対象団体への[[捜索|家宅捜索]]などを行うことがある。逮捕された者には不起訴になるケースもあるが、公安警察の目的はむしろ逮捕を足がかりとした、事情聴取や押収資料からの情報収集・内情分析であるとされる(このような逮捕のあり方を[[別件逮捕]]という)<ref>青木(2000):34ページ</ref>。
捜査の段階で[[電話]][[盗聴]]、[[盗撮]]を行う場合もあるとされ、人権侵害として訴えられる場合も多く、[[日本共産党幹部宅盗聴事件]]のように違法とされることもあった。[[1999年]](平成11年)に[[犯罪捜査のための通信傍受に関する法律|通信傍受法]]が制定されるまではこの捜査方法の法的位置づけが曖昧だった。なお、公安警察内では、盗撮・盗聴はそれぞれ「秘撮」・「秘聴」と呼ばれる{{sfn|大島真生|2011|p=26}}{{sfn|大島真生|2011|p=31}}。
==== 批判 ====
[[微罪逮捕]]、[[別件逮捕]]を利用した[[捜査]]や、[[プライバシー]]の観点から、捜査手法について批判されることがある。
; 批判されることがある捜査の例
:* [[立川反戦ビラ配布事件]]に代表される広報チラシのポスティングに係る[[市民団体]]や日本共産党関係者への検挙事案。[[社会保険]]事務所の係長が休暇中に「[[しんぶん赤旗]]広報版」をポスティングしていたとして[[国家公務員法]]違反で[[逮捕]]された事件(通称「堀越事件」)が[[控訴]]審[[無罪]]の[[黒星]](その後検察は[[上告]]するも[[棄却]])を付け、一方で[[警察庁長官狙撃事件]]が[[未解決事件|未解決]]・[[公訴時効]]成立となったことを新聞各社が批判している<ref>[http://www.news-pj.net/siryou/shasetsu/2010.html#anchor-kouankaiken 資料 2010年 新聞社説]([[News for the People in Japan]])</ref>。[[2012年]]12月には[[三鷹市]]で、[[2012年東京都知事選挙]]における[[革新]]側候補を応援する法定ビラを団地内で配布していた運動員が住居侵入の件で逮捕されている<ref>[http://iwj.co.jp/wj/open/archives/44287 宇都宮健児氏支援のビラ配布が理由による逮捕に対する抗議会見] Independent Web Journal</ref>。
:* 2010年10月、[[警視庁公安部]]外事三課の捜査資料114件が[[インターネット]]上に流出し、600人以上の[[イスラム教徒]]に対してテロリスト予備軍としての疑いの目を向け[[個人情報]]を収拾していたことが分かり、情報管理、プライバシー侵害の観点から問題となった{{sfn|大島真生|2011|p=217}}([[警視庁国際テロ捜査情報流出事件]])。
また、捜査対象となっている団体からの批判もある。
* [[日本共産党]]は、「公党たるわが党を監視する事自体が憲法違反であり、不当極まりない」と非難・批判している<ref>日本共産党は2004年の綱領改訂で「革命政府を目指す」という部分を削除している。公安警察・公安調査庁は、同党が「[[敵の出方論]]」を公式に放棄していないことを根拠に、同党を監視・調査対象としている。</ref>。
* [[在日本朝鮮人総聯合会]]は、「総連は在外公民団体に過ぎず、家宅[[捜索]]は[[民族差別]]に等しい[[弾圧]]である」と非難している。
===
旧ソ連関連国の政府による諜報活動、国際[[テロリズム]]を捜査するのは公安警察の[[外事課]](外事警察)である。国外において日本の警察に法的な捜査権はないが、国際テロリズム捜査のためには国外での捜査も行う。同時に[[情報本部|防衛省情報本部]]などと協力を行っている。
{{see|外事課}}
=== 公安警察官 ===
公安警察に所属している警察官は、'''公安警察官'''と呼ばれることが多い。公安警察官は、[[警務部]]、[[総務部 (警察)|総務部]]所属の警察官と並んで、警察内部ではエリートとみなされている。
公安警察官は、マスクで顔を隠したり、部外者(他部門の警察官も含む)に本名や所属を名乗らないなど、自らの特徴を覚えられるのを避けている場合が一般的である。ただし、対象者の性質によっては、公安警察官であることを名乗って公式に接触することもある。
また公安警察官は、対象者を秘匿に行動確認する手法が非常に高いともいわれている。冷戦期に東京駐在を経験した欧米の情報機関の工作官は、日本の公安警察官による行動確認の手法は非常に高度であると評価している<ref>[[コンスタンチン プレオブラジェンスキー]] 『日本を愛したスパイ―KGB特派員の東京奮戦記』([[時事通信社]]) {{要ページ番号|date=2015年11月}}</ref><ref>[[豪甦]]『NOC―小説 CIA見えざる情報官』([[中央公論新社]]) {{要ページ番号|date=2015年11月}}</ref>。
== 参考文献 ==
{{参照方法|date=2012年8月24日 (金) 18:59 (UTC)}}
* {{cite book|和書 |author=[[荻野富士夫]] |title=特高警察 |publisher=[[岩波新書]] |isbn= 4004313686 |ref=harv }}
* {{cite book|和書 |author=警備研究会 |title=日本共産党101問 |publisher=[[立花書房]] |isbn=4803715246 |ref=harv}}
* {{cite book|和書 |author=[[青木理]] |title=日本の公安警察 |publisher=[[講談社]] |isbn=4061494880 |ref=harv}}
* {{cite book|和書 |author=[[鈴木邦男]] |title=公安警察の手口 |publisher=[[ちくま新書]] |isbn=4480061983 |ref=harv}}
* {{cite book|和書 |author=[[竹内明]] |title=時効捜査 警察庁長官狙撃事件の深層 |publisher=[[講談社]] |isbn=4062161702 |ref=harv}}
* {{cite book|和書 |author=[[谷川葉]] |title=警察が狙撃された日 |publisher=[[三一書房]] |isbn=4380982149 |ref=harv}}
* {{cite book|和書 |author=[[小山善一郎]] |title=日本警察官僚総合名鑑 |publisher=[[新時代社]] |isbn=4787491059 |ref=harv}}
* {{cite book|和書 |author=島袋修 |title=公安警察スパイ養成所 |publisher=[[宝島社]]SUGOI文庫 |isbn=4796672540 |ref=harv}}
* {{cite book|和書 |author=[[海渡雄一]] |title=反原発へのいやがらせ全記録 |publisher=[[明石書店]] |isbn=4750339490 |ref=harv}}
* {{cite book|和書 |author=大島真生 |title=公安は誰をマークしているか |publisher=[[新潮新書]] |isbn=978-4-10-610433-6| date=2011-8-20 |ref=harv}}
* {{cite book|和書 |author=[[麻生幾]] |title=ZERO〈上〉|publisher=[[幻冬舎]] |isbn= 4344001060 |ref=harv }}
* {{cite book|和書 |author=[[別冊宝島]] |title=新装版 公安アンダーワールド |publisher=[[宝島社]] |isbn= 4796672567 |ref=harv }}
== 脚注 ==
{{Reflist}}
== 各国の公安警察一覧 ==
<!-- 国名・国旗は[[Wikipedia:Template国名3レターコード]]より -->
; {{JPN}}
62 ⟶ 99行目:
; {{FRA}}
:* [[フランス国家警察|国家警察]]
:*: [[フランス国土監視局|国土監視局]]
:* [[フランス共和国保安機動隊|共和国保安機動隊]]
; {{GER}}
78 ⟶ 116行目:
; {{CHN}}
:* [[中華人民共和国公安部#公安警察|中華人民共和国公安部]]
:*: 公安部そのものが日本で言う[[警察庁]]に相当する機関であり、政治犯に対して[[予防拘禁]]を行う権利がある。
:* [[中華人民共和国国家安全部]]
:*: [[中華人民共和国]]の[[秘密警察]]。他省庁の指導、[[中華民国]]への工作など多くの権限を持つ。
; {{ROC}}
:* [[国家安全局 (中華民国)
:* [[中華民国法務部調査局]]
; {{KOR}}
90 ⟶ 131行目:
:* [[朝鮮民主主義人民共和国国家保衛省|国家保衛省]]
==
* [[逆コース]]
* [[警察]]
** [[交通警察]]
** [[地域警察]](警邏)
** [[生活安全警察]]([[防犯]]、少年、経済事件)
** [[警備警察]](警備実施、警護、警衛)
** [[刑事警察]]
* [[情報機関]] / [[秘密警察]]
===
* [[ヒューミント]]
* [[コミュニティー・リレーションズ]]
* [[盗聴]]
* [[別件逮捕]]
* [[Nシステム]]
=== 捜査対象 ===
* [[テロ組織]]
* [[スパイ]]
=== 日本の事件 ===
* [[日本共産党幹部宅盗聴事件]]
* [[白鳥事件]]
* [[菅生事件]]
=== 人物 ===
* [[宮崎学]]
* [[鈴木邦男]]
{{日本の情報機関}}
|