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'''平行軸の定理'''('''ホイヘンス&ndash;スタイナーの定理'''もしくは単に'''スタイナーの定理'''とも言われる<ref>{{cite book | title=Introduction to theoretical physics | author=Arthur Erich Haas | year=1928}}</ref>。[[クリスティアーン・ホイヘンス]]と{{仮リンク|ヤコブ・スタイナー|en|Jakob Steiner}}に由来)によって証明された。物とは、[[剛]]の重心を通る[[平行]]回転軸周りの物体の[[慣性モーメントと重心を通る平行軸と任意の軸との[[垂直]][[距離]]が与えられたとき、その軸と平行な任意の軸周りの[[剛体]]の[[慣性モーメント|質量慣性モーメント]]や[[断面二次モーメント]]を求めるするのに使うことが定理
 
==質量慣性モーメント==
[[File:Steiner.png|thumb|right|ある軸周りの質量慣性モーメントは、重心を通る平行軸周りの質量慣性モーメントから求めることができる。]]
質量 {{math|''m''}} の物体が物体の重心を通る軸 {{math|''z''}} を中心に回転するようになっているとする。物体はこの軸に対して慣性モーメント {{math|''I''<sub>cm</sub>}} を持つ。平行軸の定理は、軸 {{math|''z''}} に平行でそこから垂直方向に {{math|''d''}} だけ動かした新たな軸 {{math|''z&prime;''}} を中心にして物体を回転させると、この軸 {{math|''z&prime;''}} に対する慣性モーメント {{math|''I''}} は
:<math> I = I_\mathrm{cm} + md^2</math>
平行軸の定理は、最初の軸に平行でそこから{{math|''d''}}だけ動かした新たな軸{{math|''z&prime;''}}を中心にして物体を回転させると、この軸に対する慣性モーメント{{math|''I''}}は{{math|''I''<sub>cm</sub>}}と
となることを述べている。
 
平行軸の定理を{{仮リンク|ストレッチ則|en|Stretch rule}}と{{仮リンク|垂直軸の定理|en|Perpendicular axis theorem}}に適用することで、様々な形の慣性モーメントを求めることができる。
:<math> I = I_\mathrm{cm} + md^2.</math>
 
という関係になることを述べている。
 
{{math|''d''}}は明らかに軸{{math|''z''}}と{{math|''z&prime;''}}の間の垂直距離である。
 
平行軸の定理をストレッチ則と垂直軸の定理に適用することで、様々な形の慣性モーメントを求めることができる。
[[Image:Parallelaxes-1.png|thumb|right|断面慣性モーメントに対する平行軸の定理]]
 
===導出===
[[一般性を失うことなく]]、[[デカルト座標系]]において重心は原点にあり、重心を通る回転間の垂直距離 {{math|''z''}} 軸に一致し、それと平行な新しい回転軸 {{math|''z&prime;''}} は {{math|''x''座標の値および重心が原点}} 軸沿って {{math|''d''}} 離れていると仮定する。{{math|''z''}} 軸に対する慣性モーメントは
:<math>I_\mathrm{cm} = \int (x^2 + y^2) \, dm</math>
 
で、軸 {{math|''z&prime;''}} に対する慣性モーメントは
:<math>I_\mathrm{cm} = \int (x^2 + y^2) \, dm.</math>
 
で求まる。重心からx軸に沿って垂直距離{{math|''d''}}動かした軸{{math|''z&prime;''}}に対する慣性モーメントは
 
:<math>I = \int \left[(x + d)^2 + y^2\right] \, dm</math>
で求められる。かっこを展開すると
 
:<math>I = \int (x^2 + y^2) \, dm + d^2 \int dm + 2d\int x\, dm</math>
で求まる。かっこを展開すると
となる。1番目の項は {{math|''I''<sub>cm</sub>}} であり、2番目の項は {{math|''md''<sup>2</sup>}} となる。最後の項の積分は重心が原点にあるため 0 である。したがって平行軸の定理が導かれる。
 
:<math>I = \int (x^2 + y^2) \, dm + d^2 \int dm + 2d\int x\, dm.</math>
 
となる。1番目の項は{{math|''I''<sub>cm</sub>}}であり、2番目の項は{{math|''md''<sup>2</sup>}}となる。最後の項の積分は[[重心]]のx座標の倍数であるが、重心が原点にあるため0である。したがって、式は次のようになる。
 
:<math> I = I_\mathrm{cm} + md^2.</math>
 
=== テンソルによる一般化 ===
平行軸の定理は[[慣性テンソル]]を用いることで一般化することができる。重心を基準とした物体の慣性テンソルを {{math|''I<sub>ij</sub>''}} とする。すると、新しい点に関して計算される慣性テンソル {{math|''J<sub>ij</sub>''}} は
:<math>J_{ij}=I_{ij} + m\left(|\mathbf{R}|^2 \delta_{ij}-R_i R_j\right)</math>
となる。ここで <math>\mathbf{R}=R_1\mathbf{\hat{x}}+R_2\mathbf{\hat{y}}+R_3\mathbf{\hat{z}}\!</math> は重心から新たな点までの[[変位]]ベクトル、{{math|δ<sub>''ij''</sub>}} は[[クロネッカーのデルタ]]である。
 
対角要素(すなわち{{math|''i'' {{=}} ''j''}}の要素)に対して、回転軸と変位ベクトルが垂直であれば、上記の単純化した平行軸の定理が得られる。
平行軸の定理は[[慣性テンソル]]を含む計算に一般化することができる。重心で計算した物体の慣性テンソルを{{math|''I<sub>ij</sub>''}}とする。すると、新しい点に関して計算される慣性テンソル{{math|''J<sub>ij</sub>''}}は
 
一般化された平行軸の定理は、次のように座標系によらない形で表すことができる。
:<math>J_{ij}=I_{ij} + m\left(|\mathbf{R}|^2 \delta_{ij}-R_i R_j\right),</math>
:<math> \mathbf{J} = \mathbf{I} + m \left[\left(\mathbf{R} \cdot \mathbf{R}\right) \mathbf{E}_{3} - \mathbf{R} \otimes \mathbf{R} \right].</math>
ここで'''E'''<sub>3</sub>は{{nobr|3 × 3}}の[[単位行列]]、<math>\otimes</math>は[[直積 (ベクトル)|直積]]である。
 
さらに一般化すると基準軸の組 {{math|''x'', ''y'', ''z''}} が重心を通るか否かに関係なく、これらに平行な任意の直交軸の組 {{math|''x''&prime;, ''y''&prime;, ''z''&prime;}} についての慣性テンソルが得られる<ref name="Abdulghany">A. R. Abdulghany, American Journal of Physics 85, 791 (2017); doi: https://dx.doi.org/10.1119/1.4994835 .</ref>。
となる。<math>\mathbf{R}=R_1\mathbf{\hat{x}}+R_2\mathbf{\hat{y}}+R_3\mathbf{\hat{z}}\!</math>は重心から新たな点までの変位ベクトル、{{math|δ<sub>''ij''</sub>}}は[[クロネッカーのデルタ]]である。
 
対角要素({{math|''i'' {{=}} ''j''}})の場合、回転軸に対して垂直に変位すると、上記の単純化した平行軸の定理が得られる。
 
一般化された平行軸の定理は、次のように無座標表記の形で表すことができる。
 
:<math> \mathbf{J} = \mathbf{I} + m \left[\left(\mathbf{R} \cdot \mathbf{R}\right) \mathbf{E}_{3} - \mathbf{R} \otimes \mathbf{R} \right],</math>
 
'''E'''<sub>3</sub>は{{nobr|3 × 3}}の[[単位行列]]、<math>\otimes</math>は[[直積 (ベクトル)|外積]]である。
 
さらに一般化すると基準慣性テンソルに関する基準軸x, y, zの組が質量中心を通るか否かに関係なく、これらに平行な直行軸の任意の組についての慣性テンソルが得られる<ref name="Abdulghany">A. R. Abdulghany, American Journal of Physics 85, 791 (2017); doi: https://dx.doi.org/10.1119/1.4994835 .</ref>。
 
==断面慣性モーメント==
平行軸の定理は平面領域''D''の[[断面二次モーメント]](面積慣性モーメント)にも適用される。
 
==面積慣性モーメント==
平行軸の定理は平面領域 {{math|''D''}} の[[断面二次モーメント]](面積慣性モーメント)にも適用される。
:<math>I_z = I_x + Ar^2,</math>
ここで {{math|''I<sub>z</sub>''}} は平行軸に対する {{math|''D''}} の面積慣性モーメント、{{math|''I<sub>x</sub>''}} は[[幾何中心]]に対する {{math|''D''}} の面積慣性モーメント、{{math|''A''}} は平面領域 {{math|''D''}} の面積、{{math|''r''}} は新たな軸 {{math|''z''}} から {{math|''D''}} の幾何中心までの距離である。
 
{{math|''I<sub>z</sub>''}}は平行軸に対する''D''の面積慣性モーメント、{{math|''I<sub>x</sub>''}}は[[幾何中心]]に対する''D''の面積慣性モーメント、{{math|''A''}}は平面領域''D''の面積、{{math|''r''}}は新たな軸{{math|''z''}}から平面領域''D''の幾何中心までの距離。''D'' の幾何中心は、均一な密度で同じ形状を有する物理的プレートの重心と一致する
 
==平面力学に対する極慣性モーメント==
[[File:Steiners sats.PNG|thumb|right|Polar moment of inertia of a body around a point can be determined from its polar moment of inertia around the center of mass.ある点の周りの物体の極慣性モーメントは、質量中心の周りの極慣性モーメントから決定できる。]]
平面と平行に動くようにされている剛体の質量特性は、この平面上にある剛体の質量中心 {{math|'''R'''&nbsp;{{=}}&nbsp;(''x'',&nbsp;''y'')}} 、{{math|'''R'''}} を通りこの平面に垂直な軸周りの極慣性モーメント {{math|''I''<sub>''R''</sub>}} によって定義される。平軸の定理は任意の点 {{math|'''S'''}} の周りの慣性モーメント {{math|''I''<sub>S</sub>}} と質量中心 {{math|'''R'''}} を中心とする慣性モーメント {{math|''I''<sub>R</sub>}} の間に便利な関係を与える。
 
質量中心 {{math|'''R'''}} には
:<math> \int_V \rho(\mathbf{r}) (\mathbf{r}-\mathbf{R}) \, dV=0 </math>
 
という性質がある。ここで {{math|'''r'''}} は物体の体積 {{math|''V''}} にわたって積分される。平面運動をしている物体の極慣性モーメントは、任意の基準点 {{math|'''S'''}} に対して計算することができる。
:<math> \int_V \rho(\mathbf{r}) (\mathbf{r}-\mathbf{R}) \, dV=0, </math>
: <math> I_S = \int_V \rho(\mathbf{r}) (\mathbf{r}-\mathbf{S})\cdot (\mathbf{r}-\mathbf{S}) \, dV.</math>
 
という性質がある。'''r'''は物体の体積''V''で積分される。平面運動をしている物体の極慣性モーメントは、任意の基準点'''S'''に対して計算することができる。
 
: <math> I_S = \int_V \rho(\mathbf{r}) (\mathbf{r}-\mathbf{S})\cdot (\mathbf{r}-\mathbf{S}) \, dV,</math>
 
'''S'''は定数で、'''r'''は体積''V''で積分する。
 
慣性モーメント''I''<sub>''R''</sub>を用いて慣性モーメント''I''<sub>''S''</sub>を求めるために、'''S'''から質量中心'''R'''へのベクトル'''d'''を導入する。
 
慣性モーメント {{math|''I''<sub>R</sub>}} を用いて慣性モーメント {{math|''I''<sub>S</sub>}} を求めるために、{{math|'''S'''}} から質量中心 {{math|'''R'''}} へのベクトル {{math|'''d''' {{=}} '''R'''&minus;'''S'''}} を導入すると、
: <math>
\begin{align}
I_S & = \int_V \rho(\mathbf{r}) (\mathbf{r}-\mathbf{R}+\mathbf{d})\cdot (\mathbf{r}-\mathbf{R}+\mathbf{d}) \, dV \\
& = \int_V \rho(\mathbf{r}) (\mathbf{r}-\mathbf{R})\cdot (\mathbf{r}-\mathbf{R})dV + 2\mathbf{d}\cdot\left(\int_V \rho(\mathbf{r}) (\mathbf{r}-\mathbf{R}) \, dV\right) + \left(\int_V \rho(\mathbf{r}) \, dV\right)\mathbf{d}\cdot\mathbf{d}.
\end{align}
</math>
となる。最初の項は {{math|''I''<sub>R</sub>}}、2番目の項は質量中心の定義により0、最後の項は物体に総質量 {{math|''M''}} にベクトル {{math|'''d'''}} の大きさの2乗をかけたものである。したがって
 
:<math> I_S = I_R + Md^2</math>
最初の項は''I''<sub>''R''</sub>、2番目の項は質量中心の定義により0、最後の項は物体に総質量にベクトル'''d'''の2乗の大きさをかけたものである。したがって
となる。これは平行軸の定理として知られているものである<ref>{{Citation |first=Burton |last=Paul |year=1979 |title=Kinematics and Dynamics of Planar Machinery |publisher=[[Prentice Hall]] |isbn=978-0-13-516062-6 |doi= }}</ref>。
 
:<math> I_S = I_R + Md^2, \, </math>
 
となる。これは平衡軸の定理として知られているものである<ref>{{Citation |first=Burton |last=Paul |year=1979 |title=Kinematics and Dynamics of Planar Machinery |publisher=[[Prentice Hall]] |isbn=978-0-13-516062-6 |doi= }}</ref>。
 
==慣性モーメント行列==
剛体粒子の剛体系の慣性行列は、基準点の選び方に依存する<ref name="Kane">T. R. Kane and D. A. Levinson, [https://www.amazon.com/Dynamics-Theory-Applications-Mechanical-Engineering/dp/0070378460 Dynamics, Theory and Applications], McGraw-Hill, NY, 2005.</ref>。質量中心 {{math|'''R'''}} に対する慣性行列と他の点 {{math|'''S'''}} に対する慣性行列との間には有用な関係があり、この関係は平軸の定理と呼ばれる。
 
 
次の式
:<math> [I_S] = -\sum_{i=1}^n m_i[r_i-S][r_i-S],</math>
で与えられる、基準点 {{math|'''S'''}} に対して測定された剛体粒子系の慣性行列 {{math|[''I''<sub>S</sub>]}} を考える。ここで {{math|'''r'''<sub>''i''</sub>}} は粒子 {{math|''P''<sub>''i''</sub>}} の位置を表す({{math|''i''&nbsp;{{=}}&nbsp;1,&nbsp;...,&nbsp;''n''}})。{{math|[''r''<sub>''i''</sub>&nbsp;&minus;&nbsp;''S'']}} はクロス積を表現するための[[歪対称行列]]であり、任意のベクトル {{math|'''y'''}} に対して
 
:<math> [r_i -S]\mathbf{y} = (\mathbf{r}_i - \mathbf{S})\times \mathbf{y}</math>
で与えられる、基準点'''S'''に対して測定された粒子の剛体系で得られた慣性行列[I<sub>S</sub>]を考える。ここで'''r'''<sub>''i''</sub>は粒子''P''<sub>''i''</sub>の位置を定義し、''i''&nbsp;=&nbsp;1,&nbsp;...,&nbsp;''n''である、[''r''<sub>''i''</sub>&nbsp;&minus;&nbsp;''S'']は外積を実行する歪対称行列であり、任意のベクトル&nbsp;'''y'''に対して
:<math> [r_i -S]\mathbf{y} = (\mathbf{r}_i - \mathbf{S})\times \mathbf{y},</math>
となる。
 
{{math|'''R'''}} を剛体系の質量中心とすると
:<math> \mathbf{R} = (\mathbf{R}-\mathbf{S}) + \mathbf{S} = \mathbf{d} + \mathbf{S}</math>
 
である。ここで {{math|'''d'''}} は基準点 {{math|'''S'''}} から質量中心 {{math|'''R'''}} へのベクトルである。慣性行列を計算するには、次の式を使用する。
:<math> \mathbf{R} = (\mathbf{R}-\mathbf{S}) + \mathbf{S} = \mathbf{d} + \mathbf{S},</math>
 
となる。'''d'''は基準点'''S'''から質量中心'''R'''へのベクトル。慣性行列を計算するには、次の式を使用する。
 
:<math> [I_S] = -\sum_{i=1}^n m_i[r_i- R + d][r_i - R+ d].</math>
この式を展開すると
: <math> [I_S] = \left(-\sum_{i=1}^n m_i [r_i - R][r_i - R]\right) + \left(-\sum_{i=1}^n m_i[r_i - R]\right)[d] + [d]\left(-\sum_{i=1}^n m_i[r_i - R]\right) + \left(-\sum_{i=1}^n m_i\right)[d][d]</math>
が得られる。最初の項は質量中心に対する慣性行列 {{math|[''I''<sub>R</sub>]}} である。第2項、第3項は質量中心 {{math|'''R'''}} の定義により0となる。つまり
:<math> \sum_{i=1}^n m_i(\mathbf{r}_i -\mathbf{R}) = 0</math>
である。最後の項は系の総質量 {{math|''M''}} に {{math|'''d'''}} から作られる歪対称行列 {{math|[''d'']}} の2乗をかけたものである。
 
結果、平行軸の定理は
この方程式を展開すると
:<math> [I_S] = [I_R] - M[d]^2</math>
 
となる<ref name="Kane"/>。
: <math> [I_S] = \left(-\sum_{i=1}^n m_i [r_i - R][r_i - R]\right) + \left(-\sum_{i=1}^n m_i[r_i - R]\right)[d] + [d]\left(-\sum_{i=1}^n m_i[r_i - R]\right) + \left(-\sum_{i=1}^n m_i\right)[d][d].</math>
 
が得られる。最初の項は質量中心に対する慣性行列[''I''<sub>''R''</sub>]である。第2項、第3項は質量中心'''R'''の定義により0となる。
 
:<math> \sum_{i=1}^n m_i(\mathbf{r}_i -\mathbf{R}) = 0.</math>
 
最後の項は系の総質量に'''d'''から作られる歪対称行列[''d'']の2乗をかけたものである。
 
結果は平衡軸の定理となる。
 
:<math> [I_S] = [I_R] - M[d]^2,</math>
 
ここで'''d'''は、基準点'''S'''から質量中心'''R'''へのベクトルである<ref name="Kane"/>。
 
===歪対称行列に対する恒等式===
歪対称行列を用いた平軸の定理の定式化とテンソルによる定式化を比較するためには、以下の恒等式が有用である。
 
位置ベクトル'''R'''&nbsp;=&nbsp;(''x'',&nbsp;''y'',&nbsp;''z'')と関連する歪対称行列を[''R'']とおくと、慣性行列の積は
 
位置ベクトル {{math|'''R'''&nbsp;{{=}}&nbsp;(''x'',&nbsp;''y'',&nbsp;''z'')}} に関連する歪対称行列を {{math|[''R'']}} とおくと、慣性行列に現れる積は
:<math> -[R][R]= -\begin{bmatrix} 0 & -z & y \\ z & 0 & -x \\ -y & x & 0 \end{bmatrix}^2 = \begin{bmatrix}
y^2+z^2 & -xy & -xz \\ -y x & x^2+z^2 & -yz \\ -zx & -zy & x^2+y^2 \end{bmatrix}.</math>
となる。この積は、直積 {{math|['''R''' '''R'''<sup>T</sup>]}} により形成される行列を使用し、次の恒等式を使って計算できる。
 
となる。この積は外積['''R''' '''R'''<sup>T</sup>]により形成される行列を使用して計算できる。
 
:<math> -[R]^2 = |\mathbf{R}|^2[E_3] -[\mathbf{R}\mathbf{R}^T]=
\begin{bmatrix} x^2+y^2+z^2 & 0 & 0 \\ 0& x^2+y^2+z^2 & 0 \\0& 0& x^2+y^2+z^2 \end{bmatrix}- \begin{bmatrix}x^2 & xy & xz \\ yx & y^2 & yz \\ zx & zy & z^2\end{bmatrix},</math>
ここで {{math|[''E''<sub>3</sub>]}} は3&nbsp;×&nbsp;3単位行列である。
 
[''E''<sub>3</sub>]は3&nbsp;×&nbsp;3単位行列。
 
また、
:<math> |\mathbf{R}|^2 = \mathbf{R}\cdot\mathbf{R} =\operatorname{tr}[\mathbf{R}\mathbf{R}^T]</math>
である。trは[[跡 (線型代数学)|トレース]]であり、直積行列の対角要素の和を表す。
 
==脚注==
:<math> |\mathbf{R}|^2 = \mathbf{R}\cdot\mathbf{R} =\operatorname{tr}[\mathbf{R}\mathbf{R}^T],</math>
{{reflist}}
 
である。trはトレースであり、外積行列の対角要素の和を表す。
 
==関連項目==
149 ⟶ 108行目:
* {{仮リンク|剛体力学|en|Rigid body dynamics}}
* {{仮リンク|ストレッチ則|en|Stretch rule}}
 
==脚注==
{{reflist}}
 
==外部リンク==
159 ⟶ 115行目:
*[https://www.youtube.com/watch?v=mFVz7iCc45I Video about the inertia tensor]
 
{{DEFAULTSORT:へいこうしくのていり}}
[[Category:力学]]
[[Category:物理学の定理]]