「経口血糖降下薬」の版間の差分

→‎インスリン分泌促進薬: セマグルチドについて追記等
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比較的古くから用いられてきたスルフォニル尿素薬のようなインスリン分泌促進薬や、[[α-グルコシダーゼ阻害剤]]のようなブドウ糖吸収阻害薬、[[ビグアナイド系]]や[[チアゾリジン系]]のブドウ糖吸収阻害薬、インクレチンを増強するDPP-4阻害薬やGLP-1受容体作動薬、またSGLT2阻害薬がある。
 
1998年に、イギリスで UKPDS という大規模比較試験が行われて以来、糖尿病慢性合併症予防目的にてこれらの薬は用いられている。特にインスリン分泌が残存している2型糖尿病のインスリン非依存状態において有効である。2型であっても、重篤な感染症の様にインスリン需要の多いとき、清涼飲料水ケトアシドーシス([[ペットボトル症候群]])の様に分泌を上回るブドウ糖摂取があるとき、周術期や妊娠などは[[インスリン]]治療が必要である。
 
== インスリン分泌促進薬 ==
空腹時低血糖を起こしやすいため、そのような時間帯に[[悪心]]、強い空腹感、倦怠感、発汗、震えを感じたら食事療法関係なく、糖分の補給が必要であることの説明が必要である。α-GI併用時はブドウ糖を補給しなければ低血糖の治療にならないことに注意が必要である。空腹時低血糖は[[意識障害]]を招くだけでなく、虚血性心疾患や網膜症を増悪させる可能性がある。
 
かつての大規模比較試験UGDPではSU薬と[[虚血性心疾患]]の危険についての指摘があった。1976年、米国でSU薬のひとつである[[トルブタミド]](ジアベン)が心血管疾患による死亡率を増大すると報告された。この研究に対して批判も多かったが、その後[[クロルプロパミド]](ダイアビニーズ)、[[グリベンクラミド]]などをもちいたいくつかの研究でその結果が確認されている。SU薬が、膵β細胞だけでなく心臓の動脈(冠動脈)にも作用し、[[心筋梗塞]]などの経過に悪影響を与えることが原因とする説がある。この考えにもとづくと、[[グリメピリド]]やグリニド系の薬剤は心臓に作用しにくいことがわかっているので、これらはこの観点からは安全な薬剤と考えることもできる。あまり知られていないが、UKPDS34ではメトホルミンとSU薬を併用することによって心血管イベントのリスクが増加するという指摘がある。大血管障害は食後血糖値が増加するといった血糖値の大きな振れが影響しているという説もあり、決着はついておらず次の大規模比較試験の報告によって解釈は変わりることに注意が必要である。糖尿病患者が[[心筋梗塞]]といった大血管障害を起こした場合、その原因が原疾患のコントロールの悪さによるものか、薬の副作用によるかは厳密には区別ができず、少なくとも[[医療過誤]]ではない。ガイドライン上も積極的に血糖値をコントロールすることが合併症の予防には効果があるとされている。
 
=== 速効型インスリン分泌促進薬、フェニルアラニン誘導体 (グリニド系) ===
|}
 
フェニルアラニン誘導体 (グリニド系) はSU構造は持たないものの、SU薬と同様に[[膵臓]]のランゲルハンス島β細胞のSU受容体(SUR1)に作用し、インスリン分泌を促進させる。食後は吸収が悪くなるので食直前に内服する。5-15分で薬効を発現し数時間で作用消失する。この早く効いて早く効果がくなるという点がSU薬と大きく異なるところである。'''食後血糖降下薬'''ともいわれ、SU薬がインスリン基礎分泌の促進、グリニド系がインスリン追加分泌の促進と考えられている。インスリン療法の超速効型インスリンと中間型インスリンの対応に似ているが、SU薬とグリニド系の併用は保険診療上認められていない。なお、ナテグリニドは活性代謝物の腎排泄性が高いために、糖尿病性腎症の進行に伴う腎機能低下により、遷延性の低血糖を起こしやすい。
 
== ブドウ糖吸収阻害薬 ==
|-
|[[デュラグルチド]]||トルリシティ||108|| ||0.75 mg/週
|-
|[[セマグルチド]]
|オゼンピック
|145
|
|0.5mg/週
|}
下部小腸に存在するL細胞から産生されるインクレチンのひとつである GLP-1(glucagon like peptide-1) の受容体に作用することで、インスリンの分泌を増強する薬剤。膵臓のβ細胞を刺激してインスリンを放出させ、α細胞からのグルカゴンの分泌を抑制する。従って、膵機能が低下した患者では充分な効果を期待できない。切り替えた後に[[糖尿病性ケトアシドーシス]]が生じ、死亡した症例がある<ref>{{cite web |url=http://www.thpa.or.jp/anzen/101012vic.htm |title=リラグルチド(遺伝子組換え) 安全性情報 |date=2010-10 |accessdate=2015-02-25}}</ref>。この系統の医薬品の添付文書の「重要な基本的注意」には、以下の様に記載されている。
{{Quotation|本剤はインスリンの代替薬ではない。本剤の投与に際しては、患者のインスリン依存状態を確認し、投与の可否を判断すること。インスリン依存状態の患者で、インスリンから本剤に切り替え、急激な高血糖および糖尿病性ケトアシドーシスが発現した症例が報告されている。}}これらの内セマグルチドについては経口投与製剤が開発され、承認されたが<ref>{{Cite web|url=https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/202008/566590.html|title=GLP-1受容体作動薬に初の経口薬が登場|accessdate=2020-10-18|publisher=日経メディカル}}</ref>、服用前後の各30分間の絶飲食など、服用方法に注意が必要である。
 
== SGLT2阻害薬 ==
|[[エンパグリフロジン]]||ジャディアンス||9.88~11.7|| ||10~25 
|}
ナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT2)阻害薬は、[[腎臓]]の[[尿細管]]内腔に存在するNa<sup>+</sup>-ブドウ糖共輸送体([[グルコーストランスポーター|SGLT:sodium-dependent glucose transporter 2]])を阻害する。通常、糸球体で濾過された原尿にはブドウ糖が血漿と同じ濃度含まれており、SGLT2はそのブドウ糖をナトリウムと共に尿細管細胞内に再吸収するので、尿糖閾値までブドウ糖が外に失われずに済む。SGLT2阻害薬は、尿糖を増やせば血糖が減るので、血糖が正常化すれば、膵でのインスリン分泌の負担が軽くなり、糖毒性が取れるのではないかというコンセプトで開発された。同様の蛋白(SGLT1)は[[小腸]]上皮粘膜細胞にもあり 腸管からの糖の吸収に携わっている。SGLT2阻害薬は、SGLT2に選択的に作用し、SGLT1に対する影響は軽微である。糖排泄により、グルカゴン濃度上昇と肝における内因性糖産生が起こり、ケトアシドーシスに繋がることがあることに注意が必要である<ref>{{cite web | url=http://mtpro.medical-tribune.co.jp/mtpronews/1408/1408077.html | title= 5剤目のSGLT2阻害薬が間もなく登場,安全性に関する最新情報も解説 | publisher=メディカルトリビューン | accessdate=August 30, 2014}}</ref><ref>{{cite web |url=http://medical.nikkeibp.co.jp/all/special2/ttm/lsf_2.html |title=SGLT2阻害薬の安全性 |publisher=日経メディカル |accessdate=2015-06-03}}</ref>。2015年5月、米国[[アメリカ食品医薬品局|FDA]]はSGLT2阻害薬により[[ケトアシドーシス]](DKA)が発生した症例が集積している(2013年3月~2014年6月で20例)として警告を発した<ref>{{cite web |url=http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/DrugSafetyPodcasts/ucm447651.htm |title=FDA Drug Safety Podcast: FDA warns that SGLT2 inhibitors for diabetes may result in a serious condition of too much acid in the blood |publisher=FDA |date=2015-05-21 |accessdate=2015-06-03}}</ref><ref>{{cite web |url=http://www.carenet.com/news/general/hdn/40026 |title=FDAがSGLT2阻害薬によるケトアシドーシスに警告 |publisher=CareNet |date=2015-06-02 |accessdate=2015-06-03}}</ref>。それとは別に、本剤に共通する可能性のある副作用として皮疹・紅斑が挙げられている。この系統の薬剤はその作用機序から高度または末期の[[糖尿病性腎症|腎障害]]患者での有効性は期待できない。他、SGLT2阻害薬が糖尿病新薬として、[[2014年]]から相次ぎ発売されるようになったが、服用していた患者2人が死亡していたことが2014年[[10月]]に判明している。これらの患者は利尿薬と併用するなどしていた模様である<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/national/20141011-OYT1T50075.html 糖尿病新薬、使用の患者2人死亡…利尿薬を併用] 読売新聞 2014年10月11日</ref>。日本糖尿病学会は『SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation』を2014年6月に作成しており、臨床経験の蓄積等に伴い改訂を重ねている。その中では、低血糖、脱水、ケトアシドーシス、薬疹、尿路感染症等への注意が具体的に記載されている<ref>{{Cite web|url=http://www.fa.kyorin.co.jp/jds/uploads/recommendation_SGLT2.pdf|title=SGLT2阻害薬の適正使用に関するRecommendation|accessdate=2016-05-18|date=2016-05-12|format=PDF|publisher=日本糖尿病学会}}</ref>。
 
==有効性==
<!--;SGLT2阻害薬 :
:[[ベーリンガーインゲルハイム]]BI10773 などがある。-->
;[[GPR40作動薬]] :[[日本たばこ産業|JT]] JTT-851(開発中止)、[[イーライリリー]] LY2881835(開発中止)など。
;[[フルクトース]]-1, 6-ビスホスファターゼ (FBPase<nowiki>:</nowiki> {{en|Fructose 1,6-bisphosphatase}}) 阻害剤 : 糖新生を妨げる事で血糖の上昇を抑えようという機序の薬品である。メタベイシス社と第一三共が CS-917の開発を進めていたが、臨床的有用性を証明できなかった<ref>{{cite journal |url=http://www.cimasj.co.jp/sumple/tokushu.pdf |title=特集 次世代糖尿病治療薬 |journal=New Current |volume=19 |issue=15 |pages=2-13 |date=2008-07-01 |accessdate=2015-05-03}}</ref>{{rp|12-13}}。
;Aktリン酸化薬 : [[インスリン受容体]]から細胞内に情報を伝達する経路にある[[Akt]](セリンスレオニンキナーゼ)のリン酸化により、インスリンに類似した効果が期待できる。