「アマビエ」の版間の差分

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2020年「新語・流行語大賞」TOP10入りに関して加筆。「Category:流行語」貼り付け。
天日子尊について読み仮名を「あまひこのみこと」と追記(東京日日新聞記事のルビにあり[長野 2009, 資料, p.24])
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== アマビコとの類似点 ==
{{main|アマビコ}}
{{Anchors|尼彦_画像}}[[ファイル:Amabiko.jpg|thumb|'''尼彦'''の肉筆画(明治時代以降のものと考えられている{{sfnp|長野|2006|p=9}})<br />湯本豪一所蔵]]
[[アマビコ]]と称される妖怪についての図と話は、江戸時代後期から[[明治]]中期にかけての資料(瓦版や[[写本]])や新聞記事などで確認されている。いずれも海中からの出現、豊作や疫病の予言、その姿を写した絵による除災、3本以上の脚部を持つ絵姿、「しばた」(柴田または芝田などと表記される)という姓の目撃者などの共通要素がある{{sfnp|湯本|2005|pp=71-88}}{{sfnp|長野|2006}}。アマビコ及びそれに隣接すると見られる資料群は確認される年代の幅が前後に広いことから(弘化より少し早い[[天保]]から、明治にかけて散発している)、湯本豪一{{sfnp|湯本|2005|pp=71-88}}は名称の誤記例、長野栄俊{{r|長野}}はアマビエをアマビコの一例であると考えている<ref>{{Cite web |title=長野栄俊 |url=http://www.tokyodoshuppan.com/author/a129179.html |publisher=[[東京堂出版]] |accessdate=2020-03-15 }}</ref>{{sfnp|長野|2006}}はアマビエをアマビコの一例であると考えている
 
{{main|アマビコ}}
 
肥後国の海に出現したとする資料が最も確認例は多く、アマビエを肥後国に出たとする話もこの影響下にあると考えられる。[[1876年]](明治9年)に「'''尼彦入道'''」あるいは「[[アリエ (妖怪)|アリエ]]」という名で新聞記事に報道されているアマビコに類する絵札の例でも「肥後国青沼郡」や「肥後国青鳥郡」の海に出現したされている(ただし、そのような郡が実在しないことは報道でも指摘されており、当時としても疑わしい話であると見なされていたと考えられる{{sfnp|湯本|2001|pp=174-175}})。ほかに、[[日向国]](現・[[宮崎県]])に出たとされる「尼彦入道」の例も1件ある{{efn2|日向国に出たとされる「尼彦入道」の図は他の「尼彦」や「尼彦入道」の図にくらべると異質なもので、脚も9本足である。}}。{{Anchors|天日子|天日子尊}}[[1875年]](明治8年)に報じられた「'''{{読み仮名|天日子尊|あまひこのみこと}}'''」{{sfnp|湯本|1999|pp=178-180}}の例は、海ではなく[[新潟県]][[湯沢町]]の[[田|田んぼ]]に現れたとされる。<ref>『[[東京日日新聞]]」明治8年8月14日号。{{sfnpharvp|湯本長野|19992006|ppp=178-18024}}に転載。他{{sfnp|長野|2006|p=6, 7}}等も参照。</ref>{{sfnp|湯本|1999|pp=178-180}}。このように、名称や細部の内容が異なっていても本文全体の趣旨はほとんど同一のものであり、アマビエもこのような例の一つであったことがわかる。
 
アマビコの絵はどの例でも大抵奇妙な姿で描かれているが、アマビエの絵に比べると[[サル|猿]]に似た、毛の生えた獣のような形で描かれることもある{{sfnp|湯本|2005|pp=71-88}}{{sfnp|長野|2006|p=24}}(『越前国主記』の'''海彦'''{{sfnp|長野|2009|pp=140-142}}の例などもそれに近い)。またアマビエの文には採用されていないが、'''あま彦'''(『青窓紀聞』。[[天保]]14年のもの{{sfnp|長野|2009|pp=136-137}})や'''尼彦'''(湯本豪一所蔵)の絵{{sfnp|湯本|2005|pp=71-88}}{{sfnp|長野|2006|loc=pp.&nbsp;4–8, 24}}など、肥後国{{efn2|出現場所については「肥後国熊本県真字郡」と記載されるが、「真字郡」という郡は実在しない。また「尼彦」(湯本豪一所蔵)の例では熊本「県」とあることから[[廃藩置県]]([[1871年]])後の文章と推定されている}}に出たとされるアマビコには「猿の声して人を呼ぶ」など、猿のような声をしていたという点が登場する。アマビエやアマビコの海中出現は[[神社姫]]に由来する可能性があるとも指摘されている<ref>[[常光徹]]「流行病と予言獣」『[[国立歴史民俗博物館]]研究報告』174集(2012年)</ref>。
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[[2019年]]に発生した[[新型コロナウイルス感染症 (2019年)|新型コロナウイルス感染症(COVID-19)]]は、[[2020年]]に入って世界的な[[パンデミック]]と化した。2月下旬には、日本でも[[北海道]]や[[東京都]]を中心に、防疫対策として人の物理的交流も経済活動も大幅な自粛を余儀なくされた。イベントの休止や学校の休校措置なども始まり、そのような鬱屈した社会情勢にあった同年[[2月27日]]{{r|Twitter_orochidou_20200227}}{{Refnest|group="注"|「3月6日に京都大学附属図書館が瓦版の画像を添付してツイートしたところ、瞬く間に拡散した。」旨の報道もされているが{{r|"西日本_20200312"}}、2月の末には既に投稿が始まりつつあった。}}、「疫病退散にご利益があるというアマビエの力を借りよう」「コロナウイルス対策としてアマビエのイラストをみんなで描こう」との発想から{{r|Twitter_orochidou_20200227|HuffPost_20200311ed}}妖怪[[掛け軸]]専門店「大蛇堂」が、アマビエ解説と共にイラストレーション作品を[[Twitter]]に投稿したところ{{r|Twitter_orochidou_20200227|HuffPost_20200311ed}}、この考えに賛同した多くのTwitter利用者が[[ハッシュタグ]]「アマビエ」「アマビエチャレンジ」「アマビエ祭り」など{{r|"Twitter_アマビエ"|"Twitter_アマビエチャレンジ"|"Twitter_アマビエ祭り"|Twitter_nst_tbs6_20200311|Togetter_2020}}を付けてアマビエを自己流にアレンジした作品(イラスト、[[漫画]]、[[動画]]、[[ぬいぐるみ]]、[[あみぐるみ]]、[[刺繍]]、[[フィギュア]]、[[印章|スタンプ]]、[[こいのぼり]]<ref>{{Cite web|title=アマビエのぼり(アマビエこいのぼり) {{!}} ミセスミシン:オリジナルこいのぼり製作|url=https://www.mrs-machine.com/works/amabie/|accessdate=2020-04-17|language=ja}}</ref>、その他小物など)を次々に投稿するという動きが起こった{{r|HuffPost_20200311ed}}。多数の作品がTwitterに投稿され、それらがリツイートされる動きは3月に入っても大きくなってゆき、5日には[[著作権フリー]]のイラスト素材サイト「[[いらすとや]]」にも「アマビエ」のイラスト素材が登場した{{r|withnews_20200310|J-CAST_20200308}}。漫画家のトキワセイイチが漫画『アマビエが来る』をTwitterに投稿したのは6日で、これにも大きな反響があった{{r|Twitter_seiichitokiwa_20200306|withnews_20200310}}。原資料である[[#瓦版_画像|アマビエの瓦版]]を所蔵する[[京都大学]]附属図書館からは6日に投稿があり{{r|Twitter_kumainlib_20200306}}、数日のうちに5,000を超える「[[いいね!ボタン|いいね!]]」が寄せられた{{r|Twitter_kumainlib_20200306}}。ソーシャル分析ツール「ForSight(フォーサイト)」でキーワード「アマビエ」を含むツイートを調べると、2月は日に10件程度であったものが、3月1日は162件と微増し、3日になって4,737件と急増、そして、7日には38,646件と爆発的に増えていることが分かる{{r|withnews_20200310}}。
 
アマビコやアマビエを研究に取り上げている長野栄俊は{{r|長野}}、[[ウェブサイト]]『ふーぽ』のコラム(2020年3月11日)で、こうした創作活動を行う人々たちのあいだでのアマビエイラストのブームについて言及しており、2020年3月の流行に際してのアマビエは、元々存在していた「予言」の要素についての言及が人々の間で取り沙汰されている点が全く見られず、より単純な[[護符]]としての特徴のみが拡散{{していると分析している<ref name=fupo20200311>{{Cite web|date=2020-03-11|url=https://fupo.jp/article/amabie/|title=妖怪「アマビエ」のナゾと正体をガチの研究者がわかりやすく徹底解説! 新型コロナ流行で140年ぶり出現!!【ふーぽコラム】|publisher=株式会社 fuプロダクション|accessdate=2020-03-29}}</ref>。
 
2020年4月に[[緊急事態宣言]]が発令されて以後は、3月時点に較べて社会全体への自粛要請がさらに進んだが、3月以降アマビエがテレビ番組や新聞といったマスコミでも報道され、一挙に世間に広く知られる「護符」的な存在としてニュースとなった。結果、これまでみられた[[ソーシャルメディア]]内での個々人による「創作でのアマビエ」の範囲だけではなく、[[マスメディア]]を通じてアマビエを題材にした創作物ブームの存在を知った各地の様々な事業者が「新型コロナウイルスの終息」をうたってアマビエのかたちを模した商品を販売したり、商品のラベルデザインに採用したりするようにもなった([[和菓子]]、[[洋菓子]]、[[パン]]、酒類、清涼飲料水など)。また、4月7日からは[[厚生労働省]]が新型コロナウイルス感染症のWeb向け対策啓発の広報アイコンとしてアマビエのイラストを用い始めた{{r|厚労省}}。このイラストは、2020年6月19日から厚生労働省が配信を開始した「[[新型コロナウイルス接触確認アプリ|COCOA]]」の起動画面にも全く同じものが用いられている。2020年5月2日からは、大阪市の[[ヘソプロダクション]]が「アマビエ疫病退散プロジェクト」と題した企画商品の販売を行っている<ref>[https://www.heso-pro.com/event/200501-2/ アマビエ疫病退散プロジェクト]、ヘソプロダクション、2020年5月1日。</ref>。