「日本のヘイトスピーチ」の版間の差分

=== 法規制論 ===
; 肯定論
[[東京造形大学]]教授(国際刑法)の[[前田朗]]は、国連の人権理事会や人種差別撤廃委員会が[[あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約|人種差別撤廃条約]]に基づきヘイトスピーチ禁止法の制定を勧告している欧州ではほとんどの国が差別禁止法を持っている、とし、マイノリティーの尊厳と基本的人権を守るだけでなく、社会全体の自由や民主主義に関わるとして、法規制すべきだとした<ref name=asahi20150805>{{Cite news|url=http://digital.asahi.com/articles/DA3S11898935.html |title=ヘイトスピーチ規制、審議入り 人種差別撤廃法案 国に防止策責務・罰則なし |date=2015-08-05 |archiveurl=https://archive.is/20150805235058/ |archivedate=2015-08-05}}</ref>。
 
; 慎重論
憲法学者の[[長谷部恭男]]は、特定の[[民族]]や社会階層等に関する差別的言論への規制について、言論内容の外延を規定することの困難、従属的地位にあるとされる人々の表現活動が直接に抑圧されるわけではないこと、従属性の固定化という観念が不明確であること、差別的言論の範囲が拡大しかねない懸念等から、「一般的支持を得ていないと指摘している<ref>長谷部恭男『憲法・第五版』新世社、2011年p205-206</ref>。表現内容に基づくヘイトスピーチ規制には慎重に慎重を重ねる必要があるが、ヘイトクライムを重く処罰することは憲法学から見ても問題は少ないとした<ref name=asahi20150721/>。
 
憲法学者の[[赤坂正浩]]は、[[明白かつ現在の危険]]の法理やブランデンバーグ原則を踏まえて、「犯罪や違法行為を扇動する表現を[[国家]]から妨害されない市民の権利」としての「扇動的表現の自由」、および「マイノリティに対する差別・排斥・憎悪・侮辱等を内容とする表現を国家から妨害されない市民の権利」としての「差別的表現の自由」を論じ、特に日本では[[マスメディア|メディア]]の過度の自主規制が表現の自由に対して萎縮効果を及ぼす面があることにも注意すべきであると論じている<ref>赤坂正浩『憲法講義(人権)』信山社、2011年、p71-72</ref>。
 
憲法学者の[[市川正人]]は、表現の自由が真に根づいたとは言い難い日本国において差別的表現処罰法が有する効果をも考慮に入れて慎重に検討すべきであると論じた<ref name=ichikawa/>。対抗言論の原則について、言論で対抗できる可能性はあるものの、特定民族に対する特にひどい侮辱的表現によって当該民族に属する人の名誉感情が著しく傷つけられる場合には、対抗言論による治癒は困難であり、対抗言論の原則に限界はあることを示唆している。なお、ヘイトスピーチ処罰の立法化について、ブランデンバーグ判決の基準を満たすような人種集団に対する暴力行為の煽動や侮辱を目的とする等、特定の民族に対する特にひどい侮辱的表現を処罰するきわめて限定的なヘイトスピーチ処罰法ならば、規定の文言が明確である限り違憲とならない可能性を示唆している。但し、ヘイトスピーチの処罰を立法化することは政策的な適否であって違憲性とは別の問題であると指摘する。処罰法の立法化による差別解消の効果と表現の自由の保障の影響の両面を考慮し、慎重に検討すべきとしている<ref>[http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/law/lex/15-2/ichikawa.pdf 表現の自由とヘイトスピーチ] 市川正人, 立命館法学 2015年2号(360号)</ref>。
 
[[専修大学]]教授(言論法)の[[山田健太 (学者)|山田健太]]は、国会審議中の法案を足がかりとして、デモなどの表現を刑事的に規制する方向に向かい、治安立法につながる恐れも否定できず、慎重であるべきだ、とした<ref name=asahi20150805 />。
 
[[青山学院大学]]特任教授の[[猪木武徳]]は、ヘイトスピーチには紛れのない基準が存在せず、一般的に被害者とされる少数の暴力的な集団が多数の普通の社会生活を送る人々を脅す例もあり、ヘイトスピーチ規制による国家による言論統制も警戒する必要があるとしている。また、はっきり意識されないまま社会が醸し出す空気によって言論の自由が侵される危険性を指摘。異論を唱えにくい雰囲気が、「正義の装いをまとって国民を知らず知らずのうちに思わぬ方向へと誘い込んでしまうこともありうると述べている。さらに、「合法的な仮面をかぶった専制精神により、「世論とそれに迎合するメディアが、いつの間にか力ある立場の人の意向を忖度し、その反応を事前に予想して、自ら進んで自己検閲をしてしまう」危険性をあげている<ref name="猪木武徳150212"/>。
 
[[青山学院大学]]教授の[[福井義高]]は、[[慰安婦]]や[[南京事件 (代表的なトピック)|南京事件]]で日本を擁護する歴史認識までがヘイトスピーチだとして処罰されうる欧州のようなヘイト規制を、日本で招いてはならないとしている<ref name=sankei20141202>{{Cite news|url=http://www.sankei.com/column/news/141202/clm1412020008-n1.html |title=正論1月号 安易な法規制は許さない |newspaper=産経ニュース |date=2014-12-02}}</ref>。
 
弁護士の[[中川重徳]]は法規制は必要と述べる一方、立法化は慎重に行うべきと述べている。また「法律家だけでなく、教育者、政治家、マスコミ、市民も含めた幅広い参加者が、公の場で、事実に基づいた多角的な議論をする。そのプロセスこそが一番大事なポイントかも知れません」とも述べている<ref name=bengo>{{Cite news|url=http://www.bengo4.com/c_1009/n_404/ |title=敵意をむき出しにした「ヘイトスピーチ」 新たな法律で規制すべきか? |newspaper=弁護士ドットコム |date=2013-05-23}}</ref>。
 
; 否定論