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'''アーバスキュラー菌根'''(アーバスキュラーきんこん)は、[[菌根]]のうち大多数の陸上植物の根にみられるもの。根の外部形態には大きな変化は起こらず、根の細胞内に侵入した菌糸が'''樹枝状体'''(arbuscule)と、ものによっては'''嚢状体'''(vesicle)とを形成する。根の外部には根外菌糸がまとわりつき、周囲に[[胞子]]を形成することも多い。この菌根はかつては構造的特徴から'''VA菌根'''(Vesicular-Arbuscular Mycorrhiza)と呼ばれていたが、嚢状体は見られないこともあるので、現在ではアーバスキュラー菌根("AM"と略す)と呼ばれる。
 
アーバスキュラー菌根は、[[グロムス門]]Glomeromycotaに属する150種程度の特殊な菌類によって形成される。これらはかつては[[接合菌]]に含めて考えられていたが、最近では分子系統解析に基づき独立した門として扱うことが多い。[[菌糸]]には隔壁がなく、物質の輸送能力が高いものと考えられている。根の周辺に形成される胞子嚢胞子は種類によっては肉眼ではっきり分かるほどの大きさで、非常に耐久性が高く、緑化・農業資材としての菌根菌接種源に利用されている。
 
菌の種類はごく少ないが、アーバスキュラー菌根が共生相手のする植物は[[コケ植物]]から[[被子植物]]に至る陸上植物の大半と非常に多岐にわたる。しかし温帯以北(南半球では以南)の主要な森林の[[ブナ科]]、[[マツ科]]、[[カバノキ科]]などで構成される主要な[[優占]]種は[[外菌根]]を形成するため、「草本の菌根」というイメージがある。ただし熱帯においては[[フタバガキ科]]のような例を除き森林の優占樹種もアーバスキュラー菌根性である。また、日本の主要経済樹種である[[スギ]]や[[ヒノキ]]アーバスキュラー菌根性である。
 
アーバスキュラー菌根はさらに二つのサブタイプに分けられ、それぞれアラム型(Arum-type)、パリス型(Paris-type)と呼ばれている。アラム型では表皮細胞に侵入した菌糸軽くコイルを形成し、いで皮層の細胞の間に菌糸を伸ばしつつあちこちの細胞に分枝した菌糸を侵入させて樹枝状体を形成する。そのため比較的早く広い範囲に広がることができる。これに対し、パリス型は皮層の細胞の間に菌糸を伸ばすことはせず、侵入した細胞内でコイルを形成しつつ細胞から細胞へと侵入しながら広がる。このタイプでは菌糸が細胞を貫いて伸びるため発達は遅い。なお、細胞内に侵入するときも宿主の細胞膜は破れず、宿主細胞も生きたまま保たれる。
 
アーバスキュラー菌根の機能としては、リン等の吸収促進、耐病性の向上、水分吸収の促進の3つが挙げられる。このため、アーバスキュラー菌根が形成されると作物は乾燥に強くなり、肥料分の乏しい地でも効率よく養分を吸収してよく育つようになる。一方で[[ホンゴウソウ科]]や[[ヒナノシャクジョウ科]]のような[[菌従属栄養植物]]とも共生し、緑色植物と三者共生系を作ることがある。