削除された内容 追加された内容
layout[「日本語」節の下位を更に加筆・細分化し、「古語」節・「恋人同士」節などを新設]/ + / +1img / 推敲
タグ: サイズの大幅な増減
layout[「概要」節を解体して「こいびと」節と「愛人」節に分割し、後者は下へ移動|「いもせ」節・「フランス語」節などの新設|他]/ + / 推敲 / +節stub(x3)
10行目:
'''恋人'''(こいびと、{{small|[[歴史的仮名遣]]:こひびと}})とは、恋しく思う相手{{r|"kb泉"|"kb林"|"kb日国辞"}}。20世紀後半以降の[[日本語]]の用法では、特に、相思相愛<!--[[wikt:相思相愛|相思相愛]]|※立項待ち。-->({{small|互いに慕い合い、愛し合うこと}})の[[wikt:あいだがら|間柄]]にある、相手方{{r|"kb泉"|"kb林"|"kb日国辞"}}。[[恋愛]]の相手{{r|"kb日国辞"}}。愛人({{small|あいじん}}){{r|"kb日国辞"|"kb_愛人"}}。情人({{small|じょうじん、じょうにん}}){{r|"kb日国辞"|"kb_情人"}}。おもいびと{{r|"kb日国辞"}}(思い人{{r|"kb_思い人"}}、{{small|[[古語]]}}:思人{{r|"kb_思人"}})。
 
== 概要こいびと ==
'''こいびと'''('''恋人'''」は「恋しく思っている相手」を指す[[大和言葉]](和で、多くは相思相愛の間柄についていうが{{r|"kb泉"}}、[[wikt:かたおもい|片思い]]の場合にも用いることがある{{r|"kb泉"}}。「[[スクリーン]]の恋人」などという表現も、後者の用例の一つである{{r|"kb泉"}}。
 
「[[スクリーン]]の恋人」などという表現も、後者の用例の一つである{{r|"kb泉"}}。また、「お口の恋人 [[ロッテ]]」は[[菓子]]メーカーの有名な[[キャッチコピー]]で、美味しいものを求める人の[[口]]と美味しい菓子を惹かれ合う恋人同士になぞらえた[[メタファー]]である{{Refnest|group="注"|1950年代後半に使われ始めて以来、日本では広く知られている。[[日経BP]]コンサルティングが2001年(平成13年)から始めた毎年の企業メッセージ調査では、企業名想起率(メッセージのみを提示して企業名を正答できた回答者の比率)においてランキングトップを一度も譲ることなく14年間連続で獲得し、近年は調査対象企業で唯一70パーセント台を維持している(2015年時点)<ref name="日経_20151021">{{Cite news |和書 |author=瀬戸香菜子(日経BPコンサルティング ブランドコミュニケーション部)|date=2015-10-21 |title=企業名想起率は「お口の恋人」が14年連続首位獲得トップ3争いに、発信期間47年の「コーヒーギフトはAGF」が初登場 ~日経BPコンサルティング調べ「企業メッセージ調査2015」10月21日発行・発売~ |url=https://consult.nikkeibp.co.jp/info/news/2015/1021ma/ |publisher=日経BPコンサルティング |work=ニュースリリース |accessdate=2020-05-21 }}</ref>。}}。ほかに、[[石屋製菓]]の「[[白い恋人]]」([[1976年]]〈昭和51年〉発売)もよく知られた菓子で、これは[[降雪|降る雪]]の[[ひとひら (曖昧さ回避) |ひとひら]]ひとひらから恋人達を想起した創業者・[[石水幸安]]が名付け親であるという<ref name=JPAA>{{Cite web |author=石屋製菓株式会社(取材協力)|title=北海道を代表する銘菓 白い恋人のブランド秘話 |url=https://www.jpaa.or.jp/shacho-chizai/case/北海道を代表する銘菓、白い恋人のブランド秘話/ |publisher=[[日本弁理士会]] |website=公式ウェブサイト |work=社長の知財 |accessdate=2020-05-21 }}</ref>。
他方、「'''[[愛人]]'''」という日本語であるが、かつては「恋人」の[[漢語]]的表現として[[同義語|同義]]に用いられていた{{r|"kb泉"}}。現代の辞事典も「愛するいとしい人」という語義を第1義もしくは第2義に挙げている{{r|"kb_愛人"}}。しかし、時代を経るに連れて、[[配偶者]]以外の恋愛関係にある相手を指す語へと変化し、一般に肉体関係があることを意味するようになった{{r|"kb泉"}}。「情婦」「情夫」の婉曲表現として用いられる傾向もある{{r|"kb泉"}}。
 
[[古典]]などにおける用例として、次のものを挙げておく
{{Quotation|そのゆめに誰ともわかぬ[[前世|前の世]]の我が[[wikt:こいびと|こひ人]]の船をほの見し ──[[よみ人しらず|詠み人知らず]](『[[梁塵秘抄]]』〈[[平安時代]]末期〉第7首)<ref>{{Cite web |author=下崎結 |title=『梁塵秘抄』と「心の花」|url=https://www.toyo.ac.jp/file/kiyo/pdf/45/shimozaki.pdf |publisher=[[東洋大学]] |website=公式ウェブサイト |work= |format=PDF |page=139 |accessdate=2020-05-21 }}</ref><hr />[[wikt:こいびと|こひ人]]の心は遠く成りにけり わする[[wikt:はかる#動詞:計る|計]]の月日ならねど ──[[弁内侍|弁内侍(藤原信実女)]] 『閑窓撰歌合』([[建長]]3年〈[[1251年]]、[[鎌倉時代]]中期〉成立)所収。{{r|"kb日国辞"}}<hr />恋人の乳守出来ぬ[[田植え|御田うヘ]] ──[[井原西鶴]]([[江戸時代]]前期の人)<hr />恋人をかくした[[ススキ|芒]]かれにけり ──[[小林一茶]](江戸時代後期の人)<hr />恋人の肌はつかしき[[昼寝|ひるね]][[wikt:かな#終助詞|哉]] ──[[正岡子規]]([[明治]]時代の人)<ref group="注">「はつかしき」は「恥ずかしき」</ref><hr />恋人と書院に語る[[雪どけ|雪解]]かな ──[[泉鏡花]](明治・大正・昭和時代の人)<ref group="注">ここでの「書院」は「[[書斎]]」の意。</ref>}}
<!--
「恋人」の呼称は恋愛関係が前提となる。すでに[[婚約]]関係にある場合には、通常「恋人」とは呼ばず(婚約をした相手は、「婚約者」「フィアンセ」「許婚」と呼ぶ)、すでに相手と結婚している場合は、どれほど恋しくても、通常は「恋人」とは言わない(結婚した相手は「夫」「妻」などと呼ぶ)。ただし、[[内縁]]関係([[事実婚]])の場合は、「恋人」と呼ぶことが無いわけではない。|※市販されている辞事典の内容と激しく相剋しています。このような説明はされていません。思い込みだけで記述するのは罪深い。ここは百科事典です。-->
 
[[古典]]における用例として、次のものを挙げる。
{{Quotation|こひ人の心は遠く成りにけり わする計の月日ならねど ──[[弁内侍|弁内侍(藤原信実女)]]『閑窓撰歌合』([[建長]]3年〈[[1251年]]、[[鎌倉時代]]中期〉成立)所収。{{r|"kb日国辞"}} }}
 
== 類義語 ==
=== 日本語 ===
==== {{Anchors|古語 ====}}
==== いもせ ====
[[上代日本語]]の「'''妹背'''/'''妹兄'''(いもせ)」は、「親しい男女の関係」を第1義とし、とりわけ「[[夫婦]]」を意味するが、「親しい男女の関係」は「恋人関係」を含意している{{r|"kb_妹背・妹兄"}}。以下は用例
{{Quotation|[[花見#夜桜見物|夜ざくら]]や 妹背むつみの足ゆるく ──枯蘆(清原枴童。明治・大正・昭和時代の人)<hr />貝雛や まこと妹背の二人きり ──高橋淡路女(大正・昭和時代の人)}}
 
==== おもひびと ====
[[中古日本語]]以来の古語では「'''思人'''(おもひびと)」が多くの点で同義である{{r|"kb_思人"}}。ただし、思いを寄せられている人を指す「'''思はれ人'''(おもはれびと)」{{r|"kb_思はれ人"}}や、思いを寄せさせている人を指す「'''思はせ人'''(おもはせびと)」{{r|"kb_思人"}}という派生語がある点では「恋人」と異なる。これは[[文学]]([[和歌]]や[[物語]]、[[日記]]・[[紀行]]など)を通して現代に伝わっている[[平安貴族]](それを含む古代[[日本人]])の精神性を反映した用法で、恋愛であれ[[呪い]]であれ、思いの強さが相手の[[心]]や[[夢]]や[[健康]]状態にまで影響を与えると信じられていた時代の、[[言葉]]のありようを示している。例えば『[[伊勢物語]]』の[[主人公]](※[[在原業平]]と目される人物)は、東下りの際、[[京都|京の都]]([[平安京]])に残してきた思人が自分の夢に現れなくなってしまったことに触れ、「あの人に忘れられてしまったようだ」と嘆いている。その時に主人公が詠んだ歌については「[[宇津ノ谷峠#詠われた宇津山]]」の「するがなる~」を参照のこと。
 
==== 愛人 ====
{{Also|愛人}}
「'''愛人'''」という[[和製漢語]]は、[[西洋]]文化が大量に流入するようになってきた[[幕末]]後半、「愛するいとしい人」「愛している相手」「特別に深い関係にある異性」などという意味でもって[[造語]]された{{r|"kb日国辞_愛人"|"kb泉_愛人"|"kb林_愛人"}}。その後、[[明治]]時代初頭に「人を愛すること」「人間を大切なものと考えること」という異なる語義でも造語された{{r|"kb日国辞_愛人"|"kb泉_愛人"|"kb林_愛人"}}。
{{Quotation|最初期の用例([[wikt:初出|初出]]か)<br />【前者】[[wikt:en:honey|Honey]] [[蜂蜜]] 愛人 ──『[[英和対訳袖珍辞書]]』[[堀達之助]]編([[文久]]2年〈[[1862年]]〉刊){{r|"kb日国辞_愛人"}}<br />【後者】世人或は愛人の美名を買はんとして慢に政府の任を責め〔『[[礼記]]』檀弓上〕 ──[[福沢諭吉]]『[[西洋事情]] 外編』([[明治元年]]-[[明治3年|3年]]〈[[1868年|1868]]-[[1870年]]〉刊){{r|"kb日国辞_愛人"}}}}
 
いずれの語義も[[日本人]]のそれとは異なる[[欧米]]人のもつ[[恋]]と[[愛]]についての[[概念]]に触れた日本の知識層が対訳語として生み出したものであった。そのうち、本項と深く関係する「愛するいとしい人」等を意味するほうの「愛人」という語は、[[小学館]]『精選版 [[日本国語大辞典]]』等によれば、英語の "[[wikt:en:honey|honey]]"、"[[wikt:en:lover|lover]]"、"[[wikt:en:sweetheart|sweetheart]]" などの対訳語として生まれてきた{{r|"kb日国辞_愛人"|"kb林_愛人"}}。以来、現代の辞事典でも「愛人」の項で「愛するいとしい人」などという語義を第1義もしくは第2義に挙げている{{r|"kb_愛人"}}。
 
他方、「'''[[愛人]]'''」という日本語であるが、かつて当初は「恋人」の[[漢語]]的表現して[[同義語|同義]]用いられていた{{r|"kb泉"}}。現代の辞事典も「愛するいとしい人」という語義を第1義もしくは第2義に挙げている{{r|"kb_愛人"}}。しかし、時代を経るに連れて、[[配偶者]]以外の恋愛関係にある相手を指す語へと変化し、一般に肉体関係があることを意味するようになった{{r|"kb泉"}}。「情婦」「情夫」「情人」の婉曲表現として用いられる傾向もある{{r|"kb_愛人"|"kb泉"}}。
 
==== 彼女 ====
現代日本語には、「愛人もしくは恋人である[[女性]]」を意味する[[人代名詞]]として「'''彼女'''(かのじょ)」がある (''cf.'' [[wikt:彼女|wikt]]) {{r|"kb泉_彼女"}}。これは、第1義として、[[明治]]時代初頭に、話し手・聞き手以外の女性を指す語(人代名詞)として「彼女(かのじょ)」が使われ始めたことに起源がある{{r|"kb林_彼女"}}。[[西ヨーロッパ]]の諸言語における[[三人称]]単数の女性を指す人代名詞(英語の "[[wikt:en:she#English|she]]" など)の[[翻訳]]語として{{r|"kb林_彼女"|"kb日国辞_彼女"}}、もともと男女両性に用いられていた日本語の[[三人称#三人称代名詞|三人称代名詞]]「'''かれ'''('''彼''')」に「おんな(女)」を連結して「彼女(かのおんな、あのおんな)」と表現し始めたのが最初で{{r|"kb日国辞_彼女"}}、これを元に「おんな」だけ[[音読]]することによりで生み出された語であった{{r|"kb泉_彼女"}}。ここから転じて「愛人もしくは恋人である女性」の意味(第2義)で使われ始めたのは[[1887年]](明治20年)前後{{r|"kb林_彼女"}}そして、広く普及したのは[[大正]]時代に入ってからであった{{r|"kb日国辞_彼女"}}。表現としては早くも[[1876年]](明治9年)の『改正画引小学読本』に「彼女(カノジョ) ムカウニヰルムスメ」という形で[[wikt:初出|初出]]しているものの{{r|"kb日国辞_彼女"|"kb林_彼女"}}、これは「カノオンナ」をいじった[[言葉遊び]]に過ぎなかった{{r|"kb日国辞_彼女"}}。
{{Quotation|ロンドンの[[wikt:旦|旦]] 彼女の秋袷 ──[[河野静雲]](明治・大正・昭和時代の人)<ref group="注">秋袷(あきあわせ)とは、秋になって着る[[袷]]。秋の[[季語]]。</ref><hr />泣ぼくろ 彼女もちけり けふの月 ──[[山口青邨]](大正・昭和時代の人)}}
 
==== 彼氏 ====
現代日本語には、「愛人もしくは恋人である[[男性]]」を意味する人代名詞として「'''彼氏'''(かれし)」がある (''cf.'' [[wikt:彼氏|wikt]]) {{r|"kb泉_彼氏"|"kb林_彼氏"}}。この語は[[三人称#三代名詞|三人称代名詞]]と「愛人もしくは恋人である女性」の両方の意味での「彼女(かのじょ)」の[[対義語]]として、[[昭和]]初期になってようやく誕生した{{r|"kb泉_彼氏"|"kb林_彼氏"|"kb日国辞_彼氏"}}。[[徳川夢声]]の造語とされており{{r|"kb日国辞_彼氏"}}{{Sfnp|松井|1983|p=50}}、[[流行語]]として広まった{{r|"kb日国辞_彼氏"}}、やがて定着した。後者の意味では「彼女」と完全対義語の関係にあるが、前者の三人称の人代名詞としての意味は「あの人」や「あいつ」に近く、「彼女」と違って幾分からかいのニュアンスが含まれる{{r|"kb日国辞_彼氏"}}。最初期の用例を以下に挙げておくが、これは三人称の人代名詞の用例である
{{Quotation|ここに於て、{{ruby|彼氏|カレシ}}を一名、アイアン・クロウ(鉄の爪)と尊称することに相成った。 ──徳川夢声 漫談集『見習諸勇列伝の巻』([[1929年]]〈昭和4年〉刊行)所収。{{r|"kb日国辞_彼氏"}}<hr />やがて夕方にもなれば赤い[[ジャンク (船)|ヂヤンク船]]も帰つてくるであらう、そして彼氏は彼氏の空腹に始めて気づく。 ──[[三岸好太郎]]『上海の絵本』([[1930年]]〈昭和5年〉8月刊行)<ref name="青空_三岸">{{Cite web |title=上海の絵本 三岸好太郎 |url=https://www.aozora.gr.jp/cards/001997/files/59355_68470.html |publisher=[[青空文庫]] |accessdate=2020-05-21 }}</ref>}}
上に挙げたのはいずれも最初期の用例で、これらは三人称代名詞である。以下に挙げるものは「愛人もしくは恋人である男性」に読めてしまう人がいるかも知れないが、「あいつ」への差し替えが可能な三人称代名詞であることが分かる。
{{Quotation|私は[[ゴンドラ]]を見出してズカズカはいった。王子君五郎氏はそこの[[バーテン]]だろうと思ったのである。然し、バーテンダーは彼氏ではなかった。 ──[[坂口安吾]]『日月様』([[1949年]]〈昭和24年〉刊行)<ref name="青空_坂口安吾">{{Cite web |title=日月様 坂口安吾 |url=https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/43158_31427.html |publisher=[[青空文庫]] |accessdate=2020-05-21 }}</ref>}}
 
==== 彼 ====
「彼氏(かれし)」を「'''彼'''(かれ)」ともいうが、先述したように、元々は男女両性に用いてきた古来の[[大和言葉]]の[[三人称#三人称代名詞|三人称代名詞]]「[[wikt:かれ#代名詞|'''かれ''']](彼)」が「彼女」という新語が普及してゆくに連れて「愛人もしくは恋人である男性」の意味だけ用いられるようになっていった。間違えてはならないは、明治初頭に生まれた[[言葉遊び]]の「彼女(かのじょ)」が一般的な辞書に掲載されるほどの語にま成長を遂げた頃には明治が終わりかけていた(あるいは、終わっていた)という事実で、つまりは、「彼女(かのじょ)」が通用語になるまでは依然として男女両用の「かれ(彼)」が、いわゆるこの時代の“正しい”日本語であった。その後、「彼女」の対義語として「彼氏」が生まれ、流行語から通用語へと成長したことで「彼」と「彼氏」が同義語として並存する時代が到来し、今に到っている。以下は用例
{{Quotation|[[日焼け|日焼]]せる彼と彼女と町に逢ふ ──[[高浜虚子]](明治・大正・昭和時代の人)<hr />我一語彼一語虫きいてをり ──[[星野立子]](大正・昭和時代の人)}}
 
==== ガールフレンドとボーイフレンド ====
{{Also|ガールフレンド|ボーイフレンド}}
 
{{節スタブ|section=1|date=2020年5月21日}}
==== ボーイフレンド ====
 
==== ステディ ====
48 ⟶ 64行目:
 
===== アベック =====
{{Also|アベック}}
「'''[[アベック]]'''」は「…と[[wikt:ともに|ともに]]」を意する[[フランス語]]の[[前置詞]] "[[wikt:fr:avec|'''avec''']]" ([[wikt:avec|wikt:ja]]) {{IPA|avɛk}}[{{small|アヴェック}}]に由来する[[和製外来語|和製フランス語]]で{{r|"kb_アベック"}}、第1義には、(男女の)二人連れ、特に、愛し合う二人連れをいう{{r|"kb_アベック"}}。一対の男女が一緒に組んで行動すること{{r|"kb_アベック"}}。また、その男女をいう{{r|"kb_アベック"}}。また、第2義には、二人あるいは二つのものが同一の行動をすることをいう{{r|"kb_アベック"}}。
 
===== カップル =====
{{Also|カップル}}
「'''[[カップル]]'''」は「一対」などを意味する英語 "[[wikt:en:couple|'''couple''']]" {{IPA|kʌpəl}} を音写した外来語で、夫婦・恋人などの一組みをいう{{r|"kb_カップル"|"kb-P英和中4_couple"}}。
 
===== 恋人同士とその他 =====
「アベック」と「カップル」は、[[婚姻]]関係の有無に関係なく用いられるため、言葉ひとつだけではその二人が「[[夫婦]]」なのかどうかを判断しようがない。これに対して「恋人」という語は、特に20世紀末期以降現在の用法では、[[配偶者]](婚姻関係にある相手方)のいない人に対して用いるのが通例であり、したがって「恋人同士」という表現も婚姻中の“夫婦(婚姻中の、男女もしくは男女でない組み合わせの二人)”に対して用いることは少なくなっている。ただ、「[[お父さん]]と[[お母さん]]は(今でも)恋人同士だから」などといった表現は割と用いられており、[[辞書]]的解釈としては、完全に正しい。
 
===== アベックとカップル =====
「恋人同士」や「男女一組」を含意する語義での「アベック」という語は同じ意味をもつ「カップル」に置き換わった経緯があり、前者が優勢であった時代の話者が[[高齢化]]してゆくに連れて緩やかな[[廃語]]化が続いている。
 
[[朝日新聞]]の記者がこの話題を取り上げた[[2010年]](平成22年)の記事によると<ref name="朝日_20100930">{{Cite news |和書 |author=加藤順子 |date=2010-09-30 |title=アベックはもういない? |url=http://www.asahi.com/special/kotoba/archive2015/danwa/2010092200035.html |publisher=[[朝日新聞社]] |newspaper=[[朝日新聞デジタル]] |accessdate=2020-05-20 }}</ref>、[[朝日新聞社]]内の[[データベース]]で調べてみたところ、データベースに登録されている朝日新聞の紙面の[[見出し]]「アベック」が登場するのは[[1935年]](昭和10年)[[3月27日]]付の「アベツク受難 有金を奪はる」という記事であった{{r|"朝日_20100930"}}。その後、1980年代では「楽しそうに歩くアベック」などといったほほえましい記事のほかに「[[アベック失踪事件]]」や「[[名古屋アベック殺人事件]]」などぶっそうな用例が頻繁に登場する{{r|"朝日_20100930"}}。1990年代からは用例が徐々に見られなくなるものの、「アベック優勝」など[[スポーツ]]の分野では使われ続け、例えば2009年(平成21年)には1年間で朝日新聞上に登場した63件のほとんどがスポーツ関係であった{{r|"朝日_20100930"}}。ただし「アベック優勝」という見出しには[[ベテラン]]記者が「俺から見ても古いぞ」と異を唱えるほど、認識は変化しているという{{r|"朝日_20100930"}}。
 
[[小説家]]で[[評論家]]の[[大岡昇平]]は、1960年代後半に書いた『アベック語源考』という[[評論]]の中で「アベックという言葉は昭和2年頃、(...略...)生まれた」としている{{r|"朝日_20100930"}}。当時としては珍しい[[男女共学]]の学校「文化学院」(1925年/大正14年創立)の生徒が仲良く腕を組んで歩く交際の様子を、美しく表現しようと、フランス語から採って「アベック」と呼び始めたのだという{{r|"朝日_20100930"}}<!--※このくだりは原文の時点で主語を欠いており、「美しく表現しよう」と造語したのが誰なのかはっきりしません。-->。それが昭和10年代になって密室的な意味に変容し、やがては[[旅館]]での逢瀬({{small|おうせ}}。愛し合う男女が密かに逢うこと)を意味するまでなったが{{r|"朝日_20100930"}}、その理由については大岡も分析で明かせずに終わっている{{r|"朝日_20100930"}}。[[戦後]]([[第二次世界大戦後]]の[[戦後混乱期|混乱期]]になると、発刊が相次いだ[[性風俗]]や[[犯罪]]などを扱う[[カストリ雑誌]]の名前に「アベック」が使われるなどして、いやらしいイメージが定着してしまったきらいがあるという{{r|"朝日_20100930"}}。しかしその後、理由は不明ながら、1950年代になって人気の[[テレビ番組]]『[[アベック歌合戦]]』が登場するほどにイメージは好転しており、密室で男女が交際するイメージから公共の場で語れる言葉への返り咲きを果たしている{{r|"朝日_20100930"}}。
 
「カップル」という日本語は、[[1940年]](昭和15年)に発表された[[田中英光]]の[[中編小説]]『[[オリンポスの果実]]』で早くも使われている{{r|"kb_カップル"}}が、「六十歳前後の[[老人]]夫婦から、十五歳位の[[少年]][[少女]]のカップルに至るまで、[[ダンス]]を愉しんでゐる」という内容で{{r|"kb_カップル"}}、「恋人同士」という意味とは違った用法である。先述の朝日新聞の記事によれば、「恋人同士」という意味での使用は1960年代に始まったという{{r|"朝日_20100930"}}。
67 ⟶ 85行目:
「恋人同士」を意味する用語としての「アベック」から「カップル」への置き換わりは、1990年代に傾向として現れ、スポーツ関係以外の多くの分野では同年代のうちに終わっていたように思われるが、「アベック」という語がそれで完全に用いられなくなったわけではない。犯罪多発地帯でうろつかないよう「アベック」に注意喚起する[[地方自治体]]は現在も存在する{{Refnest|group="注"|実例として[[葛西臨海公園]]([[東京都]][[江戸川区]]に所在する[[都立公園]])を挙げる{{r|"朝日_20100930"}}。案内[[看板]]に「夜間{{Color|crimson|'''アベック'''}}に対する[[集団暴行]]が発生しています。ご{{Color|crimson|'''注意'''}}ください。」とある{{r|"朝日_20100930"}}。}}。しかし、そのような稀となった用例を挙げるまでもなく、廃れることが今のところ想定し得ない分野も存在する。
 
愛し合う二人による利用を想定した二人掛けの[[座席]]である「'''アベックシート'''」は「'''カップルシート'''」「'''[[ペア]]シート'''」「'''ロマンスシート'''」などといった別表現と並存しており、「アベック」が消える気配はまだ無い。[[競技]]などにおける「'''男女アベック[[優勝]]'''」「'''アベック優勝'''」<ref group="注">ここでの論旨からは外れるが、ほかに「競技Aと競技Bのアベック優勝」などという表現もある。</ref>という表現も「'''ペア優勝'''」と並存しており、未だ置換は起きていない{{Refnest|group="注"|「ペア優勝」では、「男女ペアの優勝」や、[[バドミントン]]競技などにおける「〇〇△△ペアの同時優勝」と紛らわしいため、「アベック優勝」に取って代われない。<ref name=OlympicChannel_20200316>事例:{{Cite web |author=鈴木花 |date=2020-03-16 |title=【バドミントン】全英OP5日目・結果|女子の”フクヒロ”と男子の”エンワタ”、ダブルスでアベック優勝 |url=https://www.olympicchannel.com/ja/stories/news/detail/%E3%83%8F%E3%83%88%E3%83%9F%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%B3ハトミントン-%E5%85%A8%E8%8B%B1op5%E6%97%A5%E7%9B%AE全英op5日目-%E7%B5%90%E6%9E%9C結果-%E5%A5%B3%E5%AD%90%E3%81%AE女子の-%E3%83%95%E3%82%AF%E3%83%92%E3%83%ADフクヒロ-%E3%81%A8%E7%94%B7%E5%AD%90%E3%81%AEと男子の-%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%AF%E3%82%BFエンワタ-%E3%82%BF%E3%83%95%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%81%A6%E3%82%A2%E3%83%98%E3%83%83%E3%82%AF%E5%84%AA%E5%8B%9Dタフルスてアヘック優勝/ |publisher=OLYMPIC CHANNELSERVICES, S.L. |website=公式ウェブサイト |work=Olympic Channel |accessdate=2020-05-20 }}</ref><ref name="産経_20160506">事例:{{Cite news |和書 |date=2016-05-06 |title=JTが男女アベック優勝! 吉原監督、就任1年目で頂点/バレー |url=https://www.sanspo.com/sports/news/20160506/vol16050605010001-n1.html |publisher=[[産業経済新聞社]] |newspaper=[[サンケイスポーツ]] |accessdate=2020-05-20 }}</ref>}}。このように、置換しがたい用語に限っては今後も用いられ続けることが予想される。なお、「恋人同士」や「男女一組」を含意する語義以外の「アベック」も廃語化したかのような論説が散見されるが、[[社会活動|活動]]自体が過去のものとなった「'''アベック闘争'''」はともかくとして、「[[本塁打#アベック本塁打|'''アベック本塁打'''(アベックホームラン、アベックホームラン、アベックホーマー、アベックアーチ、アベック弾、アベック砲)]]」や、「'''アベック[[遊説]]'''」「'''アベック[[選挙]]'''」、選挙や[[くじ|籤({{small|くじ}})]]などでの「'''アベック当選'''」、[[飛翔]][[動物]]や[[航空機]]の「'''アベック[[飛行]]'''」などは依然として用いる人や[[マスメディア]]が存在する。これらもやはり、置換するにふさわしい語が見当たらないうえに事象そのものは廃れそうにない種類のものであるため、廃語化することを想定できない。
 
=== 英語 ===
73 ⟶ 91行目:
 
英語では "[[wikt:en:steady|'''steady''']]" {{r|"kb-P英和中4_steady"|"英辞郎_steady"}}ということもある。この場合は「他の異性と比較して恋人としての特別な関係である」という意味合いが強い。19世紀の終わり頃から[[アメリカ合衆国|アメリカ]]で用いられるようになった語である{{r|"英辞郎_steady"|OED_steady}}。この語に由来する外来語「ステディ/ステディー」については[[#ステディ|先述]]した。
 
==== ボーイス語 ====
{{節スタブ|section=2|date=2020年5月21日|title= mon amour などについて。}}
 
=== 中国語 ===
{{節スタブ|section=3|date=2020年5月21日|title=現代日本語「恋人」に最も近い「情人」などについて。}}
 
== 脚注 ==
84 ⟶ 108行目:
<ref name="kb日国辞">{{Cite web |title=恋人 |url=https://kotobank.jp/word/恋人-493674 |author=小学館『精選版 [[日本国語大辞典]]』|publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-18 }}</ref>
<ref name="kb_愛人">{{Cite web |title=愛人 |url=https://kotobank.jp/word/愛人-421381 |publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-18 }}</ref>
<ref name="kb泉_愛人">{{Cite web |title=愛人 |url=https://kotobank.jp/word/愛人-421381 |author=小学館『デジタル大辞泉』|publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-21 }}</ref>
<ref name="kb林_愛人">{{Cite web |title=愛人 |url=https://kotobank.jp/word/愛人-421381 |author=三省堂『大辞林』第3版 |publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-21 }}</ref>
<ref name="kb日国辞_愛人">{{Cite web |title=愛人 |url=https://kotobank.jp/word/愛人-421381 |author=小学館『精選版 日本国語大辞典』|publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-21 }}</ref>
<ref name="kb_情人">{{Cite web |title=情人 |url=https://kotobank.jp/word/情人-532135 |publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-18 }}</ref>
<ref name="kb_思い人">{{Cite web |title=思い人 |url=https://kotobank.jp/word/思い人-454718 |publisher=コトバンク |accessdate=2020-05-18 }}</ref>