「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」の版間の差分

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{{改名提案|短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律|date=2020年5月}}
{{Law}}
{{日本の法令
| 題名=短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律
| 通称=パートタイム労働法
| 番号=平成5年6月18日法律第76号
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}}
 
'''短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律'''(たんじかんろうどうしゃおよびゆうきこようろうどうしゃのこようかんりのかいぜんとうにかんするほうりつ)は、[[短時間・有期雇用労働者]]の雇用管理等について定めた日本の[[労働法]]。通称は、'''パートタイム労働法'''や'''パート労働法'''など。
 
平成27年の改正により、[[事業主]]の責務が強化された一方で、短時間労働援助センターの規定は削除された。2020年4月の改正法施行により法の対象となる[[労働者]]の範囲を拡大したことから、題名を'''短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律'''から現題名へと変更した。
 
== 構成 ==
*第一章 総則(第1条-第4条)
*第二章 短時間・有期雇用労働者対策基本方針(第5条)
*第三章 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等
**第一節 雇用管理の改善等に関する措置(第6条-第18条)
**第二節 事業主等に対する国の援助等(第19条-第21条)
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== 目的 ==
このの目的は、短時間労働者が日本における[[少子高齢化]]の進展、就業構造の変化等の社会経済情勢の変化に伴い、'''短時間・有期雇用[[労働者]]の果たす役割の重要性が増大している'''ことにかんがみ、短時間・有期雇用労働者について、その適正な[[労働条件]]の確保、[[人事労務管理|雇用管理]]の改善、'''通常の[[労働者]]への転換'''の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、'''通常の労働者との均衡のれた待遇の確保'''等を図ることを通じて、'''短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮'''することができるようにし、もってその福祉の増進を図り、あわせて'''経済及び社会の発展に寄与'''に寄与することにあを目的とする(第1条)。
*「あわせて経済及び社会の発展に寄与する」とは、少子高齢化、労働力人口減少社会に入った日本においては、短時間労働者について、通常の労働者と均衡のとれた待遇の確保や通常の労働者への転換の推進等を図ることは、短時間労働者の福祉の増進を図ることとなるだけでなく、短時間労働者の意欲、能力の向上やその有効な発揮等による'''[[労働生産性]]の向上'''等を通じて、経済及び社会の発展に寄与することともなることを明らかにしたものである(平成26年7月24日基発2号)。
*どのような[[雇用]]形態を選択しても納得が得られる待遇が受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにする観点から、行政指導、紛争の解決等も含めて一体的に対応するため、いわゆる非正規雇用労働者のうち、[[直接雇用]]である短時間労働者と有期雇用労働者を法の対象としたものであること(平成31年1月30日基発0130第1号/職発0130第6号/雇均発0130第1号/開発0130第1号)。
 
短時間・有期雇用労働者及び短時間・有期雇用労働者になろうとする者は、'''[[ワークライフバランス|生活との調和]]を保ちつつ'''その意欲及び能力に応じて就業することができる機会が確保され、職業生活の充実が図られるように配慮されるものとする(第2条の2)。
== 適用労働者 ==
*短時間・有期雇用労働者としての就業は、労働者の多様な事情を踏まえた柔軟な就業のあり方として重要な意義を有しているが、短時間・有期雇用労働者の職務の内容が意欲や能力に見合ったものでない場合、待遇に対する納得感や、意欲及び能力の有効な発揮が阻害されるほか、短時間・有期雇用労働者としての就業を実質的に選択することができないこととなりかねない。そこで、本条は、短時間・有期雇用労働者としての就業が、柔軟な就業のあり方という特長を保ちつつ、労働者の意欲及び能力が有効に発揮できるものとなるべきであるとの考え方のもと、短時間・有期雇用労働者及び短時間・有期雇用労働者になろうとする者が、生活との調和を保ちつつその意欲や能力に応じて就業することができる機会が確保されるべきことを基本的理念として明らかにしたものであること。あわせて、短時間・有期雇用労働者が充実した職業生活を送れるようにすることが、社会の活力を維持し発展させていくための基礎となるとともに、短時間・有期雇用労働者の福祉の増進を図る上でも不可欠であることに鑑み、その職業生活の充実が図られるような社会を目指すべきであることから、その旨についても基本的理念として明らかにしたものであること。本条の基本的理念は、事業主等の責務やこれらを踏まえた各種措置等とあいまって、短時間・有期雇用労働者という就業のあり方を選択しても納得が得られる待遇が受けられ、多様な働き方を自由に選択できる社会の実現を図るものであること(平成31年1月30日基発0130第1号/職発0130第6号/雇均発0130第1号/開発0130第1号)。
本法でいう「短時間労働者」とは、'''1週間の[[所定労働時間]]が同一の事業所に[[雇用]]される通常の労働者1週間の所定労働時間に比し短い労働者'''をいう(第2条)。短時間労働者であっても特に適用を除外されない限り、本法のほか、[[労働基準法]]、[[労働契約法]]など労働各法の適用をあわせて受ける。
*短時間労働者であるか否かの判定は、以下の要件を踏まえ行う。その際、パートタイマー、アルバイト、契約社員など'''名称の如何は問わない'''。したがって、名称が「パートタイマー」であっても、当該事業所に雇用される通常の労働者と同一の所定労働時間である場合には、法の対象となる短時間労働者には該当しない。しかしながら、短時間労働者については法に基づく雇用管理の改善等に関する措置等が講じられる一方、このような者については法の適用対象とならないために雇用管理の改善等に関する措置等が講じられないというのは均衡を失しており、現実にそのような均衡を失した雇用管理を行うことは事業所における労働者の納得を得がたいものと考えられることから、このような者についても法の趣旨が考慮されるべきであることについて、指針にも定めていることに留意すること。なお、派遣労働者については、派遣先において法が適用されることはないものの、法とは別途、[[労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律]]により、就業に関する条件の整備を図っている。
*「通常の労働者」<ref>「通常の労働者」とは、当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業所に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者をいう。「厚生労働省令で定める場合」とは、同一の事業所に雇用される通常の労働者の従事する業務が2以上あり、かつ、当該事業所に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する労働者の数が当該通常の労働者の数に比し著しく多い業務(当該業務に従事する通常の労働者の一週間の所定労働時間が他の業務に従事する通常の労働者の一週間の所定労働時間のいずれよりも長い場合に係る業務を除く)に当該事業所に雇用される労働者が従事する場合とする(規則第1条)。</ref>とは、社会通念に従い、比較の時点で当該事業所において「通常」と判断される労働者をいう。当該「通常」の概念については、就業形態が多様化している中で、いわゆる「正規型」の労働者が事業所や特定の業務には存在しない場合も出てきており、ケースに応じて個別に判断をすべきものである。具体的には、「通常の労働者」とは、その業務に従事する者の中にいわゆる正規型の労働者がいる場合は、当該正規型の労働者であるが、当該業務に従事する者の中にいわゆる正規型の労働者がいない場合については、当該業務に基幹的に従事するフルタイム労働者が法の趣旨に鑑みれば通常と考えられることから、この者が「通常の労働者」となる。また、法が業務の種類ごとに短時間労働者を定義していることから、「通常」の判断についても業務の種類ごとに行う。
*「所定労働時間が短い」とは、'''わずかでも短ければ該当する'''ものであり、例えば通常の労働者の所定労働時間と比べて1割以上短くなければならないといった基準があるものではない。
*「1週間の所定労働時間」を用いるのは、短時間労働者の定義が、[[雇用保険法]]等労働関係法令の用例をみると1週間を単位としていることにならったものである。この場合の1週間とは、就業規則その他に別段の定めがない限り原則として日曜日から土曜日までの暦週をいう。ただし、変形労働時間制が適用されている場合や所定労働時間が1月、数箇月又は1年単位で定められている場合などには、次の式によって当該期間における1週間の所定労働時間として算出する。
**(当該期間における総労働時間)÷((当該期間の暦日数)/7)
*[[日雇労働者]]のように1週間の所定労働時間が算出できないような者は、法の対象とならない。ただし、日雇契約の形式をとっていても、明示又は黙示に同一人を引き続き使用し少なくとも1週間以上にわたる定形化した就業パターンが確立し、上記の方法により1週間の所定労働時間を算出することができる場合には、法の対象となる(平成26年7月24日基発2号)。
 
== 定義 ==
この法律は、[[国家公務員]]及び[[地方公務員]](いずれも非常勤の者を含む)または[[船員職業安定法]]上の「船員」には適用しない(第29条)。
この法律において「短時間労働者」とは、1週間の[[所定労働時間]]が同一の事業主に雇用される通常の労働者(当該事業主に雇用される通常の労働者と同種の業務に従事する当該事業主に雇用される労働者にあっては、厚生労働省令で定める場合を除き、当該労働者と同種の業務に従事する当該通常の労働者)の1週間の所定労働時間に比し短い労働者をいう(第2条1項)。
*短時間労働者であるか否かの判定は、以下の要件を踏まえ行うものであること。その際、パートタイマー、アルバイト、契約社員など'''名称の如何は問わない'''ものであること。したがって、名称が「パートタイマー」であっても、当該事業に雇用される通常の労働者と同一の所定労働時間である場合には、法の対象となる短時間労働者には該当しないものであることただかしながら、短時間労働者については法に基づく雇用管理の改善等に関する措置等が講じられる一方、このような者についであっは法の適用対象とならないためにも、有期雇用管理の改善等労働者該当する措置等が講じられないというの場合に均衡を失しており現実にそよう対象と均衡を失した雇用管理を行うことは事業所におけ労働者の納得を得がたいものと考えられることから、このような者についても法の趣旨が考慮されるべきであることについて、指針にも定めていることに留意すること。なお、派遣労働者については、派遣先において法が適用されることはないものの、法とは別途、[[労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律]](労働者派遣法)により、就業に関する条件の整備を図っているものであること(平成31年1月30日基発0130第1号/職発0130第6号/雇均発0130第1号/開発0130第1号)
**「通常の労働者」とは、社会通念に従い、比較の時点で当該事業主において「通常」と判断される労働者をいうこと。当該「通常」の概念については、就業形態が多様化している中で、いわゆる「正規型」の労働者が事業所や特定の業務には存在しない場合も出てきており、'''ケースに応じて個別に判断をすべき'''ものである。具体的には、「通常の労働者」とは、いわゆる正規型の労働者及び事業主と[[期間の定めのない労働契約]]を締結しているフルタイム労働者(無期雇用フルタイム労働者)をいうものであること。また、法が業務の種類ごとに短時間労働者を定義していることから、「通常」の判断についても業務の種類ごとに行うものであること。この場合において、いわゆる正規型の労働者とは、労働契約の期間の定めがないことを前提として、社会通念に従い、当該労働者の雇用形態、[[賃金]]体系等(例えば、[[終身雇用|長期雇用]]を前提とした待遇を受けるものであるか、賃金の主たる部分の支給形態、[[賞与]]、[[退職金]]、定期的な昇給又は昇格の有無)を総合的に勘案して判断するものであること。また、無期雇用フルタイム労働者は、その業務に従事する無期雇用労働者(事業主と期間の定めのない労働契約を締結している労働者をいう。以下同じ。)のうち、1週間の所定労働時間が最長の労働者のことをいうこと。このため、いわゆる正規型の労働者の全部又は一部が、無期雇用フルタイム労働者にも該当する場合があること。
**「所定労働時間が短い」とは、'''わずかでも短ければ該当する'''ものであり、例えば通常の労働者の所定労働時間と比べて1割以上短くなければならないといった基準があるものではないこと
**短時間労働者であるか否かの判定は、具体的には以下に従い行うこと。これは、労働者の管理については、その従事する業務によって異なっていることが通常と考えられることから、短時間労働者であるか否かを判断しようとする者が従事する業務と同種の業務に従事する通常の労働者がいる場合は、その労働者と比較して判断することとしたものであること。なお、同種の業務の範囲を判断するに当たっては、『厚生労働省編職業分類』の細分類の区分等を参考にし、'''個々の実態に即して判断する'''こと。
***同一の事業主における業務の種類が1つの場合 - 当該事業主における1週間の所定労働時間が最長である通常の労働者と比較し、1週間の所定労働時間が短い通常の労働者以外の者が短時間労働者となること。
***同一の事業主における業務の種類が2以上あり、同種の業務に従事する通常の労働者がいる場合 - 原則として、同種の業務に従事する1週間の所定労働時間が最長の通常の労働者と比較して1週間の所定労働時間が短い通常の労働者以外の者が短時間労働者となること。
***同一の事業主における業務の種類が2以上あり、同種の業務に従事する通常の労働者がいない場合 - 当該事業主における1週間の所定労働時間が最長である通常の労働者と比較し、1週間の所定労働時間が短い通常の労働者以外の者が短時間労働者となること。
***同一の事業主における業務の種類が2以上あり、同種の業務に従事する通常の労働者がいる場合であって、同種の業務に従事する通常の労働者以外の者が当該業務に従事する通常の労働者に比べて著しく多い場合(当該業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間が他の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間のいずれよりも長い場合を除く。) - 当該事業主における1週間の所定労働時間が最長の通常の労働者と比較して1週間の所定労働時間が短い当該業務に従事する者が短時間労働者となること。これは、たまたま同種の業務に従事する通常の労働者がごく少数いるために、そのような事情がなければ一般には短時間労働者に該当するような者までもが短時間労働者とならないことを避ける趣旨であるから、適用に当たって同種の業務に従事する通常の労働者と、当該事業主における1週間の所定労働時間が最長の通常の労働者の数を比較する際には、同種の業務において少数の通常の労働者を配置する必然性等から、事業主に短時間労働者としての法の適用を逃れる意図がないかどうかを考慮すべきものであること。
**「1週間の所定労働時間」を用いるのは、短時間労働者の定義が、[[雇用保険法]]等労働関係法令の用例をると1週間を単位としていることにならったものであること。この場合の1週間とは、[[就業規則]]その他に別段の定めがない限り原則として日曜日から土曜日までの暦週をいうこと。ただし、[[変形労働時間制]]が適用されている場合や所定労働時間が1月、数箇月又は1年単位で定められている場合などには、次の式によって当該期間における1週間の所定労働時間として算出すること。なお、[[日雇労働者]]のように1週間の所定労働時間が算出できないような者は、短時間労働者としては法の対象とならないが、有期雇用労働者として法の対象となる。ただし、日雇契約の形式をとっていても、明示又は黙示に同一人を引き続き使用し少なくとも1週間以上にわたる定形化した就業パターンが確立し、上記の方法により1週間の所定労働時間を算出することができる場合には、短時間労働者として法の対象となること
***(当該期間における総労働時間)÷((当該期間の暦日数)/7)
**「事業主」を単位として比較することとしているのは、第8条に統合された整備法による改正前の[[労働契約法]]第20条において、事業主を単位として、[[期間の定めのある労働契約]]を締結している労働者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者との間の不合理と認められる労働条件の相違を禁止していたこと、及び同一の事業所には待遇を比較すべき通常の労働者が存在しない場合があるなど、事業所を単位とすると、十分に労働者の保護を図ることができない場合が生じていると考えられることによるものであること。
 
この法律において「有期雇用労働者」とは、事業主と期間の定めのある労働契約を締結している労働者をいう(第2条2項)。「短時間・有期雇用労働者」とは、短時間労働者及び有期雇用労働者をいう(第2条3項)。
*令和2年4月の改正法施行により、それまで本法の対象外であった「有期雇用労働者」(いわゆる「フルタイムパート」を念頭に置いている)も法の対象となることとなった。
本法でいう「*短時間労働者」とは、'''1週間の[[所定労働時間]]が同一の事業所に[[・有期雇用]]される通常の労働者1週間の所定労働時間に比し短い労働者'''をいう(第2条)。短時間労働者であっても特に適用を除外されない限り、本法のほか、[[労働基準法]]、[[労働契約法]]など労働各法の適用をあわせて受ける。
 
この法律は、[[国家公務員]]及び[[地方公務員]](いずれも[[非常勤]]の者を含む)または[[船員職業安定法]]上の「船員」には適用しない(第29条)。
 
== 国及び地方公共団体の責務 ==