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== 利用 ==
=== 木材 ===
[[Fileファイル:Ginkgo biloba MHNT.BOT.2010.13.1.jpg|thumb|250px|イチョウの年輪]]
木材としての知名度は低い<ref name="woods"/>。組織は[[針葉樹]]のものと似ている<ref name="woods"/>。材は黄白色で、心材と辺材の色の差はほとんどない<ref name="conifer"/><ref name="woods"/>。早材と晩材の差が少ないため、年輪ははっきりとせず[[広葉樹]]材のようであり、材は緻密で均一、柔らかいため加工性に優れる<ref name="woods"/><ref name="nipponika" />。肌目は精で、木理は通直で、反曲折裂および収縮が少なく、歪みが出にくい良材である<ref name="conifer"/><ref name="woods"/><ref name="nipponika" />。木材の中に異形細胞をもち、その中に金平糖型の[[シュウ酸カルシウム]]を含む<ref name="woods"/>。気乾比重は0.55で、やや軽軟で、耐久性は低い<ref name="woods"/>。器具・建具・家具・彫刻<ref name="conifer"/><ref name="woods"/><ref name="nipponika" />、カウンターの天板・構造材・造作材・水廻りなど広範に利用されており、[[碁盤]]や[[将棋盤]]にも適材とされる<ref name="yamakei"/><ref name="woods"/>。ただし、[[カヤ]]に比べ音が良くないため評価は低い<ref name="woods"/>。その他、古くは鳥屋の[[まな板]]に好まれた<ref name="woods"/>。
 
=== 植栽 ===
[[File:Ginko (Ginko biloba) (3505588883).jpg|thumb|150px|イチョウの盆栽]]
土地を選ばず生育し、萌芽力がさかんで、病虫害が少なく、強い剪定にも耐えるため、庭園樹、公園樹、街路樹、防風樹、防火樹などとして植栽される<ref name="nipponika" />。日本では庭園や公園に植栽されたり<ref name="leaf"/>、寺社の境内に多く植えられる<ref name="conifer"/><ref name="yamakei"/>が、大規模な造林地になっているものはない<ref name="woods"/>。古い社寺の境内には樹齢数百年を経たと称される「大銀杏」が多くみられる<ref name="bark"/>。外国の植物園普通によく見られる<ref name="conifer"/>。[[盆栽]]にも利用される<ref name="yamakei"/><ref name="nipponika" />。また耐火性、樹皮、コルク質で気胞分があるため、耐火力に優れているとみなされ、防火植林に用いられる<ref name="conifer"/><ref name="nipponika" />。[[江戸時代]]の[[火除地|火除け地]]に多く植えられた。[[大正時代]]の[[関東大震災]]の際には延焼を防いだ例もあったため、防災を兼ねて次項で記載する街路樹にイチョウが多く植えられるようになったという。これを提案したのは造園家の[[長岡安平]]であったことが、2019年12月27日放送の『[[チコちゃんに叱られる!]]』で取り上げられた<ref name="detazou191227">{{Cite web|url=https://datazoo.jp/tv/チコちゃんに叱られる!/1325657 |title=チコちゃんに叱られる!「拡大版SP!イチョウ並木・氷の謎・イラスト一挙公開!」 |website=TVでた蔵 |publisher= |date=2019-12-27 |accessdate=2019-12-29}}</ref>。
 
==== 街路樹 ====
病害や虫害がほとんどなく<ref name="conifer"/>、黄葉時の美しさと、剪定や火災に強いという特性から、街路樹として利用される。2007年の[[国土交通省]]の調査によれば、[[街路樹]]として57万本のイチョウが植えられており、樹種別では最多本数。東京都の[[明治神宮外苑]]や、大阪市[[御堂筋]]の街路樹などが、銀杏並木として知られている。大阪を代表する御堂筋のイチョウ並木は大阪市を代表とする街路樹として著名で、[[1966年]]時点で樹齢約50年、867本(うち雌株111本)あった<ref name="Osaka">[[#Osaka|赤松 1966]], p.41</ref>{{Refnest|group="註"|それに加え、大阪市公園部で街路樹として管理されているイチョウは、1964年5月時点で847本であった<ref name="Osaka"/>。}}。雌株秋期に落下した果実種子(銀杏)が異臭の原因となる場合があるので<ref name="conifer"/>、街路樹への採用にあたっては、果実のならない雄株のみを選んで植樹される場合もある。
<gallery>
Jingu Gaien Ginkgo Street Tokyo.jpg|東京[[明治神宮外苑]]([[港区 (東京都)|港区]][[北青山]])
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[[画像:Fukaura town kitakanegasawa ichou.jpg|thumb|250px|[[北金ヶ沢のイチョウ]] - 樹齢1,000年以上とされる。]]
[[File:Big Ginkgo Tree in Kin, Tsushima.jpg|thumb|250px|対馬にある琴の大イチョウ]]
日本には樹齢1,000年以上と称されるイチョウの巨樹が各地にある<ref name="Kinoshita1"/>{{refnest|group="註"|ただし多くの植物が詠まれている[[古今和歌集]]などの古典にはイチョウに相当する植物の記述はなく、また成長が著しく速いため、その多くは古くても、樹齢 600 - 700年 程度だと考えられている<ref name="Kinoshita1"/>}}。
 
* [[北海道大学|北海道大学札幌キャンパス]]のイチョウ並木
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イチョウの[[種子]]は、'''銀杏'''{{small|(ぎんなん)}}といい、殻の中に含まれる[[胚乳|仁]](さね、核)が食用となる<ref name="Shincho-kamo"/>。これを食用とするのは日本や中国など、[[東アジア]]における習慣である<ref name="JJAAM"/>。これは中国の[[本草学]]図書である『紹興本草』([[1159年]])にも記載される<ref name="Kinoshita1">{{cite web|author=[[帝京大学]][[薬用植物園]]管理室 木下武司|title=薬用植物イチョウGinkgo bilobaについて|url=http://www2.odn.ne.jp/~had26900/topics_&_items2/about_Ginkgo_biloba.htm|accessdate=2020-05-22}}</ref>。薬用(漢方)として利用されていたことが、[[明]]代の[[龔廷賢]]が[[1581年]]に著した『[[萬病回春]]』に記されている<ref name="Kinoshita1"/>。
 
仁は直径1.5 cm前後のラグビーボールの形で、熱すると半透明の鮮やかな緑色になるが、水分を吸うと黄色っぽく不透明になる。[[茶碗蒸し]]やなど[[おこわ]]などの具に使われたり<ref name="Kinoshita1"/>、煮物や鍋物、[[揚げ物]]、[[炒め物]]など広汎な料理に用いられ<ref name="Starch"/>、[[酒]]の[[肴]]としても用いられる<ref name="fruit">{{cite web|author=果樹研究所|title=ぎんなんとアケビ|url=http://www.naro.affrc.go.jp/archive/fruit/itiosi/2013/048547.html|publisher=農研機構|date=2013-09-15|accessdate=2020-05-22}}</ref>。加工品としては[[砂糖漬]]やオリーブ油漬、水煮などの瓶詰や缶詰が売られている<ref name="Starch"/>。[[デンプン]]が豊富に含まれ<ref name="Starch">{{cite journal|author=福場博保・島田保子・鵜飼光子|title=ギンナンデンプンの二,三の性質|journal=家政学雑誌|volume=31|issue=6|date=1980|pages=417-420}}</ref>、モチモチとした食感と独特の歯ごたえがある。ほかにも[[レシチン]]や[[エルゴステリン]]、[[パントテン酸]]、[[カリウム]]、[[カロチン]]や[[ビタミンC]]も含有している<ref name="Starch"/><ref name="sofue">{{cite web|title=祖父江ぎんなんとは|url=http://www.ja-aichinishi.or.jp/ginnan/about/|publisher=祖父江ぎんなんブランド推進協議会|accessdate=2020-05-22}}</ref>。ただ、独特の苦味<ref name="Starch"/>と臭気があり、特に臭気においては強烈だと感じることもある。秋の食材だが、加熱して[[真空包装|真空パック]]詰めにした商品は年中手に入る。上記のような鮮やかな緑色は殻付きの生の種子を入手しないと得られない。
 
銀杏は古くは米の凶作時の備蓄食糧に使われたといわれており、今日では日本全土で生産されているが、特に愛知県[[稲沢市]](旧:[[中島郡 (愛知県)|中島郡]][[祖父江町]])は銀杏の生産量日本一である<ref name="sofue" /><ref>{{cite web|title=主な観光と特産品|url=http://www.city.inazawa.aichi.jp/miryoku/inazawa/1002836.html|website=[[稲沢市]]役所|accessdate=2020-05-22}}</ref>。ぎんなん採取を目的としたイチョウの栽培は[[1841年]]([[天保]]11年)、祖父江町に[[富田栄左衛門]]がのちの「久寿(久治)」となるイチョウ苗を植えたことに始まるとされる<ref name="sofue" /><ref name="Inazawa"/>。ぎんなんの収穫を目的とした栽培品種があり、大粒晩生の[[藤九郎ぎんなん|藤九郎]]、大粒中生の久寿(久治)、大粒早生の喜平、中粒早生の金兵衛、中粒中生の栄神などが主なものとして挙げられる<ref name="Inazawa">{{cite web|author=経済環境部 農務課 農業振興グループ|title=祖父江ぎんなんとは|url=http://www.ja-aichinishicity.orinazawa.aichi.jp/ginnanmiryoku/about1003181.html|website=[[稲沢市]]役所|accessdate=2020-05-22}}</ref>。藤九郎は[[岐阜県]] [[瑞穂市]](旧[[穂積町]])、久寿(久治)、金兵衛、栄神(栄信)は上記愛知県稲沢市(旧祖父江町)、長瀬は愛知県[[海部郡]]発祥の品種である<ref>{{cite web|title=祖父江ぎんなんQ&A|url=http://www.city.inazawa.aichi.jp/miryoku/1003181.html|publisher=祖父江ぎんなんブランド推進協議会|accessdate=2020-05-22}}</ref>。{{要出典範囲|祖父江町では、街路樹を目的として植えられた雄株の影響で周囲の雌株の銀杏の実が小さくなったとして、街路樹の雄株が撤去されることもあった(雄株は周囲1 kmの雌株に影響を与える)。|date=2020-05}}
 
ぎんなんの収穫を目的とした栽培品種があり、大粒晩生の[[藤九郎ぎんなん|藤九郎]]、大粒中生の久寿(久治)、大粒早生の喜平、中粒早生の金兵衛、中粒中生の栄神などが主なものとして挙げられる<ref name="Inazawa">{{cite web|author=経済環境部 農務課 農業振興グループ|title=祖父江のぎんなん|url=http://www.city.inazawa.aichi.jp/miryoku/1003181.html|website=[[稲沢市]]役所|accessdate=2020-05-22}}</ref>。藤九郎は[[岐阜県]] [[瑞穂市(旧[[穂積町]])、久寿(久治)、金兵衛、栄神(栄信)は上記愛知県稲沢市(旧祖父江町)、長瀬は愛知県[[海部郡]]発祥の品種である<ref>{{cite web|title=祖父江ぎんなんQ&A|url=http://www.city.inazawa.aichi.jp/miryoku/1003181.html|publisher=祖父江ぎんなんブランド推進協議会|accessdate=2020-05-22}}</ref>。
 
熟すと肉質化した外種皮が異臭を放つ<ref name="Noken"/>。異臭の主成分は下記の皮膚炎の原因となる[[ギンコール酸]]である<ref name="Noken"/>。異臭により[[ニホンザル]]、[[ネズミ]]などの動物は食べようとしないが、[[アライグマ]]は食べると言われている<ref>{{cite web|title=生産から出荷まで|url=http://www.ja-aichinishi.or.jp/ginnan/about/produce.php|publisher=祖父江ぎんなんブランド推進協議会|accessdate=2020-05-22}}</ref>。{{要出典範囲|ぎんなんのシーズンに先走って収穫されるものは「走りぎんなん」と呼ばれ、やわらかく匂いも少ないことから通常の時期に収穫されるものより高級とされる。|date=2020-05}}また銀杏には[[アナカルド酸]]が含まれ、{{snamei||Nostoc}} 属[[シアノバクテリア]]の糸状体に対して強力な殺菌活性を有しながらも、毒性を示さない極低濃度では明瞭な[[ホルモゴニア]]分化誘導活性を示す<ref>{{cite journal|author=西塚紘明・橋床泰之|title=イチョウ偽果に含まれるアナカルド酸類とそれらのエステル誘導体が示す対Nostoc属シアノバクテリア・ホルモゴニア分化誘導活性|journal=植物の生長調節 (植物化学調節学会研究発表記録集)|volume=51|page=94|issn=1346-5406|date=2016-10-07}}</ref>。