「ボール箱」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
8行目:
スーザンの家を訪れたホームズは、小包を念入りに調べた。その宛先は「S・クッシング様」と書かれている。それは[[タール]]を染み込ませた麻紐でしばってあった。スーザンは紐を[[はさみ]]で切っていたので結び目が残されており、それが特殊な結び方だったのをホームズは指摘した。黄色いボール箱自体はタバコが入っていたごく普通のもので、粗悪な塩に包まれた2つの耳は、大きさから考えて男女1人ずつのものだった。そして防腐処置されていないので、解剖用の死体からは切られていないと断言した。
 
ホームズはその小包を調べたあと、スーザン・クッシングの部屋に飾ってあった写真から、彼女に妹が2人いることを知った。スーザンが長女でその下はセアラ、末妹はメアリだという。セアラは独身で、8ケ月前からスーザンのところに寄宿していたのだが、気難しいセイラに愛想をつかしたスーザンによって2ケ月前に家から追い出されていた。メアリは船乗りブラウナーと結婚して、リバプールに住んでいる。そしてホームズは、スーザン・クッシングの顔をまじまじと見つめて、何かに気付いた様子だった。次にホームズはセアラの家を訪れたのだが、ちょうど往診に来ていた医者から、彼女は重度の脳炎なので面会できないと言われた。またメアリ一家たちは数日前から旅行で不在らしい。これまでの調査から、ホームズはレストレード警部に電報を送り、犯人を捕らえるよう依頼した。
 
犯人としてメアリの夫ブラウナーが連れてこられた。彼は船員であるが数日前から精神を病んでいて、船長の命令で船室に閉じ込められていたらしい。ホームズの手から逃れられないと悟ったブラウナーは、事件について語り始めた。彼とメアリが結婚したあと、しばらくは幸せな暮らしができた。そのうちに姉のセアラが遊びに来るようになり、やがて一緒に住むようになった。そしてセアラの男友達アレックも、ひんぱんに来るようになった。アレックは好感が持てる男だったので、ブラウナー夫妻とも親密になった。やがて妻メアリがアレックとねんごろになった。怒ったブラウナーは、アレックに二度と家に来るなと警告し、セアラにはこんなことが再発したなら相手の耳を切ってやると言った。セアラはすぐに家を出て行った。
 
事件の起きた日は、ブラウナーの乗る船が急な修理のため半日余りの予定外の自由時間ができた。メアリに会いたくなったブラウナーは家に向かったが、その途中で彼女とアレックが一緒に馬車に乗っているのを見つけた。馬車を追いかけて駅に着いたブラウナーは、彼女たちと同じ汽車に乗りボート乗り場に着いた。
逆上するブラウナーのボートは、2人の乗ったボートを追いかけた。暑い日で水面にはもやがかかり、周りのボートの人々からは見えなかったので、ブラウナーはアレックを殴り殺した。死体にすがりつくメアリも殺した。2人の耳を切り落とした後で、死体はボートに縛り付けて底板を外して沈めた。ボート屋では、もやで方角が分からなくなり、2人はどこか他の場所に上陸したと思うだろう。こうしてブラウナーは、小包に耳を入れてセアラに送ったのだ。しかしセアラは住所を変えていたので、「S・クッシング」と書かれた小包は、スーザンが受け取ってしまった。ホームズは、小包に使われた麻紐とその結び方から、犯人は船に関係する者と考え、被害者は切られた耳の形からスーザン姉妹の誰かだと推測していた。セアラは新聞で耳が送られた記事を読み、脳炎で寝込んでいたので、被害者はメアリに違いない。こうして捕まえられたブラウナーは、殺した2人の亡霊が現れるので独房には入れないでくれ、と懇願するのだった。
 
== 「ボール箱」が収録されている短編集 ==