「セル画」の版間の差分

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== セルの素材==
* [[1910年代]]〜[[1950年代]]:セルロイド
** 映画の撮影フィルムにも用いられていたセルロイドは熱に弱く、自然発火のリスクが付きまとう危険なものであった。そのため不燃性の素材の研究が進められた。
* 1950年代:[[三酢酸セルロース|トリアセチルセルロース]](TAC) ([[アセテート繊維]])
** 日本のアニメ業界では[[富士写真フイルム]]の「フジタック」ブランドから発売されたアニメ用TACが市場で独占的な地位を築いた。
** [[1985年]]頃からはアメリカとの合作などから、[[コダック]]社のTACの価格の安さが認知され、使用されることもあった。
 
== 製作工程 ==
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=== 彩色===
彩色(さいしき<ref>[httphttps://www.telecom-anime.com/telecom/oshigoto2/yougo_siage.html#sa01 アニメ用語辞典〜仕上編〜] - テレコム・アニメーションフィルム</ref>)には、[[アニメカラー]]と呼ばれる専用[[塗料]]が使用される。既製品の色数は限られていたが特注のオーダーも可能であった。
 
製作の工程上、トレスされたセルの裏面に彩色するため、輪郭や境界線が線として現れる。また多数のスタッフで行う為、色や陰影のグラデーションを統一、単純化させ段階的に表現する手法で行われていた。この着色表現方法は「アニメ塗り」とも言われている。
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== セル画の分類 ==
* スタンダードセル - テレビアニメ作品(4:3制作)で一般的に用いられてきた268mm×228mmサイズのセル。
* 中版セル - スタンダードに比べ、横に長いセル。[[B4]]サイズが基本。
* 大版セル - 中版以上のサイズのセルの総称。
* ビスタサイズ - 劇場版アニメ作品(16:9制作)に使われる345mm×230mmのセル。
* オープニング・エンディングセル - アニメのオープニング、エンディングに使用されるセル画。丁寧に作られている場合が多く、アニメの顔として認知度も高いので、有名作品では非常に高額で取引されている場合がある。OP・EDセルとも。
* アイキャッチセル - テレビアニメ作品のアイキャッチに使用されるセル画。
* アバンタイトル - 作品冒頭(アバンタイトル、プロローグ)で使用されるセル画。プロローグ、アバンとも。
* BANKセル - 魔法少女の変身シーンなど、作品中で複数回使用される場面(BANK)のセル画。またはコレクター用語で自分のお気に入りのセルのこと。
* 劇場版 - 劇場版作品で使用されるセル画。一般的にビスタサイズを使用したセル。
* ENDセル - 各シーン最終のセル画。セルの端にカットナンバーと共に「END」と書かれている場合が多い。
* 複製画(リレイズセル) - 記念・販売を目的に制作されるセル画。セル画を使用していない作品の物も制作される場合がある。現在では一般的に印刷物が用いられる。
* オコシ - セル画の偽造品。
* 同人セル - ファンなど[[同人]]によって制作されたセル画。
* 中割り(中落ち) - 原画間のつなぎのセル画。
* カブセ(被せセル) - 着色ミスなどの修正のためにセル画の上から被せるセル画。
* 版権セル(販促セル) - ポスターやグッズなどに使用するために放映用途以外に制作されるセル画。
 
== デジタル移行 ==
{{see also|デジタルアニメ}}
日本においてアニメ産業が成立して以降、[[1990年代]]までの商業アニメ作品には基本的にセル画が用いられていた。
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商業アニメの制作の現場ではセル画は事実上過去のものとなっている。現行作品で最後までセル画による作画を継続していたのは『[[サザエさん (テレビアニメ)|サザエさん]]』(通常放送の本編部分)である。製作会社の[[エイケン (企業)|エイケン]]は雰囲気を出すために、あえて[[アナログ]]な作り方にこだわる姿勢を見せていた。だが、セル画にはハイビジョン画像との特性的な相性で良くない面があり、エイケンの幹部もテレビのデジタル化の進展による画像品質の向上などで、他作品との比較で映像品質について汚いなどの不満が視聴者から寄せられるようになれば『サザエさん』のセル画製作を断念せざるをえない、との見解を示していた<ref name="asahi">[http://www.asahi.com/komimi/TKY200708290098.html 消えるTVアニメのセル画 残るは「サザエさん」だけ] / [http://www.asahi.com/komimi/TKY200708280418.html 【動画】セル画消滅? テレビアニメでサザエさんが最後] asahi.com(朝日新聞)コミミ口コミ 2007年8月29日</ref>。しかし、サザエさんも既に部分的にはデジタル化を行っており、オープニングおよびエンディング部分と、[[コマーシャルメッセージ|CM]]、[[FNSの日]]スペシャル・特番などの特別版の本編については、セル画からデジタル彩色へ一部移行されていた。2013年10月6日の放送分より本編を含めて完全デジタル彩色へ移行(詳細は[[サザエさん (テレビアニメ)#特徴]]を参照)。なお、同社の2001年の作品『[[ゴーゴー五つ子ら・ん・ど]]』(実制作:[[マジックバス]])では全編[[デジタル彩色]]が導入され、『[[親子クラブ]]』についても2004年10月のフジテレビ放送分から同様の措置が取られている。
 
== セル画式アニメの終焉 ==
日本国内のアニメ業界では、1990年代後半以降、デジタル彩色の導入が業界規模で進行した。その一方でセル画製作の技術を持つ人材の減少・高齢化が急速に進行し、並行して業務用セルの流通が減少したことで業界各社はセル画による制作の継続に不安を持ち、さらにデジタル彩色の普及が加速度的に進む結果になったが、その中でも2000年代初頭の一時期にかけては、セル画の技術しか持たずデジタル彩色の技術習得の機会にも恵まれない中堅・ベテラン世代のフリーランスの彩色スタッフが一気に淘汰される結果にもなり、無事に業界に残った者の中にも、デジタル彩色の導入がテレビアニメ程急激に進まなかったアダルトアニメの制作に携わることで、デジタル彩色の技術を習得するまでギリギリ食い繋ぐなどといった状況が見られた。さらに時代が下り、現在{{いつ|date=2019年7月}}ではアダルトアニメも含めてアニメ作品のほぼ全てがデジタル彩色となり、セル及び専用塗料の需要も最盛期の数十分の一まで落ち込み、売上、生産量共に大幅に減少しており<ref name="asahi"/>、個人向けの画材として一部の大手画材店などでは販売が継続されているものの、業務用としてまとまった量の入手が困難になってきたことから、教育機関・養成機関などでのセル画技術の養成はもはや行われていない。
 
いずれにしても、セル画は材料がやがて入手不可能になるものと考えられ、最後まで唯一残っていた「サザエさん」も日本国内のみではセル画製作が人手不足で間に合わないため、全体の20~30%は中国への外注に依存している状況であった<ref name="asahi"/>。遠からずセル画とその彩色技術が日本において完全に過去のものとなるという見方は、アニメ業界やアニメマスコミの関係者の中にも多い。
 
そしてテレビアニメ業界において、最後までセル画で製作されていた「サザエさん」のアニメの製作過程が完全にデジタル環境に移行し、2013年10月6日放送分よりデジタル式アニメになることに伴い、2013年9月29日放送分をもって今までのセル画とフィルム撮影での本放送が完全終了することになった。これをもって、[[鉄腕アトム (アニメ第1作)|テレビアニメ『鉄腕アトム』]]以来、50年間続いたセル画式アニメは現行のテレビアニメから全て姿を消すこととなった<ref>[httphttps://www.asahi.com/culture/update/0927/TKY201309270274.html?ref=com_top6_2nd アニメのセル画、姿消す 「サザエさん」完全デジタル化] 朝日新聞デジタル 2013年9月28日</ref>。
 
== 脚注 ==