「ニューロパチー」の版間の差分
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皮膚生検は小径線維ニューロパチーの診断でときおり用いられる。
==== その他の検査 ====
全身左右対称性の末梢性ニューロパチーでは標準として全血球計算、生化学検査(電解質、腎機能、肝機能)、空腹時血糖、HbA1c、尿検査、甲状腺機能、ビタミンB12、葉酸、赤血球沈降速度、リウマトイド因子、抗核抗体、血清蛋白麺系泳動、ベンズジョーンズ蛋白を含んだ検査を行うべきである。感覚性ニューロパチーでは空腹時血糖とHbA1cが正常であっても
== 各論 ==
=== 遺伝性ニューロパチー ===
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[[シャルコー・マリー・トゥース病]](CMT)は[[神経伝導速度検査]]、神経病理学、遺伝形式、特定の変異遺伝子によって分類される。CMT1は遺伝性脱髄性感覚運動ニューロパチーであり、CMT2は軸索感覚性ニューロパチである。正中神経のMCVがCMT1では38m/sに満たず、CMT2では38m/sよりもはやい。多くの場合CMT1では20~25m/sである。CMT1とCMT2は通常は小児期か成人早期に発症するが、特にCMT2ではより遅い時期に発症もある。両方共少数の例外をのぞいて常染色体優性遺伝である。CMT3は常染色体優性のニューロパチーであり幼少期に発症し重篤な脱髄またはミエリン形成不全と関連している。CMT4は常染色体劣性遺伝のニューロパチーで典型的には小児期や成人早期に発症する。X染色体性遺伝するものをCMTXという。遺伝子検査では[[次世代シークエンサー]]が用いられることもある。シャルコーマリートゥース病に対しては理学療法や装具に使用以外は明らかなものはない。
;CMT1
CMT1は遺伝性ニューロパチーで最も多い。脱髄性感覚運動ニューロパチーであり、CMT1とCMT2の比は約2対1である。通常は20歳代までに下肢遠位の筋力低下を示すが、もっと遅い時期まで無症候無症候の症例も認められる。シャルコー・マリー・トゥース病の患者は感覚障害の訴えをすることが少なく、感覚障害が目立つことが多い後天性のニューロパチーと鑑別になる。感覚障害は無症状であるが診察すると感覚低下が明らかになる。膝から下腿の筋萎縮がしばしば認められシャンペンボトルと表現される。CMT1AがCMT1の中で最も多い亜型で
;CMT2
CMT2はCMT1より遅い時期に発症することが多い。しかし臨床的にはCMT1と区別するのは困難であり末梢神経伝導速度検査で区別する。
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副腎白質ジストロフィー、副腎脊髄ニューロパチーはX染色体連鎖劣性遺伝の疾患である。ATP結合カセット(ABC)トランスポーターの変異で起こるペルオキシゾーム病である。脳白質や副腎皮質に炭素数が22以上の極長鎖脂肪酸を有するコレステロールエステルの蓄積がみられる。極長鎖脂肪酸の蓄積はペルオキシソーム病で共通に認められる所見であり副腎白質ジストロフィー特異的所見ではない。
[[副腎白質ジストロフィー]]は小児期発症の中枢神経異常を伴う疾患である。5~15歳が好発年齢であり、多くは行動異常、性格変化、知能低下などの精神症状ではじまり、続いて四肢痙性対麻痺、視力低下、聴力低下、てんかん発作が出現する。四肢麻痺と知能低下は進行性で除皮質硬直、除脳硬直を示すようになる。経過中に皮膚色素沈着や低血圧、嘔吐などの副腎不全症状を示すこともある。経過は進行性であり1~3年で植物状態となる。同じ遺伝子変異でも
==== Refsum病 ====
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[[ポルフィリン症]]はヘム合成酵素の欠損によって起こる遺伝性疾患の総称である。常染色体優性遺伝である。ヘムはいくつかのポルフィリン体を経て合成される。ヘム合成系の酵素のいずれかに異常を生じるとヘム生産量の減少と同時に体内のポルフィリンまたはその前駆体が大量に生産、蓄積されることにより多彩な症状を呈する。これがポルフィリン症である。ポルフィリン症には急性ポルフィリン症4病型と皮膚型ポルフィリン症4病型が知られているが神経障害を起こすのは急性ポルフィリン症のみである。急性ポルフィリン症は急性間欠性ポルフィリン症、ALAD欠損性ポルフィリン症、異型ポルフィリン症、遺伝性コプロポルフィリン症がある。光線過敏は
急性間欠性ポルフィリン症、ALAD欠損性ポルフィリン症では認められない以外、急性の神経症状は類似している。ポルフィリン症の発作はある種の薬物(通常P450で代謝される薬物、バルビツール酸系、フェニトイン)、
ホルモンの変化(妊娠、月経周期、経口避妊薬、エストロゲン製剤)、食事制限によって誘発される。ポルフィリン症の急性発作は疝痛で始まることがある。腹痛、嘔吐などで[[急性腹症]]と診断されることが多い。続いて興奮、幻覚、痙攣などが起こる。数日経過した後に背中と四肢の痛みと筋力低下が起こり[[ギラン・バレー症候群]]に似た症状になる。筋力低下は顔面筋や球麻痺症状を呈するだけでなく腕と脚に広がり、その分布は非対称性のことや近位と遠位に広がることもある。自立神経異常症と交感神経系の活動亢進(瞳孔散大、頻脈、高血圧)はよくみられる。便秘、尿閉、失禁も起こることがある。グルコースとヘマチンの静注が治療では有効である。急性期の死亡率は
==== 家族性アミロイド多発ニューロパチー ====
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==== ALアミロイドーシス ====
ALアミロイドーシスは多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症、リンパ腫、他の形質細胞腫またはリンパ球増殖性疾患や原発不明の疾患が背景にあって起こる。ALアミロイドーシスの約
==== 糖尿病性ニューロパチー ====
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==== 尿毒症性ニューロパチー ====
腎不全患者の約
==== 慢性肝疾患 ====
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==== 水痘帯状疱疹ウイルス ====
[[水痘帯状疱疹ウイルス]](VZV)感染による末梢性ニューロパチーは潜伏しているウイルスの再活性化または一時的な感染によっておこる。大人では感染者の3分の2で皮膚の帯状疱疹が出現し、強い疼痛と感覚障害が皮節に起こり、1~2週間後に同部位に小水疱を伴う発疹が出現する。皮膚病変に一致した根支配の筋力低下が
=== 悪性腫瘍関連ニューロパチー ===
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=== 原因不明の感覚ニューロパチーまたは感覚運動性多発ニューロパチー(CSPN) ===
原因不明の感覚ニューロパチーまたは感覚運動性多発ニューロパチー(cryptogernic sensory and sensorimotor polyneuropathy CSPN)は除外診断である。病歴、家族歴、社会生活歴、神経学的診察と検査データを慎重にとった後に診断されるものである。広範囲におよぶ精査にもかかわらず、約
===圧迫性ニューロパチー、単ニューロパチー===
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!nowrap|疾患名!!nowrap|障害神経と部位!!nowrap|症状!!nowrap|原因その他
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|手根管症候群
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|肘部管症候群
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|Guyon管症候群
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|撓骨神経麻痺
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|異常感覚性大腿神経痛
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|総腓骨神経麻痺
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|足根管症候群
|}
====コンパートメント症候群====
骨および筋膜によって構成された閉鎖空間をコンパートメントという。コンパートメントの圧上昇によって阻血性神経麻痺、さらに横紋筋融解や壊死が進行する。その後クラッシュ症候群となる。この一連の症候群をコンパートメント症候群という。
====正中神経麻痺====
母指対立運動や短母指外転筋(APB
;手根管症候群
手根管は底部を手根骨、上部を屈筋支帯で形成される狭い空間である。この中を正中神経と9本の健が通過する。何らかの原因で手根管内の圧力が高まると正中神経の絞扼性障害が出現する。橈骨骨折、腫瘍、ガングリオン、手根骨の骨折、妊娠、糖尿病、甲状腺機能低下症、長期の血液透析などが原因として知られているが原因不明なことも多い。通常は利き手側に発症し症状も強いが、中年女性の半数以上は両側性である。橈側の3指の異常感覚で発症し夜間に増悪する。重症例では短母指外転筋の筋力低下で母指球萎縮にいたる。手関節掌側、正中神経直上でチネル徴候がよく認められる。ファーレン徴候も認められる。軽症例は夜間の副木で手首の可動性を制限させたり、副腎皮質ステロイド局注が有効である。進行れに対しては手根管開放術を行う。筋萎縮が明らかになる前に行うのがよいとされる。母指球筋が萎縮した場合を猿手という。
;円回内筋症候群
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====尺骨神経麻痺====
母指内転筋(AP
;肘部管症候群
尺骨神経は肘部管の高さで上腕骨内側上顆の背後から尺骨神経溝を通過し、続いて内側側副靭帯と尺側手根屈筋上腕頭、尺骨頭の間に張る弓状靭帯で囲まれた場所、すなわち肘部管を通る。絞扼は尺骨神経溝でも肘部管でも起こりえる。肘部管症候群は絞扼性ニューロパチーで最も多いが多くの症例では原因を明らかにできない。尺骨神経麻痺の症状は特徴的である。まずは尺骨神経領域の感覚障害、第Ⅴ、第Ⅳ指の鷲手変形(PIP関節の屈曲を伴う)、小指球の萎縮も生じる。背側骨間筋も萎縮する、最初に侵されるのが第一背側骨間筋で侵され方も最も強い。母指内転障害も出現する。母指内転筋麻痺を長母指屈筋で機能を代償するため、母指内転時に指節間関節が屈曲し、これをフローマン徴候という。
;Guyon管症候群
尺骨神経は肘だけでなく手関節でも絞扼される。尺骨神経は手関節では豆状骨と有鉤骨鉤との間のGuyon管を通過する。
====橈骨神経麻痺====
長母指外転筋(APL、母指を外転)の筋力の他、手関節や手指の伸展障害の結果起こる下垂手、腕橈骨筋の筋力低下が認められる。
;撓骨神経麻痺
橈骨神経病変は上腕骨神経溝(ラセン溝)で最も頻度が高い。意識障害や睡眠中に圧迫損傷されるためSaturday night palsyとも言われる。下垂手と腕橈骨筋の筋力低下が認められる。腋窩など高位で絞扼されない限り上腕三頭筋は通常おかされない。感覚障害は手背の母指と示指の指間部に限局するか、さらに中指の近位部までおよぶこともある。
;後骨間神経症候群
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== 関連項目 ==
* [[麻痺]]:感覚麻痺に関して一般的な記載あり。
== 参考文献 ==
* ハリソン内科学
* 神経内科学
* 末梢神経学ケーススタディ
* Peripheral Neuropathy
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