「言語の起源」の版間の差分

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=== 普遍文法 ===
{{Main|普遍文法}}
[[ノーム・チョムスキー]]と彼が築いた[[生成普遍文法|言語学派]]仮説は、ヒトは生まれつき脳に普遍文法を固く組み込まれていると主張している仮説である。これ以外に子供が僅かな言語刺激だけでにどのように言語を習得するのかを説明する方法はないと彼らは主張している(実際に、言語に関する何の事前知識も無しにディープラーニングとタグ無しコーパスだけによって文法を習得できるようなシステムを作ってみれば、ヒトのそれと比べて膨大な計算量が必要なことがわかるだろう)。普遍文法は地球上の言語の全文法体系を内包するある種の文法的なモデルからなるに違いないと彼らは主張している(生物学的に同じ脳を持っているのであるから、生得的に持っているのであれば同一でなければならないはずである、というだけだが)

普遍文法の初期設定は少なくとも見て取れる限りでは[[クレオール言語]]と同じである。こういった初期設定は子どもが個別の言語に合わせて言語を習得する段になると無視される。子供が言語を習得するときには、最初の内はクレオール言語の文法と矛盾するような個別言語の特性よりもむしろクレオール様の特性を習得する<ref name="thirdchimpanzee"/>。
 
正確には「固く組み込まれている」ということではなく、言語に特化した能力を生得的に持っている、とする主張であることが、普遍文法に関する議論の焦点であり、「文法」という用語が使われる理由である。[[認知言語学]]者らは、ヒトの能力としてそのような言語に特化したものを仮定する必要・理由は無いとする立場であり、言語をそのように本能(instinct)とするのは神話だとする ''The Language Myth. Why Language Is Not an Instinct'' という書籍がある([[スティーブン・ピンカー|ピンカー]]『言語を生みだす本能』を意識している)。
 
ただし、普遍文法仮説をとなえた、[[ノーム・チョムスキー]]らによる[[生成文法]]という手法はフォーマルな(形式的な)記述を指向しており、チョムスキアンと呼ばれる彼らとしての研究こそ普遍文法との関わりに拘る傾向があるが、[[プログラミング言語]]などの[[形式言語]]の構文規則の記述に使われる[[バッカス・ナウア記法]]もその一種であるように、(ヒトの)自然言語と無関係な側面においては普遍文法仮説とも全く無関係である。チョムスキー自身によるその方向の研究もあり、[[チョムスキー階層]]などがその成果である。
 
=== 語彙音韻論的原則 ===