「ドナルド・クローハースト」の版間の差分

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=== 神経衰弱と死 ===
航海日誌に記載されたクローハーストの行動は、多くの葛藤を抱えている複雑な精神状態を如実に示していた。捏造の仕方は真剣さを疑わせるもので、自滅的ですらあった。彼は確実に強い疑念を呼び起こすと考えられる非現実的な速さの航海記録をつけていたのである。それにもかかわらず、彼は多くの時間を虚偽の航海日誌の作成に費やしていた。たびたび指摘されることであるが、天体を用いた航行法([[天測航法]])で辻褄を合わせる必要とされがあことからため、単純に事実を記録するよりも、偽造した航海記録を作成することの方が困難である。
 
最後の数週間分の航海日誌の記述からは、現実に賞金を手にする可能性が見えて以来、クローハーストがそれまで以上に精神状態を悪化させていったことが読み取れる。航海日誌の記述は、[[詩]]や[[引用|引用文]]、虚実入り乱れた航海記録、その他の雑感といったものからなり、最終的に25,000ワードを超える量となった。航海日誌には、クローハーストが何の希望もない状況から抜け出すため、哲学的な再解釈を構築しようとした形跡もあった。しかし、テトリーの脱落により自身の勝利と航海日誌の精査が確定し、事態を切り抜けることが不可能になったという認識が、彼にとって決定打となったと考えられる。