「ガンガゼ」の版間の差分

磯焼け防止のための駆除や野菜を餌とすることによる食味改善についての加筆等
m
(磯焼け防止のための駆除や野菜を餌とすることによる食味改善についての加筆等)
|学名 = ''Diadema setosum''<br />([[w:Nathaniel Gottfried Leske|Leske]], [[1778年|1778]])
}}
'''ガンガゼ'''(雁甲蠃、岩隠子、[[学名]]:''Diadema setosum'')は、ガンガゼ目・ガンガゼ科に属する[[ウニ]]の一種。長い[[棘]]に[[毒]]があり、刺さると激しい痛みをこす。
 
== 特徴 ==
全体に黒紫色。殻は薄くて脆く、径は5-9cm9[[センチメートル|cm]]、上から見るとほぼ円形で底が平らな半球形をしている。生時は[[肛門]]の部分が袋状に膨らみ、その開口部周辺が黄色いのでよく目立つ。また、殻の側面やや上に五個の白い点がはっきり見える。これが青いものや、刺の合間に鮮やかな模様が見られる例もある。
 
棘は長いものは30cmに達し、本体に比べて著しく長い。上向きの棘が長いが、下側は短い。若い個体では棘に白の横縞模様が見られる個体もある。
 
=== 針の危険性 ===
一般的なウニである[[ムラサキウニ]]や[[ナガウニ]]、[[バフンウニ]]などは、手に乗せて多少押しつけるなどしてもそうそう刺さらず、刺さったとしてもほとんど深傷にはならない。しかしガンガゼの長い刺は細くて鋭く、その先端はごく容易に人の[[皮膚]]に突き刺さる。表面に逆刺があり、しかも折れやすいために、皮膚内部に折れて残ることが多く、ひどく痛む。南日本の[[海岸]]で見られるウニとしてはほとんど唯一気をつけるべき種である。なお、ガンガゼ以外で有毒なウニとして知られる[[ラッパウニ]]、[[イイジマフクロウニ]]などはむしろ棘が短く、バフンウニに似た形状をしている。
 
日本本土の海岸では、たいてい岩陰から棘だけが出ている。棘は非常に長いので注意すれば判別も容易だが、物陰だけに気が付かずに触れてしまう例も多い。中には遊泳中に波にられて接触したために刺された例もある。後述の近縁種も含め、分布域内の岩礁域では十分な注意が必要である。
 
== 生態 ==
[[インド太平洋]]海域に広く分布し、日本でも[[房総半島]]・[[相模湾]]以南で見られる。岩礁や[[サンゴ礁]]の、[[潮間帯]]下部から水深15m15[[メートル|m]]ほどまでの潮下帯に生息する。
 
日本本土で見られる場合、ほとんどは潮下帯で大きな岩の下側の物陰におり、棘が穴の外にブラシのように突き出して見える。夜間には穴から這い出て細かい[[藻類]]や[[デトリタス]]を食べている。ところが[[沖縄県]]方面では[[礁湖]]の砂底に群れをなして生息する。昼間から開けた海底に互いに寄り合って移動しているのが見られる。世界各地でも個々に岩陰にいるか、開けた海底で集団を作るか、どちらかの生態を示す。[[タイ王国]][[シャム湾]]では、岸から沖に約200mにわたって一面ガンガゼに埋め尽くされている場所があるという。ガンガゼの群れは、沖縄県方面では数個体から大きいものでは30個体程度が集まっている。その位置は常に移動するだけでなく、群れの構成個体もどんどん変わり、それらが互いにくっついたり分かれたりしている。移動速度もウニにしては素早い<ref>本川(1985)p.154)154</ref>
 
穴に入るのは[[イシダイ]]などの[[天敵]]にひっくり返されるのを避けるためと考えられている。長い棘をくわえて持ち上げられ、ひっくり返されると、棘の短い下面が露出し、そうすると容易に食われてしまうためである。同様に集団になるのも、互いに寄り合い、棘を交差させてひっくり返されないような[[適応]]と考えられる。
 
殻の表面に光を感じる眼点([[目]])をち、自分の体の上に何らかの陰がかかると棘を振り動かす防衛反応を行う。集団の場合には一個体がこの運動を行うと隣が同調して運動を始め、結局は集団全体が針を振り動かすことになる。
 
長い[[毒毛#毒棘|毒棘]]の周辺には多くの魚やエビが[[共生]]しているのが見られる。魚では[[ヘコアユ]] ''Aeoliscus strigatus''、ヒカリイシモチ ''Siphamia versicolor''、ハシナガウバウオ ''Diademichthys lineatus'' など、エビでは[[テナガエビ科]]のガンガゼカクレエビ(ガンガゼエビ)''Stegopontonia commensalis'' などが挙げられる。
 
=== 天敵 ===
非常に棘が長く敵に襲われないようにも見えるが、イシダイや[[モンガラカワハギ]]類には捕食されてしまう。これらの魚は長い棘の先端を口でくわえて引っ張り、裏返して底面から食べる。殻そのものは脆く、これらの魚には容易に噛み砕かれる。開けた海底で単独で放置すると攻撃を受けやすい。
 
== 利用 ==
常食はされないが、[[卵巣]]・[[精巣]]は他のウニと同様食用にされる。食用となるウニの中では苦味、えぐ味があるが、[[ブロッコリー]]や[[キャベツ]]を餌として与えると甘味が出てまろやかになる。このため[[愛媛県]][[愛南町]]や[[長崎県]][[新上五島町]]では、[[海藻]]食害による[[磯焼け]]を防ぐため駆除したガンガゼに地元農協などから出る廃棄野菜を与えて育て、飲食店や宿泊施設に出荷することが試みられている<ref>「残さもぐもぐ ウニ特産に/餌はブロッコリー 磯の厄介者養殖」『[[日本農業新聞]]』2020年11月20日(1面)</ref><ref>「[https://this.kiji.is/623402599990428769?c=174761113988793844 磯焼けの一因 ガンガゼを食用へ 養殖や加工、新たな特産品に 新上五島]」『[[長崎新聞]]』2020年4月16日(2020年11月22日閲覧)</ref>。
常食はされないが、[[卵巣]]・[[精巣]]は他のウニと同様食用にされる。
 
食用以外では、上記の通り[[イシダイ]]に好んで捕食されることを利用して、釣り餌として使われる。
トゲの取り扱いに注意を要するが、イシダイ以外の魚(釣り用語での[[外道]])に捕食されにくいため、数あるイシダイ用に数ある釣り餌の中でも多用される。
 
== 近縁種 ==
[[画像:Sea urchins DSC00593.JPG|thumb|240px|サンゴ礁の海底で集団を作るガンガゼの仲間[[マダガスカル]]近海にて]]
日本本土では'''アオスジガンガゼ''' ''D. savignyi'' (Audouin, 1829) がある。全体によく似ているが、肛門周辺が黒いことで区別出来る。殻表面に光って見える五本の青い筋が目立つのが名前の由来であるが、それが見られないものもあり、逆にガンガゼにそれがある例もある。今後分類の再検討も考えられる。本種に交じって見られるが少ない。
 
別属の[[ガンガゼモドキ属]] {{Snamei||Echinothrix}} は、ガンガゼ属のものが殻全体の棘の太さにさほど差がないのに対して、間歩帯の棘が明らかに細いことで区別される。[[ガンガゼモドキ]] {{Sname||Echinothrix diadema}} Linnaeus(Linnaeus, 1758 1758)や[[トックリガンガゼモドキ]] {{Snamei||Echinothrix calamaris}} Pallas(Pallas, 1774 1774)は棘に白い横縞模様が入るものが多い。
 
== 参考文献 ==
*岡田要,『新日本動物図鑑』,1976,図鑑の[[北隆館 ]],1976年
*西村三郎編著(1992)『原色検索日本海岸動物図鑑』[[保育社]],1992年
*[[本川達雄]]『サンゴ礁の生物たち』,(1985),[[中公新書(中央公論社)]],1985年
*小林安雅『ヤマケイポケットガイド16 海辺の生き物』[[山と渓谷社]] ISBN 4-635-06226-0
 
== 脚注 ==
{{reflist}}
 
{{Commonscat|Diadema setosum}}