「社会権」の版間の差分

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== 概説 ==
19世紀中頃までの時期はいわば個人権規定の生育期とされ、[[自由権]]の増加は[[1850年]]のプロイセン憲法に至って飽和状態となり、以後の諸憲法はこれを踏襲するようになった<ref name="yus72">{{Cite book |和書 |author1= 小嶋和司 |author2= 立石眞 |year= 2011 |title= 有斐閣双書(9)憲法概観 第7版 |publisher= 有斐閣 |page= 72 |isbn= 978-4-641-11278-0 }}</ref>。個人権の考え方を支配していたのは、国家の主たる任務は国民の自由の確保にあり、国家はなるべく社会へ干渉すべきでないとする「自由国家」思想である<ref name="yus72"/>。ところが19世紀末から20世紀にかけての困難な社会経済状況を通して、やがて具体的な人間に即して権利を考えようとする傾向が生まれた<ref name="chz176">{{Cite book |和書 |author1= 樋口陽一 |author2= 佐藤幸治 |author3= 中村睦男 |author4= 浦部法穂 |year= 1994 |title= 注解法律学全集(1)憲法I |publisher= 青林書院 |page= 176 |isbn= 4-417-00936-8 }}</ref>。自由競争はたしかに社会の進歩をもたらすが、単なる自由放任主義では結局のところ財産や経済力による人の支配となると考えられるようになり、国家による経済生活への関与や利害調整がむしろ望まれるようになった<ref name="yus73">{{Cite book |和書 |author1= 小嶋和司 |author2= 立石眞 |year= 2011 |title= 有斐閣双書(9)憲法概観 第7版 |publisher= 有斐閣 |page= 73 |isbn= 978-4-641-11278-0 }}</ref>。また、老齢・幼年・病気等により自活能力のない者に対する国家の積極的施策も期待されるようになった<ref name="yus73"/>。
 
こうして、いわゆる「社会国家」思想・「[[福祉国家]]」思想が成立し、[[第一次世界大戦]]後に成立した憲法では旧来の個人権とともにこのような思想に基づく規定が設けられる例が出現するようになった<ref name="yus73"/>。経済的自由権の制限を前提に[[福祉国家]]ないし社会国家の理念のもと現代的人権としての生存権が初めて登場したのが[[1919年]]の[[ヴァイマル憲法]]である<ref name="chzII139">{{Cite book |和書 |author1= 樋口陽一 |author2= 佐藤幸治 |author3= 中村睦男 |author4= 浦部法穂 |year= 1997 |title= 注解法律学全集(2)憲法II |publisher= 青林書院 |page= 139 |isbn= 4-417-01040-4 }}</ref>。ヴァイマル憲法第151条第1項は「経済生活の秩序は、すべての者に人間たるに値する生活を保障する目的をもつ正義の原則に適合しなければならない」と規定した<ref name="chzII139"/>。[[1946年]]のフランス憲法(第四共和国憲法)や[[1947年]]の[[イタリア共和国憲法]]など第二次世界大戦後の西欧諸国の憲法も生存権をはじめとする各種の社会権を憲法に規定するようになった<ref name="chzII139"/>。