「ツキヨタケ」の版間の差分

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イルジンSは黄色・不定形の物質で、100℃・15分の加熱では15パーセント程度しか分解されず、また、水にもある程度の溶解性を有するため、調理されたツキヨタケについて、子実体そのものを摂食せずとも汁を口にするだけで中毒する危険がある<ref name=Quantitative>笠原義正、伊藤健:[https://doi.org/10.3358/shokueishi.50.167 LC/MS/MSによるツキヨタケおよび食中毒原因食品中の illudin S の分析] 『食品衛生学雑誌』 2009年 50巻 4号 p.167-172, {{doi|10.3358/shokueishi.50.167}}</ref>。その一方で、塩蔵した後、塩抜きを兼ねて流水にさらすことで、ある程度の毒抜きがなされるとも考えられる(後述)。ある程度の脂溶性をも示すため、誤って炒め物などにした場合、混合して調理されたツキヨタケ以外の食材を食べたことで発症する場合がある<ref>大木正行、2005 「おそろしい毒きのこの正体」『食と健康』 (586):52-61. {{naid|40006935059}}</ref>。いっぽう、イルジン類は、ツキヨタケのもう一つの主要な中毒症状たる下痢の原因となる[[平滑筋]]弛緩作用を持たない。平滑筋の弛緩作用は、[[ムスカリン]]類似の未同定物質によるものではないかと推定されている<ref>草野源次郎、1985.キノコの毒成分 『遺伝』 39(9): 32-36, {{ISSN|0387-0022}}</ref><ref>河野昌彦、「毒茸,ツキヨダケに関する法医学的研究」 久留米大学 1987年 博士論文 乙第1307号, {{naid|500000017077}}</ref>。なお、野生のツキヨタケ子実体に含有されるイルジンSの含有量は、採集した場所や時期によって大きく変動(山形県産のサンプルでは、1.2-318.2 μg/子実体1g<ref name=Quantitative/>、あるいは8.3-776.2 μg/子実体1g<ref>和田章伸・笠原義正、2010. [http://www.eiken.yamagata.yamagata.jp/pdfshohou/shohou43.pdf#page=11 【原著】ツキヨタケの中毒成分illudin S のLC/MS/MS による分析] 『山形県衛生研究所報』 43: 1-5, {{ISSN|0513-4706}}</ref>)し、場合によってはこれをまったく含まないことすらあるという<ref name=KinokoGakkai>一柳剛、増田健太、春口佐知、金子依子 ほか、[https://doi.org/10.24465/msb.21.2_98 ツキヨタケ(''Omphalotus guepiniformis'')によるIlludin Sの生産] 『日本きのこ学会誌』 2013年 21巻 2号 p.98-102, {{doi|10.24465/msb.21.2_98}}</ref>。さらに、菌糸体の人工[[培養]]に際して液体[[培地]]を用いた場合には、イルジンSが培地中に分泌されるのに対し、木粉培地を使用した場合には、子実体形成後に培地内に残った菌糸体あるいは廃培地中にイルジンSが検出されなかったことから、子実体に含まれるイルジンSはまず菌糸体内で生成され、子実体形成に際して移送されるのではないかと推定されている<ref name=KinokoGakkai/>。
 
従来、食中毒の原因となったきのこの同定方法としては、食物の残りや患者の吐瀉物を顕微鏡で観察するのが主流であった<ref name="毒きのこ今昔286-288">{{Cite book |和書 | author= 奥沢康正・奥沢淳治・久世幸吾・松下 裕恵 | year = 2004 | date = | title = 毒きのこ今昔―中毒症例を中心にして―. | page= |edition = | publisher = 思文閣出版 | place = 京都 | id = | isbn =978-4784212156 | url = | accessdate= |ref= "毒きのこ今昔" }} pp.286-288</ref>が、有毒成分を直接検出する方法も研究されている。ツキヨタケに関しては、中毒患者が食べ残した料理の中に含まれるイルジンSを[[ガスクロマトグラフィー|ガスクロマトグラフ]][[質量分析法|質量分析装置]] (GC/MS) で定量する方法(試料の処理方法や分析条件にもよるが、イルジンSの回収率は、ツキヨタケ以外の食用きのこにこれを混入した場合で84-94パーセント、ツキヨタケを加えた豚汁を分析試料に用いた場合で74.8パーセント)がある<ref name=Quantitative/><ref>Kanamori-Kataoka, M., Seto, Y., and M. Kuramoto, 2006. "[https://doi.org/10.1248/jhs.52.237 Development of a method for determining Illudin S in food by Gas Chromatography-Mass Spectrometry.]" 『Journal of Health Science』 2006年 52巻 3号 p.237-242, {{doi|10.1248/jhs.52.237}}</ref>。また、[[リアルタイムPCR]]法による同定も試みられている<ref name=PCR>Maeta, K., Ochi, T., Tokimoto, K., Shimomura, N., Maekawa, N., Kawaguchi, N., Nakaya, M., Kitamoto, Y., and T. Aimi, 2008. "[https://aem.asm.org/content/74/10/3306.short Rapid species identification of cooked poisonous mushcrooms by using Real-time PCR.]" Applied and Environment Microbiology 74: 3306-3309., {{DOI|10.1128/AEM.02082-07}}</ref><ref name=Tsurida2012>Tsurida, S., Akai, K., Hiwaki, H., Suzuki, A., and H. Akiyama, 2012. [https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1271/bbb.120090 Multiplex real-time PCR assay for simultaneous detection of ''Omphalotus guepiniformis'' and ''Lentinula edodes''.]" Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry 76: 1343–1349, {{doi|10.1271/bbb.120090}}</ref>。[[ドクツルタケ]]・[[クサウラベニタケ]]・[[テングタケ]]など、毒成分を異にする他の有毒キノコ、あるいは食用キノコが試料中に混合していても、個々の有毒成分を迅速に定量可能な方法が確立されつつある<ref>多田裕之, 南谷臣昭, 神山恵理奈, 河村博、「[httphttps://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9275339 LC-MS/MS によるキノコ及び魚介類の中毒成分迅速分析法]」 『岐阜県保健環境研究所報』 2014年 21巻 p.1-7</ref>。
 
このほか、子実体には、細胞毒として働くジヒドロイルジンM (dihydroilludin M) や、ネオイルジン (Neoilludin) AおよびB<ref>Kuramoto, M., Tsukihara, T., and N. Ono , 1999. Neoilludins A and B, New Bioactive Components from ''Lampteromyces japonicus''. Chemistry Letters 28, 1113-1114.</ref><ref name=Saikentou/>なども含まれている。