「蒸気タービン」の版間の差分

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m →‎歴史: 候補として液体金属が有力視されている
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一方では、電力消費の増大に応じて水力発電所に加えて火力発電所の建設が進むと、コストが安く入手の容易な石炭を燃料とする蒸気ボイラーと蒸気タービンの組合せが主流となった。<!--その後の[[原子力発電]]の実用化によって、原子炉と蒸気タービンの組合せも広がった。-->産業用ではこういった大型発電用途の他にも、石油・化学プラントなどに代表される大規模な生産施設内でのポンプや、攪拌機、破砕機、ファンといった電動モーターでも代替可能な程度の駆動力として蒸気タービンが使われている。21世紀となった今では、保守の手間や制御性から徐々に電動モーターが主流となっているが、プラント内で蒸気が生じる施設ではエネルギーの有効利用の点でも蒸気タービンが新たに採用され続けている<ref name = "蒸気タービン"/>。またガスタービンを用いる発電施設においては、ガスタービンの排熱を利用して発生させた蒸気で蒸気タービンを駆動する、いわゆる[[コンバインドサイクル発電]]によりエネルギー利用効率の改善を図るといった使い方もされている。
 
[[原子力]]に関しては、地上での発電や船舶などの大規模な動力用としては、[[核分裂反応]]を熱源とし、蒸気タービン機関を駆動するものが、現在もほぼ唯一の現実的な選択肢となっている。[[1960年代]]後半には空気など気体を利用するものも試みられたが、成功したとは言い難く、[[原子炉]]自体は[[二酸化炭素]]によって冷却される[[マグノックス炉]]でも、最終的には水を加熱して蒸気機関によって動力を取り出すものとしている。また、[[核融合反応]]も現在のところ、蒸気機関以外で動力を取り出す具体的な構想はない。ただし、比較的小規模のものに限っては、核分裂反応による熱を[[熱電素子]]で電力に変換するもの、[[α崩壊]]の際に出る[[放射線]]そのものを電位に変換して取り出すもの([[原子力電池]])が存在している。
 
== 分類 ==
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: 出力軸となる軸は剛性軸(リジッドローター)と弾性軸(フレキシブルローター)に分けられる。剛性軸は軸が太く丈夫に作られており、軸そのものの[[固有振動|固有振動数]]に相当する危険回転数が[[定格]]回転数よりも高い物を指す。運転時にも危険回転数を意識する必要はない。弾性軸は軸が比較的細く作られており、危険回転数が[[定格]]回転数よりも低い物を指す。運転時でも特に始動時には必ず危険回転数を通過するため、危険回転数付近を速やかに通過させて共振状態に陥らないよう注意が必要である。また、軸は一体構造型とはめ込み型に分けられる。一体構造型は軸と羽根車が一体で作られており高速回転にも対応できるが、はめ込み型では軸と羽根車が別々に作られ組み合されたもので6,000[[rpm (単位)|回転/分]]程度までが上限である。
; 動翼
: 蒸気からエネルギを得て回転する[[翼]](翼列)である。初段では短い動翼も終段に近くなるに従って少しずつ長くなる。発電用のものでは翼高さが最長1mを越す<ref group="注">初段の翼の面積に対して終段の翼の面積は100倍にもなる。</ref>。動翼は[[共振]]を避けるために互いが連接して隙間を作らないようにされる。動翼のルートが羽根車に植え込まれただけでは振動に弱いため外周部でのシュラウドバンドやダンピングワイヤーで横同士がつながれる。また、大きな遠心力にも耐える必要がある<ref group="注">遠心力は、例えば100グラムの動翼が半径20cmの位置で8,000回転/分で回されると、1.4トン以上の荷重が掛かる。</ref><ref name = "蒸気タービン">山岡勝巳 『蒸気タービン』 鳥影社、2001年12月5日初版第1刷発行、ISBN 488629619X</ref>。大きなローターではシュラウド・リングと回転軸の中間にもバンディング・ワイヤと呼ばれる金具が付けられる。固有振動数を高くするために先端を細く根元を太くした[[翼平面形#テーパー翼|テーパー翼形状]]や、翼先端部と翼根元部での周速度の違いから生じる蒸気流入角度の差を最小にする「ねじれ羽根」が採用されている。低圧段の羽根には翼に付く凝集水分をタービン・ケーシングのドレン溝へ誘導する溝が掘られているものがある。
; 静翼
: 固定されており、蒸気の流れが効率よく動翼へ流れるように導く。
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クロス・コンパウンドでは、高圧と低圧の半分をプライマリ軸とし、中圧と低圧の残り半分をセカンダリ軸とする方式と、高圧と中圧をプライマリ軸とし、低圧をセカンダリ軸とする方式がある。前者は低圧タービン及び[[タービン発電機|発電機]]を2つの軸で同一設計にできる利点があるが、最近の大型火力ユニットのクロス・コンパウンド機では、後者が採用されることが多い。これは、セカンダリ軸の回転速度をプライマリ軸の半分とすることで低圧最終段動翼の遠心力を緩和し、40インチ以上の長い動翼を採用して低圧タービンの最終段の排気損失を低減することが可能なためである。また、この構成であれば復水器もセカンダリ側のみで良く、前者の構成に比べ設備コストの面でも有利となる。
 
従来、大型火力ユニットは[[ベースロード発電所|ベースロード]]運用が多く熱効率が重視されていたことや、高速回転に伴う低圧タービン最終段動翼の遠心力の制約などにより、500MW - 700MW以下はタンデム・コンパウンド機、それより大型のユニットはクロス・コンパウンド機とされていた。しかし、近年では原子力比率の拡大やピーク負荷の尖鋭化に伴い大型火力ユニットでも建設コストの低減や運用性向上が重視されるようになったため、軽量のチタン動翼による遠心力の緩和や材料強度の改善などにより[[中部電力]]碧南火力4号機(2001年)において国内の1000MW級火力ユニットでは初めてタンデム・コンパウンド機が採用された<ref name = "ターボ動力工学">刑部真弘著 『ターボ動力工学』 海文堂 2001年3月30日初版発行 ISBN 4303329118</ref>。
 
=== 発電用蒸気タービンの部分負荷運転方式 ===