「石油元売」の版間の差分

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石油[[精製]]設備を持つと共に[[ガソリンスタンド]]等を多数展開し、テレビ・ラジオでコマーシャルを流していることなどから、[[自動車]]運転者などの一般消費者にとっても良く知られた会社であることが多い。
 
日本では[[日本政府]]が認め登録した元売業者だけが石油元売会社であったが、現在そのような登録はくなったため、公式な石油元売の定義は存在せず、精製と販売の事業を大規模に行う石油関連の企業を示すことが一般的である<ref>芥田知至著 『最新石油業界の動向とカラクリがよーくわかる本』 秀和システム 2008年5月21日第1版第1刷発行 ISBN 9784798019673</ref>。現在は、原油精製と製品販売の両方を行う石油会社(「精製元売」)の割合が高いが、一部、キグナス石油株式会社のように、原油の精製は行わず、他の石油会社から製品を購入し販売している会社もある。この様な会社を「純粋元売」と呼ぶ習慣も一部で存在した。嘗ての「純粋元売」としては、共同石油、エッソ石油、モービル石油などが存在した。また、自社ブランドの給油所を持たず、自社で原油を精製して製造した製品を自社ブランドを持つ石油元売会社に販売している石油会社を「精製専業」と呼ぶことがある。現在の「精製専業」には、鹿島石油、富士石油、東亜石油、昭和四日市石油、西部石油などがある。但し、「精製専業」と呼ばれる石油会社でも、給油所で販売される製品(ガソリン、灯油、軽油等)以外の石油製品(ナフサ(粗製ガソリン)、重油、アスファルト等)を、自社とコンビナートを形成する化学会社、近隣の発電所を有する電力会社、大規模な工場を有する産業需要家などに対して直接販売する事例も多いので、「精製専業」は厳密な表現ではない。上記のような状況から、「石油元売」とは、「精製設備を保有しているか否かに関わらず、自社ブランドでの石油製品の販売を行っている石油会社」と定義し得るとする識者もいる。
 
== 主要業務 ==
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=== 原油の購入 ===
1960~70年代以降、産油国の立場が向上してからは、原油の購入は日本に限らず輸入国にとって政治的経済的に容易ではないものとなっている。探鉱段階から商業生産まで産油国に協力して油田の原油の優先購入権を得る「自主開発原油」を増やす努力が行なわれており、日本でも総合商社や石油元売が日本政府と共に積極的に関与してきた。20世紀末には日本の輸入原油の15%程度がこの自主開発原油となったが、2000年2月に[[中立地帯 (サウジアラビアとクウェート)|中立地帯]]([[サウジアラビア]]及び[[クウェート]])の[[カフジ油田]]で[[アラビア石油]]の採掘権が打ち切られ10%程度となった。その後の努力、国内需要の減少傾向もあり、その比率は15%近くに回復している。石油公団は、日本の石油資源の確保のためという名目で長年、多額の投資を行いその多くを失ったため、2004年2月29日に廃止された。その機能は[[石油天然ガス・金属鉱物資源機構]] (JOGMEC) に引き継がれている。中国などの積極的な石油開発競争相手の参入もあり、JOGMECでも積極的な海外石油開発投資が行なわれている。
 
=== 原油の輸送・輸入 ===
石油元売は、原油採掘・生産を行なっている会社や産油国、またはその原油を購入し転売する会社(商社、トレーダー)から原油を購入している。日本国内では原油生産量が極めて限られているため、大型[[タンカー]]を自前で手配し、国内需要の殆どを産油国からの輸入によって賄っている。
 
=== 貯蔵・備蓄 ===
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=== 精製 ===
原油は製油所と呼ばれる[[石油精製|工場の精製設備]]によって、[[液化石油ガス|LPガス]]、[[ガソリン]]、[[ナフサ]]、[[ジェット燃料]]、[[灯油]]、[[軽油]]、分解ガソリンA[[重油]]、[[C重油]]、[[アスファルト]]、[[潤滑油]]などに[[蒸留|分留]]・調合される。
 
=== 輸送 ===
精製済みの過程により生産された石油製品は、製油所や輸入基地(一次基地)から[[タンクローリー]]や内航タンカー、[[パイプライン輸送|パイプライン]]、鉄道のタンク貨車などによって販売地などへ配送される。配送先は以下のように民生用と産業用で大きく分かれる。
 
'''民生用'''
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== 歴史 ==
過去には[[国際石油資本#セブン・シスターズ|セブン・シスターズ]]のような原油探鉱からガソリン等の販売までを一貫して行う欧米の巨大石油企業だけが世界中の石油取引を占していた時代もあったが、[[産油国|石油産出国]]の立場が強くなった20世紀半ば以降からは、原油採掘と精製・流通・販売の過程は必ずしも同じ企業が行うとは限らず、21世紀の現在は、従来の巨大石油企業と新規参入企業とが競合や提携を行ない、多様なブランドで石油製品を販売している。
 
== 日本の石油元売 ==
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* [[キグナス石油]] - 国内市場占有率5位、コスモエネルギーホールディングスが資本参加
 
日本でのガソリンスタンドは上記の5社の直営と特約店、販売店(俗に言うスーパー[[ディーラー]]を含む)の他に、大手総合[[商社]]系([[伊藤忠エネクス]]、[[三菱商事エネルギー]]、[[丸紅エネルギー]]など)やJA系が存在し、ガソリンスタンド総数は30,070店(2019年3月末時点)である。商社系は日本国内のガソリンの1割以上を販売しており、[[全国農業協同組合連合会|全農]](JA)も約5%を販売しているが近年は直営系の比率が増大傾向にある<ref>[http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shigen_nenryo/pdf/017_07_00.pdf 石油販売業の課題と生き残り策 総合資源エネルギー調査会・第17回資源・燃料分科会(平成28年5月17日)説明資料]</ref>。石油元売以外は基本的に精製設備を持たないため、これら元売以外の企業では、ガソリンなどの石油製品は元売から購入するか輸入することになる。総合商社は海外で原油の開発から関わることもあり、石油製品の輸出入も手がけるが、輸入の殆どは灯油や軽油である。
 
石油元売から直接契約によって石油製品を購入する大手特約店の給油所は「二者」と呼ばれ、大手特約店から購入する給油所は「三者」と呼ばれる。三者は二者の販売マージン分だけ購入コスト高となり、経営上不利な立場となる。