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| 画像説明 =
| 艦種 = [[ミサイル駆逐護衛#DDG|ミサイル護衛艦 (DDG)(DDG)]]
| 命名基準 = 山岳名
| 建造所 = [[ジャパン マリンユナイテッド]] 横浜事業所 磯子工場
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| 備考 =
}}
'''まや型護衛艦'''(まやがたごえいかん、{{Lang-en|''Maya''-class destroyer}})は、[[海上自衛隊]]の[[護衛艦#DDG|ミサイル護衛艦(DDG)]]の艦級。[[あたご型護衛艦|あたご型]]をもとに[[電気推進 (船舶)|電気推進]]を導入し、また[[イージスシステム]]も更新した発展型として、[[中期防衛力整備計画 (2014)|26中期防]]に基づき、[[2015年|平成27]]・[[2016年|28年]]度計画で1番艦隻([[まや (護衛艦)|まや]]と2番艦[[はぐろ (護衛艦)|はぐろ]]が建造された{{Sfn|徳丸|2018}}<ref name="takahashi20210319">{{cite web|title=最新鋭イージス艦「はぐろ」就役――海自の8隻体制が確立|url=https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashikosuke/20210319-00228177/|publisher=[[Yahoo!ニュース]]|work=[[高橋浩祐]]||date=2021-03-19|accessdate=2021-03-19}}</ref>{{Sfn|徳丸|2018}}{{Sfn|山崎|2014}}{{Sfn|内嶋|2019}}。
'''まや型護衛艦'''(まやがたごえいかん、{{Lang-en|''Maya''-class destroyer}})は、[[海上自衛隊]]の[[ミサイル駆逐艦|ミサイル護衛艦(DDG)]]の艦級。
 
[[あたご型護衛艦|あたご型]]をもとに[[電気推進 (船舶)|電気推進]]を導入し、また[[イージスシステム]]も更新した発展型として、[[中期防衛力整備計画 (2014)|26中期防]]に基づき、[[2015年|平成27]]・[[2016年|28年]]度計画で1番艦[[まや (護衛艦)|まや]]と2番艦[[はぐろ (護衛艦)|はぐろ]]が建造された<ref name="takahashi20210319">{{cite web|title=最新鋭イージス艦「はぐろ」就役――海自の8隻体制が確立|url=https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashikosuke/20210319-00228177/|publisher=[[Yahoo!ニュース]]|work=[[高橋浩祐]]||date=2021-03-19|accessdate=2021-03-19}}</ref>{{Sfn|徳丸|2018}}{{Sfn|山崎|2014}}{{Sfn|内嶋|2019}}。
 
== 来歴 ==
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== 設計 ==
=== 船体 ===
本型は、あたご型(14DDG)の設計を基本として、[[電気推進 (船舶)|電気推進]]の導入を図っている{{Sfn|徳丸|2018}}。これに伴い、全長にして5メートル、[[基準排水量]]にして450トン大型化した{{Sfn|徳丸|2018}}。ただし最大幅21メートル、深さ12メートル、吃水6.2メートルというその他の主要目は変更せず、凌波性や艦尾フラップの導入等[[造波抵抗]]を大きく変化させないような船体設計とすることで、あたご型と同様の運動性能を確保しているとみられている{{Sfn|内嶋|2019}}。
 
=== 機関 ===
機関の構成としては[[COGLAG]]方式を採用した。これは先行する[[あさひ型護衛艦 (2代)|あさひ型(25DD)]]と同様の方式だが、同型では電圧450ボルトの低電圧であったのに対し、本型では電圧6.6キロボルトという高電圧とされており、技術的にはより進んだものとなった{{Sfn|徳丸|2018}}。[[発電機]]としては[[M7A (ガスタービン)|M7A-05]]ガスタービン主発電機{{Sfn|北原|2018}}とディーゼル主発電機を2基ずつ搭載し、電力は7.4メガワット{{Sfn|徳丸|2018}}、[[電動機]]2基を駆動する{{Sfn|石井|2021}}。また直接機械駆動の際に使用する主機は、[[ゼネラル・エレクトリック LM2500|LM2500IEC]]ガスタービンエンジン2基とされている{{Sfn|内嶋|2019}}。
 
なお、従来のこんごう型・あたご型ではガスタービンエンジン4基による[[COGAG]]方式で、最高速力30ノット以上を確保した{{Sfn|内嶋|2020}}。これに対し本型の最高速力は「約30ノット」とされており、30ノットを下回る可能性が指摘されている{{Sfn|内嶋|2020}}。これは最大速力を使用する頻度およびその目的達成度具合いと、通常使用される速力域での運用の重要性のトレードオフによる検討や、艦隊の運用形態の変化に伴う最大速力への依存度の低下などを反映したものと考えられている{{Sfn|内嶋|2020}}。また電気推進によって発揮できる最大速力はおよそ18ノット程度と推定されているが、これは艦隊運用で必要とされる速力21ノットにわずかに満たない数字である{{Sfn|石井|2021}}。
 
== 装備 ==
=== イージス武器システム(AWS) ===
本型は、イージス武器システム(AWS)としてはベースラインJ7(ベースライン9C)9.C2)、[[イージス弾道ミサイル防衛システム|イージスBMDシステム]]としてはBMD5.1を装備し、これらを統合している{{Sfn|徳丸|2021}}。AWSベースライン9Cは、対空戦(AAW)機能とミサイル防衛(BMD)機能を両立した、IAMD(integrated air and missile defense)機能、および[[NIFC-CA#NIFC-CA_FTS|NIFC-CA FTS]]を備えている。本型では、NIFC-CA FTSのための[[RIM-174スタンダードERAM|SM-6 艦対空ミサイル]]は後日装備とされているが、[[共同交戦能力]](CEC)には対応しており、海上自衛隊で初の搭載例となる{{Sfn|徳丸|2018}}。
 
==== レーダー ====
AWSの中核となる多機能レーダーはAN/SPY-1D(V)である{{Sfn|徳丸|2021}}。一方、対水上捜索用のレーダーとしては、こんごう型・あたご型に搭載されている[[OPS-28|OPS-28E]]とは違い、建造時から[[AN/SPQ-9|AN/SPQ-9B]]が搭載されることとされたが、はぐろ」では後日装備となっている{{Sfn|石井|2021}}
 
==== ミサイル防衛能力 ====
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[[対潜戦]]システム(ASWCS)は改装後のあたご型と同じく[[AN/SQQ-89]]A(V)15Jを搭載し<ref name=":0">{{Cite web|url=https://www.dsca.mil/major-arms-sales/japan-ddg-guided-missile-destroyer-7-and-8-aegis-combat-system-acs-underwater|title=JAPAN – DDG (GUIDED MISSILE DESTROYER) 7 AND 8 AEGIS COMBAT SYSTEM (ACS), UNDERWATER WEAPON SYSTEM (UWS), AND COOPERATIVE ENGAGEMENT CAPABILITY (CEC)|accessdate=2020-07-29|publisher=アメリカ国防安全保障協力局}}</ref>、船体装備ソナーとAN/SQR-20 MFTA({{en|Multi-Function Towed Array}})[[曳航ソナー]]を組み合わせている{{Sfn|徳丸|2020}}{{Sfn|内嶋|2019}}。なお本型では、[[AN/SQS-26#SQS-53|AN/SQS-53C]]ソナーのバウ・ドームに収容される[[ソナー#送波・受波|送受波器]]TR-343は[[日本電気]]により国産化されたTR-343Jが搭載されている{{Sfn|徳丸|2019}}。これは対外有償軍事援助(FMS)が増加する中、国内防衛産業の技術基盤を維持するため、[[アメリカ海軍]]に仕様を確認の上で製作し、同海軍の評価・検証を経て納入に至ったものである<ref name=":0" /><ref name=":1">{{Cite web|url=https://ssl.bsk-z.or.jp/kenkyucenter/pdf/nec20191220.pdf|title=FMS調達イージス艦向けソーナー用国産送受波器の開発|accessdate=2020-02-23|publisher=公益財団法人防衛基盤整備協会}}</ref>。
 
[[Mk 32 短魚雷発射管#68式|324mm3連装短魚雷発射管]]については、こんごう型・あたご型ではHOS-302であったのに対し、本型ではHOS-303に更新されて、[[Mk46 (魚雷)|Mk.46]]に加えて[[97式魚雷]]および[[12式魚雷]]の発射に対応した{{Sfn|徳丸|2020}}。これは平時はRCSスクリーンで覆われており、必要に応じてスクリーンを開けて所定の方向に指向される{{Sfn|徳丸|2020}}。スクリーンを開けるために手動では3分程度かかるが、高圧空気を使用した機力では30秒程度で開放できる{{Sfn|徳丸|2020}}
 
なお、あたご型では対[[魚雷]]用の[[デコイ (兵器)|デコイ]]として曳航具4型を備えていたが、本型では確認されていない{{Sfn|徳丸|2020}}。
 
=== 対水上戦 ===
[[対艦兵器]]としては、1番艦ではあたご型と同じく[[90式艦対艦誘導弾|90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)]]を搭載する{{Sfn|内嶋|2019}}。ただし、2番艦「はぐろ」では新開発の[[17式艦対艦誘導弾|17式艦対艦誘導弾(SSM-2)]]が搭載される予定である{{Sfn|内嶋|2019}}。
 
=== 砲熕兵器 ===
[[主]]熕兵器あたご型とおおむね構成で、[[艦砲]]としては[[Mk 45 5インチ砲|62口径127mm単装砲(Mk.45 mod.4 5インチ砲)]]を艦首甲板に、また近接防空火器([[CIWS]])としては[[ファランクス (火器)|高性能20mm機関砲]]を上部構造物正面と後部上部構造物上に搭載され{{Sfn|徳丸|2020}}
 
近接防空火器([[CIWS]])としては、[[ファランクス (火器)|高性能20mm機関砲]]を搭載する。
 
=== 電子戦 ===
[[電子戦]]装置としては[[NOLQ-2]]Cを搭載している。これはこんごう型やあたご型で搭載されていたNOLQ-2シリーズ同系列機と異なり、[[電子攻撃#電子対抗手段_ (ECM)|ECM]]機能が削除されている{{Sfn|徳丸|2018}}。
 
なおあたご型や「まや」では、[[艦載ヘリコプター]]の運用に対応するためマスト最上部に[[戦術航法装置]](TACAN)のアンテナを設置していたが、[[もがみ型護衛艦|もがみ型(30FFM)]]の開発過程で、マスト最上部に装備する必要のない新型TACANアンテナ(ORN-6F)が開発されたことから、「はぐろ」ではこれを導入し、マスト最上部にはNOLQ-2CのESMアンテナを設置した{{Sfn|徳丸|2021}}。これによって「まや」よりもESMアンテナの設置位置が約5.5メートル高くなり、より早期に脅威電波を探知できるようになった{{Sfn|徳丸|2021}}。
 
== 比較表 ==
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== 同型艦 ==
=== 運用史 ===
平成27年度計画において、[[ネームシップ]]の建造費と2隻分の[[イージスシステム]]の一部の調達費として1,680億円が盛り込まれた<ref name="seifuan27">{{Cite web|author=井口主計官|date=2015-01-14|url=https://www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2015/seifuan27/05-15.pdf|title=平成27年度防衛関係予算のポイント|deadlinkdate=2021年1月
|format=PDF|accessdate=2015/09/07|page=8|archiveurl=https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11478218/www.mof.go.jp/budget/budger_workflow/budget/fy2015/seifuan27/05-15.pdf|archivedate=2020-04-03}}</ref>。また平成28年度予算には、2番艦の建造費として1,734億円が盛り込まれた<ref>{{Cite web|author=防衛省|year=2016|url=http://www.mod.go.jp/j/yosan/2016/yosan.pdf|title=我が国の防衛と予算 -平成28年度予算の概要|format=PDF|accessdate=2016/04/29|page=4|archiveurl=https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9952421/www.mod.go.jp/j/yosan/2016/yosan.pdf|archivedate=2016-04-03}}</ref>。1番艦となる「まや」は、[[2020年]][[3月19日]]に引渡式・[[軍艦旗#日本の軍艦旗・自衛艦旗|自衛艦旗]]授与式が挙行され、就役。[[第1護衛隊群]]第1護衛隊に編入され、[[横須賀基地 (海上自衛隊)|横須賀]]に配備された<ref>{{cite web|title=最新型イージス艦「まや」就役 海自初の「共同交戦能力」搭載 漢字では「摩耶」|url=https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashikosuke/20200319-00168514/|publisher=[[Yahoo!ニュース]]|work=[[高橋浩祐]]||date=2020-03-19|accessdate=2020-03-19}}</ref><ref>{{Cite news |title=初の共同交戦能力、イージス艦「まや」就役 情報共有で防空能力向上 |newspaper=産経ニュース |date=2020-03-19 |url=https://www.sankei.com/smp/politics/news/200319/plt2003190008-s1.html |accessdate=2020-03-19}}</ref>。
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2番艦となる「[[はぐろ]]」は、[[2021年]][[3月19日]]に引渡式・[[軍艦旗#日本の軍艦旗・自衛艦旗|自衛艦旗]]授与式が挙行され、就役。[[第4護衛隊群]]第8護衛隊に編入され、[[佐世保基地 (海上自衛隊)|佐世保]]に配備された<ref name="takahashi20210319">{{cite web|title=最新鋭イージス艦「はぐろ」就役――海自の8隻体制が確立|url=https://news.yahoo.co.jp/byline/takahashikosuke/20210319-00228177/|publisher=[[Yahoo!ニュース]]|work=[[高橋浩祐]]||date=2021-03-19|accessdate=2021-03-19}}</ref>。海上自衛隊では8隻目となる[[イージス艦]]であり、本艦の就役により、安倍内閣が2013年12月に閣議決定した[[防衛大綱]](25大綱)以来、目指していたイージス艦8隻体制が確立した<ref name="takahashi20210319" />。
 
=== 一覧表 ===
{| class="wikitable" style="text-align:center"
|-
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== 参考文献 ==
* {{Cite web|editor=ジャパン マリンユナイテッド|year=2018|url=https://www.jmuc.co.jp/press/2018/27DDG-launch-naming.html|title=8,200トン型護衛艦の命名式並びに進水式について|accessdate=2018-07-31|website=www.jmuc.co.jp|language=ja|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|last=内嶋石井|first=幸祐|year=20192021|month=15|title=注目の新型海自イージスのメカニズム (特集・新時代の海上自衛隊 「はぐろ」就役!イージス艦8隻体制完成)|journal=[[世界の艦船]]|issue=891947|pages=12878-13787|publisher=[[海人社]]|naid=40021731689|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|last=内嶋|first=修|year=2019|month=1|title=注目の新型艦艇 (特集・新時代の海上自衛隊)|journal=世界の艦船|issue=891|pages=128-137|publisher=海人社|naid=40021731689|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|last=内嶋|first=修|year=2020|month=9|title=COGLAG推進システム (特集 新型イージス艦「まや」のすべて)|journal=世界の艦船|issue=931|pages=78-91|publisher=海人社|naid=40022315210|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|last=北原|first=辰巳|year=2018|title=2017年におけるマリンエンジニアリング技術の進歩|url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/jime/53/4/53_466/_article/-char/ja|journal=日本マリンエンジニアリング学会誌|volume=53|issue=4|page=496-497|DOI=10.5988/jime.53.466|ref=harv}}
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* {{Cite journal|和書|last=徳丸|first=伸一|year=2019|month=10|title=対潜戦 (特集 自衛艦隊の海洋戦力)|journal=世界の艦船|issue=889|pages=78-83|publisher=海人社|naid=40021998856|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|last=徳丸|first=伸一|year=2020|month=9|title=船体とウェポン・システム (特集 新型イージス艦「まや」のすべて)|journal=世界の艦船|issue=931|pages=78-91|publisher=海人社|naid=40022315207|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|last=徳丸|first=伸一|year=2021|month=5|title=ウェポン・システム (特集 海自イージス艦のメカニズム)|journal=世界の艦船|issue=947|pages=88-97|publisher=海人社|naid=|ref=harv}}
* {{Cite journal|和書|last=山崎|first=眞|year=2014|month=8|title=ミサイル護衛艦建造の歩み (特集 ミサイル護衛艦50年史)|journal=世界の艦船|issue=802|pages=69-75|publisher=海人社|naid=40020135975|ref=harv}}