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『'''一番美しく'''』(いちばんうつくしく)は、[[1944年]](昭和19年)[[4月13日]]公開された[[日本映画]]である。[[東宝]]製作、[[映画配給社]](紅系)配給。監督は[[黒澤明]]。[[モノクロフィルム|モノクロ]]、[[画面アスペクト比|スタンダードサイズ]]、85分。[[第二次世界大戦]]中に[[軍需工場]]で働く[[女子挺身隊]]の少女たちを描いた作品で、新人女優たちを実際に撮影地の[[ニコン|日本光学工業]]に入寮させ、工員同様の生活を行わせることで、女子挺身隊の日常をドキュメンタリータッチに描いた<ref name="都築">{{Cite book |和書 |author=都築政昭|title=黒澤明 全作品と全生涯 |publisher=[[東京書籍]] |date=2010-03 |isbn=9784487804344 |pages=118-121}}</ref>。主演の[[矢口陽子]]は公開翌年に黒澤と結婚した
 
[[第二次世界大戦]]中に、[[軍需工場]]で働く[[女子挺身隊]]員達の姿を描いたヒューマンドラマ。21名の女優を実際にロケ地の[[ニコン|日本光学工業]]に入寮させ、工員同様の生活を行わせることで<ref>[[都築政昭]]『黒澤明 全作品と全生涯』、[[東京書籍]]、2010年、p.118</ref>、女子挺身隊の日常をドキュメンタリータッチに描いた。
 
== あらすじ ==
兵器に搭載される光学機器を生産している東亜光学平塚製作所では、戦時非常態勢により生産の倍増を計画発令する。男子工員は通常の2倍、女子工員は1.5倍という目標数値が出されるが、女子組長の渡辺ツルを筆頭とする女子工員たちは、男子の半分ではなく2/3を目標にしてくれと懇願、受け入れられる。奮発する女子たちだが目標達成は生易しくはなく、一時的に上昇した生産高は疲労や怪我、苛立ちから来る仲違いなどにより下降する。しかし、女子工員達の寮母や工場の上司たちの暖かい協力、そして種々の問題を試行錯誤しながら解決し、さらに結束を強めた彼女たちの懸命な努力は再び報われ始める。
 
== スタッフ ==
* 監督・脚本:[[黒澤明]]
* 企画:[[伊藤基彦]]
* 製作:[[宇佐美仁]]
* 撮影:[[小原譲治]]
* 美術:[[安部輝明]]
* 録音:[[菅原亮八]]
* 調音:[[下永尚]]
* 照明:[[大沼正喜]]
* 編集:[[矢口良江]]
* 鼓笛隊指導:[[井内久]]
* スチール:[[秦大三]]
* 監督助手:宇佐美仁
 
== キャスト ==
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* 寮の小使:[[横山運平]]
* 鈴村の父:[[真木順]]
 
== スタッフ ==
* 監督・脚本:[[黒澤明]]
* 企画:[[伊藤基彦]]
* 製作:[[宇佐美仁]]
* 撮影:[[小原譲治]]
* 美術:[[安部輝明]]
* 録音:[[菅原亮八]]
* 調音:[[下永尚]]
* 照明:[[大沼正喜]]
* 編集:[[矢口良江]]
* 鼓笛隊指導:[[井内久]]
* スチール:[[秦大三]]
* 監督助手:宇佐美仁、[[堀川弘通]]<ref name="メモ">{{Cite journal|和書 |author= |date=1987-11 |title=製作メモランダ |journal=全集黒澤明 |volume=1 |publisher=岩波書店 |isbn=9784000913218 |pages=445,447頁}}</ref>
 
== 製作 ==
[[1943年]]9月、[[黒澤明]]は女子挺身隊を描く『門は胸を拡げている』の企画に着手するが、検閲官にタイトルが猥褻だと難癖を付けられたため、10月8日に『日本の青春』に改題して脚本を改訂し、11月に脱稿した<ref name="大系1解説">{{Cite book |和書 |author=[[浜野保樹]] |title=大系黒澤明 第1巻 |volume= |chapter=解説・黒澤明の形成―『一番美しく』 |publisher=[[講談社]]|date=2009-10 |isbn=9784062155755 |page=693}}</ref><ref name="メモ"/>。タイトルはさらに『渡邊ツル達』に改題し、撮影時に『一番美しく』に決定した<ref name="メモ"/>。黒澤は工場で働く少女たちをドキュメンタリーのように撮るため、撮影準備期間は新人女優たちの訓練に充てて、本物の挺身隊のように仕立てた<ref name="黒澤">{{Cite book |和書 |author=黒澤明|title=蝦蟇の油|publisher=[[岩波書店]] |series=同時代ライブラリー|date=1990-3 |isbn=4002600122 |pages=248-250}}</ref><ref name="都築"/>。訓練は企画着手時と同じ9月に開始し、2か月間行った<ref name="メモ"/>。まず駈足の訓練からはじめ、[[バレーボール]]をやらせたり、[[鼓笛隊]]を組ませて街の中を行進させた。黒澤はこの方法を取ったことについて、[[滅私奉公]]を描く内容のため「こうでもしなければ、全くリアリティのない紙芝居になってしまうと考えてやっただけである」と述べている<ref name="黒澤"/>。
 
同年12月18日、[[横浜市]][[戸塚区]]の[[ニコン|日本光学工業]]の戸塚製作所第一工場に、新人女優群23人を女子挺身隊として入所させ、撮影開始した<ref name="メモ"/>。彼女たちは実際の工場の寮で生活し、職場に配置して工員同様の日課で労働した<ref name="黒澤"/>。黒澤たちスタッフも工場寮で生活した<ref name="黒澤"/>。翌[[1944年]]1月末に退所式を行い、日本光学での撮影を終了した。その後は[[東宝スタジオ|東宝撮影所]]でセット撮影を行い、3月10日頃に完成した<ref name="メモ"/>。
 
== 備考 ==
* 後盤の、矢口陽子演じる渡辺ツルが徹夜で未修正のレンズを探し出すシーンで、彼女が歌うは[[軍歌]]「[[元寇 (軍歌)|元寇]]」である。また、矢口は[[1945年]](昭和20年)に黒澤監督と結婚した
* 撮影は日本光学工業(現・[[ニコン]])の戸塚製作所([[横浜市]][[戸塚区]])で行われたが、劇中では「東亜光学」という社名で[[平塚市|平塚]]が舞台となっている。
* 黒澤と監督デビュー年が同じの[[木下恵介]]は、本作品を黒澤作品の中で最も秀逸な作品と賞している{{要出典|date=2020年8月}}
* 中盤で、渡辺ツル以下女子工員たちが行進の途中に通りの掲示板に見る「[[タラワの戦い|タラワ]]」「[[マキンの戦い|マキン]]」「[[クェゼリンの戦い|クエゼリン]]」「[[ギルバート・マーシャル諸島の戦い|ルオット]]」などの地名は、この作品が作られた時期より少し前の[[1943年]](昭和18年)末から[[1944年]](昭和19年)始めにかけての[[日米戦争]]における日本軍の玉砕地である。
* 後盤の、矢口陽子演じる渡辺ツルが徹夜で未修正のレンズを探し出すシーンで、彼女が歌う歌は[[軍歌]]「[[元寇 (軍歌)|元寇]]」である。また、矢口は[[1945年]](昭和20年)に黒澤監督と結婚した。
* 黒澤と監督デビュー年が同じの[[木下恵介]]は、本作品を黒澤作品の中で最も秀逸な作品と賞している。
* 本作品の公開は、1943年(昭和18年)9月の[[女子挺身隊|「女子勤労動員ノ促進ニ関スル件」]]を皮切りに、未婚女性の勤労動員が活発になった時期であった。[[ひめゆり学徒隊]]の結成は、本作公開年の暮れである。<!--[[太平洋戦争]]終戦前後における「4大地震」の内、戦争終結を早めたと言われる[[東南海地震|昭和東南海地震]]が、この時期に発生している-->
* [[渋谷陽一]]のインタビューで黒澤は、渋谷の「(「一番美しく」は)反戦映画ですよね?」の問いに、明言はしなかったものの、そういう「含み」もあった映画だと認めている{{要出典|date=2020年8月}}
* 黒澤には、1945年(昭和20年)に[[原節子]]を主役に据えた未完成の戦意高揚作品『[[荒姫様]]』がある。
* 封切りの際はクレジットタイトルが存在せず、今日見られるものは、戦後に付け加えられたものである<ref>「日本戦争映画総覧」2011年、学研、P37P.37</ref>。
* [[渋谷陽一]]のインタビューで黒澤は、渋谷の「(「一番美しく」は)反戦映画ですよね?」の問いに、明言はしなかったものの、そういう「含み」もあった映画だと認めている。
* 封切りの際はクレジットタイトルが存在せず、今日見られるものは、戦後に付け加えられたものである<ref>「日本戦争映画総覧」2011年、学研、P37</ref>。
 
== 脚注 ==
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== 外部リンク ==