「指名打者」の版間の差分

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指名打者(以下DHと表記)は一切守備に就かず、本来投手が担うべき打撃を代行する事で、投手と攻守を分担。試合開始前にメンバーを発表する際には、投手以外の[[野手]]とともに打順が定められる。先発出場したDHは、相手チームの[[先発投手]]に対して、少なくとも一度、[[打席]]を完了([[安打]]または[[四死球]]・[[失策]]等により[[走者]]となる、またはアウトになる)しなければならない。ただし、DHの打順が来る前に相手チームの先発投手が交代した場合はこの義務はなくなる。
 
なお、チームは必ずしもDHを起用しなくても良い。ただし、起用しなかった場合には、その試合途中からDHを起用することはできない。逆にまた、DHを試合中に解除して守備の9人のみにするというメンバー変更可能である。このときも再度DHを起用することはできない。
 
[[メジャーリーグベースボール]](以下、MLB)の[[アメリカンリーグ|アメリカン・リーグ]]、[[日本のプロ野球|日本プロ野球]](以下、NPB)の[[パシフィック・リーグ]]、韓国の[[韓国野球委員会]]、台湾の[[中華職業棒球大聯盟]]、キューバの[[セリエ・ナシオナル・デ・ベイスボル]]などのプロ野球リーグ、[[四国アイランドリーグplus]]・[[ベースボール・チャレンジ・リーグ]]などの独立リーグや[[社会人野球]]、日本の[[大学野球]]リーグ(一部の連盟を除く - 後述)、および日本中学硬式の「フレッシュリーグ」等で採用されており、国際試合においても採用されることが多くなっているが、それ以外の[[少年野球]]・[[高校野球]]においては採用されていない。
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DH制制定以降のMLBでは[[ポール・モリター]]、[[エドガー・マルティネス]]、[[デビッド・オルティーズ]]などDHのスター選手も現れた<ref name="DH1"/>。2004年、長年DHとして活躍したマルティネスの引退の際にア・リーグはこれを称え、年間最優秀指名打者賞を[[エドガー・マルティネス賞]]と改名する事を決定した<ref name="DH1"/>(しかし2010年、マルティネスが[[アメリカ野球殿堂]]入りの対象者となった際には、野球記者の投票は36.2%しか集まらなかった<ref name="DH1"/>)。同年1月に招集されたMLB特別委員会で、以後の[[MLBオールスターゲーム]]ではア・リーグ、[[ナショナルリーグ]](ナ・リーグ)のどちらの本拠地での開催であってもDH制を採用することが決定した<ref name="DH1"/>。
 
{{by|2020年}}はナ・リーグでも、[[新型コロナウイルス感染症 (2019年)|新型コロナウイルス感染症]]対策として、DH制が導入されることになっ。ただし{{by|2021年}}から再びDHなしに戻った)
 
=== NPB ===
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=== 日本のアマチュア野球 ===
日本の[[学生野球]]では、[[全日本大学野球選手権大会]]が1992年からDH制を採用した。これを受け、1994年秋から[[東都大学野球連盟]]が採用した。以後大半の連盟がこれを採用するに至ったが、[[東京六大学野球連盟]]と[[関西学生野球連盟]]では採用されていない。また[[明治神宮野球大会]]では採用されていない。[[社会人野球]]では[[都市対抗野球大会]]が1989年で[[社会人野球日本選手権大会]]と[[全日本クラブ野球選手権大会]]がそれぞれ1988年から、[[都市対抗野球大会]]が1989年からDH制を採用した。
 
1991年から7年連続で開催された[[全日本アマチュア野球王座決定戦]]でも導入されていた。
 
[[日本の高校野球]]では、[[国民体育大会高等学校野球競技]]、[[選抜高等学校野球大会]]、[[全国高等学校野球選手権大会]]およびその予選の全てにおいて採用されていない。[[松坂大輔]]のただし、当時[[横浜高校]]3年の[[松坂大輔]]が18歳の誕生日を迎えた1998年9月13日に行われた甲子園球場での[[第3回AAAアジア野球選手権大会]]決勝戦ではDH制が採用され、後攻の[[松坂世代]]が最上級生で大半の[[第3回AAAアジア野球選手権大会日本代表|日本代表]]は[[明徳義塾高校]]3年[[寺本四郎]]が7番DHで先発、先攻の[[野球中華民国代表|台湾代表]]は[[張誌家]]が5番DHで先発出場した
 
=== 国際大会 ===
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=== 打順表に記載された指名打者 ===
打順表に記載された(=先発出場した)指名打者は少なくとも一度は打席を完了しなければならないが、相手チームの先発投手が降板した場合には交代できる(野球規則5.11(a)(2))。
 
=== 試合前に指名打者を指名しなかった場合 ===
DH制のある試合であっても指名打者の指名は義務ではないが、試合前に指名しなかったときは、その試合で指名打者を使うことはできない(野球規則5.11(a)(3))。
 
しかし、前述でも記載があるように、DH制のある試合でDHを最初から使用しないことは一方的不利を免れないので、オープン戦以外では特殊な事情がない限りは起こりえない。公式戦で試合開始時からDHを使用しなかったのは、日本シリーズ対策として投手に打席を経験させるために[[消化試合]]でDHを使わなかった[[埼玉西武ライオンズ|西武ライオンズ]]の例、投手登録だが野手を兼任する打力もあった[[大谷翔平]]が先発投手の試合でDHを使わなかった[[北海道日本ハムファイターズ]]の例がある。
 
; 西武ライオンズ
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: 阪急監督の[[上田利治]]はこの試合の近鉄の先発投手を読み切れず(実際には左腕投手の[[鈴木啓示]]が先発した)、指名打者に投手の[[山沖之彦]]を[[偵察オーダー|偵察要員]]として起用し、1回に山沖に打順が回ると右打者の[[河村健一郎]]を代打に送ろうとした。だが上記ルールによって打者交代が認められず、山沖がそのまま打席に立つ羽目になった(山沖は三振)。
; {{by|1998年}}5月15日、[[オリックス・バファローズ|オリックス・ブルーウェーブ]]対[[福岡ソフトバンクホークス|福岡ダイエーホークス]]戦
: オリックスの指名打者として先発発表されていた[[トロイ・ニール]]が試合開始直前になってひどい腹痛を訴えた。しかしメンバー発表後であったため上記ルールにより交代は認められず、ニールは体調不良のまま打席に立たなければならなかった。ニールは第1打席で本塁打を打つと全速力でホームまで走り、ハイタッチもする間もなく、そのままトイレへ直行した。ニールは結局次の打席で代打を出されて交代した。
; {{by|2011年}}5月20日、[[オリックス・バファローズ]]対[[広島東洋カープ]]戦
: 広島の[[野村謙二郎]]監督は先発の指名打者に投手の[[今村猛]]を偵察要員として起用してしまい、メンバー表交換の際にオリックスの[[岡田彰布]]監督に指摘されて初めて気付いた。上記ルールにより代打は認められないため、今村は2回表の第一打席に立ち、[[犠牲バント]]を成功させた。次の打席では[[石井琢朗]]が代打に出された<ref>{{Cite news|date=2011年5月21日|title=DHに偵察要員…野村監督「完全なボーンヘッド」|url=http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2011/05/21/kiji/K20110521000862360.html |newspaper=スポーツニッポン|accessdate=2011年5月23日}}</ref>。
 
先述のように先発出場し指名打者は、相手の先発投手が交代ない限りDHと1打席完了て起用さなけば交代できない。しかしその選手が怪我などによって退場する場合にのみ特例として代打が認められている。
 
; {{by|2010年}}4月9日、[[千葉ロッテマリーンズ]]対[[埼玉西武ライオンズ]]戦
: ロッテの指名打者として[[福浦和也]]が第1打席に入ったが、[[自打球]]で負傷退場。[[神戸拓光]]が代打に起用され、本塁打を打った。
 
==== 指名打者への代走 ====
指名打者に代えて代走者を使った場合には、その代走者が以後指名打者を引き継ぐ。指名打者を代走者として使うことはできない(野球規則5.11(a)(6) )。
 
=== 指名打者が守備にいた場合 ===
指名打者を守備にかせることもでき、自分の番のる。指名打者が守備位置に就いたころできは、それ以後指名撃を継続者の役割は消滅(野球規則5.11(a)(12) )する。このDHが消滅し投手が打順表に入る場合の打順は原則として投手が退いた守備者の打順を引き継ぐ。ただし、(退いた守備者を含めて)同時に2人以上の交代が行われた場合、新たに守備に就く選手の打順は監督が指する(どの打順に組み込んでもよい)(野球規則5.11(a)(5) )。
 
; {{by|1991年}}5月29日、近鉄バファローズ対オリックス・ブルーウェーブ戦
: オリックスのDHで起用された[[石嶺和彦]]が9回表に代走の[[飯塚富司]]が出て退き、飯塚が守備に就いたため、その裏から登板した[[ドン・シュルジー]]が6番の打順に入った。延長戦突入後の11回に打席に入ったシュルジーは決勝本塁打を放った。指名打者制の導入後、パ・リーグの投手が打った初めての本塁打であった。
; {{by|2014年}}8月16日、[[埼玉西武ライオンズ]]対[[北海道日本ハムファイターズ]]戦
: 10回表の攻撃において4番・[[左翼手|レフト]]で出場していた日本ハムの[[中田翔]]が走塁中に左足首を負傷し、選手交代の必要が発生したが、その時点で日本ハムは控え野手を使い切っていたため、[[栗山英樹]]監督はDH指名打者の[[杉谷拳士]]を中田に代わってレフトの守備に就かせ、中田の打順である4番に投手の[[増井浩俊]]を入れた。なお、増井は延長11回表の二死満塁で打席に立ち、凡退している<ref>{{Cite news|date=2014年8月17日|title=ハム珍プレー 満塁機で「4番ピッチャー増井」 野手使い切り…|url=http://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2014/08/17/kiji/K20140817008761600.html |newspaper=スポーツニッポン|accessdate=2015年6月11日}}</ref>。
 
=== 投手の他の守備位置への変更 ===
投手が投手以外の守備位置へ移った場合、それ以後指名打者の役割は消滅する(野球規則5.11(a)(8) )。投手だった選手はDHの打順に入り、DHは退いた形となる。新たに登板した投手に対してはDHを使用することができない。
 
; {{by|2013年}}7月19日、オールスターゲーム第1戦
: パ・リーグの3番手投手として登板した大谷翔平は5回に投手として1イニングを投げた後、6回から守備位置を[[左翼手]]に変更したため、大谷に代わり登板した[[菊池雄星]]がDHで出場していた[[アンドリュー・ジョーンズ]]に代わって五番の打順に入った。
 
=== 代打者が投手となった場合 ===
代打者がそのまま投手となった場合、それ以後指名打者の役割は消滅する(野球規則5.11(a)(9) )。
 
=== 投手が指名打者に代わって代打者または代走者となった場合 ===
登板中の投手が指名打者に代わって代打者または代走者となった場合、それ以後指名打者の役割は消滅する。その投手は指名打者に代わってだけ打撃または走者になることができる(野球規則5.11(a)(10) )。
 
=== 指名打者が守備位置についた場合 ===
指名打者が守備位置についたときは、それ以後指名打者の役割は消滅する(野球規則5.11(a)(12) )。
 
==== 指名打者が投手になった場合 ====
DH上記指名打者が守備に就くことには、指名打者が投となる場合も含まれる。つまり、指名打者が投手として救援登板することもできる。その時点でDHは消滅する。
; {{by|1995年}}5月9日、西武ライオンズ対オリックス・ブルーウェーブ戦
: 8回裏2死の時点で0-9の大量リードをされていた西武が、ファンサービスの一環として5番・DHで入っていた[[オレステス・デストラーデ]]を投手として救援登板させた。デストラーデは1被安打2四球を許し1死も取れずに降板した。
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: 日本ハムの大谷翔平はこの試合に3番・DHとして先発出場していたが、7-4と3点リードで迎えた9回表にDHを解除し、5番手投手としてマウンドに上がった。大谷は自己の日本記録(164km/h)をさらに更新する165km/hの球速を3度記録するなど、この回を三者凡退に抑えてチームは勝利し、1勝のアドバンテージを含む対戦成績を4勝2敗として日本シリーズ進出を決めた。大谷はポストシーズンも含めて自身初の[[セーブ]]を挙げたが、野手として先発出場した選手がセーブを挙げるのもポストシーズンまで含めてプロ野球史上初のケースであった。
 
=== 登板中の投手他の守備位置への変更に移った場合 ===
==== 打順 ====
登板中の投手が投手以外の守備位置へ移った場合、それ以後指名打者の役割は消滅する(野球規則5.11(a)(8) )ので、元投手だっおよび新に登板する投手はDHの打順に入ることとなる。この場合DH最低2人ベンチに退いた形くこなるので、上記ルール(野球規則5.11(a)(5) )により元投手と新たに登板したする投手に対しての打順DHを使用すること監督指定できない
DHが消滅し投手が打順表に入る場合、原則として投手の打順は打順表の空いたところを引き継ぐこととなるが、投手に関係する守備位置交代を含めて同時に2人以上の選手の交代を行った場合、新たに打順表に入る選手の打順は、投手の打順も含めて監督が指定する。
 
; {{by|2013年}}7月19日、オールスターゲーム第1戦
=== 他の守備位置についていた選手が投手となった場合 ===
: パ・リーグの3番手投手として登板した大谷翔平は5回に投手として1イニングを投げた後、6回から守備位置を[[左翼手]]に変更したため、[[一塁手]]の[[李浩]]に代わって六番の打順に入登板した[[菊池雄星]]がDHで出場していた[[アンドリュー・ジョーンズ]]に代わって五番の打順に投手の[[菊池雄星]]が入った(三番・左翼手だった中田翔が一塁手に回った)
他の守備位置についていた選手が投手になれば、それ以後指名打者の役割は消滅する(野球規則5.11(a)(14) )。
 
=== 指名打者が他の守備位置にていた選手が投手となった場合 ===
指名打者が他の守備位置に就いていたときは選手が投手になれば、それ以後指名打者の役割は消滅する(野球規則5.11(a)(1214) )。
 
; 2013年8月18日、北海道日本ハムファイターズ対福岡ソフトバンクホークス戦
: 5番・右翼手で先発出場した日本ハムの大谷翔平は8回表に守備位置を投手へ変更したため、大谷に代わって右翼手に入った[[赤田将吾]]はDHで出場していた[[ミチェル・アブレイユ]]に代わり、3番の打順に入った。なお、8回裏は大谷には打順が回らず、9回表は[[谷元圭介]]が登板、5番には[[飯山裕志]]が入り大谷は退いたため、大谷がこの試合で投手として打席に立つことはなかった。
 
=== 代打者・代走者が投手となった場合 ===
代打者(代走者も含む)がそのまま投手となった場合、それ以後指名打者の役割は消滅する(野球規則5.11(a)(9) )。
 
=== 登板中の投手が指名打者に代わって代打者または代走者となった場合 ===
登板中の投手が指名打者に代わって代打者または代走者となった場合、それ以後指名打者の役割は消滅する。その投手は指名打者に代わってだけのみ打撃し、または走者になることができる(野球規則5.11(a)(10) )。
 
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=== その他の規定 ===
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==== 日本選手権シリーズ ====
1985年より隔年採用、1987年よりパ・リーグ主催試合でのDH制採用となった[[日本選手権シリーズ]](日本シリーズ)では、セ・リーグ所属チームの主催試合ではDH制が採用されていないため、パ・リーグの投手が打席に立たなければならない上、DH起用が前提となっているタイプの選手をどのように活用するか(代打専門とするか、慣れない守備に付かせるか)という点で、パ・リーグ側のチームには一層の事前準備が求められる。[[2020年の日本シリーズ]]では新型コロナウイルスの感染拡大に伴う特例措置として、1985年以来35年ぶりに全試合で採用された。
* [[埼玉西武ライオンズ|西武ライオンズ]]は[[1990年の日本シリーズ]]で主砲DHの[[オレステス・デストラーデ]]をファースト守備で先発起用、これに応えたデストラーデは守備のある第1・2戦でそれぞれ[[槙原寛己]]・[[斎藤雅樹]]の両エースから決勝本塁打を放つなど、4試合全てで決勝打を放ち、シリーズMVPとなった。
* 他方、[[1997年の日本シリーズ]]での西武は、チーム内2冠の主力DHである[[ドミンゴ・マルティネス]]をヤクルト主催試合(第3戦〜第5戦)で活かし切れず3連敗、貧打のまま1勝4敗で敗れた。ヤクルト投手の[[高津臣吾]]に第3戦で決定的なタイムリーを打たれたのと対照的な結果となった。