「ポラリス (恒星)」の版間の差分

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| 視線速度 = -16.42km/s{{R|simbad}}
| 固有運動 = [[赤経]]: 44.48 [[秒 (角度)|ミリ秒]]/年{{R|simbad}}<br />[[赤緯]]: -11.85 [[秒 (角度)|ミリ秒]]/年{{R|simbad}}
| parallax = 7.542918
| p_error = 0.110281
| parallax_footnote = {{R|simbadGaiaDR2}}{{efn2|B星の値を引用}}
| 絶対等級2 = -3.593
}}
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| 表面重力 =
| 自転周期 = <!-- [[日]] -->
| 自転速度 = ~17 km/s{{R|yalebsc5}}
| スペクトル分類 = F8Ib{{R|simbad}}
| 光度 = 2,500 [[太陽光度|L{{sub|☉}}]]{{R|Kaler}}
| 表面温度 = 6,000 [[ケルビン|K]]
| 可視光明度 =
| 色指数_BV = +0.60{{R|yalebsc5}}
| 色指数_UB = +0.38{{R|yalebsc5}}
| 色指数_RI = +0.31{{R|yalebsc5}}
| 金属量 =
| 年齢 = <!-- 年 -->
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}}
 
'''ポラリス'''{{R|Hara}} ('''Polaris'''{{R|Kunitzsch|iaucsn}}) または'''こぐま座&alpha;星'''、[[こぐま座]]で最も明るい[[恒星]]で2等星。現在の'''[[北極星]]'''である。[[ケフェイド変光星]]の中で最も太陽系に近い位置にある{{R|EngleGuinan2018}}。[[天の北極]]からの角距離が2000年分点 ([[J2000.0]]) で約44[[分 (角度)|分]]と非常に近い位置にあり、最も天の北極に近付く2102年の前後数世紀間は北極星となっている。
 
== 概要物理的特徴 ==
ポラリスこぐま座&alpha;星は[[連星|三重連星]]で、[[超巨星#黄色超巨星|黄色輝巨星(または超巨星)]]で[[ケフェイド変光星]]でもある'''ポラリスA'''と、薄黄色の[[主系列星]]である'''ポラリスB'''とが約2400[[天文単位|au]]離れて回り合う[[実視連星]]となっている{{R|Kaler}}。ポラリスBは中[[口径]]の望遠鏡でも見ることができ、[[1780年]]に[[ウィリアム・ハーシェル]]によって発見された。1929年に分光観測によって、A星は近接連星であることが明らかとなった。この伴星は、主星の光に埋もれてしまい、直接検出することができなかったが、2006年1月に[[ハッブル宇宙望遠鏡]]による観測で、主星Aaから17auの位置にある伴星Abを直接検出することに成功した{{R|EvansSchaefer2008}}。<!--最近の観測で、ポラリスはA, F型の恒星からなる集中度の低い[[散開星団]]の一部である可能性も示唆されている。-->
[[バイエル符号|バイエル名]]は&alpha;星。[[ジョン・フラムスティード|フラムスティード]]名でも「こぐま座1番星」、「[[クラウディオス・プトレマイオス|プトレマイオス]]の[[星表]]」でも「[[ティコ・ブラーエ|ティコ]]の星表」でも、それぞれこぐま座の最初に掲げられていた。
 
ポラリスA主星のAa古典的な[[星の種族|種族I]]のケフェイド変光星である([[銀河座標|銀緯]]が高いため、かつては種族IIであると考えられたこともあった)。ケフェイド変光星は距離測定の[[標準光源 (天文)|標準光源]]として用いることができる重要な天体であるため、[[地球]]から最も近いケフェイドであると目されたポラリスは詳しく研究されている。[[1900年]]頃の観測ではきたがポラリスは約3.97日の周期で平均光度太陽系から約±8%振幅で変光し距離は長年議論の的となっていた{{R|EngleGuinan2018}}しかし20世紀半ば2018年なるとこガイア計画第2回データリリースが公開された際、主星の変光の幅A星系急速に減少し明るすぎる。1990め正確な代半ばには変光幅は1%にまで減少し周視差が計測されなかったが現在も低い水準B星の年周視差ている。ま精度で計測されたこの約100年間で平均光度は約15%明るくなとにより、太陽系からが約447周期は1に約8秒割合で延びてい位置にあことが明らかとなった{{R|EngleGuinan2018}}
ポラリスは、北極距離が2000年[[分点]]で約44[[分 (角度)|分]]と[[天の北極]]に非常に近い位置にあり、最も天の北極に近付く2102年の前後数[[世紀]]間は北極星となっている。
 
[[1900年]]頃の観測では、ポラリスは約3.97日の周期で平均光度から約±8%の振幅で変光していた。しかし20世紀半ばになるとこの星の変光の幅は急速に減少した。1990年代半ばには変光幅は1%にまで減少し、現在も低い水準が続いている。またこの約100年間で平均光度は約15%明るくなり、変光周期は1年に約8秒の割合で延びている。
== 特徴 ==
ポラリスは[[連星|三重連星]]で、[[超巨星#黄色超巨星|黄色輝巨星(または超巨星)]]で[[ケフェイド変光星]]でもある'''ポラリスA'''と、薄黄色の[[主系列星]]である'''ポラリスB'''とが約2400[[天文単位|au]]離れて回り合う[[実視連星]]となっている{{R|Kaler}}。ポラリスBは中[[口径]]の望遠鏡でも見ることができ、[[1780年]]に[[ウィリアム・ハーシェル]]によって発見された。
 
[[1929年]]に分光観測によって、ポラリスAにもう1つ非常に距離の近い伴星('''ポラリスP'''、'''ポラリスa'''、'''ポラリスAb'''などと呼ばれる)が存在することが明らかになった。2006年1月に[[アメリカ航空宇宙局]]は[[ハッブル宇宙望遠鏡]]でポラリスを撮影し、3つ全ての星を直接撮影することに成功した。ポラリスAに近い方の伴星は主星であるポラリスAからの距離が17au{{R|Kaler}}しか離れていないため、主星の光に埋もれてほとんど見ることができない<ref name="hst">Evans, N. R.; Schaefer, G.; Bond, H.; Bono, G.; Karovska, M.; Nelan, E.; Sasselov, D. (January 9, 2006). "Direct detection of the close companion of Polaris with the Hubble Space Telescope". ''American Astronomical Society 207th Meeting''.</ref>。
 
ポラリスAbはポラリスAのすぐ近くを公転する矮星である。最近の観測で、ポラリスはA, F型の恒星からなる集中度の低い[[散開星団]]の一部である可能性も示唆されている。
 
ポラリスAは古典的な[[星の種族|種族I]]のケフェイド変光星である([[銀河座標|銀緯]]が高いため、かつては種族IIであると考えられたこともあった)。ケフェイド変光星は距離測定の[[標準光源 (天文)|標準光源]]として用いることができる重要な天体であるため、[[地球]]から最も近いケフェイドであるポラリスは詳しく研究されている。[[1900年]]頃の観測では、ポラリスは約3.97日の周期で平均光度から約±8%の振幅で変光していた。しかし20世紀半ばになるとこの星の変光の幅は急速に減少した。1990年代半ばには変光幅は1%にまで減少し、現在も低い水準が続いている。またこの約100年間で平均光度は約15%明るくなり、変光周期は1年に約8秒の割合で延びている。
 
== 名称 ==
[[バイエル符号|バイエル名]]は&alpha;星。[[ジョン・フラムスティード|フラムスティード]]名でも「こぐま座1番星」、「[[クラウディオス・プトレマイオス|プトレマイオス]]の[[星表]]」でも「[[ティコ・ブラーエ|ティコ]]の星表」でも、それぞれこぐま座の最初に掲げられていた。固有名のポラリス (''Polaris'') は、[[ラテン語]]で「極の」を意味する言葉で、近世になってこの星が[[天の北極]]に最も近くなったことから名付けられた{{R|Kunitzsch}}。2016年6月30日に[[国際天文学連合]]の恒星の命名に関するワーキンググループ (Working Group on Star Names, WGSN) は、''Polaris'' をこぐま座&alpha;星Aの固有名として正式に承認した{{R|iaucsn}}。
 
ポラリスは肉眼で確認しやすい星の中で最も天の北極に近いため、16世紀頃から北極星として機能しており「極の星」や「北の星」という意味合いの名前で呼ばれていた。以後、世界各国では自国語で「北極星」という意味合いの名前で呼ばれることがほとんどである。[[英語]]でも ''The North Star''、''The Pole Star''、''The Polar Star''などと呼ばれるが、英語圏では近年{{いつ|date=2019年3月}}、固有名の ''Polaris'' で呼ばれるようになってきている。
 
その他、ナヴィガトリア (Navigatoria)、[[ギリシア語]]起源のキノスラ{{R|Hara}} (Cynosura{{R|Hara}})、フォエニケ (Phoenice)、[[アラビア語]]起源のアルルカバ{{R|Kondo}} (Alruccabah{{R|Kunitzsch|Kondo}}) などと呼ばれていた。キノスラはギリシア語で「犬の尾」を意味する言葉に由来し、17〜18世紀の天文書にしばしば登場する名前だが、今日では完全に忘れ去られている{{R|Hara}}。アルルカバは「(大熊の)膝」を意味する ''al-rukba'' というアラビア語に由来し、これは元々[[おおぐま座シータ星|おおぐま座&theta;星]]を指す言葉が誤ってこの星に使われるようになったものである{{R|Kunitzsch}}。
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{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{notelist2}}
{{Reflist| group="注"|refs=
}}
 
=== 出典 ===
{{Reflist|refs=
<ref name="simbad">{{cite web
| title=* alf UMi -- Classical Cepheid (delta Cep type)
| title=SIMBAD Astronomical Database
| work=[[SIMBAD]] Astronomical Database|publisher=[[ストラスブール天文データセンター|CDS]]
| work=Results for V* alf UMi
| url=http://simbad.u-strasbg.fr/simbad/sim-id?Ident=%40317713*+alf+UMi
| accessdate=20162020-1109-2110}}</ref>
<ref name="simbadB">{{cite web
| title=SIMBAD* Astronomicalalf DatabaseUMi B -- Variable Star
| work=[[SIMBAD]] Astronomical Database|publisher=[[ストラスブール天文データセンター|CDS]]
| work=Results for alf UMi B
| url=http://simbad.u-strasbg.fr/simbad/sim-id?Ident=alf+UMi+B
| accessdate=20162020-1109-2110}}</ref>
<ref name="yalebsc5">[[輝星星表]]第5版</ref>{{Cite journal
|last1=Hoffleit |first1=D. |last2=Warren |first2=W. H., Jr.
|date=1995-11 |title=Bright Star Catalogue, 5th Revised Ed.
|work=VizieR On-line Data Catalog: V/50 |bibcode=1995yCat.5050....0H|
|url=http://vizier.u-strasbg.fr/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ5ee781d10253&-out.add=.&-source=V/50/catalog&recno=424}}</ref>
<ref name="GaiaDR2">{{cite DR2|576402619921510144}}</ref>
<ref name="GCVS">{{cite web
| title=GCVS
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| url=http://www.sai.msu.su/gcvs/cgi-bin/search.cgi?search=alf+UMi
| accessdate=2015-10-12}}</ref>
<ref name="EvansSchaefer2008">{{cite journal|display-authors=1
|last1=Evans|first1=Nancy Remage|last2=Schaefer|first2=Gail H.|last3=Bond|first3=Howard E.|last4=Bono|first4=Giuseppe
|last5=Karovska|first5=Margarita|last6=Nelan|first6=Edmund|last7=Sasselov|first7=Dimitar|last8=Mason|first8=Brian D.
|title=Direct detection of the close companion of Polaris with the Hubble Space Telescope
|journal=[[アストロノミカルジャーナル|The Astronomical Journal]]|volume=136|issue=3|year=2008|pages=1137-1146|issn=0004-6256
|doi=10.1088/0004-6256/136/3/1137|arxiv=0806.4904|bibcode= 2008AJ....136.1137E}}</ref>
<ref name="EngleGuinan2018">{{cite journal|display-authors=1
|last1=Engle|first1=Scott G.|last2=Guinan|first2=Edward F.|last3=Harmanec|first3=Petr
|title=Toward Ending the Polaris Parallax Debate: A Precise Distance to Our Nearest Cepheid from Gaia DR2
|journal=Research Notes of the AAS|volume=2|issue=3|year=2018|pages=126|issn=2515-5172
|doi=10.3847/2515-5172/aad2d0|bibcode= 2018RNAAS...2..126E}}</ref>
 
<ref name="Hara">{{Cite book|和書
|author=[[原恵]]
|title=星座の神話 - 星座史と星名の意味
|publisher=[[恒星社厚生閣]]
|date=2007-02-28
|edition=新装改訂版第4刷
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<ref name="Kunitzsch">{{Cite book
|title=A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations
|author=Paul Kunitzsch|authorlink=パウル・クーニッチ
|coauthor=Tim Smart
|publisher=Sky Publishing
226 ⟶ 235行目:
|title=アラビアで生まれた星の名称と歴史 - 星の名前のはじまり
|publisher=[[誠文堂新光社]]
|author=[[近藤二郎]]
|date=2012-08-30
|edition=初版