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フォアグラ生産者は、「数百年前から伝わる製法であり、鳥たちに害はない」とし、「渡り鳥なので元来栄養を貯め込むものだし、苦痛は無いし、苦痛があったら良いフォアグラにならない」と主張している。しかしフォアグラに使用されるのは野生種を家禽化した[[アヒル]]と[[ガチョウ]]であり、両者ともに飛翔能力はほとんどなく移住のために渡りを行わない。さらに、フォアグラ生産に使用されるのは主に[[アヒル]]であるが<ref>「ガチョウは世界全体のフォアグラ生産の10%以下」 Guémené D.; Guy, G. (2004). "The past, present and future of force-feeding and "foie gras" production". World's Poultry Science Journal. 60 (02): 210–222. https://www.cambridge.org/core/journals/world-s-poultry-science-journal/article/past-present-and-future-of-forcefeeding-and-foie-gras-production/EE092554707E59632C6349C04EE73FE4</ref>、アヒルの原種である[[カモ]]の中にはそもそも渡りを行わない種がおり<ref name="eureport">欧州連合 動物の福祉と健康の科学委員会レポート "アヒルとガチョウのフォアグラ生産における動物福祉の側面" Adopted 16 December 1998 https://ec.europa.eu/food/sites/food/files/safety/docs/sci-com_scah_out17_en.pdf</ref>、このことは、渡りの機能をもたない鳥がフォアグラに使用されていることを示している。苦痛については後述する通り、複数の専門家、公的機関がフォアグラの強制給餌が鳥にとって有害であると結論付けている。
 
{{lang|fr|''foie''}}」「{{lang|fr|''gras''}}」は、[[フランス語]]でそれぞれ、「肝臓」「脂肪」の意。
 
== 歴史 ==
[[2004年]][[4月5日]]、12年ぶりに[[国賓]]としてフランスを訪れた[[エリザベス2世|エリザベス女王]]を迎える形で、[[ジャック・シラク]]が主催した[[エリゼ宮殿]]での晩餐会のメニューに[[前菜]]としてフォアグラの[[テリーヌ]]が出された<ref>[http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20120925/237244/ 内憂外患の今こそ政治に必要なのは「合従連衡」の知恵] 御立尚資, 2012年10月1日 - 『日経ビジネスオンライン』</ref>。また、アメリカ合衆国の[[大統領]][[バラク・オバマ]]もフォアグラをディナーに用い、2013年も用いている<ref>[http://www.pullmanhotels.com/gb/discovering-pullman-hotel/neighbourhoods/paris-tour-eiffel.shtml Hotel Pullman Paris Tour Eiffel : Trocadéro, Quai Branly]</ref><ref>[http://www.honolulumagazine.com/Honolulu-Magazine/December-2013/Barack-Obama-is-Back/ Barack Obama is Back! - Honolulu Magazine - December 2013 - Hawaii]</ref>。
 
日本では、[[昭和天皇]]が[[鄧小平]](初訪日は[[1978年]])を招いた[[宮中]][[晩餐会]]が行われた際、フランスのフォアグラブランドのルージエ社によれば、[[皇室]]の料理長がフォアグラとペリゴール産トリュフを使った[[神戸牛]]のトゥヌドを作り、その料理を「トゥヌド・ジョン・ルージィ」({{lang|fr|Tournedos Jean Rougié}}) と命名したという<ref>[http://www.rougie.jp/index.php?option=com_content&view=article&id=62&Itemid=54&lang=jp&d75da5f7b75d65ffe0309ef1f41cf1bc=2768a537c0158f5599e37048d6ba7c6c ルージエの歴史]ルージエ(日本語版)</ref>。
 
== 産地と消費 ==
[[ファイル:Flickr - gorriti - Foie Heaven.jpg|thumb|250px|right|さまざまな[[瓶詰]]。[[ニコラ・アペール|保存法]]の発明により、フォアグラも長期保存できるようになった]]
{| class="wikitable" style="float:left; clear:left; margin-right:1em"
フォアグラの生産も消費もフランスが最も多くなっている。
|-
 
! colspan=2|2005年のフォアグラ生産量<br>(単位はトン)
=== 世界の生産量 ===
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2005年のフォアグラ総生産量は23,500トンであった<ref name=xinhua/>。
| {{FRA}} || style="text-align:right;"| 18,450<ref name=xinhua>{{cite news |title = China to boost foie gras production |url = http://news.xinhuanet.com/english/2006-04/11/content_4409586.htm |date = 11 April 2006 |accessdate = 12 March 2007 |publisher = Xinhua online}}</ref>
*以下、2005年のデータ
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*{{FRA}} : 18,450トン<ref name=xinhua>{{cite news
*| {{HUN}} || style="text-align:right;"| 1,920トン<ref name=xinhua/>
|title = China to boost foie gras production
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*| {{USA}} || style="text-align:right;"| 340トン<ref>[http://www.starchefs.com/features/food_debates/foie_gras/index.shtml Foie Gras Food Debate on StarChefs]starchefs.com</ref>
|publisher = Xinhua online
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}}</ref>
*| {{CAN}} || style="text-align:right;"| 200トン<ref>[https://web.archive.org/web/20080228004632/http://www.mapaq.gouv.qc.ca/NR/rdonlyres/A8B635A2-01C6-40B1-8CE3-B628A2C17F2F/5950/Bioclips13n18.pdf Bio Clips](仏語)</ref>
*{{HUN}} : 1,920トン<ref name=xinhua/>
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*{{BUL}} : 1,500トン<ref name=xinhua/>
*| {{CHN}} || style="text-align:right;"| 150トン<ref name=xinhua/>
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*{{CAN}} : 200トン<ref>[https://web.archive.org/web/20080228004632/http://www.mapaq.gouv.qc.ca/NR/rdonlyres/A8B635A2-01C6-40B1-8CE3-B628A2C17F2F/5950/Bioclips13n18.pdf Bio Clips](仏語)</ref>
| その他 || style="text-align:right;"| 940
*{{CHN}} : 150トン<ref name=xinhua/>
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*その他 : 940トン
|'''世界総計''' || style="text-align:right;"| '''23,500'''<ref name=xinhua/>
|}
 
=== 伝統的な産地 ===
==== フランス ====
[[ファイル:Foie Gras Geese (Normandie).jpg|thumb|200px|right|フォアグラ用に飼育されるガチョウ(フランス・ノルマンディー地方)]][[File:2011-08-27 Frankreich Elsass Strassburg Foie Gras.JPG|thumb|200px|right|ストラスブールのフォアグラ加工場の看板]]
フランスはフォアグラの主たる産地である。世界のフォアグラの生産量は[[2000年]]で約1万8000トンだが、そのうちフランス産は1万5300トンにも及んだび、フォアグラの生産も消費もフランスが最多となっている。しかしそのフランスでもフォアグラに否定的な人は少なくない。2014年12月に実施されたOpinionWayの調査によると、フランス人の47%がフォアグラの生産における強制給餌の禁止を支持している<ref>[https://www.l214.com/communications/20141220-consommation-sondage-foie-gras 47% des Français sont favorables à l'interdiction du gavage]</ref>
 
フランス国内では、南西部の[[ペリゴール]]地方(現[[ドルドーニュ県]])と[[ランド県]]が主産地で、ガチョウと鴨の両方のフォアグラが生産されている。南西部全体での生産量は、フランスの生産量の75%を占める。また、[[アルザス地域圏|アルザス地方]]の[[ストラスブール]]や[[ラングドック=ルシヨン地域圏|ラングドック地方]]の[[トゥールーズ]]も、産地としてよく知られている。また、ガチョウよりもアヒルの方が飼育が楽で、病気にも強いことから、今日では鴨のフォアグラの生産量は増加傾向にある。
===== フランスのフォアグラ文化 =====
フォアグラの大産地であるフランス南西部[[ランド県]]では、その県都[[モン=ド=マルサン|モンドマルサン]]で2年に一度、「フォアグラエキスポ」(見本市)が行われ、生産者が生産技術を展示する<ref>[http://www.maisondupalmipede.fr/ Foie Gras Expo Mont de Marsan Maison du Palmipède Salon professionnel des filières avicoles Concours Foie Gras]</ref><ref>[http://nature.cc.hirosaki-u.ac.jp/lab/3/animsci/060309_avian_flu_EU.html 仏の「フォアグラ祭り」延期 鳥インフルエンザの影響]朝日新聞社 asahi.com 2006年3月9日より引用、([[弘前大学]]農学生命科学部 畜産学研究室ホームページ)</ref>。
また、フランス南西部の[[ペリゴール]]地方にある[[サルラ=ラ=カネダ|サルラ]]は、フォアグラの街として知られ、2月の第3日曜に「サルラのガチョウ祭」(サルラ フェストワ:Sarlat:{{lang|fr|Sarlat Fest'Oie)Oie}})が開催されたり、「フォアグラルート」 ({{lang|fr|la route du Foie gras}}) と呼ばれる、多くの農家がフォアグラを販売する街道もある<ref name=ren40280/>{{refnest|group="注釈"|name="Sarlat"|サルラは、[[1875年]]にルージエ社 ({{lang|fr|rougié}}) が設立され、ルージエ社は2012年現在、フランス産のフォアグラの約30%を占めるメーカーになる<ref name=ren40280/>。}}。
 
[[1994年]]には、フランスの[[アジャン]]近郊に世界初の「フォアグラ博物館」({{lang|fr|Le Musée du Foie Gras}}) が開設された<ref>[http://www.ot-agen.org/_eng/sejourner/musee/musee-du-foie-gras.htm Agen - Tourist Office - The Foie Gras Museum]</ref><ref>[http://www.souleilles-foiegras.com/musee.html Souleilles Foie Gras - Le Musée du Foie Gras]</ref>。
 
2013年、[[ヴェルサイユ宮殿]]ではルイ14世の製法をできるだけ再現したフォアグラが、「{{lang|fr|Chateau de Versailles - Epicerie Fine}}」(ヴェルサイユ宮殿-高級食料品)と言う名で販売された<ref>【paris】ベルサイユ宮殿が高級食料品の販売を開始!? - すでにヨーロッパでの展開が話題に。近い将来は日本でも! [http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20131127/1053779/?ST=life&P=1 1],[http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20131127/1053779/?ST=life&P=2 2],[http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20131127/1053779/?ST=life&P=3 3],[http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20131127/1053779/?ST=life&P=4 4], 2013年11月29日 - 日経トレンディネット</ref>。
 
==== ハンガリー ====
20世紀の終わりごろになると、フランス国内には自国産品以外に、東欧(ハンガリー、ブルガリア)からの安価な輸入品が流入し<ref name=reuter2013/><ref name=afp5523-1>[http://www.afpbb.com/articles/-/3005523 変革迫られるフランスのフォアグラ産業(1) 国際ニュース:AFPBB News]2013年12月23日 13:54 発信地:オーシュ/フランス</ref>、近年は中国産も台頭する<ref name=jetro2011/>。2010年上半期の貿易収支は、フランス国外からの輸入が激減した影響で、黒字額が大幅に増えた<ref name=jetro2011/>。
 
フランス北部には「ルクルス」( {{lang|fr|'''Lucull­os '''}} ) というフォアグラと牛タンで作られる郷土料理があり、輸出も始まった<ref>{{YouTube|fr-BS3QXg1E|フランスの冬の味覚、フォアグラと牛タンで作る「ルクルス」}}公開日: 2014/01/14 </ref>。
 
==== ハンガリー ====
2013年、[[日経トレンディ]]は、日本でフォアグラが目につく機会が増えたことを報じた<ref name=nike20131112/>。フォアグラは2012年頃には[[ジョナサン (ファミリーレストラン)|ジョナサン]]や[[ココスジャパン|ココス]]といった[[ファミリーレストラン]]のメニューにも登場した<ref name=nike20131112/>。また、[[居酒屋]]チェーン、[[モンテローザ (企業)|モンテローザ]]の店舗にも見られる<ref>[http://biz-journal.jp/2014/02/post_4091.html フォアグラ、なぜ安価で提供する飲食店が増加?生産・輸送コスト減、プチ贅沢志向…(1/2)]2014.02.08 - ビジネスジャーナル</ref>。これらの現象について、「消費者が[[アベノミクス]]の効果で“プチ贅沢”を楽しみたいという気分が盛り上がったからだ」と見ている人物もいる<ref name=nike20131112/>。また、フォアグラが安い価格帯で提供可能となったのは、大量に仕入れることが可能になった点や、フォアグラの集客効果を期待して採算はあえて求めず、他のメニューで利益を出していると説明する店もある<ref name=nike20131112>なぜ今「フォアグラ大放出」!? ファミレス、居酒屋、食べ放題… - “分かりやすさ”が魅力、女性客獲得の切り札にも!? 日経トレンディネット 2013年11月12日 [http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20131106/1053346/]、[http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20131106/1053346/?ST=life&P=2]、[http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20131106/1053346/?ST=life&P=3]、[http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20131106/1053346/?ST=life&P=4]</ref>。この価格低下について、人件費の安い中国産が入ったからではないか、と推測するメディアもあった<ref>[http://biz-journal.jp/2014/02/post_4091_2.html フォアグラ、なぜ安価で提供する飲食店が増加?生産・輸送コスト減、プチ贅沢志向…(2/2)]2014.02.08 - ビジネスジャーナル</ref>。
 
2014年2月、日本で初めて、フォアグラの料理コンクールが開催された。この「ルージエ レシピコンクール」は仏大手フォアグラメーカー・ルージエ社 ( {{lang|fr|'''Rougié'''}} ) が「日本の料理人の腕を通してフォアグラの調理法を広めたい」と主催した<ref>[http://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201402/0006699389.shtml 社会|フォアグラコンクールで優勝 神戸のシェフ高木さん]2014/2/10 19:51 神戸新聞NEXT</ref>。
 
=== 調理 ===
1960年代以降、「動物性脂肪を豊富に含む動物性食品は、健康に悪影響を及ぼす可能性がある」と言われるようになると、栄養学者たちは「動物の肉には、生命維持に欠かせない全ての必須アミノ酸、全ての必須脂肪酸、13種類ある必須ビタミンのうちの12種類がたくさん含まれている」という栄養学上の事実の指摘を控えるようになった<ref name = "Why we get fat" />。[[ビタミンD]]と[[ビタミンB12]]の両方を含む食べ物は「'''動物性食品だけ」'''である<ref name = "Why we get fat">{{Cite book|last = Taubes|first = Gary|year = 2010|title = Why We Get Fat|publisher = Alfred A. Knopf|location = New York City|isbn = 978-0-307-27270-6}}</ref>。<ref>{{Cite web |author = |date = |url = https://mdrnyu.org/spring-2016-potentially-missing-vitamins-in-the-vegan-and-vegetarian-diet/#:~:text=Lastly%2C%20another%20essential%20nutrient%20that,dairy%20products%2C%20and%20egg%20yolks.|title = Potentially Missing Vitamins in the Vegan and Vegetarian Diet|website = |publisher = mdrnyu.org|accessdate = 19 November 2020}}</ref>。フォアグラは脂溶性ビタミン(A,D,E,K)とビタミンB12、各種ミネラルを豊富に含む。
 
フォアグラは、「[[アミロイドーシス]]」({{lang|en|'''Amyloidosis'''}}, 組織や臓器において、変質したタンパク質が沈着して機能障害を惹き起こす)を発症する危険因子であることが知られている。2007年、[[米国科学アカデミー紀要]]に発表されたフランスの神経生物学研究所の論文によると、フォアグラの摂取は、炎症性疾患のような一連の病状にかかりやすい個体においてはアミロイド関連疾患を誘発し、加速させる可能性が高くなるという<ref>[https://www.pnas.org/content/104/26/10998 Amyloidogenic potential of foie gras Alan Solomon, Tina Richey, Charles L. Murphy, Deborah T. Weiss, Jonathan S. Wall, Gunilla T. Westermark, and Per Westermark PNAS June 26, 2007 104 (26) 10998-11001]</ref>。
 
「[[膵炎]]の原因になるため、犬にフォアグラを与えてはいけない」と述べている獣医もいる<ref>[http://www.thelocal.fr/20131203/dont-feed-dogs-foie-gras-at-christmas-french-vets 'Don’t feed dogs foie gras at Christmas,' warn vets]Published: 03 Dec 2013 18:17 GMT+01:00, Updated: 03 Dec 2013 18:17 GMT+01:00 - The Local </ref>。
 
なお、フォアグラ用に飼育されるガチョウやアヒルは基本的にオスである。メスの肝臓は静脈が多く屠殺時と調理時に除去する手間がかかるためオスのフォアグラより評価が低い。このためメスの雛は孵化後にオスと選別された後に殺処分されることが殆どである。
 
 
フォアグラ生産で最も大切な点は、ガチョウやアヒルにできるだけストレスを与えないことだという<ref name=2003gravure/>。強制給餌が開始される前の3か月程度、自然豊かな場所にある農場に、広い運動場を設けることもある。また、毎日同じ人が餌を与えると、強制給餌のストレスが軽減されるという<ref name=2003gravure>[http://lin.alic.go.jp/alic/month/fore/2003/mar/gravure.htm ベルギーのフォアグラ生産 ブラッセル駐在員事務所]畜産の情報-グラビア-2003年3月 月報海外編</ref>。
 
=== 強制給餌の無い長期飼育のフォアグラ ===
強制給餌を用いずに飼育期間を長くしてフォアグラを生産する、しばし“倫理的なフォアグラ” ({{lang|fr|ethical foie gras}}) と紹介される飼育法がある。スペインの{{仮リンク|エドゥアルド・スーザ|en|Eduardo Sousa}}が経営する農場兼レストラン、ラ・パテリア・デ・スーザ ({{lang|fr|La Pateria de Sousa}}) では、自然に近い飼育場で半野生のガチョウを放し飼いにし、[[渡り]]の季節にエネルギー源として肝臓に脂肪を蓄える習性を利用してフォアグラを生産している。農場から渡りに出てしまい出荷できなくなるガチョウもいるが、全体の10パーセント程度に留まるという{{refnest|group="注釈"|name="kimochi"|ここのガチョウの群れは農場の近所に飛んでいくこともあるが、農場が気に入っているため、再び帰ってくる。野生の鴨の群れが飛来することもある。この放し飼いの手法は、ガチョウの気持ちに寄り添ったものなので、ガチョウが閉じ込められていると感じないように害獣除けの電気網の設置の仕方にも気を配ったり、あるいは、翼を怪我して飛び立てないメスを飼い、渡りをしようとする群れ全体をそのメスが引き止めるので群れが留まるような工夫をする。}}。この方法の課題は、近年の[[気候変動]]の影響を受けてか、収穫の時期(渡りの時期)が一定しないことだという<ref>[http://punta.jp/archives/21718 強制給餌なしで育った「幸せなガチョウ」のフォアグラ | ニュースマガジン PUNTA - プンタ]2014年1月17日、Author:プラド夏樹</ref><ref>[http://www.meatinfo.co.uk/news/fullstory.php/aid/16463/Spanish_farmer_produces__91ethical_92_foie_gras.html Spanish farmer produces ‘ethical’ foie gras - MeatInfo]12 December, 2013, By Line Elise Svanevik</ref><ref>[http://www.huffingtonpost.com/daniel-klein/ethical-foie-gras_b_3380752.html Ethical Foie Gras]by Daniel Klein, Posted: 06/03/2013 5:37 pm, Part of AOL-HuffPost Food ※スペイン語動画付き</ref>。
 
この生産者のフォアグラは、2006年、フランスのクー・ド・クール ({{lang|fr|''Coup de Coeur''}}) という美食コンテストで優勝したことで注目された<ref name=myeurop/><ref>[http://recommend-ted.blogspot.jp/2013/05/blog-post.html ダン・バーバー「驚くべきフォアグラ物語」]</ref><ref>[https://web.archive.org/web/20071128130319/http://www.regiondigital.com/modulos/mod_periodico/pub/mostrar_noticia.php?id=47071 Economía : El Salón Internacional de la Alimentación de París, SIAL 2006, reconoce a la empresa extremeña "La Patería de Sousa"]2006年10月16日 - www.regiondigital.com</ref>。この飼育法はガチョウに強制給餌をすることなく、ガチョウに自ら餌をついばませる方法であるため、飼育期間は一年かかるといわれ費用がかかるが、味に高い評価を得ているため価格は高価になる<ref name=rtbf121210/><ref name=myeurop>[http://fr.myeurop.info/2013/07/23/le-meilleur-foie-gras-du-monde-est-espagnol-11691 Le meilleur foie gras du monde est espagnol]Mar, 23/07/2013 - 14:07, myEurop(仏語)</ref>。
 
== 動物愛護の観点から規制される飼育方法 ==
{{quotation|フォアグラ生産における強制給餌は鳥の福祉にとって有害である<ref name="eureport"/>}}
 
なお、この[[強制給餌]]への批判に対し、アメリカの『{{lang|en|'''Artisan Farmers Alliance'''}}』(職人農民同盟)は、「鴨やアヒルは(人間と違って)[[絞扼反射|咽頭反射]]は無く、苦も無く大きな魚を呑み込めること、独立した獣医や科学者が害が無いと考えている」と反論している<ref>[http://www.artisanfarmers.org/factsaboutfoiegras.html Artisan Farmers Alliance, Foie Gras Farmers of America]</ref>。
 
=== フォアグラの強制給餌を禁止する各地の動き ===
 
===== ハンガリー =====
ハンガリー最大のフォアグラ生産会社フンゲリト<ref>{{YouTube|oFcxO9qD96g|Hungarian foie gras(フンゲリト社の工場の資料映像)}}</ref>(Hungerit({{lang|hu|Hungerit Zrt.}}:{{仮リンク|センテシュ市|en|Szentes}} (Szentes) に本社・工場)が、2008年8月末に強制給餌で飼育されたガチョウとアヒルの生産を中止し従業員200人を解雇するが、同社の労働組合は9月、解雇の原因となった動物愛護団体のフィアープフォーテンの建物前で抗議した<ref name=hokudai080911/>。この動物愛護団体は2006年からフンゲリトを攻撃し、[[ハイパーマーケット]]向けの[[ブラックリスト]]に掲載させ、取引をしないよう呼びかけた<ref name=hokudai080911/>。労働組合はブラックリストからの削除と、生産の再開を求めた<ref name=hokudai080911>[https://web.archive.org/web/20140221174518/http://src-hokudai-ac.jp/hungary/tips/amulthet080911-20.html フォアグラ生産中止の波紋広がる:動物愛護団体前で抗議行動]ハンガリー文化センター:先週のハンガリー・ニュース080911-20、(北海道大学)</ref>。
 
動物愛護団体の攻勢が強まった2008年、ハンガリー議会が国内の特産物を保護する決議を採択した<ref name=asahi20111111/>。これを受け、「食の伝統文化」としてフォアグラを保護し、財政支援を行う法案づくりの動きが進んだ<ref name=asahi20111111/>。鶏肉生産者団体 ({{lang|hu|Baromfi Termék Tanács}}) は、伝統的なフォアグラ生産を「ハンガリーの文化」の一部として認めるよう、動物愛護法を改正するよう求めた<ref name=hokudai080911/>。
 
[[2011年]]7月、オロシャザ市で<ref>オロシャザ市には、ハンガリーにおけるフォアグラの大手メーカーのREX CIBORUM社がある</ref>、新たにフォアグラ業界団体『ハンガリー・フォアグラ協会』を設立する計画が発表され、[[11月9日]]に正式に発足した<ref name=asahi20111111/>。国内の養鶏や加工・貿易・レストランをはじめ、業界全体がスクラムを組み、動物愛護団体の圧力に対抗する<ref name=asahi20111111>[https://web.archive.org/web/20111113183506/http://digital.asahi.com/articles/TKY201111100643.html 朝日新聞デジタル:「フォアグラは虐待」批判 生産2位ハンガリーは対抗]2011年11月11日03時00分</ref>。
 
===== アメリカ合衆国 =====
2004年9月29日、[[アメリカ合衆国]]の[[カリフォルニア州]]では、州内で「肝臓肥大を目的とした鳥類の強制給餌」と「強制給餌によって作られた製品の販売」を[[2012年]]以降禁止する法律を成立させ、2012年7月1日から飲食店やスーパーでの提供が禁止となり、違反すれば1日当たり1000ドルの罰金が科されることとなった<ref>[http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012063000088 1日からフォアグラ禁止=駆け込み消費、反発の声も-米加州] - 時事ドットコム、2012年6月30日。</ref>。このためか、禁止直前に消費が4倍に増加したり<ref name=narinari>[http://www.narinari.com/Nd/20120818643.html フォアグラ禁止令に“抜け穴”、加州でたっぷり170g使用のバーガー。]2012/08/06 12:38。動画付き。</ref>、禁止後に隣接する[[ネバダ州]]でフォアグラの消費が増加した<ref name=yucasee/>。カリフォルニアから遠出して買いにくるからだという<ref name=yucasee>[http://media.yucasee.jp/posts/index/12634 隣の州までフォアグラを買いに行く加州セレブ | YUCASEE MEDIA(ゆかしメディア)]最終更新:2012年12月19日 12時15分</ref>。また、あるレストランは州政府へ抗議を込めて、フォアグラを使ったハンバーガーの早食い競争にフォアグラを販売せずに無償提供した<ref name=narinari/>。抗議の意味が込められた[[ハンバーガー]]の名前は「{{lang|en|Shut the Duck Up Burger}}」(「だまりやがれ!」という意味のフレーズの[[ファック#用法|一部]]を“duck”に置き換えた名称)だった<ref name=narinari/><ref>{{YouTube|C8th1R2J-Ag|"Shut the Duck Up" Burger, foodbeastTV}}</ref>。また、フランスの政治家は、カリフォルニア州への報復措置として、カリフォルニアの[[ワイン]]を提供しないようフランスのレストランに呼びかけた<ref>[http://www.bloomberg.co.jp/news/123-M71XSQ6JTSEU01.html フォアグラ禁止に激怒の南仏-カリフォルニアにワインで報復]更新日時: 2012/07/13 00:58 JST - Bloomberg</ref>。
 
2006年4月には、[[イリノイ州]][[シカゴ]]で、市議会の決議によってフォアグラの販売が全面的に禁止された<ref name=afp20080516/>。しかしこの条例制定後、すぐに地元レストランのシェフらから猛反発を受け、訴訟にまで発展した。市民の反発があるため、取り締まりもほとんど行われなかった<ref name=afp20080516/>。{{仮リンク|リチャード・M・デイリー|en|Richard M. Daley}}市長も「シカゴ市を国中の物笑いの種にするようなもの」と批判し、撤廃を訴えた。当時48対1の圧倒的多数で可決した同条例は、2008年5月、市議会で37対6で廃止が決まり、制定後2年で失効した<ref name=afp20080516/>。フォアグラ禁止中は、市内にある一部のレストランがフォアグラを無料にすることで「法の抜け穴」を利用し、フォアグラを提供した<ref name=afp20080516/>。こうしたレストランは、[[1920年]]-[[1933年]]の[[アメリカ合衆国における禁酒法|禁酒法時代]]に「[[スピークイージー]]」 (speakeasy) と呼ばれる場所で酒をこっそり売っていたのに因み、「ダッキージー」 (duckeasy) と呼ばれた<ref name=afp20080516>[http://www.afpbb.com/articles/-/2391921 シカゴ市、フォアグラ販売禁止条例を廃止 写真2枚 国際ニュース]2008年05月16日 21:19 - AFPBB News</ref>。
 
2019年10月30日、[[ニューヨーク]]市議会は、無理やり太らせたカモやガチョウからとるフォアグラの提供を禁じる条例を可決した。条例は2022年に施行される<ref>{{Cite web |author = Jeffery C. Mays and Amelia Nierenberg|date = |url = https://www.nytimes.com/2019/10/30/nyregion/foie-gras-ban-nyc.html|title = Foie Gras, Served in 1,000 Restaurants in New York City, Is Banned|website = |publisher = The New York Times|accessdate = 16 January 2021}}</ref>
 
===== その他の国 =====
* 2007年3月、[[ウルフギャング・パック]]は、アメリカ動物愛護協会 ( '''HSUS''' ) に協力し、自身の経営するレストランチェーンのメニューからフォアグラを除いた<ref>[http://jp.reuters.com/article/entertainmentNews/idJPJAPAN-25233620070323 米有名シェフ、自然食ブームに賛同しメニュー変更 | エンタテインメント]2007年 03月 23日 14:55 JST - Reuters</ref>。
* 2008年、[[英国王室]]は、動物愛護団体の指摘により、公邸でフォアグラを使用しないことに決めた<ref name=a080301>[http://www.afpbb.com/articles/-/2357296 チャールズ英皇太子、公邸でのフォアグラ料理を禁止 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News]2008年03月01日 21:59 </ref>。
* 2008年、[[イングランド]]東部[[ケンブリッジ]]の有名レストラン、{{仮リンク|ミッドサマーハウス|en|Midsummer House}} ({{lang|en|Midsummer House}}) はメニューからフォアグラを外したが、[[エコテロリスト|強硬派]]の[[動物愛護団体]]である[[動物解放戦線]] ({{lang|en|Animal Liberation Front}}) の[[脅し]]や[[暴力]]を受けていた<ref name=a080301/>。
* 2009年、ベルギーの動物愛護団体が偽のフォアグラ・「ガイアのフォアグラ」({{lang|fr|Gaia de Faux Gras}}) を作った。植物から製造され、[[ベジタリアン]](菜食主義者)でも食せる<ref>[http://www.portfolio.nl/article/show/3065 ポートフォリオ - オランダニュース - ベルギー動物愛護団体 「フォアグラ」販売]2009-12-02 16:07 </ref>。
* 2012年12月、英国[[下院]]に続き、英国[[上院]]でも、動物愛護団体の抗議により、そのレストランでのフォアグラの使用が避けられた<ref>[http://www.afpbb.com/articles/-/2918066 英上院レストランがフォアグラメニュー廃止、動物愛護団体の批判うけ 写真1枚 国際ニュース]2012年12月25日 17:39 AFPBB News</ref>。
* 2013年、オンラインショッピングサイト大手の [[Amazon.com|Amazon]] は動物愛護団体が問題視するフォアグラを含む[[象牙]]や[[鯨肉]]、[[フカヒレ]]をはじめとする計100品目の英国サイトでの販売禁止に踏み切った<ref name=s20131014-4/><ref>[http://www.japanjournals.com/index.php?option=com_content&view=article&id=3990:aaaaaaaa&catid=37:uk-today&Itemid=96 10/15 動物虐待…フォアグラ、英「Amazon」で販売禁止に]2013年 10月 14日(月曜日) 23:00</ref>。これにフランス政府や議会は、インターネット書店業者に対し、書籍を割引販売して、無料配達するというサービスを禁止する法を制定したり<ref>[http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/131014/wec13101412010003-n1.htm 【岡田敏一のエンタメよもやま話】「街の本屋」守るため?仏議会がアマゾン「割引&無料宅配」を法律で禁じた“真の理由”とは…(1/5ページ)]2013.10.14 12:00 - MSN産経west</ref>、新しい課税制度で対抗した<ref name=s20131014-4/>。フランスのギョーム・ギャロ農務大臣は「アマゾンの決定は遺憾である」とし、「私は動物の幸福を尊重しながら、長年にわたり素晴らしい製品の品質維持に努めるわが国の(フォアグラ)生産者の努力を示したい」と述べた<ref name=s20131014-4>[http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/131014/wec13101412010003-n4.htm 【岡田敏一のエンタメよもやま話】「街の本屋」守るため?仏議会がアマゾン「割引&無料宅配」を法律で禁じた“真の理由”とは…(4/5ページ)]2013.10.14 12:00 - MSN産経west</ref>。
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