「地盤沈下」の版間の差分

m
編集の要約なし
m
 
地盤沈下と地下水状況把握に現在[[水準測量]]による地盤の収縮状況や地盤高の測定、国土交通省の設置する地下水観測所での地下水位観測が行われている。局所の地盤沈下は、局所的な揚水や、元々[[水田]]([[軟弱地盤]])だった地域に建築物が構築されたような場合の、地耐力を超えて荷重が載荷された場合に発生する。両者ともに沈下現象の発生メカニズムについては、[[圧密]]の項を参照。
 
== 地下水の過剰揚水による地盤沈下 ==
地盤沈下の原因として、[[地下水]]の過剰揚水が挙げられる{{Sfn|地盤沈下防止対策研究会|1990|p=20}}。地下水の過剰揚水は[[地下水位]]の低下を引き起こすが、これにより土中の[[間隙水]]由来の水圧による[[浮力]]が小さくなり、[[有効応力]]が増大することで地層が圧縮される{{Sfn|地盤沈下防止対策研究会|1990|p=20}}。
<!--2019/03/17加筆者註: 今回は東京の事例に留めますが、ほかの地域についても加筆は可能と思います。詳細はノートをご覧ください。-->軟弱地盤の三角州平野において顕著に発生する<ref>井関弘太郎、「[https://doi.org/10.4116/jaqua.11.117 日本における三角州平野の変貌]」 『第四紀研究』 1972年 11巻 3号 p.117-123, {{doi|10.4116/jaqua.11.117}}</ref>。
 
=== 東京 ===
東京の下町低地では水運の便がよいこと、[[被圧地下水]]が豊富で工業用に使用可能であったことから[[工業化]]が進んでいたが、工業活動のための地下水の過剰揚水は地盤沈下を引き起こし、この結果[[海抜ゼロメートル地帯]]が形成された{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=74}}。
 
日本において地盤沈下が最初に取り上げられたのは、1915年の寺田寅彦による江東地区の測量とされる<ref name=jagh1987.29.183>植下協、「[https://doi.org/10.5917/jagh1987.29.183 地盤沈下(1)総論]」 地下水学会誌 1987年 29巻 4号 p.183-192, {{doi|10.5917/jagh1987.29.183}}</ref>。その後[[関東大震災]]以降の[[水準測量]]により大きく注目された<ref name=NDLJP.10429301>和達清夫、「[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10429301?tocOpened=1 土質基礎の回顧と点描・補遺 : 5.地盤沈下研究の回顧] 『土と基礎』 1976年 24(11), 土質工学会, {{NDLJP|10429301}}</ref>。特に下町低地で[[隅田川]]と[[荒川 (関東)|荒川]]に挟まれた地域において、関東大震災の前後での地盤沈下量が大きかったことから、当時は地震に関する地殻変動によるものと考えられていた{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=75}}<ref name=jagh1987.29.183 />。
 
東京でも次第に被害範囲が広がり、[[大阪市]]でも同じ現象がみられた{{Sfn|遠藤ほか|2001|pp=75-76}}<ref name=NDLJP.10429301 />。観測井の水位低下を根拠に、地盤沈下の原因は被圧地下水の水位低下という説が提唱された<ref name=NDLJP.10429301 />ものの、当時は支持を得られなかった{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=76}}。しかし、[[第二次世界大戦]]末期に地下水の揚水が中断し地盤沈下も収まることで、地下水の過剰揚水が地盤沈下の原因であることが支持されるようになった{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=76}}<ref name=NDLJP.10429301 />。1955年以降は日本各地で沈下が報告されている<ref name=NDLJP.10429301 /><ref>桑原徹, 植下協, 板橋一雄、「[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10447428 濃尾平野の地盤沈下とその解析]』 『土質工学会論文報告集』 19(2), xi, 1979, {{NDLJP|10447428}}, {{naid|110003983239}}</ref>。
 
戦後、1950年以降の復興により地下水位が低下し、地盤沈下が再び進行した{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=77}}<ref name=NDLJP.10429301 />。この影響で[[工業用水法]]、[[建築物用地下水の採取の規制に関する法律]]など地下水の揚水を制限する法律が整備されるようになり、地盤沈下は沈静化した{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=77}}。一方、1975年頃からは地下水位の上昇に伴う地盤隆起が発生している{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=83}}。
 
地下水の揚水制限により首都圏の問題は緩和されたものの、積雪地域においては消雪のために地下水汲み揚げが必要となり<ref>谷中隆明, 前川統一郎, 永野多美雄、「[https://doi.org/10.5917/jagh1987.31.155 準三次元モデルによる新潟県六日町の地盤沈下予測]」 『地下水学会誌』 1989年 31巻 3号 p.155-163, {{doi|10.5917/jagh1987.31.155}}</ref>、特に新潟県<ref name=geosocabst.1998.0_525>青木滋, 上條賢一、「[https://doi.org/10.14863/geosocabst.1998.0_525 新潟平野の地盤沈下の現況について] 『日本地質学会学術大会講演要旨』 第105年学術大会(98松本) p.525-, {{doi|10.14863/geosocabst.1998.0_525}}</ref>では1955年頃より深刻化し農業被害が生じた<ref name=NDLJP.10429301 /><ref>[https://doi.org/10.11408/jjsidre1965.48.12_plate1 新潟平野における地盤沈下] 農業土木学会誌 1980年 48巻 12号 p.plate1-plate2, {{doi|10.11408/jjsidre1965.48.12_plate1}}</ref>。一方、東京では地盤沈下を防ぐために取水制限に取り組んだ結果、水位は回復してきているが、一方で予想以上の回復により、今度は地下の建造物を中心に漏水が頻発するなど、新たなトラブルが急増している<ref>{{cite news |title=暴れる地下水、60m上昇も…首都高・鉄道影響 |newspaper=[[読売新聞]] |date=2013-4-27 |url=http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130427-OYT1T00642.htm |accessdate=2013-4-28}}{{リンク切れ|date=2019年1月}}</ref>。
 
== 地震による地盤沈下==
=== 北米 ===
1700年[[カスケード地震]]は、地質調査から2mに及ぶ沈降によって沿岸部の森林が[[潮間帯]]に沈み枯死した[[ベイスギ]]の年輪から本地震が1699年から1700年の間に発生したことが判明した<ref>{{PDFlink|[http://pubs.usgs.gov/pp/pp1707/pp1707.pdf USGS Professional Paper 1707]}} The Orphan Tsunami of 1700-Japanese Clues to a Parent Earthquake in North America</ref>。
 
== 地下水の過剰揚水による地盤沈下 ==
地盤沈下の原因として、[[地下水]]の過剰揚水が挙げられる{{Sfn|地盤沈下防止対策研究会|1990|p=20}}。地下水の過剰揚水は[[地下水位]]の低下を引き起こすが、これにより土中の[[間隙水]]由来の水圧による[[浮力]]が小さくなり、[[有効応力]]が増大することで地層が圧縮される{{Sfn|地盤沈下防止対策研究会|1990|p=20}}。
<!--2019/03/17加筆者註: 今回は東京の事例に留めますが、ほかの地域についても加筆は可能と思います。詳細はノートをご覧ください。-->軟弱地盤の三角州平野において顕著に発生する<ref>井関弘太郎、「[https://doi.org/10.4116/jaqua.11.117 日本における三角州平野の変貌]」 『第四紀研究』 1972年 11巻 3号 p.117-123, {{doi|10.4116/jaqua.11.117}}</ref>。
 
=== 東京 ===
東京の下町低地では水運の便がよいこと、[[被圧地下水]]が豊富で工業用に使用可能であったことから[[工業化]]が進んでいたが、工業活動のための地下水の過剰揚水は地盤沈下を引き起こし、この結果[[海抜ゼロメートル地帯]]が形成された{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=74}}。
 
日本において地盤沈下が最初に取り上げられたのは、1915年の寺田寅彦による江東地区の測量とされる<ref name=jagh1987.29.183>植下協、「[https://doi.org/10.5917/jagh1987.29.183 地盤沈下(1)総論]」 地下水学会誌 1987年 29巻 4号 p.183-192, {{doi|10.5917/jagh1987.29.183}}</ref>。その後[[関東大震災]]以降の[[水準測量]]により大きく注目された<ref name=NDLJP.10429301>和達清夫、「[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10429301?tocOpened=1 土質基礎の回顧と点描・補遺 : 5.地盤沈下研究の回顧] 『土と基礎』 1976年 24(11), 土質工学会, {{NDLJP|10429301}}</ref>。特に下町低地で[[隅田川]]と[[荒川 (関東)|荒川]]に挟まれた地域において、関東大震災の前後での地盤沈下量が大きかったことから、当時は地震に関する地殻変動によるものと考えられていた{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=75}}<ref name=jagh1987.29.183 />。
 
東京でも次第に被害範囲が広がり、[[大阪市]]でも同じ現象がみられた{{Sfn|遠藤ほか|2001|pp=75-76}}<ref name=NDLJP.10429301 />。観測井の水位低下を根拠に、地盤沈下の原因は被圧地下水の水位低下という説が提唱された<ref name=NDLJP.10429301 />ものの、当時は支持を得られなかった{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=76}}。しかし、[[第二次世界大戦]]末期に地下水の揚水が中断し地盤沈下も収まることで、地下水の過剰揚水が地盤沈下の原因であることが支持されるようになった{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=76}}<ref name=NDLJP.10429301 />。1955年以降は日本各地で沈下が報告されている<ref name=NDLJP.10429301 /><ref>桑原徹, 植下協, 板橋一雄、「[https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/10447428 濃尾平野の地盤沈下とその解析]』 『土質工学会論文報告集』 19(2), xi, 1979, {{NDLJP|10447428}}, {{naid|110003983239}}</ref>。
 
戦後、1950年以降の復興により地下水位が低下し、地盤沈下が再び進行した{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=77}}<ref name=NDLJP.10429301 />。この影響で[[工業用水法]]、[[建築物用地下水の採取の規制に関する法律]]など地下水の揚水を制限する法律が整備されるようになり、地盤沈下は沈静化した{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=77}}。一方、1975年頃からは地下水位の上昇に伴う地盤隆起が発生している{{Sfn|遠藤ほか|2001|p=83}}。
 
地下水の揚水制限により首都圏の問題は緩和されたものの、積雪地域においては消雪のために地下水汲み揚げが必要となり<ref>谷中隆明, 前川統一郎, 永野多美雄、「[https://doi.org/10.5917/jagh1987.31.155 準三次元モデルによる新潟県六日町の地盤沈下予測]」 『地下水学会誌』 1989年 31巻 3号 p.155-163, {{doi|10.5917/jagh1987.31.155}}</ref>、特に新潟県<ref name=geosocabst.1998.0_525>青木滋, 上條賢一、「[https://doi.org/10.14863/geosocabst.1998.0_525 新潟平野の地盤沈下の現況について] 『日本地質学会学術大会講演要旨』 第105年学術大会(98松本) p.525-, {{doi|10.14863/geosocabst.1998.0_525}}</ref>では1955年頃より深刻化し農業被害が生じた<ref name=NDLJP.10429301 /><ref>[https://doi.org/10.11408/jjsidre1965.48.12_plate1 新潟平野における地盤沈下] 農業土木学会誌 1980年 48巻 12号 p.plate1-plate2, {{doi|10.11408/jjsidre1965.48.12_plate1}}</ref>。一方、東京では地盤沈下を防ぐために取水制限に取り組んだ結果、水位は回復してきているが、一方で予想以上の回復により、今度は地下の建造物を中心に漏水が頻発するなど、新たなトラブルが急増している<ref>{{cite news |title=暴れる地下水、60m上昇も…首都高・鉄道影響 |newspaper=[[読売新聞]] |date=2013-4-27 |url=http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130427-OYT1T00642.htm |accessdate=2013-4-28}}{{リンク切れ|date=2019年1月}}</ref>。
 
== 被害 ==
18

回編集