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==概要==
1巻「衰亡の国」は冒頭で[[1995年]]、[[スペースプレーン|宇宙往還機]]の発進を前にした[[沖縄県]][[嘉手納飛行場|嘉手納宇宙港]]の情景が描かれた後、一転して[[1944年]]の[[レイテ沖海戦]]まで視点が溯る。日本艦隊は[[サマール島]]沖で[[栗田健男]]提督が戦死した後も進撃を続け、上陸作戦中の合衆国陸海軍に大打撃を与える。その結果として合衆国は沖縄侵攻を遅らせると共に、ソヴィエトに対して[[北海道]]侵攻を認める。
 
2「アイアン・フィスト作戦」3巻「ヴィクトリー・ロード」では[[東京]]を首都とする[[日本|日本国]]と[[豊原市]](樺太)を首都とする日本民主主義人民共和国(北日本)に分断された二つの日本が[[留萌市|留萌]] - [[釧路市|釧路]]線を境界とし、[[ベトナム戦争|ヴェトナム戦争]]や[[湾岸戦争]]を通じ激しく対立しながら発展していく有様を、同じように分断された藤堂兄弟を中心に描き、北日本の独裁者の死を切っ掛けに勃発した最後の戦いの後、宇宙往還機が発進した直後の嘉手納宇宙港で幕を閉じる。
 
物語は、これらの歴史に関わった藤堂家一族と、1隻の戦艦=[[太平洋戦争]]を生き残った戦艦大和を中心にして、「あり得たかもしれない、もう一つの日本の戦後史の歩み」を描いている。
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;藤堂明
:1巻「衰亡の国」の主人公。[[レイテ沖海戦]]時点では海軍中佐。藤堂家は明の祖父の代から帝国海軍軍人であった。大和の砲術長としてレイテ沖海戦に参加していたが、海戦中に僚艦の砲弾が流れ弾となって大和の艦橋に命中し、[[森下信衛|森下艦長]]、能村副長の他、[[栗田健男|栗田長官]]、[[宇垣纏|宇垣戦隊司令官]]以下艦隊司令部の面々もことごとく戦死してしまう。明は後部艦橋配置だったため難を逃れるが、大和の中で生存する兵科将校の最上級・最先任者として大和の指揮を執らざるを得なくなってしまう。その後、艦隊はレイテ湾突入と米軍上陸部隊の殲滅に成功し、米軍によって「セント・クリスピンの虐殺」と名づけられるほどの戦果を挙げた。翌1945年、内地に一時帰還し大佐に昇進して武蔵の艦長に就任するが、長女は沖縄戦で斃れ、妻も本土への避難途中に敵潜の攻撃により没した後だった。やがて[[菊水作戦|沖縄水上特攻]]に参加することとなり、唯一内地に残る二男の進を友人の堀井に託して出撃。台風にまぎれる事で沖縄への接近に成功し、沖縄沖海戦で敵艦数隻を撃沈する戦果を挙げたのち、自らも武蔵とともに壮絶な戦死を遂げた。死後、少将に特進。
;藤堂守
:「衰亡の国」「アイアン・フィスト作戦」「ヴィクトリー・ロード」を通じた主人公のひとりで、明の長男。1945年、海軍少尉で[[流星 (航空機)|流星改]](守の乗機は、[[愛知航空機]]の技師だった「先生」によってエンジンを密かに換装された'''流星改一型''')のパイロットとして北海道・千歳基地でソ連軍の参戦に備えていた。石狩湾で領海侵犯したソ連駆逐艦を自らの流星改が撃沈した事件(石狩湾事件)を口実としてソ連が対日参戦し、守も[[樺太]](サハリン)・北海道北部をめぐる攻防戦の最前線で奮闘するが、乗機のエンジントラブルとソ連軍による対空射撃の被弾で、樺太・真岡付近に不時着。ソヴィエト軍の捕虜になるまでに遭遇した[[真岡郵便電信局事件|ある出来事]]が深いトラウマとなり、妻サーシャ(本名:アレクサンドラ・スターリナ・コンドラチェンコ)と出会うまで長年にわたり「[[勃起不全|男性として大変な苦悩]]」を背負うこととなる。日本分断後は北日本の人民空軍で戦闘機パイロットに転身、祖国解放戦争(北海道戦争の北日本側の呼称)で人民空軍初の[[エース・パイロット]]となり、ヴェトナム戦争において被弾撃墜されるまで第一線で活躍した。共産主義国家の軍人として生きることに葛藤を抱きながらも、最終的には空軍元帥・人民空軍総司令官まで昇進し、北日本の軍事力を事実上掌握したことから西側諸国より「イエロー・ゲーリング」と呼ばれた。サーシャとの間に一児を得るも夭折。その際の心労によって、サーシャもまた病死している。戦後半世紀の間、弟の進と直接顔を合わせたのはただ一度であった。
;藤堂進
:2巻以降の「アイアン・フィスト作戦」および「ヴィクトリー・ロード」主人公のひとりで、明の次男。大和が就役した日に生まれた。父の死後はその友人であった堀井の家で育てられ、堀井の娘で一歳年上の雪子と結婚。長じて一般大学の[[予備役将校訓練課程|ROTC]]<ref>史実世界の日本には存在しない。なお,合衆国などのROTCは大学正課とは別に軍人としての教育カリキュラムも受けるが,「征途」世界での日本のROTC制度は「授業をサボり倒した」学生が「受講することによって取れる単位は魅力的」と考える程度の気軽さで受講でき,かつ大学正課の単位としても繰り入れ可能であることが伺える</ref>から海上自衛隊に入り、ヴェトナムに派遣される。湾岸戦争ではやまと艦長を勤め、統一戦争終結後、海将補で退役。
;藤堂礼子
:明の妻。那覇郊外の造り酒屋の娘。夫の出征中に身を寄せていた実家から戦火を避け、次男・進とともに貨物船にて呉に疎開しようとするが、疎開船が米潜水艦の雷撃を受け沈没、漂流中に溺死する。その際、進は偶然同船した父親の知己の海軍軍人(後に自衛官となった進の上官になる)よりもらった救命胴衣と、疎開船を撃沈した潜水艦艦長の救助により、九死に一生を得ている。
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:進の長男。航空自衛隊の戦闘機パイロットで、TACネームは「ビッグ・ガン」。1982年の南北休戦会談(守と進も出席)が行われるなか、彼の搭乗するF15CJ改イーグルが「領空侵犯機」として日本民主主義人民共和国・第125防空中隊のミサイル攻撃により撃墜され戦死。なお、拓馬が戦死する結果となった「領空侵犯事件」は、公安調査情報庁(SRI)が守を南日本に脱出させようと仕掛けた政治工作を排除する意図をもって、国家保安省(NSD)長官の滝川が仕組んだものであった。
;藤堂輝男
:「ヴィクトリー・ロード」主人公のひとりで、進の次男。エリート肌の兄に対し、高校までは不良少年であった。しかし、警察沙汰の事件を起こしたことをきっかけに更生し、海上自衛隊に入隊。戦闘機パイロットとなり、統一戦争でジェット時代初のダブル・エース・パイロットとして空戦史に名を残す。TACネームは「テディ・ベア」。1995年には宇宙往還機第一号の機長に選ばれる。
;藤堂美咲
:輝男の妻で旧姓・土井。父母ともに死別し(父はSRI職員であったが、美咲は「公務員だった」ということ以外知らない)祖父母に育てられた経緯から、常に孤独を求め他人に心を開かない少女時代を過ごす。非常に明晰な頭脳の持ち主であり、防衛大を卒業して海上自衛隊に入隊後は美咲自身の才覚のほかに自衛隊上層部のPR戦略もあり、驚異的なスピードで昇進を重ねる。しかし、空母勤務中にパイロットの輝男と出会ったことで孤独から解放され、自衛隊を辞め輝男と結婚する道を選ぶ。のちに輝男との間に一女・舞子を生む。