Wikipedia

「パクス・ロマーナ」の版間の差分

履歴の双方向閲覧
← 古い編集新しい編集 →
削除された内容 追加された内容
ビジュアルウィキテキスト
Jaaamammm (会話) による ID:77920387 の版を取り消し
タグ: 取り消し
en:Pax Romana 16:15, 21 December 2020より加筆
タグ: サイズの大幅な増減
1行目:
[[ファイル:Statue_of_the_goddess_Pax_(Pavlovsk_Garden,_St_Petersburg,_Russia).jpg|thumb|150px|パークスの石像]]
'''パクス・ロマーナ'''（{{llang|la|言語記事名=ラテン語|'''Pax Romana'''|パークス・ローマーナ}}）とは「'''ローマによる平和'''」を意味し、多くの{{仮リンク|古代ローマの戦争一覧|en|List of Roman wars and battles|label=戦争}}や{{仮リンク|ローマの軍事の戦役史|en|Campaign history of the Roman military|label=領土拡大}}、[[古代ローマの内戦と反乱の一覧|反乱]]などにもかかわらず、拡大し維持された内部の覇権的平和と多大な影響を与えた[[黄金時代]]の秩序と同一視される、{{仮リンク|ローマ史|en|History of Rome}}において約200年もの長きにわたり続いた[[平和]]な時代を指す。[[プリンキパトゥス]]の創始者[[アウグストゥス]]による[[紀元前27年]]の[[ローマ皇帝]]即位に始まり、最後の「[[五賢帝]]」である[[マルクス・アウレリウス・アントニヌス]]が死去した[[180年|西暦180年]]までの期間と定められている<ref name=EncBrit>{{cite web |url=http://www.britannica.com/EBchecked/topic/447447/Pax-Romana |title=Pax Romana |publisher=Britannica Online Encyclopedia |accessdate=2020-12-18}}</ref>。ただし、「五賢帝」とともに美化されたイメージは、今日の歴史学では基本的に支持されていない<ref>{{ cite journal | last = Geer | first = Russell Mortimer | title = Second Thoughts on the Imperial Succession from Nerva to Commodus | format = subscription required | journal = Transactions and Proceedings of the American Philological Association | volume = 67 | pages = 47?54 | year = 1936 | doi = 10.2307/283226 | publisher = The Johns Hopkins University Press | jstor=283226}}</ref>。[[共和政ローマ]]最後の戦闘であった{{仮リンク|アントニウス・オクタウィアヌス内戦|en|Last war of the Roman Republic}}の終結とともにアウグストゥスにより始まったため、'''パクス・アウグスタ'''（Pax Augusta）と呼ばれることもある。[[パークス (ローマ神話)|パクス]]（パークス）とは[[ローマ神話]]に登場する平和と[[秩序]]の女神である。
[[ファイル:Impero romano sotto Ottaviano Augusto 30aC - 6dC.jpg|thumb|400px|[[アウグストゥス]]治世における[[ローマ帝国]]の版図。緑はアウグストゥスの治世下に徐々に征服された地域を表しており、黄色は紀元前31年の[[共和政ローマ]]の版図を表し、ピンクの領域は[[従属国]]を表している。]]▼
 
およそ2世紀のこの期間<ref>{{Cite book|last=Head|first=Tom|url=https://books.google.com/books?id=rlU3DwAAQBAJ&q=%22pax+romana%22+%22206+years%22&pg=PA85|title=World History 101: From Ancient Mesopotamia and the Viking Conquests to NATO and WikiLeaks, an Essential Primer on World History|date=2017-10-03|publisher=Simon and Schuster|isbn=978-1-5072-0454-2|language=en|page=85}}</ref>に[[ローマ帝国]]は最大の版図拡大を達成し、その人口は最大で7000万人にも達した<ref name=ushistory/>。当時の[[歴史家]][[カッシウス・ディオ]]によれば、[[コンモドゥス]]の[[独裁政治]]とその後の[[ローマ内戦 (192年-197年)|ローマ内戦]]、そして[[3世紀の危機]]が、ローマの継承国を「[[金]]の王国から[[鉄]]と[[錆]]の王国へ」として特徴づけた<ref>Dio Cassius [http://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Cassius_Dio/72*.html#36 72.36.4], Loeb edition translated E. Cary</ref>。
'''パクス・ロマーナ'''（{{llang|la|言語記事名=ラテン語|'''Pax Romana'''|パークス・ローマーナ}}）とは、「'''ローマによる平和'''」を意味し、[[ローマ帝国]]の支配領域（[[地中海世界]]）内における[[平和]]を指す語である。[[パークス (ローマ神話)|パクス]]（パークス）とは[[ローマ神話]]に登場する[[平和]]と[[秩序]]の女神である。
 
== 時期概観 ==▼
[[ファイル:Edward Gibbon by Henry Walton cleaned.jpg|thumb|150px|エドワード・ギボン]]
以前の歴史においては何世紀にもわたり平和が訪れたことがなかったため、パクス・ロマーナは「[[奇跡]]」だと言われる。しかし、歴史家の{{仮リンク|ウォルター・ゴッファート|en|Walter Goffart}}は「[[:en:The Cambridge Ancient History|The Cambridge Ancient History]]の第11巻は『帝国による平和』と呼ばれる[[70年]]から[[192年]]を扱っているが、その内容に平和に関する記述は見当たらない」としている<ref name="Goffart1989">{{cite book|url=https://books.google.com/books?id=55pDIwvWnpoC&pg=PA111|title=Rome's Fall and After|publisher=Hambledon Press|year=1989|isbn=978-1-85285-001-2|page=111|author=Walter Goffart}}</ref>。{{仮リンク|アーサー・エックシュタイン|en|Arthur Eckstein}}は、[[紀元前4世紀]]と[[紀元前3世紀]]の共和政時代にてより頻繁に実施された戦争と、パクス・ロマーナの時期は対照的でなければならないと述べている。彼はまた、共和政時代に初期のパクス・ロマーナが登場したことと、その時代的範囲は地域によって異なっていたことにも言及している。「標準的な[[教科書]]では、[[地中海]]の有名な『ローマによる平和』たるパクス・ロマーナの年代は[[紀元前31年]]から[[250年]]までとなっているが、実際にはローマによる平和はかなり早い時期に地中海の広い範囲で現出していた。[[シチリア島]]では[[紀元前210年]]から、[[イタリア半島]]では[[紀元前200年]]から、[[ポー平原]]では[[紀元前190年]]から、[[イベリア半島]]の大部分では[[紀元前133年]]から、[[北アフリカ]]では[[紀元前100年]]から、そして[[東方ギリシア世界]]ではさらに長い期間の平和が続いていた<ref name="RosensteinMorstein-Marx2011">{{cite book|editor1=Nathan Rosenstein |editor2=Robert Morstein-Marx|title=A Companion to the Roman Republic|chapter-url=https://books.google.com/books?id=C4rmmvFAKjoC&pg=PA574|origyear=2006|year=2011|publisher=John Wiley & Sons|isbn=978-1-4443-5720-2|page=574|chapter=Conceptualizing Roman Imperial Expansion under the Republic: An Introduction|author= Arthur M. Eckstein}}</ref>」。
18世紀の[[イギリス]]の学者[[エドワード・ギボン]]が『[[ローマ帝国衰亡史]]』のなかで[[五賢帝]]（Five Good Emperors）の時代を「人類史上もっとも幸福な時代」と評し「パークス・ロマーナ」というラテン語の造語で表現してから一般に広まった。
 
パクス・ロマーナという用語の最初の記録は、[[55年]]に書かれた[[ルキウス・アンナエウス・セネカ]]による著作の中に登場する<ref>{{cite book|author=Ali Parchami|title=Hegemonic Peace and Empire: The Pax Romana, Britannica and Americana|url=https://books.google.com/books?id=Pwt6AgAAQBAJ&pg=PA25|year=2009|publisher=Routledge|isbn=978-1-134-00704-2|page=25}}</ref>。この概念は非常に影響力を持ち、後世の理論や模倣の対象となった。{{仮リンク|アルナルド・モミリアーノ|en|Arnaldo Momigliano}}は、「パクス・ロマーナは[[プロパガンダ]]にとってシンプルな常套句だが、研究には困難なテーマだ」 と指摘している<ref name="Momi"/>。
ただし、「五賢帝」とともに美化されたイメージは、今日の歴史学では基本的に支持されていない<ref>{{ cite journal | last = Geer | first = Russell Mortimer | title = Second Thoughts on the Imperial Succession from Nerva to Commodus | format = subscription required | journal = Transactions and Proceedings of the American Philological Association | volume = 67 | pages = 47?54 | year = 1936 | doi = 10.2307/283226 | publisher = The Johns Hopkins University Press | jstor=283226}}</ref>。
 
▲[[ファイル:Impero romano sotto Ottaviano Augusto 30aC - 6dC.jpg|thumb|400px300px|[[アウグストゥス]]治世における[[ローマ帝国]]の版図。緑はアウグストゥスの治世下に徐々に征服された地域を表しており、黄色は紀元前31年の[[共和政ローマ]]の版図を表し、ピンク桃色の領域は[[従属国]]を表している。]]
▲== 時期 ==
パクス・ロマーナの端緒は、紀元前31年[[9月2日]]にオクタヴィアヌス（アウグストゥス）が[[マルクス・アントニウス]]と[[クレオパトラ7世]]を[[アクティウムの海戦]]で破り、その後ローマ皇帝に即位した時期である<ref name=EncBrit/><ref name=Battles>{{cite book |first=Paul K. |last=Davis |title=100 Decisive Battles from Ancient Times to the Present: The World's Major Battles and How They Shaped History |location=Oxford |publisher=Oxford University Press |year=1999 |page=63 |isbn=978-1-5760-7075-8}}</ref><ref name=ushistory>{{Cite web |url=http://www.ushistory.org/civ/6c.asp |title=The Pax Romana |website=www.ushistory.org |access-date=2017-02-10}}</ref>。彼は[[プリンケプス]]、すなわち「第一人者」となった。​独裁支配が成功した良い先例を欠いていたため、彼は最大の軍事関係者らによる[[軍事政権]]を作り前線に立ち、これらの有力者とともに合同してまとめることで彼は[[内戦]]の可能性を排除した。[[ヒスパニア]]と[[アルプス]]では[[戦闘]]が続いていたため、内戦は終結したものの直ちにパクス・ロマーナとなったわけではない。​それにもかかわらずアウグストゥスは、ローマが平和であることを示す[[ヤヌス神殿]]の扉を3回にわたり閉じた<ref>Augustus states in ''Res Gestae'' 13 that he closed the Gates three times, a fact documented by many other historians.</ref>。1度目は[[紀元前29年]]、2度目は[[紀元前25年]]であり、3度目の閉鎖は文書化されていないが、Inez Scott Ryberg（1949）とGaius Stern（2006）は、[[アラ・パキス]]の委託に伴う3度目は[[紀元前13年]]であったと説得力を持って年代を定めた<ref>{{cite journal |title=The Procession of the Ara Pacis |first=Inez |last=Scott Ryberg |journal=Memoirs of the American Academy in Rome |volume=19 |year=1949 |pages=77, 79–101 |doi=10.2307/4238621|jstor=4238621 }}</ref><ref name=Stern>{{cite book |url=https://books.google.com/books?id=agPYfLmueWEC |title=Women, children, and senators on the Ara Pacis Augustae: A study of Augustus' vision of a new world order in 13 BCE. |first=Gaius |last=Stern |year=2010 |origyear=2006 |isbn=978-0-549-83411-3}}</ref><ref>Sir Ronald Syme had suggested a later date (but Rome was then at war).</ref>。
ギボンは五賢帝の時代をそう表したが、[[アウグストゥス]]が帝政（[[プリンキパトゥス]]）を確立したキリスト[[紀元前27年]]から、五賢帝時代の終わりである[[西暦|キリスト紀元]][[180年]]までを指すようになった。
 
アウグストゥスは、200年間も戦争を続けてきた{{仮リンク|ローマ人|en|Roman people}}にとって、平和を受容できる生活様式にするという問題に直面した<ref name=Stern/>。​ローマ人は平和を戦争がない時期ではなく、すべての敵対勢力が打ちのめされ抵抗力を失ったという稀な状況だとみなしていた<ref name="Momi">{{cite journal |jstor=750454 |title=The Peace of the Ara Pacis |first=Arnaldo |last=Momigliano | journal=Journal of the Warburg and Courtauld Institutes |volume=5 |year=1942 |pages=228–231 |doi=10.2307/750454 |url=https://people.exeter.ac.uk/jda208/The%20Peace%20of%20the%20Ara%20Pacis.pdf}}</ref>。彼の課題は、危険な戦争で獲得する可能性上の富や名誉よりも、戦争がなくとも得られる繁栄の方が帝国にとってより良いとローマ人に説得することであった。​彼の企図は巧みなプロパガンダにより成功した。その後の皇帝らも彼の先例に倣い、時にはヤヌスの門を閉めるための豪華な式典を開いたり、パクス（Pax）と裏面に印字された[[硬貨]]を発行したり、パクス・ロマーナの恩恵を賞賛する[[文学]]を後援した<ref name=Stern/>。
 
[[14年]]のアウグストゥスの死後、ローマ皇帝としての彼の後継者のほとんどは彼の政治手段を継続し、特にパクス・ロマーナ最後の皇帝5人は「五賢帝」とみなされた<ref name=ushistory/>。
 
== 貿易への影響 ==
{{See also|{{仮リンク|ローマ帝国と漢の比較研究|en|Comparative studies of the Roman and Han empires}}|{{仮リンク|中国・ローマ関係|en|Sino-Roman relations}}}}
地中海におけるローマの[[貿易]]はパクス・ロマーナの時代に増加し、​ローマ人は[[絹]]や[[宝石]]、[[オニキス]]、[[香辛料]]などを得るために東へ航海した。帝国にて莫大な利益と収入という恩恵を受けたローマ人らは、地中海貿易のおかげで成長した<ref>{{Cite book|title=The Roman market economy|last=Temin|first=Peter|date=2013|publisher=Princeton University Press|isbn=9780691147680|location=Princeton|pages=13|language=English|oclc = 784708336}}</ref><ref>{{Cite book|title=Pax Romana : war, peace, and conquest in the Roman world|last=Goldsworthy|first=Adrian Keith|publisher=Yale University Press|year=2016|isbn=9780300178821|location=New Haven|pages=392|oclc=941874968}}</ref>。
 
ローマ帝国による[[西洋]]のパクス・ロマーナは[[漢]]による[[東洋]]の[[パクス・シニカ]]とほぼ同時期であったため<ref>{{cite book|last=Plott|first=John C.|title=Global History of Philosophy|year=1989|publisher=Motilal Banarsidass|location=Delhi|isbn=9788120804562|page=57}}</ref><ref name=enckre135/>、{{仮リンク|ユーラシア史|en|History of Eurasia}}における長距離旅行と貿易はこの時期に大きく活性化された<ref name=enckre135>{{cite book |editor-last=Krech III |editor-first=Shepard |editor2-last=Merchant |editor2-first=Carolyn |editor3-last=McNeill |editor3-first=John Robert |title=Encyclopedia of World Environmental History |volume=3: O–Z, Index |year=2004 |publisher=Routledge |isbn=978-0-415-93735-1 |pages=135– |url={{google books |plainurl=y | id=Dmky95hwKr0C |page=135 }} }}</ref>。
 
== 派生語 ==
パクス・ロマーナの概念が著名になったことで、歴史家らは、すでに確立され、試みられ、あるいは存在したと主張されている他の相対的な平和体制を表現するために、この用語を改変した。​例として以下のようなバリエーションがある。
ギボンの造語は広く知られることとなり、彼に倣い後世の学者たちによって、「強大な一国の[[覇権]]による（相対的）平和」を「'''パクス'''－」と呼ぶようになった。
 
*[[パクス・モンゴリカ]]（[[モンゴル帝国]]）▼
== 参考文献 ==▼
*[[パクス・オトマニカ]]（[[オスマン帝国]]）▼
<references />
*{{仮リンク|パクス・ヒスパニカ|en|Pax Hispanica}}（[[スペイン帝国]]）
*{{仮リンク|パクス・ハザーリカ|en|Pax Khazarica}}（[[ハザール]]）
*[[パクス・トクガワ]] / トクガワーナ（[[江戸時代]]）<ref>Akira Hayami, Osamu Saitō, Ronald P. Toby, ''The Economic History of Japan, 1600-1990: Emergence of economic society in Japan, 1600-1859'', Oxford University Press, 2004, p. 87</ref>
*[[パクス・アメリカーナ]]（[[アメリカ合衆国]]）▼
*{{仮リンク|パクス・マフィオサ|en|Pax Mafiosa}}（犯罪組織の不干渉合意による平和）
*[[パクス・コンソルティス]]（Pax consortis、多国間協調による平和）<ref>小島清「新太平洋共同体と日米枢軸」中央学院大学総合科学研究所紀要9(1)、1993、8-9頁。</ref>
 
より一般的には、この概念は帝国による平和<ref name="Aron2003">{{cite book|author=Raymond Aron|title=Peace and War: A Theory of International Relations|url=https://books.google.com/books?id=YaOe6XFwjvYC&pg=PA151|year=2003|publisher=Transaction Publishers|isbn=978-0-7658-0504-1|pages=151–152}}</ref><ref name="Gress"/>、すなわち文字通りでなく（絶大な権力の）覇権による平和<ref name="Gress">{{cite book|author=David Gress|title=Peace and Survival: West Germany, The Peace Movement & European Security|url=https://books.google.com/books?id=kBKsA0RDc-gC&pg=PA96|publisher=Hoover Press|isbn=978-0-8179-8093-1|pages=96–99|year=1985}}</ref><ref name="Parchami2009">{{cite book|author=Ali Parchami|title=Hegemonic Peace and Empire: The Pax Romana, Britannica and Americana|url=https://books.google.com/books?id=Pwt6AgAAQBAJ&pg=PA31|year=2009|publisher=Routledge|isbn=978-1-134-00704-2|page=31}}</ref>を意味する「パクス・インペリア（Pax imperia）<ref name="Mentan2010">{{cite book|author=Tatah Mentan|title=The State in Africa: An Analysis of Impacts of Historical Trajectories of Global Capitalist Expansion and Domination in the Continent|url=https://books.google.com/books?id=lCR79AuxTi4C&pg=PA153|date=2010|publisher=African Books Collective|isbn=978-9956-616-12-1|page=153}}</ref><ref name="Lee2013">{{cite book|author=Hyo-Dong Lee|title=Spirit, Qi, and the Multitude: A Comparative Theology for the Democracy of Creation|url=https://books.google.com/books?id=smsGAQAAQBAJ&pg=PA12|year=2013|publisher=Oxford University Press|isbn=978-0-8232-5501-6|page=12}}</ref>」または「パクス・インペリウム（Pax imperium）<ref name="Ross2004">{{cite book|author=Stephen Ross|title=Conrad and Empire|url=https://archive.org/details/conradempire00ross_0|url-access=registration|year=2004|publisher=University of Missouri Press|isbn=978-0-8262-1518-5|page=[https://archive.org/details/conradempire00ross_0/page/76 76]}}</ref>」として言及される。
 
[[フランス]]の歴史家[[レイモン・アロン]]は、時として、しかし常にではない、覇権を手段として達成された平和であるパクス・インペリアは、その国内における平和となりうるとした。一例として、[[ドイツ帝国]]による[[1871年]]の[[ザクセン州]]のような国内に対する平和は、後のゲルマン人国家へと徐々に発展した。その逆の例としては、[[アレクサンドロス3世]]の[[マケドニア王国]]によるパクス・インペリアは、ギリシャの[[都市国家]]がその政治的アイデンティティを、そしてより重要なことに、各都市がそれぞれの軍隊を維持したために崩壊した。アロンは、パクス・ロマーナの時代の[[ユダヤ戦争]]は、現地の制度に対する帝国の制度の重複がそれらを打ち消すことはなく、その重複こそが緊張と再燃の原因であったと想起させたと指摘する。アロンは、「言い換えると、かつての独立した政治単位の記憶が消えさる限りにおいて、征服地の個々人が伝統的または地域社会との連帯を弱めて宗主国との繋がりを強める限りにおいて、帝国による平和は国内の平和となる。」と要約している<ref name="Aron2003"/>。
 
パクス・ロマーナの概念は非常に影響力を及ぼしたため、それを真似ようとする試みが[[東ローマ帝国]]や{{仮リンク|キリスト教世界|en|Christendom}}であり、そこではパクス・デイ（{{仮リンク|神の平和運動|en|Peace and Truce of God}}）へと変わっていった<ref name="Gress"/>。帝国による平和に関する[[中世]]の理論家は[[ダンテ・アリギエーリ]]であった。​彼のこの問題に関する研究業績は、[[20世紀]]初頭に{{仮リンク|ウィリアム・ラムゼイ|en|William Mitchell Ramsay}}の著作''The Imperial Peace; An Ideal in European History''（[[1913年]]）にて分析された<ref name="Scott2002">{{cite book|author=James Brown Scott|title=Law, the State, and the International Community|url=https://books.google.com/books?id=o2ItplkkogIC&pg=PA223|year=2002|publisher=The Lawbook Exchange, Ltd.|isbn=978-1-58477-178-4|pages=223–224|origyear=1939}}</ref><ref>{{cite book|url=https://archive.org/details/imperialpeaceide00ramsrich|title=The imperial peace; an ideal in European history|work=Internet Archive|publisher=Oxford, The Clarendon Press|year=1913}}</ref>。
=== フィクションにおける派生 ===
*[[アイザック・アシモフ]]の[[SF小説]]『{{仮リンク|銀河帝国シリーズ|en|Galactic Empire (series)}}』と『[[ファウンデーションシリーズ]]』では、パクス・トラントリア（Pax Trantoria）とパクス・インペリウムについての言及がある。
*[[HBO]]製作の[[テレビドラマ]]『[[ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア]]』のシーズン1第6話の原題は「{{仮リンク|パクス・ソプラナ|en|Pax Soprana}}」である。
*[[大高忍]]による[[ファンタジー漫画]]『[[マギ (漫画)|マギ]]』には、ローマ帝国をモデルにしたレーム帝国という大国が登場し、その最高司祭シェヘラザード治世下の帝国は物語開始の約200年前から繁栄を享受してきた。
*[[ベセスダ・ソフトワークス]]の[[コンピュータRPG]]『[[Fallout: New Vegas]]』に登場するシーザーは、彼のローマ風の軍隊を使い、荒地での新たなパクス・ロマーナ創出を目指している。
*[[DCコミックス]]原作のテレビドラマ『[[GOTHAM/ゴッサム]]』シーズン4第1話のタイトルは「{{仮リンク|パクス・ペンギニア|en|Pax Penguina}}」である。
 
== 脚注 ==
{{Reflist}}
 
▲== 参考関連文献 ==
* Burton, Paul. 2011. "Pax Romana/Pax Americana: Perceptions of Rome in American Political Culture, 2000–2010." ''International Journal of Classical Tradition'' 18.1:66–104.
* Cornwell, Hannah. 2017. ''Pax and the Politics of Peace: Republic to Principate.'' Oxford Classical Monographs. Oxford; New York: Oxford University Press.
* Galinsky, Karl. 2012. ''Augustus: Introduction to the Life of an Emperor.'' Cambridge; New York: Cambridge University Press.
* Goldsworthy, Adrian. 2016. ''Pax Romana: War, Peace and Conquest in the Roman World.'' New Haven: Yale University Press.
* Hardwick, Lorna. 2000. “Concepts of Peace.” In ''Experiencing Rome: Culture, Identity and Power in the Roman Empire'', Edited by Janet Huskinson, 335–368. London: Routledge.
* Lopez, Gennaro. 2002. “Pax Romana/Pax Augusta.” ''Invigilata Lucernis'' 24: 97–110.
* Stern, Gaius. 2015. “The New Cult of Pax Augusta 13 BC–AD 14.” ''Acta Antiqua Academiae Scientiarum Hungaricae'' 55.1–4: 1–16.
* Yannakopulos, Nikos. 2003. “Preserving the Pax Romana: The Peace Functionaries in Roman East.” ''Mediterraneo Antico'' 6.2: 825–905.
* [[エドワード・ギボン]]『[[ローマ帝国衰亡史]]』Strahan & Cadell, 1776.
 
== 関連項目 ==
* {{仮リンク|ローマ帝国の遺産|en|Legacy of the Roman Empire}}
*[[パクス・ブリタニカ]]
* [[ローマ帝国初期のゲルマニア戦役]]
▲*[[パクス・アメリカーナ]]
* {{仮リンク|ローマ帝国によるグレートブリテン島征服|en|Roman conquest of Britain}}
▲*[[パクス・モンゴリカ]]
* [[:en:Mos maiorum|Mos maiorum]]
▲*[[パクス・オトマニカ]]
* [[超大国]]▼
*[[パクス・エウロパエア]]
 
*[[勢力均衡]]
== 外部リンク ==
▲*[[超大国]]
* [http://www.unrv.com/early-empire/pax-romana.php United Nations of Roma Victrix History: Pax Romana]
* [https://web.archive.org/web/20070203082948/http://www.ancientworlds.net/aw/Group/139585 Pax Romana Discussion group]
 
{{パクス}}
{{古代ローマ}}
{{ローマ帝国}}
 
{{DEFAULTSORT:はくすろまあな}}
[[Category:ローマ帝国]]
[[Category:古代ヨーロッパ]]
[[Category:ラテン語の成句]]
[[Category:平和]]
{{Peace-stub}}
「https://ja.wikipedia.org/wiki/パクス・ロマーナ」から取得